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七夕に願いを ― 流れ星になったオリオン ―

作者: ちゃん猫
掲載日:2020/07/12

 とある猫王様が治める王国。

 その森の中で事件は起きていた。


 「・・・もう、いい加減にして」

 「待ってくれ、アルテミス。話を聞いてくれ・・・」

 アルテミスはケリュネイアの背中にまたがり、逃走。

 どうして、オリオンはしつこいの?

 もう、私に話しかけないで欲しい。

 いったい、私はどうしたら・・・。


 そうだわ。

 王様に相談しましょう。

 こうして、アルテミスは猫王様の城を目指し、ケリュネイアに指示をする。

 「はーっ」

 ため息しか出てこない。

 (何でこうなったのだろう?)

 現在、森の中。女神様に抱きつかれている。

 (やれやれ・・・)

 この状況は・・・。


 そもそもの発端は前の日に、さかのぼる。

 とある女神様は猫王様に相談ごとを持ってきた。

 「王様、聞いて欲しいのです」

 「何事ですにゃ、我輩でよければ話を聞きますにゃ」

 「ありがとうございます。実は・・・」

 女神様は猫王様に一部始終、話した。

 「・・・そんなことがあったのですにゃ。心中察します」

 「それで、何か策を授けて欲しいのです」

 「うーん? 思いつく策は無いです。しかし、適任者を紹介しますにゃ」

 「適任者?」

 「ガットよ、大将軍を大至急呼んでくるにゃ」

 「はっ」


 私に白羽の矢が立った。明日から夏期休暇だというのに困ったものだ。ガットが執務室に入ってきた。彼が急いで執務室に入ってくるときには、ろくなことがない。どうせ王様の思いつきだ。悪い予感がする。案の定、夏期休暇は取り止めとなった。

 「大将軍、王様がお呼びです。大至急、王の間に来てもらえますか?」

 (ほらね)

 「どうしたの? 今度は何?」

 「女神様の用件のことです。ストーカーを撃退して欲しいそうです」

 「・・・それは女神様にとっては一大事だね。直ぐに行こう」

 私はガットと共に王の間へ急いだ。着くまでにガットからアルテミス様のことを教えてもらった。


 「来たにゃ。コイツが大将軍オテロです。ぼさっとしていないで、アルテミス様に挨拶するにゃ」

 「・・・どうも、初めまして。オテロと言います。なぜだか、この国の大将軍を任命されている旅の者です」

 「私は狩猟・貞淑・月の女神・アルテミスです。初めまして、オテロさん。私を助けていただけますか?」

 「はい。協力させていただきます」

 「それでは、大将軍。後は頼んだにゃ、失敗は許されないにゃ」

 (いつもこれだからな・・・)

 「私、失敗しないので・・・」と言ってやりたかったが、止めた。馬鹿馬鹿しい。それでも言いたいことがある。心の中で叫んだ。

 (夏期休暇を返せー!)


 (今回は、ストーカーを倒すだけだよな・・・)

 難しい案件ではない。でも、油断は禁物だ。ガットに残りの仕事を任せて、私は城を出発した。

 (やっと城を出れたんだ。思い切りやるぞ)

 ストーカーには申し訳ないが、手加減しないからな。私の憂さ晴らしに付き合ってもらうよ。ふふふ・・・。


 この女神様は、いつも傍にいる鹿と仲良し。時にはその背中に乗り、颯爽と狩りを行う。その姿はまるで宇宙を駆ける流れ星。そんな彼女に憧れる者は、男女問わずとても多いらしい。ガットに、そう教えてもらった。

 しかし、貞淑の女神の潔癖ぶりに、たいていの男性はアタックを諦めてしまう。

 (それにケリュネイアが蹴ってくるからね)


 ケリュネイアと呼ばれるその鹿は、黄金の角が太陽の日差しに照らされ輝く。青銅の蹄は大地を素早く駆け抜け、その速度は矢より速い。時には彼女を守るため、ボディーガードも兼任。下心を持って近づく不埒な輩には立派な角と蹴りで撃退する。

 (鹿ではストーカーを撃退できなかったのかな?)


