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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第二章 姫様との新学期

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86/100

EP86.家族?と姫と動物園にいこう

 少しだけ短めです。

「動物園っ…!」


 ワクワク全開といった感じで、俺こと江波戸蓮えばとれんの愛しの妹、瑠愛るあがそう呟いた。

 料理対決から次の日である四連休中三日目の今日、俺らは動物園に来ていた。


 経緯としては昨日の昼食後、白河小夜しらかわさよの父親である正悟しょうごさんの提案によるものだ。


『せっかくの休日なんだし、どこか遊びに行かないかい?お金は私が持つよ』


 とのこと。


 俺は別にどこでも良かったので口出しはしなかったのだが、瑠愛と小夜が同時に『『動物園』』と答えたのだ。

 そういうわけだから、俺と瑠愛の兄妹、小夜とその両親である小朝こともさんと正悟さんの親子…計五人で動物園にきた。

 本当にどっかの核家族じゃねえのか?これ。


 ちなみに、今回のファッションチェックは省かせてもらう。

 デートでもないし、そもそもとして小夜はEP75の遊園地デートと同じお嬢様服装。

 瑠愛もEP48のお花見の時と同じく緑のオーバーオールスカートで、感想は一緒だからな。


「動物園…久しぶりにきた…」

「俺は初めてきたなあ」

「当たっていて良かったです。水族館と同じで行ったことないのなら…と思ったのでので」

「小夜…」


 EP20の時の事だろうか?…もう五ヶ月も前のことなのに…なんだか涙がちょちょ切れできたぞ。


「兄さん、動物園に来たことないの?」

「まあな」


 本当はずっと行きたかったんだが、姉貴が水族館や動物園ではなく遊園地やテーマパークの方が好きだったため、行けなかったのだ。

 なので、童心に戻ったようで俺は結構テンションが高い。


「ならなら、私がエスコートしてあげる。この動物園は昔よく行ったから」

「ありがとな。任せたぞ」


 俺の手を握って「こっち」と急かしてくる瑠愛があどけなくて、とても可愛い。

 手を引かれながらも、俺は頬が緩んでそう思った。






「すげえ…チンパンジー初めて見た…」


 俺は今…猛烈に感動している…

 人間の御先祖様として一番近い存在であるチンパンジー…初めて見たぞ…


「ふふ。まさかの一番最初に行きたいところがチンパンジーとは」

「結構マイナーなチョイス。面白いけど」


 今回は俺が動物園に来るのが初、ということで優先的に行きたいところをお願いさせてもらっている。

 そこで俺が入園した瞬間に言ったのがチンパンジー、実際に来たがテンションがかなり高い俺を見て小夜と瑠愛が苦笑している。


「チンパンジーの動きって面白いわよねえ〜。とても器用…あの関節の動き方、参考になりそうねえ…」

「なんの話ですか?」

「服よ服。もうそろそろ動きやすいインナーウェアが必要なのよ〜」


 さっきから喋っていなかった小朝さんの言葉を聞いて、俺は少し混乱した。

 動物園に来てまでその情報を収集するのか…


「小朝さんはデザイナーといってもとても幅広く務めていてね。我が家の大黒柱だよ」

「正悟さんは仕事はしてないんですか?」

「してるよ、共働きなんだ。けど、小朝さんの方が忙しいから、私の方が家事を担っている」


 男女共同参画社会基本法があったとしても「男は仕事、女は家事」という文化が少し抜けきれていない日本では結構珍しいと思った。

 そもそも、小夜の誕生日…EP52の時に来たのが小朝さんだったので、それも相まって驚いた。


「誕生日はお父さんの仕事の都合ですね。お父さんもそこそこお偉いさんなので、春は特に忙しいのです」

「心読まないでくれるか…?まあ、なるほどな」


 小夜の家族のことが色々分かるなあ…


「(なんだい?江波戸くん。付き合うからには家族との仲を深めてから…という感じかい?)」

「いきなりそういう憶測やめてもらっていいですか!?」


 てかそれ付き合うより上の関係に片足突っ込んでるよな!?俺別にそういうつもりじゃなかったんだが!?


「(まあまあ。小朝さんはともかく、私は今のところ大歓迎だから色々聞いてくれるといい。連絡先交換しとくかい?)」


 恋に悩む男と好きな相手の父親の会話って、こう見ると色々違和感すごいな…

 ただ、たしかに小夜の事についてまだ知りたいことはあるので連絡先の件については頷いた。


「さっきから何を小声で話し合ってるのです?」

「いや、なんでもないよ」

「?」


 小夜がこちらを見てくるが、心を読まれかねないので俺は真顔で頷いた。


「その真顔が怪しいです…」

「逆に俺はどんな表情をすればいいんだよ…」

「笑顔…ですかね?」


 そう言われたので素直に笑顔を作る。

 あまり慣れないことではあるのだが…変だったら絶対に寝込んでやる。


「兄さんの笑顔素敵」

「ですね!」


 それなら良かった…


「愛されてるわね〜江波戸くん」

「ふふ、そうだね」

「何か言いましたか?」

「「なんでも」」

「?」


 二人の作ったような笑顔に俺は首を傾げる。

 まあともかく、この笑顔を崩さないように意識しながら、俺は次に見に行きたいところを提案したのだった。

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