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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第二章 姫様との新学期

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EP93.文化祭は姫の案を

 新作もよろしくお願いします。

 俺だ、江波戸蓮えばとれんだ。

 テスト順位の発表の後、二時間のLHRロングホームルームがあった。


 まあ、とりあえず序盤は普通にテスト後の席替えだった。

 去年の担任とは違って、今年の担任は普通にくじで決めるらしい…つまり、俺が他の席に行く可能性が高いというわけだ。


「くじは予め用意しといたから、出席番号順に取りにきてくれ」


 黒板には番号の書かれた座席の図…無駄に綺麗だなあの人、几帳面なのか?

 まあそれはさておき、着々とくじが引かれて机を移動することになった。


 今回の俺はまさかの廊下側の前から二番目、大移動で少しだけ絶望した。


「…あれ?隣いない…?」


 席移動の後、親睦を深めるために5分ほど自由時間が設けられる…いや、謎に親切だな。

 で、その時隣から声がした…聞き覚えのある声だ。


「いるぞ〜!よろしく頼む」


 学園の「勇者」様、若林勇翔わかばやしゆうとに大きな声で呼びかける。

 勇翔は気づいたようで、少し驚きはしていたがすぐに微笑んできた。


「よろしく。えっと…」

「一度話しただろ…江波戸蓮だ。魔女様直々にピックアップされていたやつだよ」

「…あー、君か!久しぶり!少し気になっていた相手だから隣になれて嬉しいよ」


 気になってたのなら忘れんなよ!?

 …そういえば、前まで勇翔に苦手意識はあったが今ではそんでも無いぞ…二度目の再来は無かったからな。


「江波戸さん、若林さん。いつの間に仲良くなされてたんですね」


 後ろから急に声を掛けられて体が跳ねた。


 勢いよく振り向くと、白河小夜しらかわさよが座ってこちらに微笑みかけていた。

 その微笑みを見た瞬間心臓が止まる…まさかまた近くなるとは、神様のイタズラか?


「白河さん、よろしく。近いなんて嬉しいよ」

「よっす白河。ご無沙汰だな」

「ええ。よろしくお願いします」


 軽く挨拶を交わす。

 …てか、今思ったけど勇翔って恋敵にはなるのか…要注意人物にはなりそうだな。


「みんな親睦を深めれたかー?そろそろ本題に入るぞー」


 先生が大きな声でそう言ったので前を向いた。

 そう、この時期に月曜日だけ二時間LHRが設けられるんだが、その要因となるのが…


「文化祭についてだ」


 六月下旬に行われる文化祭だ。


 この学校は部活動が活発では無いので、体育祭はそこまで大規模では無いのだが、文化祭は違う。

 クラス別で多めの予算を活用し、出し物や出店を構えて盛り上がる…本当にやかましくなるくらいに。


 で、二学期とかにやると体育祭と違って三年生が追いつかないので、基本的に一学期最後にやるのがこの学校での常識だ。


 で、先生のその宣言でもうクラスは大盛り上がり…特に陽キャがな。

 勇翔や小夜はそんなキャラではないので大人しいが、勇翔は楽しみにしてそうな横顔が伺える。


 まあなんやかんやで文化祭は俺も楽しみだったりはする…店回るのも作業するのも誰にも気づかれないがな!


「じゃあ、学級委員の二人は前に出てくれ」


 先生がそういうと、真面目そうに見えるまだ陽キャの部類の男女が前に出てきた。

 男子が聞き取りやすい声でどうするかを聞き、女子がチョークを装備して黒板に当てている。


「はい!」

「はい、鬼辻おにつじ


 すげえ珍しい名前だな…そういや四位のやつか。


「お化け屋敷がいいだろう。教室の位置的に結構集まりやすい位置にあるから、定番のもので行きたいのだ」


 …いや、すまん却下。

 それ小夜絶対ビビるから…EP79チェックな。


「はい」

「はい。黒神」


 黒神零くろかみれい…すげえ席遠いな。

 零の席は窓際1番前だった。


「集まりやすいのならカフェとかどうだ。休憩所として、使いやすく飾り付けもしよう」

「それならはい!」


 すまん、名前わからんけどとりあえずチャラそうな男子が立ち上がった。

 …でもまあ、カフェか…いいな、コーヒーも進む。


「それならメイド喫茶がいい!」


 どこの思春期男子だよお前は…いや思春期男子だけどよ。

 ほれみろ、女子達からのクレームが止まらないじゃないか。


「…まあ、どっちも入れとくね。カフェとメイド喫茶」

「…はい」


 学級委員の女子もドン引きしてんじゃねえか…

 けど、結構スラスラ出てくるなあ…こういうのって割と時間かかるイメージあったわ。


「はい」

「ん。白河」


 小夜!?まさか小夜から提案するとは…何が来るんだろうか。


「カフェもいいと思いますが、模擬レストランみたいなのもして見たいなあ…と」


 …まあたしかに悪くないかもしれないが、レストランとなると料理の腕が結構試されるくないか?

 そう思って後ろを振り向くと、小夜と目が合った。


「(蓮さんの料理を食べてみたいなあ…と思いまして)」


 毎日食ってるくないか?とは言えない…ここ学校だからな。

 んー…まあ、小夜の提案ならこれに手上げとくか。








 しばらく経って、もう少しで放課後だという頃。

 計13案がでて多数決をした結果…まさかの小夜の模擬レストランがブッチギリの一位を誇っていた。


 …周りの男子を見る限り、小夜が言うならという理由で手を挙げた人がほとんどだった。

 惚れた弱みすごすぎだろ…いや、俺もだけどさ。


「案外決まるのが早かったな、お疲れ様二人とも。今日はこのまま解散とする。ちょうどいい時間だしな」


 教師のその宣言の瞬間鐘がなった…ふう、文化祭か…多分裏で料理することになるし、練習しとくか。

 そう思って小夜に帰りを誘った俺なのであった。

 実際に鬼辻って苗字があることに驚きました…


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