ユグリナ王国 設定
⑴世界設定
この世界の中央大陸は南北に広がっています。また、東西を隔てている巨大な山脈(グラジオラス山脈)がありました。また、地球とは違い、重力が地球の二倍ほどはありますが、人間の身体能力が地球人であれば二倍から3倍となっています。そのため、特に身体能力での影響はありません。また、異世界転生というものも、異世界転移も無事に成功することの方が少ないわけですので、異世界転生した人間や異世界転移できた人と呼ばれるような存在がほとんどない。世界の設定としては、魔神の樹海と呼ばれるような魔境が主人公含めての物語の舞台のユグリナ王国の本拠地です。ユグリナ王国の伝承や、各国の伝承などを調べていくと、初めの王国にたどり着く。古代文明と呼ばれる文明は、主にユグリナ王国の北西部にあった『魔界の入り口』とも言われる大森林から、最西端のアグレ湾岸、北はカレドス帝国よりも南、マレナグ山脈までと見なされる。南には版図を広げておらず、文明も現代の文明とは比べものにならないほど発展していた。古代文明が成立したのは、旧大陸からの猿人たちが共に巨大な獣を狩るために協力し合う儀礼から、共存共栄するためのムラが出来たと思われる。ムラが一つにまとまったのが古代文明である。さて、このユグリナ王国の歴史から、まずまとめさせていただこう。
誕生したのは、二千百十年前。その時は、三国時代。東方に位置付けられている魔王が統べる魔王国グラ。北方を統べし帝国ジオ。南方と西方に手を伸ばしている王国ラス=トウラシ。
二千百十年前:ユグリナ村でユグリナ王国初代国王ユグリナが誕生。また、エルフのアドルアナ村でフォルトゥナが、村に持ち帰るべき書類を持ち逃げして、ユグリナ村のとなりのドワーフたちの統べるラスグラ鉱山に逃げ込む。ラスグラ鉱山で、名工ダイダロンの弟子をしていたゴンザエモンが、パーティ“フォルトゥナ”の専属武器職人となることを決意。パーティ“フォルトゥナ”に所属していた獣人族のガルが、智慧の魔神の依り代に、ユグリナの誕生を伝える。智慧の魔神の依り代はこの時に、ユグリナを王にするために動いたのだと言われているが、真偽は定かではない。
二千百五年前(ユグリナ王国暦5年)ユグリナの父母が戦乱によって犠牲となり、身内からもたらい回しになった結果、魔族のおじさんに、さまざまなことを教えてもらう。魔族のおじさんが、先代魔王フォルと知るのは、この二十五年後である。
ユグリナ王国暦(15年):フォルと別れて、パーティ“フォルトゥナ”に強制的に加入させられる。リーダーに無理やり担がれて、魔王国と王国の長きに渡る戦乱の緩和地帯として国を手に入れようと、魔族も人族も、精霊族もエルフ族も、全種族が共に活躍しあい、共に生きていく国を建てたいと酒に酔った勢いで叫んでしまったため。また、初代大公爵ウィルファ=ラスの取り憑いていた魔神からの助言によるものだと日記には記されている。
ユグリナ王国暦(16年):魔王国に潜入調査の結果、魔族も支配していない不毛の土地があることをユグリナは知る。その土地であれば、魔族との交渉で間違いなく得ることができるだろう。建国基金の補助は貰えないだろうが、間違いなくここに国を建てられるだろうという土地を発見。その土地はとても広い。全種族が生きていくことも、千年開拓でできるのではないだろうかと考えた。だからこそ、王女と魔王の双方にコネを持っていた“フォルトゥナ”のウィルファ=ラスが、懸命に説得するために力を見せつけるための場所を用意。
ユグリナ王国暦(17年冬):魔王軍との模擬試験。勇者パーティは、互角の勝負を演じていたが、魔族の覚醒という謎の能力により完敗したが、魔王軍から、良きライバルとなるだろうと、不毛の砂漠を講和の条件として得た。しかしながら、大公爵ウィルファが国の建設に寄与しすぎたと内外からあれこれ言われた結果、大公爵ウィルファは療養に移る。これが、開拓の際、大公爵ウィルファが長生きできた理由と推測する学者も多い。
ユグリナ王国暦(18年春)地獄の始まり。開拓する場所で、何か育つ植物がないかとエルフの長老の孫であり、冒険中に仲間になった軍師ルーに聞いたものの、育つものは、ほとんどの知的生命体にとって毒にしかならない特異な植物くらいと断定を与えられる。続いて、鉱物資源は豊富であるが、しかしながら、肝心の城を建てるための人間がいない。さらにそもそも開拓できる場所には草一本生えていない。持ってきた食べ物で、なんとか生きながらえてもこの先に未来はあるのだろうかと皆に不安がのしかかる。それでも、彼らの努力が始まった。
