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17 バズ殿下の恩返し〜惚れ薬の摘発と販売規制

 バズ殿下は、まだ少し先になるのだけど、と前置きして話し出した。


「先日のマドレーヌを検査にかけた。あれは……王宮でも使用を制限されている自白剤と同じくらい強力に精神に作用する薬だ。紛い物が出回っていたが、本物の惚れ薬が出てきたとなると、製造と販売の規制に着手しなければならない、と。そう決まったから、今後アリアナ嬢が我々に何かを入れたお菓子を手渡せば……彼女の家も立場をなくすだろうね」


 強い薬は有用でもあるけれど、危険でもある。子爵という地位を与えて薬師団から追い出したのに、何代も後になって本物の惚れ薬(劇薬)を作り出し、秘密裏に流通させていたとなれば、規制と共に摘発される事になるだろう。


 規制をする事態になった元凶だから、当然と言えば当然だ。


 良い薬の材料を育てるノウハウは領民に浸透しているだろう。新たに子爵を置くか、万が一を考えて陛下の手元に領を戻す事になるだろう。


「で、だ……、今回の摘発の件に大きな証言と証拠をもたらしたグレアム殿に、その意思があればだが……ヴィンセント子爵の位を与える可能性がある」


「!!」


 8歳の子供のおねだりで惚れ薬(劇薬)を与えるミスト侯爵家に嫁ぐのは絶対嫌だけど、グレアム様が独立した貴族に叙勲されるなら……、まてまて、だめだめだめ絆されるな。


 子供だからと言ってやっていいことと悪いことがある。まぁそれを教えるのが親で、教えなかったのがミスト侯爵家だと思うと……、グレアム様ばかりは責められないのだけれど。


 私、ちょっと喜んでいるのかな。自分でも不思議だ、絶対にない! と思っていたのに。


 私の塩対応にもめげずに、私を守ろうと動いてくれたのは……うん、嬉しい。


 グレアム様がミスト侯爵家から独立するなら……考え直さなくもない。


 私の考え込んでいる様子に、コホン、とバズ殿下が咳払いをし、ンンッ、とミュカ様も同時に咳払いをした。乾燥でもしてるのだろうか。


「ま、だからと言って薬を盛っていた事実は変わらない。ひとまず、それでミスト侯爵家との婚約話はミスト侯爵家有責で破棄できると思うよ」


 バズ殿下の言葉に、私は心底ほっとした。国を挙げて規制するものを使っていた、と王家が後ろ盾にたってくれるのだから、これ程心強い事はない。


「ありがとうございます」


 思えば、皆さんを守ると言いながら守られているのは私の方だ。


 笑顔でお礼くらい言わなければダメだろう。


「皆さんに助けてもらって、私はなんとか学園でやっていけています。本当に感謝しています」


 おや、誰からも反応がない。それどころか、顔を逸らしたり口許を抑えたりと何やら微妙な反応だ。


 2回目だから、1回目の時に皆さんにされた事は覚えているが、それもこれも惚れ薬(劇薬)のせいだと思えば仕方のない事だし、記憶の中より若い彼らは、失礼だがちょっと可愛い。


 3年であれだけ成長するんだな、と思うと不思議ですらある。


「私からも、ニア様に贈り物があります」


 感傷に浸っていたら、ムーア様が一足先に立ち直って私に笑いかけた。一体何だろう?

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