第1話:ウィルファ・リューク=ラス 日記 前半
<古王国 名前 使い方>
フー:風の精霊の友
ハチロウ:ツチと共にあるもの
レオルル:獅子のごときもの
ウィルファ:祝福されたもの(特に魔神に祝福を受けたものに使われやすい。主に使用される地域は西部)
リュリュ
リューク・リュというのは、古精霊語で、リュークが太陽、リュが魅力溢れる人
エラルドラというのが名字なのだが、名前の由来は神代文字で授ける者、もしくは偉大なる影だそうだ。
リューク=ラスは、女神の寵児
そこは水色の光と金色と黄色と紫を混ぜたような色が輝くランタンがあった。天井には、5時くらいの一番綺麗な夕焼け空が見えてくれる。その神殿の中には、赤色の光と青色の光の魂がふわふわと漂っている。どうやら、この二柱の存在がカミサマであるらしい。
夢の中で語りかけてくる、その二柱がワタシを生まれ変わらせてくださったお方だ。どうにも、この異世界に生まれ変わってから、五年が経過しているようだ。この五年の間に、色々な情報がわかってきた。
まず、ワタシの身の回りの環境から伝えていこう。ここに記すのは、ワタシが父様から渡された大公爵の記録用紙であるので、毎日毎日、書かないといけない。けっこう、この五千文字くらいの日記を記すのは面倒くさい。それでも、父さまが語ってくれたお話も合わせて語ってみよう。
さて、信じられないと思ってはいるが、ワタシには前世の記憶がある。父さまも、前世の記憶があるようだが、どうにも曖昧で要領を得ない。まず、前世の記憶というのについて軽く語ってみる。前世は、物語を書くことが大好きで、図書館司書になるために、努力を続けてきた。本のために生きた人間だった。
さて、物語を書いているときに、女に生まれ変わる話を書いていたことがあった。そして、女の子に生まれ変わるという現実に向き合ったときに感じてしまったのは……まさか、こんなことがあるのか。純粋な驚きとともに、こんな面白い世界、楽しみたいという私欲と、民のために尽くす父さまへの尊敬だった。
なんで、今回は父さまの物語を先に語らせていただこう。
その日は、父さまと母さまの結婚記念日ということもあって、馴れ初めが気になっていた。だからこそ、父さまに思い切って聞いてみることに決めたのだ。
「ちちさま、ははさまと、であったきっかけってなんですか?」
父さまは言葉を言っても伝わらない。いや、厳密にいえば、二人の人間にしか真意が伝わらない呪いをかけられているらしい。伯母さまも、六割もわかれば、伝えようと必死になっているときだから、わかるあの子達の方が異常。そう言っていたなあ。だから、父さまが何を言いたいのか、聞くためには母さまに聞かなければならない。
父さまは、こくりこくりと首を上下左右に揺れ動かしたり、よくわからない身振り手振りをするのだが、はっきり言おう。
何を言っているのだ?あの人は。
まあ、母さまが顔を熟れたリンゴのように真っ赤に染めて、照れ隠しをするような首振りを数分ほど続けた後、ため息をつきながら、言ってくれた。
『フーと出逢ったのは、オレがまだ幼い頃、そうウィルファの年で言うと、まだ3歳ほどの頃。オレが顔合わせをした時は、ちょうどレオレオと一緒に探検ごっこをしていた時だったから。まあ、フーに一度も勝てたことがないって言ったけど、この時からずっとだよ』
そういえば、父さまは、領民はおろか、他の大陸からも彼に相談したいとか、祝儀に参加してほしいということで、わざわざ船旅を一ヶ月間もしてくるような凄い人なのに……母さまには頭が上がらないようにしているのは……
父さまの初々しい思い出話を、ここから先は父さま目線で語った話をそのまま書かせていただこう。