第一回:ランス開拓:比較的、開拓しやすいと思われた古代遺跡の名残が見える大地。古代遺跡があったことから、人間が生活できた筈だと考えて、ゴーストとの交流を得て、開拓の拠点建設を開始した。幸いなことに、家との相性が抜群な石材がちょっとした加工で手に入れられたので、ひとまず三ヶ月の月日で作ることができた。
また、12年後、ここで大公爵ウィルファが、不思議な種を持って帰還。
「岩麦って言ってね、うん、岩みたいな外殻をこじ開けると、生で食べられて、水分の豊富な美味しい麦であるらしいよ。智慧の魔神が、砂漠での開拓者へ振る舞うために作ったんだって。まあ、オレも手伝うよ。さんざん、担いで、煽ってきたんだ。このままじゃあ、引き下がれないだろ」
だが、第一回の開拓について、資料がある。
「歴史的には成功に限りなく近い失敗と偽証したが、本来はウィルファすらも匙を投げたほどの難業であった。だいたい、開拓なんてできるのかと言いたくなるほど、何も育たない大地。燦燦と降り注ぐ日光は、ワタシたちの活力を根こそぎ奪い取っているのだ。それにしても、ウィルファは頑張りすぎている。このままでは……」
「開拓の資料」:初代の開拓のために必要とされた不毛の大地に緑をもたらすためのタネ。しかしながら、運がなかったので、失敗してしまった。その育ちかけの双葉は、地下に住んでいる種族の貴重な食料として食い荒らされる。そのせいで、資金が大幅に減少。魔の森で、食料資源を確保しないといけない事情からか、戦力が大幅に強化された。
だが、そろそろ、普通の野菜が食べたい。だが、この不毛の大地であれども、育つ植物が魔の森との境目にはあるらしい。その植物は、人工的に育てるのが難しそうだという理由から、大公爵へと任せることにした。大公爵に任せておけば、万事よしとは思えなかった。だが、魔の森に棲まう魔獣との共生が可能な存在、アイツしかいないから。適材適所ってやつだよ。そう言って、大公爵に荒地を領地として与える。大公爵ウィルファが始めた政策の一つとして、害虫駆除である。徹底的に、魔獣に寄生する気満々な方法で、智慧ある魔獣から、乳や肉、ツノなどをもらうことにより、王国の財政危機を解決した。本当に、大公爵ありがとう。だが、大公爵の顔がやつれがちだ。うん、戴冠式には元気だったというのに。そうか、大公爵。お主の忠義、大儀であった。我らはこれからも開拓を勧めて行こう。ウィルファの湖と、開拓によりできた人工湖に名前をつけた。
大公爵ウィルファが死んだのは、現在のユグリナ王国とは程遠いものの、少し大きめな屋敷と、領地の分配が行われて、第一次移民団がやってきたため、国としての体裁が整われかけたちょうどその時であった。ユグリナ暦64年2月新月のころ。彼の息子リューカが2代目大公爵となり、娘は王太子クルエの母である。現在の特異な貴族と民の一体感はこの建国期にあると言われている。
第一次建国期(16年〜64年)
主な行動。①第一回ランス開拓②第一回北方開拓③第一〜4回東方探査④第一回〜第五回南方探検
当初の領地の経営について。東や南、北を王国の建設に重要な役割を果たしてくれた重臣たちに分譲した。東は獣人族、北はエルフ。ランスはドワーフ、南は妖精族や精霊族。中央は人族。人族は特定の才能の偏りがないため、各地に派遣されていた。その頃は貴族制はなかった。大公爵は彼の称号であった。全てを知る代わりに、全ての能力を失った彼が、無能と呼ばれていたのをユグリナ王が聞いて、彼のことは大公爵と呼ぶようにさせたのだとか。
ちなみに西方は魔の森であるため、何も手出しをしないことを徹底させていた。そのため、この国で功績を挙げた騎士たちは、西方へと領地を授かるのだ。
ユグリナ王国暦64年3月 大公爵の後を追うように、ユグリナ王が死亡。ユグリナ王国には双子の王子がいたことが、王国の内乱へと繋がってしまった。その時に、双子の場合は、二人で国を互いに治めると決めた者がいた。これが現在のユグリナ王国につながる双子の王子の血脈が軍事を担当する帝と、内政を担当する国王に分かれるきっかけだったのだ。その後、各国で内乱が相次いで、帝国も魔王国も、王国すらも小王国へと縮小。王の子孫を名乗る者が大量に発生してしまった。
ユグリナ王国暦65年 八月ほど 第一次ユグリナ戦争
