EP51.姫やみんなと読書会
俺だ、江波戸蓮だ。
あれから料理教室を続け、三人の料理がかなり上達してきた。
しかし、ついに今日に双子の姉の江波戸凛、愛しの妹の江波戸瑠愛が帰ってしまうのだ。
俺は寂しくて涙がちょちょ切れているが、一生会えない訳では無いので何とか我慢している。
で、最終日の今日、みんなでやることは…
「なんで読書会なんだ…?」
読書会だった。
ちなみに瑠愛からの提案で、凛も何故かナチュラルにいる白河小夜も賛成、俺はもちろん読書は嫌いでは無いので賛成…なのだがな?
なんというか…その…
「いつも通りだな…」
「いつも通りだね〜」
「いつも通り」
「いつも通りですね」
そう、四人でのんびりと過ごしているってのはこの一週間ずっとのことだ。
しかし、全員そう思うなら、違うことやっても良かった気がしなくも無いのは言わないでおく。
でもまあ、するからにはさっそく俺の部屋でそれぞれ本を読み始めた。
ダイニングテーブルに座り、恋愛小説を読んでニヤニヤしたり口を手で押えて悶えていたりする俺。
同じくダイニングテーブル、そして同じく恋愛小説を読み顔が赤くなって蒸発してる小夜。
ソファに座り、異世界ファンタジー物の小説を読んで面白いのか時々笑ってる凛。
同じくソファ、こちらは推理小説をよんで終始無言になってる瑠愛。
こんな形になった。
これがなんとも言えない心地良さがある。
暖かくなってきた季節、という事もあるのだが、ポカポカとした安心感が体に身に染みる。
俺からすれば寝るほどのものではしないが…しかし、瑠愛はもう寝ている。
瑠愛は隣に座っている凛の腿を枕にして、儚げな寝息をたてていた。
大変可愛らしいのだが…正直、今の俺は悶えて悶えて仕方が無いのでそちらに集中できない。
「蓮さん…」
「うるせえ…後で読んでみろ…」
「はい…」
小夜も顔を赤くしたまま…というか多分俺も赤いと思う、熱いし。
個人的にだが傑作を見つけてしまったのだ…買ってよかった…
「しかし思うのですが、こういうのって吊り橋効果…になりませんか?」
「はあ?なぜ今の状況が吊り橋効果になるんだ」
「二人とも今はドキドキしている状況でしょう?」
まあ、うん。
顔熱くなってるし全く否定できない、俺は渋々といった感じで頷く。
「なので、それを目の前にいる異性への恋心へと錯覚してしまうかもしれませんね」
「なっ…いや、馬鹿を言うな。誰が…」
「ふふ。すみません」
意地悪く笑う小夜、顔は真っ赤なので全くムカつかないのがなんとも…って感じだ。
俺はため息を吐いて未だにドキドキしている心臓を落ち着かせ、読んでいる小説に視線を戻した。
暫くして、日が落ちてきた頃。
「ふぁ〜ぁ…あれ?私寝てたの…?」
「寝てたよ〜。いい寝顔だったね」
瑠愛が起きて、凛が頭を撫でる。
瑠愛はキョロキョロして周りの状況を把握しているらしい、直にこちらに視線を向けると、首を傾げた。
「えっと…兄さんと小夜さん、どうしたの?」
困惑するのも無理はないと思う。
だって俺ら、二人ともダイニングテーブルに突っ伏してるからな!
顔から湯気が出ているし、恐らく少し見えている耳は真っ赤であろう。
二人とも、恋愛小説の感想をちょいちょい言い合ってたのだが、少し危険な冗談とか交えたら撃沈してしまったのだ。
ちなみに先に撃沈したのは俺、それで冗談が過ぎたのに気づいた小夜が後から撃沈し、今の状況である。
「イチャイチャしててあ〜なったのよ〜、ふふっ」
「イチャイチャしてねえよ!」
ばっと顔を上げて凛を睨む。
凛はへらへらと笑い、「またまた〜」と流してくる。
ちっ…なんでこうなったんだ…
「えっと…兄さんと小夜さん、やっぱり付き合ってるんだよね?」
「だから付き合ってねえよ!?」
はあ…なんか、どっと疲れた。
まあ、瑠愛の寝顔は可愛かったけどさ…
夜になって晩飯を済ました後、瑠愛と凛が実家に帰るため、駅に送っていった。
「瑠愛…うぅ…瑠愛…」
「蓮?気持ちはわかるけど、あたしの時と反応違わなすぎない?」
「うん?なんの事だ?」
なんか殺気を感じたから直ぐに誤魔化したんだが…足をグリグリと踏まれてしまった。
痛えなあ……すごく痛えなあ…
「兄さんに会えてよかった。ありがとう」
「おう。またGWとか夏休みにこいよな」
「うん!」
可愛い、天使だ…
俺は最後に瑠愛を撫でておいた。
「お世話になりました」
「こっちこそだよ小夜ちゃん!蓮の事よろしく!」
「はい。任せてください」
「おい?」
ちょっと待てよ、逆に俺が小夜に世話焼いてると思うんだが?おすそ分けとかな?
…まあいいや、こういうの訂正した時の凛の反論って結構疲れるしな。
「それじゃ帰るね!次多分夏休みになると思う!」
「お〜、待っとく」
「ありがとうございました〜」
手を振って別れの挨拶を済ます。
瑠愛と凛の姿が見えなくなったので、俺たちは帰路に着いた。
「それにしても…すみません」
「いや…大丈夫だ…」
また顔が熱いくなってきたので、俺はそっぽをむいていた。
ったく…すぎた冗談はやめて欲しいものだ。
よろしければ評価、ブックマークをぽちっとお願いします。