オレがフーと出逢ったのは、よちよち歩きから、立って歩くことができるようになったものだから、ちょっと冒険をしたくなった頃だ。そうそう、その日はポカポカと穏やかな日差しが降り注いで、縁側で領民たちが自宅かのようにくつろいでいた。領民たちにとっても、この屋敷は自分たちの第二の自宅でありながら、守るべき主がいる安らぎの園であった。そういうこともあってか、騎士たちが修練を常に重ねているような闘技場や修行場には常に暑苦しい連中がいるもので避けて通りたかった。そうそう、龍を一人、武器なしで完封勝利できてこそ、初めて大公爵直属近衛騎士見習いと名乗ることが許される。そんな物語を子供の頃から伝え聞いてきたオレの常識から見たら、それは恐ろしいことに思えた。
オレには、才能がなかった。ただただ理不尽なまでに、智慧の魔神との契約のスペースと、無限の魔力という呪いにも似た病気に才能の余地を埋められた。つまりは、これ以上、才能が与えられることもない。まあ、それ以上に困るのは、智慧の魔神との契約の同調率が非常に高かったせいで、彼の言葉と、ほかの人の言葉が同じに思えてしまうのだ。だからこそ、智慧の魔神の声を無意識に発していた。その度に、誰も彼も、オレの言葉が伝わらなかった。悲しみなどは、もうないはずだ。きっと……大丈夫だから。そんな中、書斎に偉そうなおじさんが連れてきた、その子供であるレオレオと一緒にやってきていた。同じ年というものの、オレは人よりも色々なところが優っていて、人に頼らなければ何一つできないこともわかっている。達観していたといえば聞こえはいいが、当時のオレはませた子供だった。それだけは、成長した今だからこそわかることだ。
さて、目を離して、父さまの書斎の中から奇妙な黒いナニカを見つけた。その黒いナニカが、レオレオに吸い付いた。吸収されて、レオの中に入っていく。彼にナニカ異変が起きている?いや、彼は認められたのだ。オレの思いを聞いてくれる親友として。
そんな彼との思い出はまた明日語らせてもらおう。
さて、フーと出逢ったのは、その黒い塊とレオが一体になった瞬間、彼の様子を案じて、彼の元へと駆けつけた時だった。フーは薬師としての仕事もお師匠さまから教わっていたそうで、オレの見張りから告げられた情報を聞いて、急いで駆けつけたそうだ。まあ、フーとの思い出もこの先からたくさんある。でも、今はきっとオレがあの子に惚れた理由だろ。そんなの簡単だ。フーはオレのことを理解してくれた。理解してくれる人は、お前にはまだわからないかもしれないが非常に心の支えでありながら、恋愛感情が芽生えてしまっても仕方がないもんなんだよ。まあ、両思いではその頃は無かったよ。オレはまだあの子に恋愛感情も持っていなかった。あの子はオレに母性に似た感情を持っていたそうだが……
だがまあ、オレとあの子との出逢いのきっかけは、こんなもんだが、恋愛感情を持たれるきっかけは、五歳に起きた英雄譚の始まりとも呼ばれる出来事だろう。あの出来事は、劇とかにもなっていて、恥ずかしいんだわ。だから、まあ、その話はまた後日でいいかな。
その日はその話でおしまいのようで、どうやら物足りないと感じたのが、母さまにバレてしまったらしい。だから、母さまからの見方で聞きたかったのだが、母さまに照れ隠しで腹パンをされたくはない。母さまの拳は、水を割る。母さまの拳は神代の頃に大量生産されていたバケモノゴーレム、防御力おばけを瞬殺できるほどなのだ。母さまの拳よりも上の拳を持つ格闘家はどの大陸にもいないだろうし、過去の英傑たちが集まって襲いかかっても、3秒も持たせられずに瞬殺する。
母さまの手加減なしの拳を受けても平気なのは父さまと、“ねえさま”だけなのだ。
なにせ、エルフの山は魔境だ。一度、行ったことがある人間ならば納得してくださると思うが、一番弱いエルフでも、大公爵直属近衛騎士と十分間うち合えているのだ。ちなみに、大公爵の軍隊が最もこの国の中で強い。この世界の中で最強であるそうだ。しかしながら、近衛騎士は中間でしかない。
大公爵直属護衛騎士>>王直属近衛騎士>>>獣人≧エルフ=ドワーフ>妖精族、精霊族、龍人族など。
ここで軍事面の話を書くつもりもないが、まあ、次は内政について書かせてもらおう。