ユグリナ王国と帝国と魔国の連合軍による政治干渉がきっかけで始まった戦争。簡潔にまとめると、ユグリナ王国が所有する土地で、金山が発見されて、ロクに開拓もしてこなかった魔国が自分たちのものだと声高にいい、帝国もユグリナ王国から利権を得るために戦争をふっかけたというだけの話だ。もちろん、ユグリナ王と五公(エルフ、ドワーフ、獣人族、妖精族、大公爵)が反抗を宣言して始まった戦争。しかしながら、犠牲は非常に大きく、得るものはほとんどなかった。大公爵の軍は、二人の魔神に囲まれて、居残り組以外全滅。しかしながら、二人の魔神を討ち果たしたため、戦争は膠着状態に……
鬱憤を押さえつけて、泣く泣くユグリナ王国と帝国は和議を結ぶ。ユグリナ王国は、大公の復讐と言って、そのまま、5種族連合軍を引き連れて、魔国を攻め滅ぼす。
先先代魔王で戦争反対派であったフォルと、その孫娘は大公爵の元で食客として招き入れられる。その孫娘と、三代目大公爵は結婚をしたそうだ。その子供が第4代目と続いていくことになるのだ。
さて、現在のユグリナ王国はこの始まりの五種族、エルフ、ドワーフ、人間族、獣人族、精霊族。そして、ここでの政治制度は現在では王政。王が中心であるとはいえ、彼らを補佐するために四人の公爵とひとりの大公爵が存在している。ちなみに、この王国は中心が度々変遷している。最初は大公爵が治めていたエラルド山と、魔神の樹林、未開拓でも住める場所が確保しやすかった拠点。古代遺跡と隣接している古城シオン。続いて、王が砂漠地帯に遷都した。その理由は、勢力の拡大であったためだ。魔王の後継者争いが起きた……具体的に言うと、凡庸である故に民の心を理解する兄か、優秀であるが故に臣下の心を理解しようともしない弟。その戦いで、帝国や王国も弟を推して、この小国だけが兄の即位を推した。そのために起きた世界的な大戦。多くの偉大なる文明が潰えて、多くの小国に分裂した。勝者となった兄が譲り渡したのは首都にほど近い“砂漠”のランス。砂漠であるため、開拓の人材を招きやすかった。そのまま、首都がランスとなったんだ。嘘だと思えてくるほど寒い北の高山地帯がエルフの地、南の熱帯雨林は獣人族のテリトリー。東の鉱山地帯はドワーフ。西は海岸に近い方が大公爵の領地、首都に近い方がほかの多種族
登場人物設定
ウィルファ=リューク=ラス:本作の主人公。“智慧の魔神”との契約率100%であった先代当主ウィルファ=リューク=エラルドの娘。長女であり、妹のウィルファを溺愛している。この大公爵家は、一族全員が同じウィルファという名前を受け継いでおり、先代当主から名前を受け継いでいく決まりのため、こんな名前になっている。“智慧の魔神”から、次の器として選出されているので、当主になることが確定している。銀色の髪の毛を隠すために、フードのあるタイプの服を着ることが多い。また、自分の容姿に複雑な思いを秘めており、常日頃から先代と比較されることに、実は嫌気がさしている。だが、先代のことは、父として、個人としても尊敬しているため、この心の戸惑いを知りたがっている。基本的に、大公爵家当主特有の“全知ゆえに無能”の呪いに苦しめられ続けてきている。当主が魔神と契約する時、魔神との同化率、すなわち、魔神を受け入れやすい魂であるならば、その当主は、全てを知る代償に何らかの身体的障害(例えば右目の視力を失うなど)と、才能の欠損を引き起こす。先代の当主を例にとると、彼は全てを知る本を手に入れたが、その本は全ての知識と引き換えに、それ以外の才能を奪い尽くした。その才能の分だけ、智慧の純度は増して、智慧の力は増えていく。
等価交換、それが世界の原則である。
彼女が失ったのは声。彼女は筆談もしくはボディーランゲージでしか思いを伝えることができない。
さて、彼女の才能を話す前に、才能について情報を提供する。才能とは、すなわち天賦の才能であり、生まれながらに、才能というものは決まっている。そのため、強い才能は、強い心が必要とされるものにその補助として与えられやすい。だからこそ、この世界では強い才能は、貴族や王族など民を統べるノブレス・オブレージュを背負っている存在に多く見られるのだ。その才能とは大きく分けて三つに分類されている。“智慧”と“力”と“愛”の三すくみである。
力は智慧に強くて愛に弱い。愛は力に強くて智慧に弱い。智慧は愛に強くて力に弱い。
そして、このユグリナ王国は“智慧”の才能が数多く見られる。そして、東の隣国のユグドラシア帝国は力の才能が数多く見られる。東の“愛”の魔神を主神と奉る天教国ラドウルは“愛”の才能を持つ者が多い。たびたび、愛の魔神と力の魔神に主力の大公爵を殺されてきているので、復讐のための戦いを挑むといつも逃げられて、城を落とされてしまったことがあった。先代の大公爵との因縁は非常に有名である。
