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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第二章 姫様との新学期

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EP81.遊園地と姫と楽しんで

 俺だ、江波戸蓮えばとれんだ。

 昼飯を食ってから、俺と白河小夜しらかわさよは色々なアトラクションを楽しみ、あっという間に時は過ぎていった。


 余談が二つ、あれ以降もナンパは全く来なかった…奇跡じゃね?

 そして、結局あれ以降ジェットコースターを13回乗らされて計20回乗った…まって、気持ち悪──


 ……吐きはしなかったが、そんなこんなで日も傾き始めた頃である。


「時間というのは短いものですね…」

「だな。そろそろあれが始まる頃だし、行くか?」


 ''あれ''とは、この遊園地が閉まるまでの30分間に毎日やっているイルミネーションの事だ。

 光らせる色や組み方が絶妙で、密かに話題になっているものである。


「そうですね…早めに場所を確保しておきたいですし、行きましょうか」

「わかった」


 そういって、最後に乗っていたジェットコースターの施設から歩き出した俺ら。

 昼飯前の出来事から、自然に二つの手は繋がれるようになっていた。


「今更かもしれないんですけど、私達って友達の関係なんですよね?」

「あー…そうだな」


 ひっさしぶりに聞いたわ…最近色々ありすぎて実感がなかったが、そういや俺とこいつの関係って友達だったんだよな。


 EP14の時だ、あれからもう5ヶ月なんだよな…あの時は俺は小夜の事をまだ邪険にやってたよなあ…

 あれからもうこんなに状態とは、距離が一気に縮まったもんだ…まあ、今の俺となっては嬉しいことなのは、言うまでもないがな。


「異性の友達って…手を繋いだりするんでしょうか?」

「………」


 …言われてみれば確かにそうかもしれん。


 というか、今更思い出したんだけど…EP46のオスカーの名言、あれって割と本当なのでは…?

 あ、やべ、暫く姉貴に顔向けできねえわ。


 じゃなくて。


「んー…まあたしかに友達ではあっても、それ以上ではあるかもな…」


 やべえ、自分で言ってて顔熱くなってきた…友達という言い訳が出来なくなった瞬間だ。

 夕日のせいなのか分からんが、小夜の頬も心做しか赤く感じる。


「友達以上…恋人未満…って感じでしょうか?」

「そう…だな。それでいうと俺たちの関係って曖昧だよな」

「ふふ、そうですね」

「おう」


 二人して笑って誤魔化してるけどよ…小夜お前急に顔真っ赤になったな!?

 あ、勿論''二人して''だから俺も人のこと言えないのは重々承知してるぞ。


「…急にそんなこと聞いてきたが、やっぱり手は離した方がいいのか?」


 恋人でもないのに…とか言われたら俺ショックで3日は寝込む自信ある。

 が、やっぱり不安なので弱気に聞いてみると…小夜は勢いよく顔を横に降ってくれた。

 髪がとんでもない勢いで揺れているが、とても嬉しく思った俺である。


「そんなことないですっ…少しだけ、気になっただけですので」

「…そうか…」


 あかん、なんか気まずくなった。

 …でもまあ、心地のいい雰囲気だからこのままでいいかもな。








 イルミネーションがよく見える広場にきて、俺たちは空いているベンチに腰掛けた。

 二つの手はやっぱり握られていて、少しだけ冷たくなった風が気にならないほど暖かい。


「今日、楽しかったですね」

「そうだな。すげえ有意義な一日だった」


 楽しいこともそうだが…俺の本心としては、小夜との距離が一気に縮まった気がすることに対して、有意義だと思っている。

 事故ではあるものの体がくっついても、小夜は嫌がらないでいてくれたし、寧ろ手を繋いでくれたので、俺としては大満足だった。


 …実を言うと、恋愛的好意はワンチャンだけあるように思ぅているんだが…確証が持てないから、根性は俺を動かしてくれない。

 もう少しだけ、様子を見ようとしている今現在である。


 少しするとイルミネーションが始まり、あたり一面が光に包まれた。

 他の客達も感嘆の声が上がり、やはり隣の小夜も光にその蒼い瞳を吸い寄せられていた。


「…懐かしいな、イルミネーション」

「そうですね…あの時もそうでしたが、やっぱり綺麗です」

「そうだな」


 本当に懐かしいよなあ…水族館のお出かけ。

 俺はEP25の時に観覧車の上から眺めたイルミネーションと、今見ているイルミネーションを重ねる。


 あの時も、今も…隣には小夜がいる。

 あの時は何も思わなかったが、今はそれが本当に嬉しい…これからも続いてくれればほしいとも、密かに…強く思う。







 イルミネーションの時間もあっという間で、俺たちは電車に乗り、帰路に着く。

 社会人の帰宅より少し遅い時間のためか、行きと違って席は空いていた。


 俺と小夜は二人並んで腰を下ろす。

 やっぱりこの時も、手は繋がれたままである。


 電車に揺らされ、静かな時間が続く。

 しかし、そんな時間が心地よい…俺はその心地良さを心の中に噛み締めていた。


 途端に、肩に重力がかかった。

 薄々その正体を分かりつつも、俺は横目で確認する。


 やっぱり小夜である。

 小夜は疲労が溜まったのか、睡魔に負けてしまったようで、俺の肩に頭を乗せていた。


 甘い匂いが鼻腔を擽り、心臓がうるさくなるが…俺はそのまま小夜を寝かせて、電車の音を聞き続けたのだった…

 これにて遊園地デートは終わりです。


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