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野球小僧-31
とぼとぼと歩いて野球部のグラウンドの横を通り抜けて帰る途中、野球部で居残り練習をしていた光明寺一郎に声を掛けられた。
「おーい、チビ」
亮はぼんやりしていて呼び止められたことに気づかなかったが、何か声がしたなと顔を上げて見ると、ネットの向こうで手を振っているイチローに気づいた。
「おい、お前、同好会だろ。今日、試合だったんだろ。勝ったのか?」
「あ、ぅん…」
「なんだ、負けたのか?」
「あ、いや……、勝ったよ…」
「なんだ、良かったじゃないか。負けたのかと思っちまったよ」
「勝ったよ…」
「なんだ、お前、チョンボでもしたのか?」
豪快に話すイチローについていけず、亮は、じゃぁと言ってそのまま立ち去った。
「おーい、なんだ、くれぇやつだな」
「兄さん、いいじゃないか、別に」
後ろから弟のジローが言った。
「だけどよぉ、強いんなら、練習試合くらいやってやるのに」
「そんなの、監督が決めることじゃないか」
「バカ言え。オレがやるって言ったらやるんだよ」
「また、無茶言って。知らないよ、どんなことになっても」
「いいじゃないか、あいつらとの練習試合くらいなら、オレにも投げるチャンスはあるさ」
「結局、それが目的か…」
「悪いか?」