また、才能と魔術適正は関連している、よくファンタジー世界で見られる魔術属性というものがこの世界にはない。
魔術の属性というよりも才能が魔法の鍵でありながら、魔術属性でもあるのだ。だが、生活魔法というものは存在している。基本的に日常生活に必要不可欠な魔術は、魔力がなかろうが発動できる。魔力がなくても発動できる最有力の説がある。それが、生活魔法を発動するのは、才能がコードとして、どんな存在にも使用することが可能であるのではないか。生活魔法は、一音節、もしくは無詠唱で発動可能であるのも、自動的に発動できないと生きられないからではないか。
「生活魔法と人が呼ぶものは、神に[[rb:呪われた>愛された]]人間のために私が作ったのだがね、これの一番の利点は、魔力がない人でも、我が友を支えてくれるのであれば授けた智慧だったんだよ。この智慧であの子を護りたかったんだ。ほら、光を灯せば闇夜に潜みし獣に立ち向かえる。領土は広いが開拓の一向に進まぬひとの子に、あの子を孤独から救い出してくれた勇気ある隣人に、ちょっとだけ手を貸してあげたくなっただけのこと」
彼女の才能は『[[rb:魔神の叡智>ウィルファ]]』という。
チカラは、智慧の魔神との対話、融合の二つのみ。智慧の魔神は智慧を貸す。信じてくれているひとに、才能を持っているものの才能の扉を開けるだけなので、他人依存型。他者との信頼関係が強ければ強いほど、力も大きくなる。
彼女の容姿:虹の才能のために虹色へと変わり果てた髪に、母譲りの金色の瞳を持つ。常に好奇心でキラキラと瞳を輝かせている。この次のページから始まる話では、まだ3歳。
先代大公爵:ウィルファ=リューク・リュ=エラルドラ幼名:ウィルナ。
ユグリナ王国の英雄譚に、生前から語られ続けた護国の鬼。国の剣であり、国の頭脳であり、国の手に届きにくい内外のものとのパイプだった。しかしながら、基本的に自分を見ていないとまでも言われているように、王のため、国のために、自分を押し殺してしまったのではないかと心配されている。現王の最大の後悔の要因。それは、ユグリナ王にかけられた三千年の呪いを打ち消す代償に、国民に禍をもたらそうとする混沌の魔神を封印する代償に両足と左腕を失い、視界を邪魔するような長すぎる髪と耳からは誰の目にも見えないものの声がけたたましく聞こえてくる。あと、神輿に担がれて常に動くようになった。覚醒した姿は現王以外が語ったことはないが、あまりのおぞましさゆえに紀伝には残っていない。領民に対して、非常に適切な政策を行うが、ONとOFFの差が激しすぎるようになってしまったため、死ぬ五年ほど前に大公爵として表に出るのは、妹に任せきりだった。だが、依然として発言力が高い。娘に魔神を継承させるのをギリギリまで引き伸ばして、彼女との間に“縁”が生まれないように工作をしてきたが、最後の最後になって折れた。だから、死んだのだと現当主(先代の妹)は語る。あの儀式には裏があった。魔神がいないということは、無力な者の殻であった。殻が剥がされたら、無防備になる、あるいは暴走してしまうのだ。無防備になってしまった彼は、森の陰に潜みし暴虐の復讐者に気づかなかった。あるいは気づいていても、必然であると考えたのか。その因縁に、娘を巻き込みたくない親心だったのかもしれない。だからこそ、混沌の魔神が暴走してしまい、神殿は魔境と化した。その骸は、暴虐の雨に打たれて、見るも無残な姿だったという。
智慧の魔神:混沌の魔神の脳から産まれた“智慧”。全てを知る、全てを理解する、全てがあの者の中にあるのだ。その本質は追求。正しさなど不要、感情さえあれば、キミとの日々だけで十分だった。それなのに安寧の日々は奪われる。ユグリナ王国のあった古代遺跡で祀られていた旧時代の智慧の神。魔神とは、元々別の存在であったが、古代の賢者とともに混沌を討った時に、混沌と混ざり合ってしまった。その古代の賢者が大公爵の先祖である。大公爵と共生関係にあるため、大公爵の感情に強く影響を受けてしまう。ボクら三魔神は、親友を失った。何度も何度も親友を助けられなかった。だからこそ、守るために一つは三の神へと分かれた。今度こそはキミを守ろう。
