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【Web版】極点の炎魔術師〜ファイヤボールしか使えないけど、モテたい一心で最強になりました~【漫画3巻発売中!】  作者: シクラメン
第3章

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第3-23話 会長と魔術師

「『装焔イグニッション』ッ!」


 イグニの咆哮じみた詠唱が海岸に響く。

 生成された5つの『ファイアボール』が全て白熱化!


「『発射ファイア』ッ!」

「『真似ろ』」


 黒い人型がドロリと溶けると、ぎゅるりと回転して『シャドウボール』のような形状に変化。そして、『ファイアボール』に向かって激突。


 爆炎と爆風をまき散らして、イグニの『ファイアボール』は空中で迎撃された。


「『装焔イグニッション散弾ショット』」


 有象無象の黒い人型に向かってイグニは詠唱。


「『発射ファイア』ッ!」


 イグニの散弾によって、漆黒の人型――アビスが眷属けんぞくと呼ぶ異形の生き物たちが倒れていく。


「おー。すごい凄い」


 アビスは眷属を倒されているというのに、顔色一つ変えずに適当な拍手を送る。


「『装焔イグニッション狙撃弾スナイプ』」


 『徹甲弾ピアス』によって魔力を込められた『ファイアボール』よりも、相当小さい『ファイアボール』がキュルキュルと回転。


 狙いはアビスの胸部。心臓部分。

 常人であれば必殺の一撃となるだろうが、アビスは“極点”だ。


 この程度で死ぬはずがない。


「『発射ファイア』」


 そして、イグニは撃った。


 パァン! と、乾いた音を立てて発射されたイグニの『ファイアボール』がアビスの胸部を穿ち抜くッ!


「くはッ。痛ぇ」


 へらへらと笑いながら、アビスが血を吐き出す。

 だが、次の瞬間にはアビスの傷が全て修復されていく。


 その時、イグニが何1つ攻撃していない眷属の1体が倒れた。

 ちらりと見ると、眷属の胸のあたりに傷があるようにも見える。


「……傷を押し付けてるのか」


 イグニが短く漏らす。


「正解。だから、俺は死なない」

「でも、不死じゃない」

「あァ。だが、半分不死みてェなもんだ。お前ごときが、俺を止めるなんて……」


 次の瞬間、空が真昼のように明るくなった。


「……あ?」


 空にあるのは無数の『ファイアボール』。


「『装焔イグニッション追尾弾ホーミング』」

「へェ」


 その時、初めてアビスの表情が変わった。


「16384個の『ファイアボール』。その押し付ける相手を全て押しつぶしたら、どうなる?」

「面白ェ! やってみろ!」

「『爆撃ファイア』!」


 ズドドドドドッッツツ!!!


 大地を震撼させる激突音!

 16384個の1つ1つが潰すべき敵に向かって降り注ぐ!!


 アビスを巻き込みながら周囲の眷属もろとも吹き飛ばす。

 だが、その中でイグニは傷が修復しつづけるアビスを両目でとらえていた。


「まだ、か」


 イグニはアビスの生み出した眷属を全て焼き払って、そう聞いた。


「当たり前だろ? ここに全部持ってくるようなバカじゃねェよ」


 確かにアビスの言う通りだ。

 だが、


「なら、お前を倒し続ければいいわけだな」

「俺を倒したいならな。だが、止めたいならそうじゃない」

「何が……」


 言いたい、と続けようとした瞬間。ロッジの2階部分。

 ちょうど生徒会メンバーの部屋があった場所から爆発するかのように闇が噴き出した!


