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ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける  作者: さーど
第一章その4 なぜか姫様との接触が増えた

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55/100

EP55.姫と新学期に向けて

 日間順位が79位にまで上がっていました。

 本当にありがとうございます!

「…悪かったな。情けないとこを見せて」


 俺こと江波戸蓮えばとれんは、白河小夜しらかわさよに過去の話をして、少しばかり気持ちを吐き出していた。

 しかしながら、仮にも女の小夜に泣きつくのは全くもって情けない…


 しかし、羞恥と屈辱は消えて少し楽な気分ではあった。

 昔のことも、大半はどうでも良くなった。


「いえいえ、大丈夫ですよ。それにしても可愛らしかったです」

「なっ…」


 くっ!別の意味で屈辱を感じることになろうとは…

 ここは話を逸らしたい俺は、舌打ちしながらももう始まる新学期について切り出す。


「…はあ、もう二年生だと思うと、時の流れが早く感じるな」

「おっと、無理矢理逸らしましたね?でも、そうですね。蓮さんと会ってもう7ヶ月と思うと、確かに時の流れが早く感じます」


 …………なあ、こいつは俺をどうしたいんだ?

 最初核心突いてくるし、例えがなんとも言えないむず痒さを感じるものだし。

 …ん?そういえば7ヶ月前と言うと…


「小夜、少しいいか?」

「なんですか?蓮さん」

「7ヶ月前なんだが、なんであんな所で突っ立ってたんだ?それも傘もささずに」


 よくよく考えたらずっと気になってなかった俺も俺だけどな。

 あーでも、重い事情ならそんなに深く聞く必要は無いか…しくったな。


「あれですか?あそこで女子生徒の方にいじめられた後だったのですよ」

「お、おう。それは災難だったな」


 やっぱり聞いたことに後悔してしまったよ…

 というか、なんでそんな軽く流してるんだ?結構重要じゃないか?


「まあ、たしかに災難だったかもですね。傘を奪われ、暴力振るわれ…最終的には立つことが精一杯の状態でした…」

「もういいから…!無理に思い出さなくていいから!」


 聞いてるこっちが辛くなってくるわ!

 姫も大変だな…


 そう思ってたんだが、小夜は言葉を止めなかった。


「でも、立つことに精一杯でどうしようかと少し放心状態だった私に、蓮さんがあの傘を渡してくれたのですよ」

「お、おう。そうなのか…」

「ええ、それで蓮さんと出会えたのですし、私としてはとても良かったと思っています」


 良くはなかったんじゃないのか…と思わなくもない。

 平穏と出会いのどっちが大切かって問われたとしたら、俺は平穏を選ぶ。

 それも俺みたいなやつと出会いって…ねえ?


「それに、その虐めを止めてくださったのは蓮さん。あなたなのですよ?」

「うん?」

「あれからも私、数日連続で虐められていたんですよね」

「ええ…」


 俺は絶句した。

 え、なにその地獄…俺だったら多分耐えられないと思う。

 よく頑張ったなこいつ。


「まあ、それだけ私に告白してきた男性が人気だったからでしょうけど…」

「そうなのか。ちなみに告白してきたやつの名前は?」

「若林さんですね」

「あ〜いたな、そんなやつ」


 さすがにその名前は知っている、本名は若林勇翔わかばやしゆうと

 かなりのイケメンで、魔王様と同等レベルで女子に人気らしい。


 あだ名は「勇者」、理由はスポーツの天才なのと勇翔という名前から…らしいが、まあ話したこともないやつだし別にいいか。

 てかうちの学校、人気なやつにあだ名付けんの好きすぎね?


「蓮さん、あの日を覚えていますか?」

「うん?」


 そういえば、俺が助けたとか何とか…そんなことした覚えは…ん?ちょっと待って、あー。


「…あれか、看病してくれた二日後の月曜日」

「鮮明に日付を覚えすぎでは…?」


 詳しくはEP4をチェックだ。


「ま、まあそれです。あれから虐めが止まったので本当に感謝してるんですよ?」

「それは素直にどういたしまして。本当に偶然だがな」

「ふふ」


 上機嫌に笑う小夜。

 俺は一瞬その笑顔に見とれてしまっていたが、直ぐに頭を振って気持ちを切り替える。


「それはそうと…さっきの話、新学期が始まるが、新学期の抱負は何かあるのか?」

「そこは新年でなく?」

「いいだろ別に」


 細かいことは気にするな、と言われたことは無いのだろうかね。

 「そうですね…」と唇に指を当てて考える小夜。


 考えついたのか、両手を合わせてこちらを向いて微笑んだ。


「蓮さんともっと仲良くなる事ですかね」

「お、おう…そんなのでいいのか?学業とかは?」

「それも大事ですけど、私って友情関係に乏しいので、今年はそれを頑張りたいところです」

「そういうことな」


 一瞬ビックリしたじゃねえか…

 小夜は微笑みを崩さず、「はい」と言った。


「そういう蓮さんの新学期の抱負はというと?」

「俺か?そうだな〜」


 正直これまでなんのやる気もなく生活してきたんだが…今となっては少し違ってくるし、何かに努力するのもいいかもしれないな。

 何かに頑張ろうとしてる自分に多少驚きつつも…少し変わった答えが頭に思い浮かんだ。


「平穏な日常で暮らすことだな」

「いつも通りでは?」

「いつも通りがいいんだよ」


 努力するのもいいかもといいながら日常を求める俺…まあでも、日常は崩れないことが一番だからな。


「あの、その日常って私も入っているんでしょうか?」


 一瞬、心臓が跳ねた。

 どうなんだろうか…かれこれ会って7ヶ月、少しずつ日常に小夜が馴染んだ気がしなくもなくも…


「…入ってるんじゃないのか…?わからないが…」

「それなら良かったです」


 安堵したような、それでいて満面の笑みをする小夜。

 …なぜだ?先程から心臓の音がうるさい気がするんだが…


「では、新学期もよろしくお願いしますね?蓮さん?」

「お、おう…」


 …はあ、さてさて、新学期も姫様と関わっていくことが確定してしまったんだが…


 …不思議と嫌な気分ではない、それは何故か。

 もちろん自分ではわかっている。





 …''小夜に恋をしてしまった''かもしれないからだ。





 …しかし俺は、この気持ちをしばらく表に出すつもりはあまり無かった。


〜第一章 Fin〜



 ということで、いかがだったでしょうか?

 あまり締め方が上手くないかもしれませんけど、とりあえず第一章は完結です。

 これからも投稿を頑張っていきますので、どうか「ほぼ存在しない俺を、学園の姫だけは見つける」をよろしくお願いします。


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