力の魔神:智慧の魔神の天敵。本当におかしい。混沌の上半身を喰らい尽くして出来上がった旧神。古代世界の大帝国の支配者として栄華を誇ったが、一夜のうちにその大帝国は滅ぼされた。漆黒の灰の中に産まれた赤子に、憎悪に燃える魔神は全ての業を授けた。大公爵を殺すためだけに、全能を行使する。大公爵を糺すためだけに、全能を発動する。本来ならば、分かり合えたはずの彼の思考が間違っていると示すために悪として立つ。原初の天龍と呼ばれる分身体を行使して全種族を間引きしていた。だが、あの男の中に眠るヒカリに貫かれて、原初の天龍の血を浴びたあの子を、傷つけるつもりはなかった、友であった、年も種族も違うが、親友だったのだから。だから、友よ。今度もワタシ以外には殺させない。
愛の魔神:異界からの侵略者。古き神話には一切登場しない新しい方の神さま。世界を愛で満たすことを信条としている。話を聞かない、自分勝手で他人を思いやらず、愛で溺れさせて堕としていく様はまさしく魔神。元々が混沌の魔神であったが、とある人間から愛を受け取ってしまった結果、人間には優しいがほかの存在は彼を傷つけるかもしれない、混沌の魔神の本体が彼が守ろうとした彼の親友を王にするために、まず智慧の魔神に分かれた。そのあと、智慧の魔神は王となったものと共に我を討った。その際に溢れでた血液や肉片が力の魔神。絞りかすであるが、それ故に彼に干渉するために国を裏から操っている。
混沌の魔神:一人だけの友達がいた。異種族とも分かり合えるはずだと言っていた弟分と共にいつも私のいる所まで遊びに来ていた。あの子はずっとひとりぼっちだった。だからこそ、彼は冒険者として活躍すれば、王からも勲章を賜って家族を持てるのだと信じ続けていた。生まれてくるはずだった妹、愛してくれていた家族を古き神の眷属に滅ぼされた彼は、なぜか神を恨んではいなかった。眷属にも憎しみを抱かず、ただひたすらに楽しく生きていたいと語っていた。彼はこの世全ての病という呪いを受けて、旅立った三年後に死にかけになって帰ってきた。もう助からない。ただそれだけを理解した。彼は全ての呪いを受けた理由は、運が良すぎたんだ。幸運の代償というやつだ。キミみたいな友人を得て、弟も仲間もたくさん増えて、でも……やっぱり望みすぎたのかな。キミと一緒に旅をしたいだなんて。キミが昔語ってくれた要石。アレを破壊すれば、キミともっと一緒におはなしできるかなとおもったけれども……ごめんね……ごめん……
自分のせいだったのだろうか。封印から解放された。だが、意味がない。意味があるわけがない。それに意味を感じられないから。キミがいて、あのうるさいアレがいてくれたら十分だった。だから、許せない。智慧も力もあれば、あの子を助けられるのだから。智慧の神を喰らった。油断していたようで、無様なほどにもがいたが結局何の意味もない。全ての呪いを解除するためにその智慧を得たが、能力が得ていないのであればあの子を死から護れない。全ての力を得たあとに、あの子を護り抜くための結界を。結界を作ろう。
魔の森と呼ばれるものを作って、異性になったあの子と出会って、一緒にご飯を作って食べて、変わらない日常に期待を抱いて……溺死した。異種族、エルフ、ドワーフ、妖精、獣人族のような良き隣人とは違い、古き神が暇つぶしに作り上げた怪物ども。それらにあの子が連れ去られて、守ろうとしてくれたエルフの長老が討たれた。巨人を討とうとしたドワーフが踏み潰されて死んだ。その素早さで翻弄とした獣人の長が、原初の血を解放させて助けようとしたが一歩遅かった。末期の言葉を聞くための魔法を発動させた妖精族たちは、魔力が足りずに死んだ。悲しかった。彼女が連れて来てくれた差別をしない良き隣人が、神の気まぐれで生み出した土くれに滅ぼされた。
だから、混沌の神は……
『混沌の神と一人の親友』
「ふむ、ワタシに聞きたいことがあるなんて、珍しいな。ウィルファ。今回から、いつもの予言が聞きたいというわけではなさそうだな。なに、夜が怖いのか。ならば、昔話でもしてやろうか。ふむ、違うと。ただ、自分ではなくなるかもしれないのが怖いのだな。なるほど、じゃあ、ちょっとだけ、キミとの初めての出会いについて語ってやるとするか」
そう親友は前置きをして、朗々と語り始めた。
それはむかしむかし、まだ人間が誕生して間もない頃のお話。人とカミサマの世界がまだ分けられていなかった頃の時代だ。そうだな。ワタシは混沌と呼ばれたこの世界がよりよくなってほしいという願いのための破壊神だったのだよ。破壊神といっても、異世界の邪神だ。この世界には、元々ワタシの居場所なんてなくてね、何度も元の世界へと帰りたがっていたんだ。だが、ある日、ワタシがいるだけで与える滅びの力を危惧して、古き世界の神々が討伐しにやってきた。