 狩猟と貞淑を司る女神であるアルテミス様。狩猟の時には凛とした姿を見せるのだ。普段は素直で優しい、親しみやすさも感じさせる淑やかな女性。しかし、異性に対して極端に潔癖であり、気軽に口説こうとする男を嫌う。

 (過去に何かあったのかな? そんなに男を嫌わないで欲しいな)

 私も男である。下心はないが、嫌われたくない。しかし、「男好きになれ」とは言わないが、正直なところバイ菌扱いは止めて欲しい。こんな女神様を好きになるなんて、ストーカーめ!

 (ふざけるな。王様の相手だけでも大変なのに、余計な仕事を作るな!)

 私は怒りに身を震わせた。


 そのストーカーの名前はオリオン。

 彼は一人の女性と長続きしない軽薄な男。ところが、女神様と出会って恋愛観は一変したのだ。


 偶然、狩りに出かけた森で運命の出会い。彼女の夜空を写した瞳を見て、体に電流が走ったように恋に落ちた。片思いの恋。

 「これが・・・。運命の恋なのか?」

 女神様に恋をしたオリオン。すぐさま、いつもどおり、口説こうとしたところをケリュネイアの一撃を食らい、全力で拒否される。

 彼女の極端に固い貞操観念も含めて、ますます本気になったオリオンは、めげずに彼女にアタックを続けたのだった。

 そんな、しつこいオリオンにアルテミス様は嫌気をさし、王様に泣きついたという訳だ。

 (絶対にオリオンは許さないぞ。夏期休暇を奪った恨みを晴らす!)


 「いた。オテロさん。彼がオリオンです」

 それだけを言うと私の後ろに隠れた。

 「大丈夫ですか? 彼と少し話をしてきます。隠れていてもらえますか?」

 「・・・はい。よろしくお願いします」

 アルテミス様は木の陰に素早く移動。ケリュネイアと一緒に隠れた。

 (いや、ケリュネイア。お前まで隠れる必要は無いだろう・・・)


 木に、もたれ掛かり薔薇の花を口にくわえるオリオン。

 (キザな奴だな。少し痛い目をすれば、こりるだろう)

 「・・・やぁ、君がオリオンかい?」

 「そうだが・・・」

 「私の名前はオテロ。アルテミス様に、つきまとうのを止めて欲しい」

 「なぜだ! お前には関係の無い事だろう。ここから消えろ! 俺は忙しいんだ。そろそろ彼女が現れるからな。今日こそ・・・」

 (まー、分かりきっていたけど・・・)

 彼は声をあらげた。どうやらストーカーの自覚が無いらしい。

 (やれやれ・・・仕方がない)

 どうせ、話し合いにならないのは分かっている。私は手加減をしなかった。いきなり、全力の攻撃を仕掛けた。

 「カムイ無双流・天弦」

 「ガハッ」

 彼から聞こえた声はそれだけだった。キラリと空の彼方へ消えた。昼さがりの流星となったオリオン。

 (ふー、スッキリした。ゴメンよ、オリオン。文句があったら、猫王様に頼むよ)

 「アルテミス様、オリオンを排除しました。もう出てきても大丈夫ですよ」

 私は笑顔で女神様を呼んだ。

 「オテロさん、ありがとうございました」

 突然、貞淑の女神様に抱きつかれた。なぜこうなったのか?