「つまり、こういうことだ」


 イグニは後ろを振り向いて、誰も外に出ていないことを確認するとアビスにふり向いた。


「アンタは……俺たちを舐めすぎだ」

「あ?」

「誰も窓の外に出てないだろ」

「あァ。俺が捉えてるからな」

「本当にそう思っているのか?」


 イグニは魔術が他人ひとより使えない。

 だからこそ、その代わりに進化した魔術を見るための眼。


 魔力の熾りを見るための眼が、闇で包まれた部屋の中を見ていた。


「誰も捕まってないから外に出てないんだ」

「妨害術者か。これは凄いのが出たな」


 イグニはその術者が誰なのかを良く知っていた。


「ミル会長! 力を貸してください」

「良いよん」


 次の瞬間、窓から闇が振り払われて中からミル会長が飛び出した。

 ちらりと窓際を見ると、ミコちゃん先輩がサラを抱き上げて臨戦態勢をとっていた。


「で、イグニ君。この人だれ?」

「“闇の極点”です」

「なんでサラちゃんを狙ってるの?」

「聞いても答えませんでした」

「じゃあ、喋らせようか」

「はい」


 イグニが後方に、ミルが前方に下がる。


「ミル会長。あいつは受けた攻撃を自分の手下みたいなモンスターに押し付けることができます」

「凄いね」

「なので、会長の魔術が欲しいです」

「おっけー! 任せてよ」


 ミルはわずか13の時にしてロルモッド魔術学校への入学を満たしていた神童である。

 その適性は【闇:SS】。


 そして、その才能のほとんどをある術式に費やした。

 それが、彼女の二つ目の名前の由来となる。


「俺が最後の一撃を叩き込みます。会長は」

「分かってるよん。任せなって」

「お願いします」

「可愛い後輩からのお願いだからね♪」


 ミルが前に出る。


「『うごめく者は地より溢れて縛り上げ給え』」


 しゅっ、と黒い影がアビスからミルに伸びる。

 だが、ミルがその影を踏んだ瞬間。影がほどけた。


「はッ! やっぱりお前が妨害術者か!」

「そだよ」


 ミル会長がまっすぐ進んでいく。


「『強き者よ。闇より出でよ』」


 ぬっ、と出現した黒い闇の腕がミルを掴もうとして……それも解けた。


「凄ェ術式妨害だな。魔術だけじゃなく、精霊体を砕く……いや、今のはこっちに現界させてる術式をぶっ壊したのか」

「そういうこと。私に触れた魔術、私が触れた魔術。どれも簡単に()の。だから私は“綻び”のミル」

「噂の天才児か! こんなところで会えるとは思って無かったぜ」

「そ。だから、おとなしくしててね」

「嫌だね」


 アビスは次の瞬間、跳躍。

 一瞬にしてロッジの前に移動した。


 そこに居るのは、窓際から降りてきていた生徒会メンバー。

 アビスはミコの腕に抱かれているサラを見て、


「へェ、腕輪で止めてんのか」


 そして、アビスが腕輪に触れた。


「ミコちゃん先輩!」

「来んじゃねェ!!」


 ミコちゃん先輩がアビスの鳩尾目がけて足を叩きこむ。

 次の瞬間、アビスの身体が後方に大きく吹き飛ばされて、


「というわけで、これで終わり」


 ミルがアビスの身体に触れる。

 次の瞬間、イグニがアビスの直上からその身体を撃ち抜いた。


 ミルによってダメージの転移が行えないアビスは笑う。


()()()


 アビスがそう言うと、イグニによって撃ち抜かれた身体が砂浜に溶けていく。


「面白い術式だな」


 そう言い残すと、アビスの身体がヘドロのように変化して消えた。


「……今のは」

「これも本物じゃなかったってことだろうね」


 ミル会長がにこっとしながらそう言う。


「なるほど。分身……みたいな感じってことですか?」

「どうだろ? もしかしたら本物なんていないのかもよ」


 ミルが笑う。


「さ、ロッジに戻ろうか。とは言っても、窓壊しちゃったから弁償しなきゃだね」

「学校側に言ったら払ってくれないですかね?」

「んー。それが何よりなんだけどね。会費から払うってなると、高くなりそうだし」

「ですよねぇ」


 と、2人が話していると背後から何かの気配。


「よう」


 木陰から顔を出したのはアビス。


「面倒くさいな」

「面倒だね」


 イグニとミルの両者がそろって、アビスに向かってため息をついた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無限に分身体送ってこられたら、いつかは疲弊してやられるな さすがに無限てことはないと思うが・・・ 魔力が尽きるまで?でも魔力を回復し続けられたらどうなる
[一言] あーはいはい、アビスさんあなたジョジョのアヌビス神と似たような能力か。初手で見せた「真似ろ」ってのがミソで、眷属に押し付ける能力といい爺さんから逃げ延びた事実といい、恐らく「生存」とか「負け…
[良い点] サラちゃんに近づきやがって!許さねー... 絶っ殺だ! アピス...お前は怒らせちゃならねー奴を怒らせた...「変態」の極点であるこの俺を...
感想一覧
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