表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

119/281

第4-16話 モンスターと魔術師

 互いに自己紹介を終わらせてから、イグニは2人に尋ねた。


「“白夜しろくろ姉妹”に聞きたいことがいくつかあるんだが……良いか?」

「何でもきなさーい!」


 姉であるラニアの方はイケイケ。なんでそんなに朝からテンション高いんだ……? と、イグニは疑問を浮かべる。


「鉱山で見つけたモンスターの姿を知りたい」

「うん! だと思ったよ!! ちゃんと説明するからしっかり聞いてね!」

「その前に座って良いか?」


 そう尋ねたのはエリーナ。話が長くなると思ったのだろう。

 ナイスアシストだ。


 ラニアは「良いよー」と言って席を指さすと、妹であるニエにお茶を入れる様に指示。最初は話が通じないやばい奴らだと思っていたのだが、どうにもそうでも無いかもしれない。というか、せめて通じて欲しい。


「えっとね。まず、分かってるのは相手が幽霊ファントム系のモンスターじゃないってこと」

幽霊ファントム系じゃない?」


 思わずイグニは聞き返してしまった。セッタの話では鉱山に亡霊が出たという話ではなかったか。


「逆にロルモッド魔術学校の生徒たちにちゃんと聞いておきたかったんだけど、『霊視石』に反応しない幽霊ファントム系のモンスターっているの?」


 ニエが差し出したお茶を手に取って、ラニアがそう聞いてくる。


 イグニはそう言われて頭の中でモンスターを検索。2年間も『魔王領』で特訓しただけはあって、様々なモンスターと戦ってきたイグニの頭には多種多様なモンスターたちの情報が入っている。


 だが、


「いや、いないはずだ」

「イグニの言う通りだな。私も『霊視石』に反応しない幽霊ファントム系のモンスターは知らない」


 イグニと首席エリーナが同時に首を横に振る。


 幽霊ファントム系のモンスターを見つけるための道具である『霊視石』が反応しないモンスターであれば、それは真っ先にイグニたちが教わるはずだ。例外があることを知らなければ、死んでしまうのだから。


