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グリーンスクール - 野球小僧  作者: 辻澤 あきら
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野球小僧-22

 ドスンという重い音が壁に響くと剛球が跳ね返ってきた。亮は驚いて目をつぶり、しゃがみこんで顔の前にグローブを差し出したが、ボールは亮の頭を通り過ぎていっただけだった。ホッとしたのはいいが、遠くまで弾けていったボールを探しにいくのが大変だった。幸い鮮やかなオレンジ色だったので、すぐに見つかった。手に取ったボールは、ずっしりと重かった。

「あー、恐かった」

 津田にもらったスーパーボールを試しに壁に投げてみた。と、一瞬で弾け、地面にワンバウンドして亮目掛けて飛んできた。投げたときの質感と壁に響いた重い音が亮を恐怖に追い込んだ。はっとして目をつぶってしまった。

「ダメだな…こんなじゃ」

 今日、次の試合が決まったと発表があった。今度は、宮磯中学が相手で、普通の野球部だということだった。今度の試合こそは、という意気込みがあって、練習も頑張った。大きなミスはしなくなったが、まだ手加減してくれているような気がしたので、素直に喜べなかった。自分の力を試してみるつもりで、スーパーボールを使ってみた。が、恐かった。

「……恐い?」

 亮は自分の言葉に驚いた。そうだ、恐いんだ。初めてのバッティング練習のときも恐かった。試合で飛んできた打球も恐かった。そうだ、恐いんだ。だったら、使おう。亮はボールを握り締めた。少し軟球より小さめだったが、ずっと重い。ゆっくりとしたフォームで壁に投げつけた。と、ボールはやはり強く跳ね返ってくる。ワンバウンド。今度はさっきより低く跳ねる。真っ直ぐに亮へ向かってきた。グローブを叩きつけるようにボールに差し出した。と、捕れた。

「…捕れた?」

手のひらがじんじんと痺れている。一瞬手首が捻られるかのような衝撃が走った、その感覚が肘まで残っている。でも、捕れた。

「よおぉし」

亮はまた投げた。ボールが跳ね返ってきた。今度はバウンドが合わずに、股の下を抜けていった。

「腰が高い!」

「グローブは下から!」

「顔をそむけるな!」

「ボールをよく見ろ!」

ずっと言われ続けた言葉が、蘇ってくる。ようやく、その言葉の意味がわかった。

「やっぱり今までの練習は手加減してくれていたんだ」

そう思いながら跳ね返ってくるボールを一回ずつ抑え込むように努力した。できるだけ、基本に忠実に、忠告を思い出しながら。


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