「それでキミは封じられてしまったのかい?あの石像は……」
その石像はその話とは違うのだが、語り出すと夜が明けてしまう。これは少しずつ眠れないキミに、自分が自分であるかどうか不安になってしまったキミへのおまじない。呪いはまだ受け継がれているようで、悲しみを抱えて歩いていかなければならない予感がする。だから、少しだけ……
その時は、ワタシは神々によって完敗したのだよ。それはまるで、孫悟空がお釈迦様にやられたように、手も足も出なかったのさ。だがね、神々も封印は出来たが、魂を滅ぼすことは不可能だったようだったのさ。だからこそ、キミと出会えた。
「なぜ、我を生かしたのだ?戦いの神ヴァールルよ」
「ふむ、貴様に罰を与えよう。貴様はこの世界に望まれてやってきているらしい。未来を見る目で見てしまった中に、お前が解放されて世の闇を祓う光となると見た。だが、この時代では、貴様は不要なり。いつの世にか、分かり合える時が来ようぞ」
「私には見えるのだ。戦いの盛んな世だから、英雄はごまんといる。しかして、英雄と呼ばれるものは後の平和な世には不要であろう。私のような戦うしか能のない神は、戦いの意味が消え失せた時に自然と消滅するだろう。私と貴様の戦いはもう二度となかろう」
未来を見る戦いの神は、ワタシにそう言い残して去っていった。そのあとに、この石像は誰の目にも留まらずに風化する運命だったのだよ。だが、封印されて3000年後、ワタシは誰かが呼ぶ声を聞いた。ワタシの眠りを邪魔するものは誰だと、破滅を与えてやろうと百の瞳で見てみると小さな小さな子供であった。その子供には、力がなかった。
これまで生きてくることが出来たのが、奇跡のようにやせ衰えていた。どうやら、生贄として捧げられたらしい。[[rb:孤児>みなしご]]の彼は、よそ者の彼は、このムラには居場所がなかったらしい。人を食らう趣味もないが、食ってやろうかと重い腰を上げた。すると、彼はただワタシを見ているのだ。その目はとても綺麗だった。彼の瞳はキラキラと光り輝く黒色の瞳。これから来る運命などなにも気にしていないような能天気さ。希望を持って生きている彼を食らう気にはならなかった。彼となぜか話をしたいと思ったのだ。
「ふむ、貴様の名前を教えろ。我は混沌。世に変化と革新をもたらす者なり。何故、我の前に立つ?」
「名前とは何でございましょうか?カミサマ。ボクはただの贄。世の平穏と秩序のため、世界から生贄となることを望まれた身でございます。あなた様がボクを召し上がることで、あのムラの人はいつカミサマを怒らせてしまうのかと怯えることなく、農作業へと勤しむことが出来ましょう。ですので、ボクをいただいてくれますよね」
世の全てに期待しているのか。いいや、世の中がひどく息苦しくて、生きていることの幸せに気づいていない。そんな人間。それでは、食べたところで力を取り戻すことはできないだろう。ならば、ワタシは彼を幸せにしてやろう。その幸せこそが、願いが叶えられた人間の喜びこそがワタシの栄養源なのだから。
そう言ったことを告げると、彼を三本ある腕でつかんで頭の上へと載せる。彼から、世界を知りたかった。小さな子供でも、変わったことを知りたかった。
あの神はもはや神ではなく、ただの魔神へと成り下がっていた。奴が生きていた頃には、聞いたことも無いような神が、ムラの神となっていた。アレを人は異物と扱う。それが許せない。許せるわけがなかった。居場所を失い、神話から消された神も、何も変わらないこの世界も、憎らしかった。
「カミサマ、ボク、ユメを見たんです。十二年後、あなたの側で亡骸となるユメを。つまり、十二年間のあいだにシアワセを知ることができるはずなんです」
「死ぬな。死んだら、終わりだ。死んだところで、人はその亡骸に敬意を示さんよ。ただのモノとしか見ないのだからな。我は、貴様がシアワセになってほしいと言ったな。一つ教えてやる。シアワセとは生きることよ。生きて生きて、見苦しくても命乞いをせよ。いつか、お前を捨てた親とも出会えるだろうよ」
親はもう死んでいるだろう。この領域へと入ることができた時点で、お前が特別な存在で、ワタシの救世主だということには気づいていたのだ。気づいていながら、気づかないふりをし続けてきた。彼が人間である限り、寿命がやってくる。親しくなってしまったら、これ以上踏み込まれたら、きっとワタシは[[rb:絆さ>ほださ]]れてしまう。キミに惚れてしまうから。失いたくなかった、失うのが怖かった。
