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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第二章 姫様との新学期

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60/100

EP60.今日から始まる姫との生活

 2本目です。

 次の日になった。


 俺こと江波戸蓮えばとれんは、今日一日中、落ち着くことが出来ずに授業を受けていた。

 だってあれだぞ…?好きな相手と今日から毎日晩飯を共にするんだぞ…?

 あかん、そう考えると早くも俺のキャパが…


 てか今思ったんだが、下校中の買い出しも一緒ってことはつまり…毎日姫と一緒に下校することにも繋がるんじゃね…?


 …………え、なんだ、今から俺はどこに向かって言うんだ?

 最近色々と急展開になりすぎて俺追いつかないぞ…?








 そんなこんなで今日の授業が終わり、放課後になった。


「あの、行きましょうか。江波戸さん」


 教材をカバンに詰めて席を立つと、早速白河小夜(しらかわさよ)がこちらにやって来た。

 男共に絡まれないのかとは思ったが、今日は大丈夫だったらしい。

 …にしても…


「えっとな…一応これから毎日一緒に帰ることになってしまうんだし、もう名前呼びでもいいぞ…」


 さすがにやりずらいだろうし、話す機会が増えてもそんなに噂が経ってないし…

 …本音を言ってしまうとなんとなく学校でも言って欲しいし…

 そんな気持ちで承諾をすると小夜は目を丸くさせ、みるみるうちに頬が緩んでいった。


「わかりました!蓮さんっ」

「いや大声は辞めろ?あと、零以外と話してる時にもやめて貰えると助かる…」


 零には名前呼びはバレてるが…さすがに他にバレるとなると大騒ぎになるのは目に見えているからな。

 少し警戒しないといけないのは俺も残念だとは思うが、我慢して欲しい。


「あ、はい…でも、嬉しいです。蓮さんっ」


 ぴょんぴょんと跳ねそうな勢いで上機嫌になっている小夜。

 そんな小夜を見てると、癒されてる俺がいたのだった。







 あの後、二人でスーパーに向かった。

 カゴをとってカートにセットし、さあ買い出し開始だと歩きだそうとしたら、小夜に呼び止められた。


「折半をすることになったので、新しい財布を用意しました」


 そう言って、小夜は紫色の長財布を取り出した。

 え?ちょっとまって?新しい…だと?



「え、買ったの?」

「はい。折半といっても半分ずつ出すのはやりずらいですし、共同で使う財布を…と思ったのですが…」

「え…ちょっとまって、小夜の家って金持ちなのか?」

「いきなりどうしたんですか?」


 いや、財布ってそこそこ高いし、そう易々と用意できる物品じゃないだろ…

 小夜は首を傾げるだけだ…俺と金銭感覚割と違うのか?


「その財布いくらだったんだ?」

「あ、半分払うといいだしそうな顔ですね。いいですよ、教えませんっ」


 ぷいっと顔を逸らされてしまった。

 ううむ…まあいいか。

 少し申し訳ないが、ここで強く出ても意味なさそうだし。


「…わかったよ、じゃあ先に金を入れとくか。樋口氏(5000円)を1枚ずつ入れて、少なくなったら補充って形でいいか?」

「はい。わかりました」


 それぞれ札を取り出して長財布に入れる。

 まあ、一応5000円にしたけどそんなに激しく消費しないと思うから、暫くは補充しなさそうだが。


「じゃ、行きましょう!」

「そうだな」


 カートを漕ぎ、俺ら二人は雑談しながらショッピングを楽しんだ。

 …うーむ。






 買い物が終わり、小夜の部屋にて料理教室を開始した。

 以前に妹の提案による料理教室をしてから、腕がどれだけ上がっているかを確かめるためにカレーにしてみたのだが、かなり手際よく作業を進めていて驚いた。


「随分と上達してるじゃないか」

「ありがとうございます。しかし、蓮さんにはまだまだ及びませんよ」

「ありがとよ」


 ここは素直に受け取っとく。

 謙虚になっても、今回は料理教室という目的だし、やる意味が無くなって直ぐに終わっちまうからな。

 欲望に正直な俺だった。


 あっという間にカレーが出来上がり、皿を取り出して盛り付ける。

 とろっとした感触で白ご飯にかけられていくルウはとても美味しそうだ。


 「「いただきます」」と二人で手を合わせた。

 ルウと米の境目あたりを掬い、口へ運ぶ。


 小夜は器用なので具の大きさもちょうど良く、はちみつでとろみが増え、米はもちもちで食感は最高。

 炒めた時間もちょうど良く、ルウの辛さとはちみつの甘さも絶妙にあわさって味も申し分無し。


 正直いうと、文句はひとつもない。


「うめえ…」

「ふふ、ありがとうございます」


 二人で作ったものであるが、野菜を切ったり炒めたりする作業は大体小夜がこなし、俺は調味料で味の調整をしたり米を研いだりしてただけなので、ほぼ小夜が作ったと言っても過言ではない。

 …なんか小夜が作ったと考えたらより美味しさが増した気がする。


 パクパクとスプーンが止まることはなく、気がつくとカレーを平らげていた。

 でも、晩飯食って直ぐに帰るのもアレだよな?な?

 そんなわけで二人でソファに座って寛いだ。

 予習復習をしたり本を読んだり、時々雑談をしたりとゆっくりした時間は、俺にとってはかなり心地よいものであった。


 そんな時間はすぐに過ぎていくもので、いい時間になったので俺は荷物を持って玄関に向かう。

 すると、小夜がトコトコと小走りでついてきた。


「今日はありがとうございました。明日からもよろしくお願いします」

「おう、また明日な」


 手を振って別れの挨拶をし、俺は小夜の部屋を出た。

 うーむ…俺は一人、こう呟いた。


「何この新婚生活…」


 まだ付き合ってもいないが、さすがにこういう生活が毎日続くとなると…幸せすぎないか?俺。

 明日からの生活も楽しみにして、俺は上機嫌に部屋に戻った。

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 距離が急に縮んでる気がしますが…まあ、一応ゆっくりと、じれじれとさせて行きたいと思ってますのでご安心を。

 これまだ序章に過ぎないので…はは。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうなんだろ? 流石に両親に認識されないと、出産から乳幼児にかけてどっかで死んでると思うけど 後、出産時の病院関係者 差別した祖父母には見えてたから幼少期はそれで乗り切ったとかじゃないと流…
[良い点] 夫婦ゃん…
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