野球小僧-63
1塁を駆け抜けていた亮は、あまりの歓声に何が起こったのか戸惑っていた。自分はアウトにはならなかった、ボールがどこに飛んだのかわからなかったけど。
おそるおそる1塁へ戻って来ようとすると、ベンチのほうからチームメイトが駆けて来た。一瞬、ごめんなさい、と謝ろうとした亮にサンディが飛びついて抱きしめた。
「リョウ!ナイスバッティング!」サンディ
続いて山本が、サンディの腕の中でもがいている亮の頭をどつきまわした。
「このチビ、やりやがって!俺の出番がないじゃねえか!」山本
亮は訳がわからずに言った。
「どうしたの?…勝ったの?」
「バカヤロウ!見てなかったのか!このバカ!」山本
またどつきまわす山本からサンディは庇ってくれた。ふりまわされた亮のちょうど目の前にいた小林が言った。
「先輩、勝ったんですよ。リョウ先輩のタイムリーで」小林
「ホントに?」
「ホントだよ、大木ィ」高松
半信半疑ながら、みんなにもみくちゃにされる間にじわじわと喜びが沸いてきた。
勝ったんだ、打ったんだ、打てたんだ。
小突かれて、つつかれて、蹴られながら亮はホームへ戻ってきた。整列の挨拶もそこそこに、勝った愛球会のメンバーは、また亮をもみくちゃにし始めた。痛い痛いと言いながらも、亮は嬉しかった。勝ったことの喜びよりも、遅れていた落ちこぼれの自分が、ようやくみんなと一緒になれたことを喜んでいた。




