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【Web版】極点の炎魔術師〜ファイヤボールしか使えないけど、モテたい一心で最強になりました~【漫画3巻発売中!】  作者: シクラメン
第3章

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第3-20話 慣れと魔術師

「どうです? 俺も結構、形になってきたでしょ」

「悪くないな!」


 イグニとミコちゃん先輩が拳をぶつけながら笑いあう。


 イグニの苦手とする近接戦闘。

 彼はコツを掴んだのか、動きが格段に良くなっていた。


「『熾転イグナイト』の方も毎秒30回転くらいまでなら使える様になってきましたよ!」

「オレは50だけどな!」

「流石です! ミコちゃん先輩!!」

「だろ?」


 ドヤ顔のミコちゃん先輩をイグニは褒める。

 ドヤ顔のミコちゃん先輩も可愛い。

  

 自身で使えるようになったミコちゃん先輩はともかく、イグニもかなり『熾転イグナイト』に慣れてきた。

 回転数と身体能力の関係性が見えてきたからだ。


「2人とも良い感じだね。じゃあ、そろそろイグニくんは次の段階にいこうか」

「次……って、戦闘訓練のですか?」

「そうだよ。魔術解禁してやってみよう」


 頃合いだと思ったのか、ミル会長がイグニに次への段階に行くように指示。

 その後ろではヴァリア先輩とリリィが戦っていた。


「分かりました!」


 イグニは返事をすると、ミコちゃん先輩を向く。


「魔力を回したまま魔術を撃つっての結構難しいから気をつけろよ」

「はい!」


 イグニはそう言って、『熾転イグナイト』を使ったまま『ファイアボール』を発動……しようとして、体内の魔力が暴走!


 ドンッ!!!


