野球小僧-37
待望のはずの日曜日。朝から好天で暑いくらいだった。亮の気分は晴れていなかった。みんなの気分が高揚すればするほど、亮は時間の流れが遅くなったかのように、ずっと後ろから眺めている気分だった。
当初、困惑していた連中も、心の奥底にあった野球部に対する対抗心が次第にあらわになってきて、打倒野球部!という掛け声まで飛び出すようになった。そして今まで以上に活気が現れてきたときには、もう亮は蚊帳の外だった。亮にはどうしても対抗心が生まれてこなかった。野球部と試合することが怖かったのも理由のひとつだった。今の愛球会のメンバーを見ると、かなり上手い連中が集まっている。その上手い連中よりまだ上手い選手がレギュラーをなしていることに、おそれを感じていた。それともうひとつ、入部を申し込んだときの監督の目が思い出されてしまい、野球部と対決することに尻込みするのだった。体力的に劣っているからと言われて、なにくそっと反発することは亮にはできなかった。今のチームでも、短距離は一番遅く、長距離も満足についていけず、腹筋も背筋も腕立て伏せも一番少ない回数しかできず、ほとんど小学生扱いされている状態で、監督と対峙するのは、怖かった。練習でも、目立ったエラーこそしなくなったが、バッティングは相変わらず空振りの連続で、このあいだのホームランがまぐれだったことがはっきりしてしまった。たぶん宮磯中との試合では、相手が亮をちっちゃいからと侮っていたおかげだと、ようやく理解できた。
午前中の練習が終わって、校庭の陰で軽い昼飯を取っていても食は進まなかった。
「亮君」
ぼんやりと顔を上げると、室が立っていた。
「なんだ、室ちゃんか」
「どうしたの?今日は、元気がないな」
「んー、そうかな」
「キンチョウ、してるの?もしかして」
「わるい?」
「いやいや、別に。こないだ、活躍したんだし、心配することないって」
「ん、まぁね。室ちゃんは、またわざわざ応援に来たの?」
「いやいや、今日は、あたくし、実況役なのじゃ」
「実況?」
「そう、今日の試合を録音したいって新聞部から頼まれて、実況あたくし室和子、解説緑川由起子先生、技術スタッフ高柳明子で、録音するのじゃ」
「まさか、校内放送で流すの?」
「それはないみたいだけど、中川君は色々と考えているからな。記録としておいておきたいんじゃろ」
「いやだな……」
「あっ、セカンドゴロ、セカンド大木君かまえて、あぁっトンネルです!、なんて」
「……g、…いやだな」




