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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第二章 姫様との新学期

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58/100

EP58.今日の日は姫の甘〜いお菓子を

 ほぼポッキーの日SSです、一応時間軸は始業式の次の日ですのでご了承を。

 評価600超えてたんですけど…なんでだろ…


 夜更新日間ジャンル別ランキング、20位ありがとうございます!

 始業式の次の日の話だ。


 俺こと江波戸蓮えばとれんは晩飯後、いつものようにベランダでコーヒーでも啜りながら、参考書を読んでいた。

 しかし、少し気になっていることがある。


「何を食べてるんだ?」


 同じくベランダに出ていた白河小夜しらかわさよ、何やら棒状のものを食べていた。

 若干遠いし光の加減で良く見えないが…サクッと音をならしながら食べているところから、菓子なのは想像できる。

 しかし、小夜が菓子を食うってのはかなり珍しいことだ。


「これですね」


 小夜が近づいて、その菓子が入っている赤い箱を見せてくる。

 こちらも近づいて見てみると、某1111の日に食べる棒状のお菓子だった。


「何故これを?」

「この前にお母さんが大量に持ってきたんですよ。放っておいたら勿体ないので、一日一日少しずつ食べています」


 甘いものを大量って…あの人の体型で全く想像できないな…

 それにしても、一日一日少しずつ…ねえ。


「毎日食べてると太らないか?」

「一応心配ではありますが、昔から食べてもあまり太らないので、そこまで気にしてないです」


 あーあれか、例の理想体質。

 小夜の胸部を見ると…いやガン見はしてないからな…で、見ると、たしかにそういう体質なのも頷ける。

 俺の体質と比べてかなりいいな、少し羨ましいものだ。


「食べます?」

「そんなに沢山あるのなら貰っとくか」


 個人的にこの菓子は甘さは、まだ控えめだと思う。

 というか、ケーキはギリギリ耐えれるしまだ好ましいと思える部類だ。


「わかりました。それでは…」


 小夜が箱から一本取り出して、俺の口元に向ける。

 俺がそれを手で取ろうとすると、ヒョイッと交わされた。


「おい?」

「触れてしまうと参考書が汚れてしまいますので」

「えーっと…」

「どうぞ」


 わかった!わかったから頬に突くな!逆に汚れるわ!

 いやしかしな…それって世間で言うところの[あ〜…まてまて、煩悩退散だ…


 いくら好きな相手だとしても、やましい気持ちはやめた方がいいよな。

 うーゆでも、嬉しさと羞恥が勝つんだよなあ…


「…要らないんですか?」


 そう言って小夜は自分の口へとそれを運ぶ。

 同時に箱を揺らしているが、中から音は聞こえなかった。


「いや、貰う」


 考えるより先に言葉が出るとはこの事だった。

 俺、単純すぎない?


 小夜は微笑んだ、なんだかいつもより柔らかい。

 色々な意味でかなり心臓がうるさいが…ええい!こういうのは思い切りが大事なんだ!


 俺は菓子を頬張った。

 歯に力を入れると「サクッ」と気持ちのいい音が鳴り響く。



 ……………………あっっっま………



 口元を抑えて顔が熱くなるのを感じていると、小夜は俺が食べた菓子の残りを更に押し付けてくる。

 …俺はもうヤケクソで食いついた。


 ハムハムハム…っと勢いよく菓子に連続で食いつく。

 しかしここで、目を瞑ってしまったのが悪かったのかもしれない。


「ひゃっ…」

「んむ?」


 小夜からなんか変な声出たし…なんか急に菓子が太くなったな。

 ゆっくりと目を開けると、目の前には小夜が顔を赤らめていた。


 加えているものを確認しようと視線を外すと、手の甲が見え…は?手の甲?


「あの…早く離して(・・・)ください…」

「……ッ!?!?」


 少しだけ思考停止したが、直に言葉の意味を理解すると、俺は慌てて飛び退く。

 すると、俺と…小夜の指の間に、透明でヌメリとした糸が現れ、重力に従ってゆっくりと落ちていった。


「わわわわわわわわ悪い!!!!!?????」


 もう大混乱の俺は、慌てて頭を下げた。

 多分105度くらい下げてる、割と腰痛い。


「だだだ大丈夫でしゅ!あちゃ…あ、頭をあげてください!」


 めっちゃ噛んでるし大丈夫かよ…顔が熱くて上手く頭が回らない俺が言えた立場ではないが。

 慌ててサイドテーブルに置いてあったタオルを、小夜に投げ渡す。


 小夜はタオルを受け取ったはいいが、暫く指を見つめていた。

 その顔はゆでダコのように赤く、碧眼はとろんとしていてだらしない。

 そんな表情をされると俺はなんて言えばいいかわからなくなる。


「……………は、早く拭けよ…いや、あの。本当にすまんかった」


 言うべき言葉が頭によぎる度、それを口にする。

 小夜はタオルを握り、首を振った。


「いえ、私の方こそ少し調子に乗りすぎてしまいました…あの、お菓子はどうでしたか?」


 小夜は俯き、上目遣いで聞いてくる。

 やめろ!俺もうキャパシティオーバーしてるからな!?


 と、とりあえず俺は、奥歯を噛み締めて1回落ち着いた。


「…甘かったし、美味かったよ…さんきゅ…」


 …冷静を装えていたかは分からないが、ここに居たままだと大分気まずいのは目に見えている。

 俺は「じゃあな」と行って、部屋に戻った。



 その時に甘さを紛らわそうとして飲んだコーヒーは、ブラックのはずなのにこれまで飲んできた飲み物の中で一番甘くて…

 この日、俺は全く眠れなかった。

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 追記:第一章その2に関して

 カクヨム投稿の関係で少し改稿ました。

 内容自体はほとんど変わっていないです。

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