16 ミュカ様の恩返し〜ペンダントの使い方
放課後、聖堂に集まったものの、グレアム様は薬が強く効いていた為に教師に事情を話して運んでもらい、保健室でまだ寝ている。
あくまでアリアナ嬢が排除したいのは私だ、グレアム様はとばっちりである。申し訳なさが湧いてくるが、そろそろ私は本気で害されかねない。
本来なら3年かけて自然に、さりげなく、彼女は目の前の彼らを落とすつもりだった(グレアム様含む)。が、私がグレアム様の惚れ薬の使用を禁じて、ミスト侯爵家とヴィンセント子爵家の取引が無くなり、私によってグレアム様……ミスト侯爵家はたぶん、権力がガタ落ちする。
私を本気で害しているにも関わらず、食堂での事はミュカ様が防いでくれるたびに本気(に見えるように)で謝ってくるから周りからは問題は無くみえるようだ。
が、今日のは明らかな害意だ。とは言え、目撃者がいない。私は扉越しで会話をした事から、なりすましの可能性もある、と言われてしまえばそれまでだ。顔はバッチリあったのだけど、グレアム様の証言でも弱い。私の婚約者だからだ。
決定的な尻尾は掴ませないが、相当私は追い込まれている。暗い顔で俯いていると、ミュカ様が下から覗き込んできて飛び跳ねた。
「あの、気にしてるみたいだけど、ニア様のことは誰も傷つける事ができないから安心してほしいです」
「誰も……? どういうことでしょうか」
「今日、初めてニア様からペンダントを通して魔力を感じました。はっきり言って魔術師団長の父上よりすごい力がそこに宿っています。それ一個身につけていれば、ニア様は今すぐにでも魔術師団に入って何十年と活躍できるほどの」
お祖父様の凄さを改めて思い知る。
これだけ大掛かりなやり直しの魔法や、守ってくれたりテレパシーを送ったり、私は魔法のまの字も知らないような素人なのに、ミュカ様のお墨付きをもらってしまった。
という事は、割と安全に学園生活は送れるかもしれない。魔法が万能だとは言わないけれど、今のところ実害を防いでくれているのは、ミュカ様とこのペンダントだ。
「そのペンダントは、ニア様に形見分けされた物ですよね? 所有者登録が……あぁ、されている。ニア様にしか使えない国宝級の魔力の塊です」
「それって……、私に魔法が使えなくても、ある程度イメージした事はこのペンダントの魔力でなんとかできたりしますか?」
「できますよ。例えば……、グレアム様を目覚めさせるとかも」
いつも物腰丁寧なミュカ様がウインクして告げてくれた言葉に、私は顔を上げた。
これは、会議が終わったら保健室に行かなければいけない。
グレアム様がいつまで眠っているか定かではない。ただ、とても強力な薬をどのようにかして使われたのは確かだ。
私の問題は何とかなりそうだし、助けてくれようとしたのだから……今日くらいは馬車まで送ってあげないと。
「私からも、朗報が届けられそうなんだ」
バズ殿下が切り出した。