 と、『ファイアボール』が暴発して砂を巻き上げた。


「ほら、言わんこっちゃない……」


 とっさに助けに来てくれたミコちゃん先輩にイグニは「ありがとうございます」と礼を伝える。


「気にすんな。オレだって最初はそうなってたからよ」


 ミコちゃん先輩の暖かい励ましが心に響く。


「大丈夫。コツさえつかめば簡単だからよ」

「どうやれば掴めます?」


 『熾転イグナイト』を極めた先輩であるミコちゃん先輩にイグニは尋ねると、


「そうだな。まず、魔力をぐるぐる回すわけだろ?」

「はい」

「その回した魔力で魔術を使おうとするから暴発するんだ」

「おお?」

「だから魔力をぶちってやって、ぐるぐる回してる間にぶちってやった方の魔力を使って魔術を使えば魔術が使えるようになるんだ!」

「なるほど!!」


 擬音語は多かったが、割と分かりやすい説明を受けて、イグニは試しにやって見ることにした。


「まず魔力をちぎって」


 体内で魔力を7:3に分割。


「片方で回して、片方で魔術を使う」


 イグニは魔力が7の方で『熾転イグナイト』を行うと、残った3の方で『ファイアボール』を生成。


「お、おお! 出来ました!」

「流石イグニだ!!」


 ミコちゃん先輩がそう言ってイグニの頭をなでる。


 ちょっと気恥ずかしくなってイグニは笑った。


「ちょっと、先輩。恥ずかしいですよ」

「良いじゃねえか。後輩なんだから」


 後輩、というよりも弟みたいな扱いだなぁ。

と、心の中で考えるイグニ。


「じゃあ、イグニ。そのまま練習だ」

「はい! ミコちゃん先輩!!」


 イグニたちがそう言って練習に取り掛かろうとした瞬間、海から何かしらの殺気を感じてイグニはふり向いた。


「……ッ!!」


 同様にミコちゃん先輩も、ミル会長も、ヴァリア先輩も、リリィも海を見た。


 それに気が付いてないのは戦い慣れていないユーリと、サラの2人だけ。


「ミコちゃん先輩」

「何だ?」

「あれ、モンスターですかね……?」

「……知らん」


 海にいたのは漆黒の人型。


 真昼だというのに、そこだけ光が抜け落ちたように影だけで構成された人型が、海から上半身だけ出してこちらを見ていた。


「イグニ、まだ手を出すなよ」

「はい。モンスターじゃないかも知れませんからね」


 ミコちゃん先輩にイグニは返す。


 影だけのモンスターと言えばイグニも何体か思いつくが、その中に昼間に出てくるようなモンスターはいない。


 だが、先ほどからピリピリと溢れている殺気。

 イグニが気になるのはそれだ。


「みんなー。ちょっと聞いて」


 誰も彼もその場から動かないまま、ミル会長が最初に口を開いた。


「向こうが手を出してきたら、こっちも返す。そうじゃない限りは手を出さないままにしておいて」

「「「はい!」」」


 漆黒の人型は水の抵抗を感じていないのか、するすると砂浜に上がってくると、のっぺりとした顔で周囲を見渡した。


 ミコ、イグニ、ヴァリア、リリィ、ミル、ユーリ、そしてサラの順番で頭を動かして――サラに向かって走り出した!!


「『装焔イグニッション』ッ!」


 誰よりも反応が速かったのがイグニ。


「『発射ファイア』ッ!」


 パァンッ!!


 と、音を立てて漆黒の人型の頭が弾ける。

 がくん、と前につんのめって倒れこむ人型。


「ミコちゃん先輩! サラをお願いします!」

「分かった!!」


 ミコちゃん先輩が超加速でサラを抱き上げると、地面を蹴って上空へと避難。


 次の瞬間、弾けたはずの頭に黒い何かが寄り集まって……修復。


「『装焔イグニッション徹甲弾ピアス』ッ!!」


 イグニの生み出した『ファイアボール』が空気と擦れて音を鳴らす!


「『発射ファイア』ッ!!」


 キュドッ!!


 空気を圧縮し、突き破る音とともに漆黒の人型に『ファイアボール』が激突すると、全てを巻き込んで爆発炎上!!


 煙が晴れると、漆黒の人型が力なく倒れ地面に溶けていく様子が見えた。


「よっと」


 遅れてミコちゃん先輩が着地。


「ありがとな、イグニ」

「先輩は大丈夫ですか?」

「おうよ」


 ミコちゃん先輩は元気そうだし、サラは何が起きたのか分かっていないのか『?』を頭の上に浮かべている。


「ところで、何だったんです? あれ」


 イグニが消えゆく人型を指さしてミル会長に尋ねたが、


「さぁ……?」


 と、彼女も首を傾げた。


――――――――――


「はぁ? 何で死んだ??」


 雪が降り積もる『魔王領』の中で、アビスは急に素っ頓狂な声をあげた。


分身体ドッペルゲンガーじゃないとはいえ、眷属でもそれなりの奴らだぞ? そこらの魔術師に負けるはずがねえし……」


 アビスはドラゴンゾンビと呼ばれるS級モンスターの上に座り込んだまま、考える。


「それなりの反撃はできるやつらなんだが……」


 そういってしばらく考えたアビスは、ゆっくりと息を吐いた。


「ああ。ようやく、見つけたのか」


 アビスは眷属を失った方角に目をやった。


 ここから遥か南。王国の海岸沿いで眷属は消えた。

 ならば、自分が求める物もその近くにあるはずだ。


「そこの近くにいるやつは……。こいつにしとくか」


 立ち上がったアビスは魔力を励起。


「『潜めく者よ、変われ』」


 次の瞬間、アビスと入れ替わって現れた眷属――漆黒の人型がドラゴンゾンビの上に現れ……グズグズに解けて消えた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分は安全な場所にいながら、 いくらでも遠方にそれなりに強力な刺客をいくらでも派遣できるなら、 相当強い能力だな。しかも破壊されれば伝わると さすがに通信能力はないみたいだけどな 向き合って…
[良い点] ドラゴンゾンビって不死身とかだったらやベーなw、多分聖魔術で死ぬと思うけど イグニ聖 魔術使えないじゃん...
[一言] 「ところで、何だったんです? あれ」 突然海から現れて幼女に向かって一目散にダッシュする人影って、それはもう「変態」で良くね? その親玉もまとめて「変態」で良くね?
感想一覧
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