 (先ほどまでバイ菌扱いだったよね)


 「・・・お礼がしたいから、家まで来てもらえませんか?」

 「えっ、・・・でも、迷惑でしょう?」

 私は早く帰りたかった。

 (今から帰れば、夏期休暇を取得できるハズだ)

 「迷惑だなんて・・・。是非、お礼をさせてください」

 「・・・あっ、そうだ。用事を思い出した。今日はここで失礼します」

 「待ってください。オテロさん・・・」

 私は走って帰った。ポツンと女神様達を森に残して・・・。ケリュネイア、後は頼んだ。

 (・・・ゴメンなさい)


 一方、その頃オリオンは、とある場所まで飛ばされていた。そこには、さらなる悲劇が待っていた。

 「うっ、痛い。オテロと言ったか・・・アイツは化け物か?」

 「・・・ほう、バカ弟子のことを知っているのか?」

 「だ、誰だ?」

 「ふっ、女性に名乗らせる前に自分から名乗ったらどうだ」

 「・・・失礼。俺はオリオン。狩人だ」

 「ところで、オテロが何をしたんだ。言ってみろ」

 「・・・奴に蹴り飛ばされたんだ。ちきしょう、アルテミスを口説きたかっただけなのに・・・」

 「・・・なんだ。ただのナンパか、くだらん。つきあいきれん。くらえ、カムイ無双流・天弦!」

 「な、なんで・・・グハッ」

 オリオンは西の空。夕方の空にキランと輝く流星となった。本日、二度目の流星。ダーシェの蹴りはオテロと威力が違う。カムイ無双流継承者の蹴り。

 七夕の空に星が一つ、流れた。誰もオリオンとは知らず、願い事を心の中で三回呟いたことだろう。空には天の川が見えるくらい、薄暗くなっていた。


 「師匠、何かありましたか? 声がしたんですが・・・」

 修行をしていたレムカが、心配そうに現れた。

 「あぁ、何でもない。お前は修行へ戻れ。ちょっとしたゴミを始末しただけだ。気にするな」

 「それならいいんですが・・・」

 レムカが修行に戻ろうとした。突然、師匠に呼び止められる。

 「・・・ちょっと待て、気が変わった。修行をつけてやる」

 「えっ、急にどうしたんですか?」

 「気にするな。ただの気まぐれだ」

 「よし、頑張るぞ! 師匠、いきますよ」

 「いつでもいいぞ。かかってこい!」

 レムカはダーシェに向かって攻撃を繰り出した。

 その攻撃を余裕でかわすダーシェ。

 (アイツは一人でも修行しているみたいだな。精進しろよ、バカ弟子・・・。くれぐれも身体には気をつけるんだぞ)


 一方、女神様は夜空を見上げていた。天の川が綺麗に見える。

 「ねぇ、ケリュネイア。私にも『織姫と彦星』のように素敵な恋人を見つけられるかしら・・・」

 ケリュネイアからの返事はない。

 「先ほどのオテロさん、なんてどうかしら? ケリュネイア」

 黙って傍に寄り添うケリュネイア。

 「あっ、見てケリュネイア。流れ星よ。どうかオテロさんにまた会えますように・・・」


 ― 完 ―


 オリオンから開放されたアルテミス。

 次の日、王様にお礼を言うため、再び城を訪れる。

 実はそれは口実で、オテロに会いに来たのだった。

 「大将軍から、報告受けました。無事解決してよかったですにゃ」

 「はい、王様に相談してよかったです」

 「そうでしょう。これからも頼ってくださいにゃ」

 うれしそうに照れる王様。

 笑顔でキョロキョロとするアルテミス。

 「あのー、ところで・・・。オテロさんはどちらに・・・」

 「あー、大将軍なら夏期休暇にゃ・・・」

 「・・・そうでしたか、残念。直接、お礼がしたかったのに・・・」

 「そういうことでしたら、我輩が承っておきますにゃ」

 「・・・仕方がありませんね。王様、これを皆さんで召し上がってください」

 そこにはバスケットに焼きたてクッキーが入っていた。

 「ありがたく頂戴しますにゃ」

 そこから一つ摘まむ王様。

 「う、旨いにゃ」

 「うふふ」

 喜ぶ笑顔のアルテミス。

 本当の気持ちは・・・。

 乙女心ははたして届くのだろうか・・・。

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