第2-2話 大きい魔術師、小さい魔術師
「ね、イグニくん」
「今日はどうしたんですか? エレノア先生」
昼休み。例によって例のメンツと昼食をとっているとエリーナとエルミーが乱入してきて、アリシアとイリスと大騒ぎをしている時にエレノア先生に呼び出されて、イグニは『相談室』なる場所に連れてこられた。
「これ、なんだけどぉ」
そう言ってエレノア先生が紙を1枚取り出す。
「なんです? これ」
そこにはイグニの名前やら年齢やらが書かれた紙があった。
「クエストの依頼が来たのぉ」
「クエスト……って、あの3年生が受けれるやつですよね?」
「うん。そうなのぉ。でも、イグニくん『大会』で優勝したからぁ。指名依頼が来たのぉ」
「指名依頼って……。誰か選んで、その人にお願いする……ってやつですか?」
「大正解。花丸あげるわぁ」
「どれくらいやるんです?」
「1週間後から始まって、期間は大体1週間くらい……かな?」
「1週間、長いですね。その間、授業とかってどうなるんです?」
「公欠でぇ、任務の内容では授業の単位も出るわよぉ」
「どんな任務なんですか?」
「『兵器』の護送よぉ。王国内を通過するエルフの『兵器』を『公国』まで運んでほしいんですってぇ」
「公国……。ああ、レリタリア公国ですか。サンタルマン神聖国の真下ですよね」
「そうよぉ」
イグニは少し考えた。
別にクエストを受けることが嫌というわけではない。
ただ、そのクエストを受けたからと言ってモテるだろうか? という悩みである。
「嫌なら、別に無理っていうことも出来るのぉ。あのねぇ。エルフって人が嫌いだからぁ……。こんなこと、めったにないのぉ」
「人嫌い……」
確かに噂にはエルフは人嫌いだという話は何度も聞いたことがある。
「ミラ先生は?」
「あの人は特殊だものぉ」
そう言われてしまえば、そんな気がしてくる。
「実はねぇ。先生たち、みんなビックリしてるのぉ。だってあのエルフから、学校の生徒にクエストが来るなんて思って無くってぇ」
「……ふうむ」
イグニは少し考えた。
「それって、もしかして俺が初めてエルフからクエストを受けたことになるんですか?」
「うん。そうよぉ」
「やります」
初めてという響きに誘われたイグニ。
「本当? 先生、嬉しいわぁ」
そういってエレノア先生がイグニを抱きしめた。
「いい子ねぇ」
「せ、先生!!」
大会で優勝してからエレノア先生との距離感がビックリするほど縮まった気がする。
「じゃあ、先生。クエストを受けたってことにしておくねぇ。あと、他に2人来て欲しいってことになってたんだけどぉ。先生、選んでおくね」
「俺が決めなくてもいいんですか?」
「んーっとね。クエストに慣れたら、パーティーメンバーを選べるようになるのぉ。クエストで一番大切なのは、クエストを達成することだからぁ。クエストに慣れてない学生がパーティーメンバーを選んじゃうとぉ、予期しないことに対応出来なくなったりするのぉ。だからぁ、苦手なところを補うようなパーティーを、最初は先生たちが選ぶの」
「なるほど。理解しました」
イグニはエレノア先生から言われたことを飲み込んだ。
文句のつけようのない理屈だ。
「えっとねぇ。仲が悪くって、この人とは組みたくないって人がいたら教えて欲しいなぁ」
「あ、大丈夫です。そんな人いないので」
「そっかぁ。じゃあ、選んでおくね」
「お願いします」
イグニがぺこりと頭を下げる。
「1週間後には分かるからねぇ」
エレノア先生の声を後ろに『相談室』を後にした。
―――――――――
1週間後。
イグニは校門の前に待ち合わせの10分前に校門前についていた。
「イグニさま! ここですよ!!」
そういってぴょん、と跳ねる少女はイリスだ。
「イリス? どうしてここに?」
「エレノア先生に言われたんです! イグニさまのクエストの補助だって!」
「イリスが補助してくれるのか。心強いな」
イリスの適性は【地:S】。
イグニのように火力特化というわけではなく、どちらかというと戦場を操作する支援役の方が適性だ。
(そう考えれば結構俺たちは良いパーティーが組めそうだな)
火力特化で全方位対応可能のイグニ。
火力・前衛のアリシア。
支援・中衛のイリス。
支援・後衛のユーリ。
ここに治癒師が入れば完璧だ。
「イグニさま! 私初めての相手がイグニさまで嬉しいです!」
「俺もイリスで良かったと思ってるよ」
「本当ですか!?」
イリスがイグニの腕を取って抱き着く。
だが、悲しいかな。イリスは薄いのだ。
薄い、と思った瞬間。イグニの頬に痛みが走る。
ああ、あれは忘れもしない1年前……。
―――――――――
『おっぱい無い人にモテたくないよ!』
バゴン!!!
