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【Web版】極点の炎魔術師〜ファイヤボールしか使えないけど、モテたい一心で最強になりました~【漫画3巻発売中!】  作者: シクラメン
第6章

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第6-13話 次席と魔術師

「……シッ」


 エリーナが息を吐いて地面を蹴る。イグニとの間にあった数メートルという距離を一瞬で詰めて、模擬刀を振るう。


「『装焔イグニッション』ッ!」


 それをギリギリで回避しながら、イグニは詠唱。

 イグニの赤髪を数本模擬刀が持って行って、地面スレスレでエリーナが剣をひるがえす。


 だが、それよりも先にイグニが生み出した『ファイアボール』に魔力が込めれられて、


「『発射ファイア』ッ!」

「『ウォーターランス』ッ!」


 イグニの『ファイアボール』に合わせて、エリーナが魔術を発射!

 生み出された水の槍が『ファイアボール』に直進。


 そのまま激突すると、水が全て水蒸気に押し上げられて爆発!!!


「……ふッ!」


 エリーナがさらに前に踏み出して、剣を振るう。

 だが、イグニは既にバックステップ。


 彼の得意とする領域は中距離ミドルレンジ


 エリーナの得意とする近距離ゼロレンジに付き合うつもりはない。


「『蔦罠トラップ』ッ!!」


 しかし、湯気と水蒸気に包まれて真白に染まった世界の中でエリーナはイグニに向かって魔術を発動。氷の大地を削って、蔦が出現するとそのままイグニの右足を縛り上げた!!


「……なるほど。強くなったな! エリーナ!!」

「ようやく本当の私を見せられるな! イグニ!」


 エリーナが吠えるように笑うと、そのまま突撃。

 どうやっても自分の得意領域へと持ち込むつもりだ!


 分かっているイグニは静かに腰を落とすと、魔力を熾す。

 そして、回した。


「『熾転イグナイト』」


 身体能力を強制的に押し上げる魔力の回転によって、世界の全てがスローになっていく。

 その中で、イグニは右手を前に伸ばすとエリーナの剣の腹に向かって手の甲をあわせて剣を流す。


 そして、完全に空いた胴に向って左手を叩き込む。


「……はァッ!!」


 息を吐き出しながら、前に踏み込んでイグニの張り手。

 だが、魔力を秒間30回転させながらのそれは、身体強化魔術を自身にかけた魔術師と全く同じ力を持つ!!


「吹き飛べッ!」

「……ッ! 『身体強化アクティブ』ッ!」


 エリーナは後方に吹き飛ばされながら、魔術を発動。

 地面に両足を叩きつけて、減速。

 

 だが、地面が氷で構成されたこのフィールドでは、減速にかかるまでに時間がかかる。

 故に、その隙を逃さない。


「『装焔イグニッション徹甲弾ピアス』ッ!!」


 ギュルギュルと音を立てながら、『ファイアボール』が高速回転。

 ()()()音が鳴る。


 イグニの前に展開された5つの『ファイアボール』。

 それら全てに魔力が込められると、


「『発射ファイア』ッ!!」


 全弾発射!!


「『身体強化アクティブ二重奏ダブルブースト』ッ!」


 遅れてエリーナが身体強化の重ねがけ。

 

 そして、イグニの『ファイアボール』。

 それら全てを弾ききる!


「……『装焔イグニッション集束弾クラスター』」


 大きな母体となる『ファイアボール』の中に、無数の『ファイアボール』が敷き詰められる。


「『爆発ファイア』ッ!!」


 母体に指向性を与えて発射!

 そして、エリーナの真正面にて母体が爆ぜる。


 中に敷き詰められた『ファイアボール』が周囲に撒き散ってそのまま爆発!

 凄まじい爆音とともに、氷の大地を削っていく。


 しかし、たったそれだけでエリーナを打ち破ったとは考えられない。

 だから、イグニはエリーナの魔力を探った。


「……流石だな、イグニ」


 声が聞こえてきたのは、上空から。


「あの瞬間から、私をここに誘い込んだ」

「空なら避けられないだろ?」

「いいや、イグニ。私の実力を下に見すぎた」


 そういってエリーナは空にて、剣を構える。


「知っているか、イグニ」


 エリーナは短く息を吐き出すと、


「斬撃は、飛ぶんだ」


 イグニはそれを()()()()


 剣術はあくまでも魔術の補助である。

 魔術という戦闘手段が近距離から遠距離の全てを支配しているのに対し、剣術は近距離しかカバーしていない。


 そして、詠唱があるまで何をしてくるか分からない魔術に対して、最初から剣が見えている剣術はどうしても戦いという場において一歩劣ってしまう。……それは当たり前の話だ。優れた魔術師であればあるほど、遠距離で一方的に相手を叩きのめす魔術を持っている。


 優れた剣士は、それに対して何も出来ない。

 魔術師を視認するまでもなく、やられてしまう。


 だからこそ、剣術は廃れた。


 ――とある“極点エルフ”が現れるまでは。

 

目は見えず、魔術は使えず。

身体は弱く、背丈は小さく、魔術にも、剣術にも適性はあらず。


しかし剣だけで魔法にたどり着いた彼女の登場で剣術は息を吹き返した。


確かに、剣は近距離ゼロレンジでしか戦えない。

確かに、魔術の領域では戦えない。


だからこそ、とあるエルフはうそぶいた。

 『なら……斬撃を、飛ばしてしまえば……良いでしょう?』と。


 かくて、剣術は魔術師の殺し方を手に入れた。


鎌鼬カマイタチ


 ヒュ、と風が流れた。

 空気の流れが断ち切られ、キン、と冷たい金属の音が遅れて鳴った。


 そして、イグニの左腕が宙を舞った。


「流石だ、エリーナ」


 イグニは残る右腕でエリーナに照準をあわせる。

 右足が強力な蔦で縛られているが、逃げ出そうと思えばイグニは逃げ出せた。


 だが、彼は逃げずに左腕を犠牲にしてエリーナを()()()


 魔力の熾りを見る魔術と違って、純粋な技術だけで成り立っている剣術はいつどこに飛んでくるのかを正しくイグニは判断できない。


 だからこそ、肉を切らせたのだ。


「『装焔イグニッション徹甲弾ピアス』」


 エリーナが着地する。

 そして、最後の一撃を叩き込むべくイグニに向かってまっすぐ飛んでくる。


「『発射ファイア』」


 イグニの撃ち込んだ『ファイアボール』を剣で弾く。

 だが、そこに()()()2つ目の『ファイアボール』には気が付かず、エリーナの目が驚愕に染まって、


「俺の勝ちだ」


 見事に、撃ち抜いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴミのように腕が飛んでいくw
[一言] 生だけじゃなく水もイケる口ですか、流石は優等生。魔法使い相手でもないのに腕を捨てる覚悟まで決めさせるエリーナも凄いんだろうけど、イグニの頭もバグってる気がする
[良い点] 普通に腕切らせるとこよ。 [気になる点] いくら直してもらえるからと言って無茶しすぎだろう。 [一言] そろそろ太ももをぉ。ください。
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