6カーソン伯爵家(1)
「よくおいでくださった、勇者殿。此度は、宜しく申し上げるぞ。」
貫禄のある髭の生えた、いかにも、という感じの伯爵が重々しい口調で剣人に話しかける。
食卓、というか、だだっ長い机の、剣人から見て一番奥、いわゆるお誕生日席に伯爵、右手に女の人(クリアのお母さん?)、左手にクリアが座っていた。
「はあ。」
――――うぅ、、、
剣人は既にへこたれていた。
レベル1という文字が頭の中で渦巻いていた。ねるねるねるねーのごとく。
――――しょうがなくない!?
だって新人研修で呼び出しくらったようなもんだよね!?
ねるねるねるねーはひぇーっひぇひぇひぇっ化学反応なんだZE☆
てーれってれーっ♪
相手は伯爵である。そんなに気に病む必要はないと思うが。
完璧に『勇者』という設定を忘れ、変なテンションとなっている剣人であった。
「どうぞ勇者様。お掛けください。」
「あ。どうも・・・」
「いえ」
侍女が剣人の斜め後方に佇立する。
――――気にしない気にしない。
異世界の女の子は大体胸大きい。お決まりじゃあないか、、、
クリアも相当だし、、、
あっ、でもフランは確かぺったんこだったよな、、、
最低であった。確かに事実ではあるけれども。
そして、
剣人は椅子に座り、見つけてしまった。伯爵の後ろに飾られていたある『像』を、、、
「ラキア、夕食を。」
「かしこまりました、旦那様。」
――――なにあの像!?うわぁ聞きたい、、、
「わしはルーカス・フォン・カーソンだ。そして、」
「わたくし妻のアリーセ・フォン・カーソンですわ。よろしくお願いしますね」
「あ、はい。えっと早乙女、剣人です。夕食まで、有難うございます。」
突然始まる自己紹介タイム。
さすが(元)日本人。礼儀は弁えていた。
まぁもし拾われていなければ、今頃のたれ死んでいたかもしれないのだ。
誰でも感謝感激するだろう。
寒さで風邪を引いて剣人がもし、その風邪菌に対する抗体を持っていなかったとしたら・・・
メイフラワー号的な? 剣人号?
うん、撃沈してたね。乙!
「あら、勇者様、いや剣人さんなら歓迎よ?」
「どうも、、、」
なら泊まってもいい?と聞く勇気は当然剣人にはない。
「え。」
その間に運ばれくる料理たち。
肉(ワ〇ピースに出てきそうなヤツ・骨つき・でも牛肉っぽくない)、魚(スープの中に1匹。ドーン!)、
パンぱん麺麭ドーン!、よく分からない野菜&果物ドーン!
――――多い多い多いおおい!!怖い怖いこわい!!
「口に合うか分からぬが。」
「・・・」
剣人は恐る恐る謎の肉を口に含む。
「うそだろ、、、」
うっすい。うっすーーーーーい。
え、味付け塩だけ?胡椒もないの?え、胡椒の実がまず存在しないのかな?
しかもこの肉まっずい、、、
パサパサ?シャリシャリ?レロレロ?、、、レロレロ!?
ええぇぇ……ここお貴族様の家だよね~?っていうことはこの料理、この世界では美味しい方になるの?
苦行中、ですか? 違いますか・・・そうですか・・・
「それはそうとお父様、パーティーフェスティバルはどうなさるのですか?」
おとなしく食事をしていたクリアが口を開く。
「うむ。その話をせねばならぬの。
勇者殿、我がカーソン伯爵家の代表として出場してもらえないだろうか。」
「え、えっと、詳細をお聞きしても?」
伯爵家の代表ねぇ……
なんかよく分かんないけど二つ返事で了承するほどバカじゃない。
ていうか俺が勇者をする必要あるのか?
ないよね!? その辺の田舎で気ままに過ごしたい~!!
あ、でも俺お金とか何も持ってないじゃん。さすがに円ではないよね、、、
いや日本円も持ってないけどさ。手ぶらで森に( ・・)ノポイ
異世界遺棄事件だよ、フラン!
あれそういえばフランどこ行ったんだろ?まぁいっか、所詮鳥だし。
そんなことよりあの像気になるわあああ
あー話、なんだっけ?
まぁ貴族や特に商人は悪どくいって大体相場で決まってるし。心して臨む!
日本の異世界サーチを侮るなかれ!
「、、、ふぅ、パーティーフェスティバルは2カ月後、王都で開かれる。
各貴族家が自分の領内のギルドに所属しているパーティーの中から1パーティー選出し、自らの代表とする。
現在、領地を持つ貴族家は64家あり、トーナメント式で戦うことになっておる。
パーティーメンバーは4~7名にするように。とのことじゃ。」
そんなのに全員従うのか? 莫大な報酬が出るとかだろうか。
、、、それなら出ても良いな、、、
一応勇者だし。死にはしないだろう。たんまり報酬貰って、田舎でスローライフしたい!
64家ということは、出場するパーティーは全部で64つ。
それがトーナメント式だから、、、うそっ、勇者になるのに6回も戦わないといけないの!?
それが2ヶ月後ねぇ…
はぁ。
またひとつ、ため息が出た剣人であった、、、
ドン☆マイ!! DON'T MIND!
「仲間が必要」ということに剣人が気づくのは数秒後の話。
――――そのまえにあの像が何か聞いていい?
明らか(神のときの)フランだよね? 顔そのままなのに、一部を強調しすぎじゃない?
もっとぺったん((殴
自重、したまえ、剣人!