『ぐ、グーパン!?』
イグニが叫ぶと同時にルクスの鉄拳が飛んできた。
『馬鹿たれがッ!』
『!?』
『馬鹿も馬鹿、大馬鹿とはお前のことだッ! イグニ!!』
『お、俺……が……』
『お前の言っていることは弱者の言葉……っ! 貧乳の良さも分からぬクソガキ……!』
『じゃ、じゃあ貧乳の良さって何なんだよ! 巨乳が最高だろ!』
バチン!!!
『つ、次はビンタ……』
『大きさに、貴賤は無いのだ』
『……な、何を』
『もう一度言うぞッ! 大きさに貴賤は無いのだッ!!!』
『……わ、わかんねえよ! じいちゃん!!』
バチン!!!!!
イグニの首が吹き飛ぶんじゃないかと思うほどのビンタ。
『イグニ、お前はおっぱいしか見ておらん』
『……っ!?』
『しかし、それが本当に女の良さなのか?』
『…………そ、それは』
『むしろ女の良さはそこに限らんじゃろう』
『……あ、ああ…………!!』
『中身を見ておるのか? 顔はどうじゃ? 服装は? 優しさは?』
『ああ……ああ……っ!』
『イグニよっ! 目を覚ませェ!!』
『……っ!』
『愛せェッ! ありのままをッ!!』
『俺が……っ! 俺が、間違えてたよ……っ!』
『うむ。分かったらよいのじゃ』
『でもじいちゃん』
『なんじゃ?』
『じいちゃんでもまともなこと言うんだね』
『…………』
―――――――――
そう。巨乳だけを愛するのは2流。
いや、3流……ッ!
男としてのド底辺……ッ!!
愛するべきは女の子の全て……っ!
おっぱいの大きさで優劣なんてつくものじゃあない……っ!!
「さあ、行きましょ! イグニさま! 途中までエレノア先生が引率してくれるそうです!!」
イリスに引っ張られるまま校門を後にしようとすると、後ろから声をかけられた。
「待て待てッ!! 僕をおいていくな!!」
……うん?
すっかりイリスと2人きりだと思っていたイグニは声の主を振り返ると、
「僕もいるぞ! 忘れるな!」
「エドワードか!」
エドワードが立っていた。
「そうだ! 僕がしっかりお前らを癒してやるからな!」
「……ん? 癒す??」
「うん? だって僕は治癒師だからな」
「……あ、ああ。そうだったな」
……初めて知った、とは言えないイグニ。
「適性は【A】だが、欠損くらいは治せるぞ! だからって怪我するんじゃあないぞ!! 分かってるのか!?」
「ちょっと! イグニさまが怪我するわけないでしょ!」
「確かにそれもそうだな」
「でしょ! イグニさまは凄いんだから!」
「ああ。イグニは凄いからな」
「いや、俺の話はいいから行こうぜ……」
イグニはここに来て初めてエドワードが治癒師だということを知って衝撃を飲み込めなかった。
(俺たちのパーティーにエドワード参戦……ある……??)
そして、戦慄した。
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