3 花園での出会い(1)
私が10歳の誕生日を迎えて少し、国の貴族の10歳~13歳の子供が集められ、盛大なお茶会が王宮で開かれる事になった。
その日、お母様は私に変な化粧をした。元々可愛くないのに、顔を引き立てる薄化粧ではなく、そばかすを描いて眉を濃くする、というものだ。口紅も、なんだか少し茶色っぽい。可愛くないとは自分でも常々思っているけれど、これは可愛くないのではなくて野暮ったいだ。
さすがにメイドにも止められたが、お母様はこの化粧は譲らなかった。可愛くないにしても、可愛くないからこそ可愛くお化粧してみたかった。
髪は綺麗に結い上げられているし、ドレスはとっても素敵な、瞳と同じアイスブルーのドレスなのに。
「いい? シェリル。今はまだ、あなたは成人していないの。そして、初めて同年代の子たちと出会うのよ。その時、女の子の友達ができるのと、男の子の友達ができるのなら、どちらがいい?」
「うーん……やっぱり、女の子の友達がいい」
「そうよね。女の子の友達はたくさんできた方がいいわ。まず、変な顔をされたらこのお化粧は継母にやられたの、とちゃんと説明なさい。そしたら、女の子の友達は簡単にできるわ。その後も仲良くできるかはあなた次第だけど、あなたは性格も性質もとてもいい子。マナーもあるし思い遣りもある。きっといい友達を見つけられるわ」
「本当? 可愛くなくても、友達ができるかな?」
「もちろんよ。あなたはいい子だもの。そうね、見分けるコツを教えてあげる。継母にやられたのと言って、怒る子を大事になさい。その子はあなたの事を大事に思ってくれる子よ。そして、逆に同情してくる子とはあまり深いお話をしてはだめ。その子はやがてあなたを見下す子になるわ。……愛してるわ、シェリル。本当は少しでも可愛くしてあげたかったけれど、こんな風にして人前に立たせる私を許してね」
「もちろんよ。お母様は、つまりは見た目で私を判断する人ではなく、私の性格を判断してくれる方を選ぶように、野暮ったくしてくださったのね。いいの、私は元から可愛くないのだから、そうやって本当のお友達を見つけられれば嬉しいわ」
「あなたは本当に賢い子。頭がいい子は人に優しくできるの。常に目の前の人の気持ちを考えて。さぁ、そろそろ出かけましょう。楽しんでいらっしゃい」
「はい、お母様」
私たちのやり取りに、メイドも口を閉じるしか無かった。
どう考えても、お母様の言っていることは正しいと思う。
元から可愛くない私をちょっと飾ってみた所で、馬鹿にされて友達はできないかもしれない。
でもここまで野暮ったくされたら、さすがに元が悪くても、みんなどうしたのか気にかけるはず。そしてお母様の言う通り、私の事を野暮ったくしたお母様に怒る人は私の事を考えてくれる人。逆に、ただ同情するだけの人は、私の素顔を見ても同情して見下してくる人。
女の子の友達ができたら私は嬉しいな。ドレスは褒めてくれる子もいるかもしれない。
私のために怒ってくれる人には、ちゃんと私がお母様に大切にされてるのだと教えてあげよう。
お母様がどれだけ優しくて素敵なのか。私にとって、どれだけ愛情深い人なのか。
……試すような真似はよくないのかもしれないけれど、社交界についてのマナーもひと通りは習った。
余程身分が高くなければ、容姿や家格で安易にバカにされ、場に溶け込めなくなると習った。さすがに、私と同年代の子にそんなひねくれた子はいないと思いたいけれど。
お母様が少しでも悪く言われるのは嫌だけど、それでもお母様は私のためにやってくれた。なら、私はお母様の言葉を信じよう。
……そういえば、お母様の女友達の話を聞いたことがない。きっと文通をしたりしているのだろう。
言わないことは、聞かれたくないこと。これは、マナーとして一番最初に習った。
だから、私はお母様にお友達はいるの? なんてことは聞かない。きっと優しいお母様だから、友達はいるだろうし。
心まで野暮ったくなっちゃだめだもの。