「うん。じゃあ、あのモンスターは幽霊ファントムじゃないよ」

「……なら、何なんだ?」

「絵を描いたから見てよ! 君たちならこれがなんのモンスターか知ってるんじゃないの?」


 そう言ってラニアが奥の方から木の板を探して持ってきた。


「なんだ。絵があるのか。それなら分かりやすくて助かる……」


 ドン! と、イグニたちの前にラニアが描いた絵が置かれる。

 そこに書いてあったのは大きな丸と、それにくっついているかろうじて人間の身体と思われるナニか。そして、身体から一本の線がびーんと伸びていた。


「なにこれ」

「モンスターの絵!!」


 ドヤ顔で応えるラニア。


 イグニは沈黙。これに関しては何も触れない方が良いと判断。

 ユーリは困惑。何を言っていいのか分からず沈黙を守った。


 エリーナは首を傾げて、このイラストから何のモンスターなのかを考えている。真面目さがうかがえる。


「えーっと……。いくつか聞いても良いか?」

「うん! 何でも聞いて!」

「この……大きい丸は何なんだ?」

「頭だよ!」

「頭……」


 頭ならもうちょっと髪の毛とか、目とか鼻とか書いても良いんじゃないだろうか。

 何で丸だけなんだ。


「顔も描こうと思ったんだけど、絵が下手だったから描くのやめたんだ! あと、頭に口とか目とかいっぱいあるから」


 てへっと、笑うラニア。


「えーっと、じゃあこの身体っぽいのは……」

「身体だよ!」

「……ということは、相手は大きい頭に小さい身体がくっついてるってこと……?」

「うん! そう!!」


 じゃあ最初からそう言えば良いじゃん、と言わないのがモテるためのコツである。


「この身体から伸びてる線なに?」

「分かんない!」

「ふーむ」


 イグニは腕を組んで考える。こんなモンスターは見たことがない。

 特徴はほかのモンスターと比べても明らかで、見つけようと思えば簡単に見つけられると思うのだが。


「どうやって移動してた?」

「浮いてました」

「浮いてる?」

「はい。ぷかぷかと、空中に浮きながら移動してましたよ」


 そう言って全員にお茶を渡したニエが、ちょこんとラニアの膝の上に座った。


「空中に浮いてて、頭が大きくて、身体から何かの線が出てるモンスター……」


 イグニが特徴を列挙。

 ユーリもエリーナも、頭の中でモンスターを探しているのだろうけど中々見つからない。


「……新種かもな」

「新種? モンスターの??」


 イグニの独り言に食いついてきたのはラニア。


「……あってるかどうかは置いておいて、その可能性があるってだけだよ」

「新種のモンスターか。ありえるな」

「うん。そうだね。イグニの言う通りかも。今まで見たことあるモンスターの中で似てるモンスター全然いないし」


 学生たちが口を合わせてそう言うので、ラニアとニエの2人が互いに見つめあって息を合わせたかのようにイグニを見た。


「イグニ君! 新種のモンスターを見つけたら良い事とかあるの!!?」

「い、良いこと……? まず、モンスターの命名権が与えられるだろ? あとなんかあったっけ」


 イグニが他の2人に振る。

 

「王都の研究者に渡したら報酬が貰えるんじゃなかったか」

「あとはちょっとしたニュースになるから、名前も色んな新聞に出るね」


 イグニたちの言葉に目を輝かせてラニアが立ち上がった。


「良いことしかないじゃん! 一気にやる気が出てきたよ!!」

「やりましたね! 姉さま! これで私たちも有名人ですよ!!」


 テンションが高い2人。

 取らぬ狸のなんとやらである。


「ここにはいられないよ! 今すぐ鉱山にいこう!!」

「良いけど、見つける宛てはあるのか?」

「ないよ!」

「そうか。無いのか。……え、無いの?」


 思いっきりラニアが頷くものだから、イグニは一瞬勘違い。


「うん! 鉱山の中を歩き回るしかないよ!!」

「ぜ、前回はどうやって見つけたんだ?」

「鉱山の中を歩いていたら出てきた!!」


 ラニアがあまりに元気に言うものだから、緊張感のかけらもありゃしない。


「分かった。鉱山の中を歩き回ろう」


 しかしイグニも対案があるわけではないので、根性で何とかするごり押し作戦決行である。


「なぁ、イグニ。これ」

「うん? どうかしたか?」


 今の今までずっとラニアが描いたモンスターの絵を見ていたエリーナがイグニの服を引っ張った。


「……いや、私の勘違いかも知れないが」


 と、エリーナは一息置いて


「これ、赤ん坊じゃないか?」


 そう言った。


「赤ん坊? これが?」

「ああ。頭が大きく、身体は小さい。そして、この身体の形を見てくれ」


 エリーナが指さしたのはうにょうにょと線が暴れている場所。


「ちょっと体を丸めているみたいに見えないか?」

「確かに」

「それにこの身体から出てるのは……へその緒だと思うんだ」

「それっぽいな」


 言われてみればそう見えてくるのだから不思議である。


「2人とも。これの大きさはどれくらいだったんだ?」


 エリーナの問いにラニアとニエが顔を合わせる。


「3mくらい?」

「かなり大きかったですよね。姉さま」

「…………」


 エリーナはしばし考えてから、


「鉱山に行こう」


 と、だけ言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 3mとか宙に浮いてるてのはよく判らないけど、 赤ん坊ってところが、更にホムンクルス説を上げたぞ 実験に失敗して奇形が生まれたか、 逆に最初はユーリみたいな普通の人間を作って、 後から巨人を作…
[良い点] 妹ちゃん意外と乗り気なのね。 [気になる点] ユーリが男ってこと完全に忘れてたわ。認知症かな? [一言] 太もも出せ変態。
[良い点] 出てくるモンスターは触手系の変なヤツがよかった、出来れば服を溶かす液体を身にまとってるヤツ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