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2 やり直せる物なら……やり直せた?!

 こうして牢屋に入れられてやっと冷静になるなんて馬鹿みたい。


 この先行く所なんて処刑台の上に決まってる。それでも殺したい、だなんて思った私は馬鹿だ。正気の沙汰じゃ無い。死ぬ前に黒歴史を作ってしまった。


 だいたい、相手が侯爵家の子息だからって、貴族社会で婚約者がいるのに違う女性にベタベタするのはどう考えても向こうが悪い。相手の有責で婚約破棄すればよかった。何で私はグレアム様にあそこまで入れ込……執着していたんだろう? 今となってはさっぱり分からない。


 あのアリアナ嬢は他の男子生徒にも手を出していたわけだし、確実にグレアム様と婚約すると決まっているわけじゃない。むしろ、あの中で婚約するなら第一王子のバズ・アルグレイア殿下だろう。バズ殿下以上の優良物件は条件だけ並べるならいはしない。


(あの女、めちゃくちゃ選んでたもんな……)


 アリアナ嬢の取り巻き……と、頭の中でなら言ってもいいだろう。そのラインナップたるや高級ブティックもビックリな品揃えだ。


 まずはバズ殿下、そしてグレアム様。他にも教皇の御子息のムーア・フェル様に、近衛騎士団長の家系のルークス・ガルム男爵子息、後は宮廷魔術師団長の家系のミュカ・ドンソン伯爵子息。


 うーん、親衛隊というか……精鋭を揃えたというか……、しかしまぁそろいもそろってころっといってるのが不思議だ。


 グレアム様以外は身分やお立場から婚約者はまだ決めていない方々ばかりだし、グレアム様めちゃくちゃ颯爽と、一番好かれてるのは俺、みたいな登場してたけど一番オッズ低いのグレアム様なのでは? あれ、絶対私を煽るためだけにグレアム様の側にいたな。


 憎いとかよりも、今はやや引いてる。いや、ドン引きしてる。


 こうして離れてみると冷静に考えられる。条件の良さそうな男に取り入ってたのだと、その中にグレアム様は入っていて、私なんか眼中に無いと。


 そこでなびくグレアム様が悪い。そこは私がいるんだからさっさと距離を置いて婚約者を大事にしろ。浮気男なんてこっちから願い下げだ。何を必死になっていたのか、本当に馬鹿らしい。


「あ、はは……浮気男に執着して、まさか憎さのあまりに殺そうとするとか……私が一番無いわー……」


 もうすぐ死ぬのは分かってる。でも、正直後悔しかない。というか、自分で自分が信じられない。


 何で? どうして? ばかりが心の中に浮かぶ。もう私の中にグレアム様への気持ちも、アリアナ嬢への憎さも無い。


「やり直せるならやり直したい……、今なら間違わないのに……」


 呟いた瞬間に、祖父から形見として貰ったアンティークのネックレスが光を放った。晴れの日だからと初めて身につけたそれは、私の髪色を濃くした紫色の大きな宝石がついている。


 眩い白い光の中に飲み込まれた。あまりに眩しくて目を開いていられない。


 そして、空気が変わった。先程までは冷たい石の牢屋に居たのに、春の風が頰を撫でる。


「おはよう、ニア。どうしたんだ? ぼうっとして。入学に緊張してあまり眠れなかった?」


「グレアム……様?」


 次に目を開いた時には、春の花が咲き乱れる学園の門の前にいた。


 制服を着ている。菫色の髪は後ろでバレッタで留めて、目の前には微笑む、少し若いグレアム様がいて、私の様子を窺っている。見覚えのある光景だ。


(もしかして……)


「グレアム様、今日って……私たちの、入学式ですか?」


「そうだよ。どうしたんだい、本当に。ほら、教室に行こう。同じクラスだから、どうやら惚けている俺のお姫様をエスコートする必要があるようだ」


「あ、あはは……はい、お願い、します」


 お茶目にウインクしながら自然に腕を差し出すグレアム様。茶色の髪に青い瞳が爽やかで、まだ伸びきっていない身長で私をお姫様扱いしてくれる。


 うん。


 やり直せちゃったようだ。私、3年前に戻ってる。


 アリアナ嬢とはまだ出会う前だ。よし、やり直せたなら話は早い。


 私はこの将来浮気男と相手有責での婚約破棄を目指し、立派にアリアナ嬢にざまぁ見ろ、って顔をされよう。


 それが私の命を救う道、絶対に間違えてなるものか。


 私の執着心や恋心は消えた! 絶対にざまぁされてやるから、とりあえず私が執着しないように、そして変な位ころっといった取り巻きたちに巻き込まれないように!


 平和な婚約破棄ざまぁ、目指します!

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