六年経って、ワタシはキミへ完全敗北の降参のしるしを送った。それまでの間、なにもないような日々が、キミがワタシの元から抜け出して、色々と見てきたことを話すのが……動けないワタシにはとても楽しいことだった。だが、楽しい日々も終わる。
キミは外の世界からやってきた黒いナニカに食われて死んだ。よくわからないナニカだった。でもキミの魂だけは無事だったから、ワタシはその魂と契約することで、その魂との縁を結んだのだ。いつか彼がまたワタシの元に来たならば……ワタシはキミを今度こそ守り抜く。
「今日の話はこれで終わりだよ。大丈夫だ。全能のあの子ともまた会えるはずだよ」
「そうかな」
「ああ、そうだ。全能の魔神について、明日はお話をしてあげよう」
ちょうどその頃、全能の魔神の契約者と世間一般では呼ばれている少女は、宿舎の方をじっと眺めていた。彼女の相棒は、にこやかに微笑んでいた。彼女の感情と呼応しているのだから、仕方がないのかもしれないが……
「ふむふむ、この展開は実によろしくないな。お嬢、日輪が沈んでいくぞ!この栄華を極めた大帝国も、連合国も滅んでいく。古代文明と一括りにされて、世界から忘却されてしまうことだろう。それもまた運命であるかもしれん。まあ、お嬢、これは良くないだろう。なにせ、智慧の魔神の生きているうちに……奴の中に潜むあの災厄の化身が目覚めかねないからな」
「アレがウィルファさんなのか?あの御前試合で見せたあの×××が?混沌の魔神?」
「違うな。アレは混沌の魔神とも形としてはない。アレはアレとしか言えない。つまり、理解してはならないものなんだよ。ただお嬢、アレはおそらくは三つの鍵がかけられているな。あの鍵がたまたま緩くなっていたから、今回は勝てたが……もしも、智慧の魔神が主体であれば負けていたな」
「あの全力モードについてわかることは何?」
そう言って、彼女は正午に行われた御前試合についての分析を行う。彼女とうち会えた人間など存在していないからだ。彼女の前では全てが無力だ。力に支配された世界の頂点に立つものであるがゆえに気づくことができた。あの人は、早死にする。自分を理解してくれる人材、それはいない。誰もいなかった。上辺だけを理解して、全体を理解した気になっている愚か者だけだったから。深淵を覗いているようで、深淵から覗かれているとも知らない愚かもの。そんなものたちに利用され続けているだけの関係に疑いを持ちながらも、自分には先を考えることができないとわかっていた。先を考えて、未来に繋げるだけの王というシステムになることは容易い。しかしながら、自分のような貧民を助けるだけで、この国の病巣は取り除かれるわけがない。クーデターのような簡単なことでは、この国に巣食う悪魔を倒せやしない。身分制度という病原菌を。だからこそ、まだ力こそが全てである軍事階級の中で、一番を取った。
「あの全力モードはウィルファの初代のそのまた八代遡った古代の小王国の連合国の盟主を勤めていたあの子がワタシを助けるのに使っていたから覚えているが」
ウィルファ:太陽。強さや自信、正直、直接的、勇敢、先見の明、魅力のきらめき、肯定的な態度、地域的環境:暑くて乾燥した場所。火、燃えるように輝く魅力的な反面、人のコントロールが及ばず危険な性質を持ち合わせている。ドラマチックで率直。はっきりとした意思を持ち、自分のことをよく知っている。金属:金。乙女座:仕事、奉仕、責任。俺は押しつぶされそうなほどに重い荷物を常に背負い込んでいたのだろう。俺に出来ることなど何も無い。だが、そうは見せない、見せてはダメだ。でも、寂しいや。
4、あなたのストーリーのキャラクターが外に出たら、何が起きるのだろうか。第一に俺のなすべきことは何だ?むやみに追いかけない。守り続ける、かわし続ける、逃げ切ればいい。
名前の由来は、寿限無のような守りのための長い名前から、余剰分を差し引いて、それでなおかつ民から愛されてほしいという祈りをこめて、古エルフ語で、智慧の神の親友というウィルと祝福されしという形容詞のファを組み合わせたウィルファを主幹としている。さらに、リューク・リュというのは、古精霊語で、リュークが太陽、リュが魅力ある〜のような男という言葉だったので採用。エラルドラというのが名字なのだが、名前の由来は神代文字で授ける者、もしくは偉大なる影だそうだ。
そのキャラクターが大勢の場に晒されたら?それは彼が不安定になってしまうだろう。俺には呪いがかけられているそうだ。常に全力を尽くす。
ただひとつだけ手に入らないものがあるとしたら?それは全能。彼は無能力者、天賦の才能を全て智慧の魔神との接続に費やしてしまったため、智慧の魔神との同調率100%?以外は見るべき点はないようにも思えることだなあ。
