3脱出
「あっ、あの、」
「ひぃぃ!」
剣人は(けんとっしーの)決めポーズを取っていたので、余計びっくりした。
木陰に潜んでいた少女が姿を現す。
「あの。、、勇者様で、いらっしゃいますか?」
「ごほっ、、、えっと、、君は、、」
「ぁぁああの、その黒髪は、地毛、ですか??」
「え。そう、だけど??」
「あ゛あああっっっ!!!!」
「なっ!えっ?」
少女は人目もはばからずに、悶絶した。可愛さのかけらもなく。
(何なんだ、この子は。
、、、身長は俺より少し小さいくらいで、うす茶の長い髪を後ろで纏めている。虹彩は青色の、18歳くらいの女の子。剣をぶら下げている所からして何か狩りをしていたのだろうか。
、、、ハンター、とか???この世界にならいるかもしれない。
実は「HUNTER×HONTER」のリアル型脱出ゲームに、明後日行く予定だったのだ。、、、行けなくなったけど。。。
あ゛あああっっっっ!!!!行きたかったよぉぉー。まぁ、、しょうがないか。生姜無いのか。、、
俺は、子供の頃からハンバーグよりしょうが焼きが好きという清純派である。
うん。ちょっと自慢にしている<(`^´)>エッヘン。)
「あの?勇者様、大丈夫、ですか?」
あ。、、、
「うん。大丈夫。っハッ、ハクションッ」
「あわわわ、そんなずぶ濡れでは風邪を引いてしまわれます!私の家に、来ていただけませんか?」
(そうだ。俺、ずぶ濡れだった。
ていうか寝るとこ探さないといけないんだった、、完璧に忘れてたよ、、俺、、、
付いてって大丈夫、かな?
知らない人についてっちゃダメ?
え、でも、森で死ぬよりよくない?
『人生三周目、知らない森の木になりました!』とかヤダよ?)
・・・かくして剣人の町行きが決まった。いかんせん、自身の生存能力を低く見積もる癖があるようだ。
「森の外に馬車を待たせているので、それに乗りますね。」
「はぁ、馬車、、」
(・・・シンデレラ?白雪姫?そんな感じの話に出てくるよな?
ふいに周りの木々を見渡しながら、剣人はそんなことを考えていた。
その少女は歩き慣れているようで、ずんずん森を抜けていく。その頼もしい姿に、剣人は懐かしい光景を重ね合わせていた。
(、、、言い方がありきたり?いやこうでもしないとこの話、入れれないんだよねw(謎))
、、、もう笑うとこないよ?
姉上様との思い出。
剣人、5歳。ある日のこと。
「けんちゃん、男の子でしょ?泣かないの」
「うぐっ、でも、」
「あのね、女の子はかわいい顔が台無しになっちゃうから、泣いちゃダメ。
男の子は立ち向かう勇気をも、涙が流してしまうから、泣いちゃダメ。耐えて耐えて、踏ん張りなさい。」
「あ、、、」
「ね?」
「うん。」
どういう経緯でこの言葉を言われたのかはもう忘れてしまった。
当時の俺にはそれはそれはかっこよく聞こえたのだが、今考えてみれば根拠のない言いがかりだった。
それでも、『勇気をも、涙が流してしまう』というのは綺麗な言葉だと思ったのだ。
――――俺はもともと「勇気」なんて持ってないから涙で流せないぜ☆
「―――様。勇者様?」
馬車を待たせていた所に到着したため、少女が剣人に話しかける。
(おっとー!(ほぼ)初対面女子からの攻撃!剣人選手、妄想からどうやって現実に戻る!?(実況:俺))
「あは」
笑って、ごまかしたーーー
8,9,10,カンカンカンッッ
「?楽しそう、ですね。」
「えっ?」
「どうぞ、乗ってください」
「あ、はい。」
生ぬるい風が剣人とその少女の間を通り抜ける。
剣人は少女が乗ってきたという、2頭の白馬が紐で繋がれている馬車に乗り込む。
(全然、カボチャじゃない。観覧車のガラス無しみたいな。、、、こっわ。)
「お嬢様、伯爵家の方で宜しいのですか?侍女からはセノンの森に行かれた後、ゴージの森に向かわれると伺っておりましたが、、、」
執事さん、、御者であろう男性が少女の荷物を受け取りながら、話しかける。
(お、お嬢様って言った!?)
「えぇ。家でいいわ。この人にブランケットを用意してあげて?」
「?、っ!いやはや、勿論でございます。」
そのTHE執事ってカンジの人は俺の方を一瞥した後、そう言って、ブランケットを持ってきてくれた。よく分からないが、小さな温かみに安堵しつつ、窓の外に目を見張る。
森を出始めたあたりから、誰かに見られている気がするのだ。上から?
「じゃあ、出発しますね。オリバーさん、お願いします!」
「はい。」
剣人を乗せて、馬車は動き出す。剣人の視線は空に。
――――――え。
「ちょ、ちょっと、待ってください!」
そう叫んだ途端、馬車は止まり、窓から、赤い鳥が入ってくる。
ふわりとブランケットの上に着地し、
「ちゃんと転生できたのね。」
そう、言った。
、、、しゃべった!?!?