誕生と死について:産まれた時から、虚弱であった。この世界の赤子の平均体重が2.8
エネルギーの源は何?それは民からの信頼、民が彼にかける期待や正のエナジー。何が原動力になっているか?誰かの感情。
どんなふうに輝くか?彼は内面の魅力で、この地に漂う負をかき消して、光で満たすことだろう。
存在理由は?智慧を授けて、不毛の大地を豊穣の神が再び訪れる祝福の園、エデンを目指している。
最も目立つ点は?その智慧であろう。彼は全てを知り尽くす代償として、さまざまな[[rb:障碍>しょうがい]]を抱えている。
目をくらませてしまうものは何?孤独、彼は孤独に弱い。
闇落ち。
取り巻く人々は誰?妹、ただ一人の理解者である王太子、声を聞いてくれる護衛役のフーを含めた四公。領民。
健康状態は?悪い、雨に濡れたならば体調をすぐに崩すだろうし、身体は脆くて、すぐに倒れてしまうだろう。持久力もほとんどないが、命の危機に瀕すると急に持久力が上がる。
[簡単な話]
俺は今日もベッドから出られないようだ。まあ、わかってはいたが、彼らの苦悩を少しでも和らげてあげたかったのだ。だから、このことをしたのも、あの時ほどの疲労もなさそうだという楽観的な観測もあったことは認めるが、それ以上に彼らに喜びを与えたかった。これだけしか俺に出来ることはないからなと、彼が最も嫌う言葉を言って慰めを待っている自分をワザと貶めている光景を客観的に見て自己嫌悪してしまう。
敵対者:主人公の幸せや発展を妨げる良きライバル。
友人/ひきたてやく:主人公の長所と短所を引き出して、主人公の弱点をカバーしたり、逆の性格を見せてコントラストをつけたりする。主人公に欠けている部分を補って助けたりする!
脇役:彼らは彼らなりの背景、危機感を持っている、
フー:月。神秘的、純粋無垢でおとなしい。冷たく湿気のある場所。感情的な湿っぽい世界。内省的で受容的。瞑想、優しい言葉遣い、柔和さ。月は太陽のパートナー、どのような会話をするか?どのような出会いか?満ちていく月、ウィル様を守るよ、今度こそは。がキャッチフレーズであり、キャラクターのサイクル。主人公の智慧を映し出して、主人公の何も才能のないという弱さを引き立ててくれる。また彼が何のために日記をつけているのかという秘密を明るみに出す。パートナーは彼の苦悩を知りながら、外向きに発言してこなかった。自分なんて、自己嫌悪のネガティブな側面を持っているため、修行に打ち込みすぎる。
王太子:水星、事件の予兆をもたらす魔神のメッセンジャー。ウィルファの声を唯一周りに積極的に届けられる稀有な人物。論理の組み立てがきちんと存在している。頭の回転が速く好奇心が強い。気配り上手で敏感。鋭い知性と洞察力を持つ。蟹座の親切で優しいが、感情的になりやすい。
全能の魔神の契約者:火星、欲望に駆られて何かを探し求める。野心や攻撃性、スタミナ、強さ、自己主張。激しさやひらめき、激しい変化を常に求めている。リーダーシップと行動性、暑くて乾燥した場所。山羊座、成功のために自らの帝国を築き上げ、拡大するためには手段を問わない。身分制度の平等化、そのための障害は現在の国家制度。思いを遂げるためにまずは軍部からの改革、いざとなったらクーデター。その行動によって、同調者も増えて、一大勢力となる。理解者のためなら命がけで戦う。統率力。激怒させるものは何も理解していない人間があたかも全て理解したような気になって同情してくることに激怒する。血がたぎる時は、全能の魔神を解放している時。戦うために何も準備をしない。どんな武器であろうが自由に使える上に、異空間魔法で無限に武器を取り出せる。主人公とフーだけには負けたことがある。キャラクターを苦しめている傷は、生まれた時から一度たりとも愛を受けておらず、要らないもの扱いされてきた現実。その傷は世界からの疎外。その傷跡のため、粗暴で自己の命をなんとも思っていないような言動。最大の弱点は無知。本人らしい方法、全能の魔神を完全に解放してもなお、彼と彼女のコンビには両方の面で負けた。負けて、残ったのは開放感と彼の強さの秘訣だった。だから、自分も次に会った時は、キミに勝つよ。そう言って、ワタシは周りを頼ることに決めた。初めは拒絶感もあるが、どうにも全ての個性を一つに束ねてやるやり方のために他者からの力を強制的に搾取するのでは、自分が最も忌むべきあの男と同じになってしまうことに気がついたからだ。