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再生 86 蒼の堕天使

鳴尾と中西の手合わせが終わり、麗、梁木、滝河が階段を上がっていると、扉の前で倒れている大野を見つけた。

麗と大野は互いに起きたことを話し、大野は麗についていくことにした。

目の前にある重厚な扉が大きな音をたててゆっくりと開かれると、そこには月代が立っていた。



月代がいる。

麗達に緊張が走った。

誰が来るのか分かっていたように月代は睨んでいる。

相手はマリスの能力を持っている。物語ではルシファーと呼ばれるものの力を得て、街を壊滅した後、レイナに手をかけてしまう。

無意識のうちに麗達は警戒した。

先程の場所と同じように、先には上に続く階段がある。

月代との戦いを避けて上に向かいたいが、戦わずに先に進むのは難しいだろう。

麗達が考えていると、麗の後ろにいる滝河が月代に聞こえないように呟く。

「お前ら、俺があいつを引きつける。その間に先に行け」

「えっ?!」

麗は驚いた。

それは物語の中で、マリスを前にマーリが言った言葉に似ていたからだった。

「残りは高屋、結城先生、神崎先生の三人だ。何があるか分からない」

生徒会の中で残るのは高屋、結城、神崎だ。

滝河の言うように他に誰がいるか分からないし、悩んでいるより先に進んだ方がいい。

「凛を見つけろ」

滝河の顔が語っている。

言葉は違えど、皆の気持ちは同じだ。

麗が頷くと、梁木と大野も頷いた。

滝河は右足で地面を鳴らすと、それを合図に麗、梁木、大野はいっせいに走り出した。

「!!」

物語の通り、滝河の合図で麗達が駆け出すのは分かっていた。

月代は驚いたが、麗達を見ることはなかった。

麗達に意識を向けた瞬間、滝河は自分に向かって駆け出していたからだ。

月代が意識を集中させると、虚空から翡翠色の剣が現れる。それを握って両手で構えると、向かってくる滝河に剣を振りかざそうとする。

「…?!」

自分に向かってくる滝河を攻撃しようとした。

しかし、月代は目を疑う。

自分に向かっていた滝河の姿は消えていたのだ。

滝河の姿を探そうとした時、背中に激痛が走る。

それに気づいた時には月代は倒れていた。

月代は急いで身体を起こすと、自分がいた場所の後ろには滝河が立っていた。

僅かに右足が動いているのを見ると、恐らく、瞬時に背後に回って蹴ったのだろう。

滝河の口元が動いていた。

「(…来るっ!)」

先に手を打たれるとペースに巻き込まれる。

けれど、月代が考えるより先に滝河の魔法は完成していた。

「ダイアモンドブレス!」

言葉を発動させると、滝河の左手から無数の氷が生み出され、それは滝河の周りを囲み氷の刃の形に変わっていく。

それは思わぬ速さと不規則な動きで月代に向かっていく。

一瞬にして空間の空気が冷えていく。

危険を察知した月代は、ほんの僅かに躊躇った後、その言葉を呟く。

「隠された真実よ!」

その言葉に反応するように月代の背中が白く光りだすと、背中から白い翼が現れる。

それは神経が通っていた。

三月に結城によっ自分の背中にある白い翼を見たが、それ以降は確認していない。

「(昔のマリスとミスンの能力者だった奴と同じ白い翼…)」

覚醒していなかったり、敵に襲われていなかったわけではない。まだ神経が通っているということより、白い翼があるということが月代にとって引っ掛かっていることだった。

そんな考えを抱きつつ月代は翼を広げると、自分に向かってくる氷の刃を避けていく。

寒い。

そう感じた月代は自分が立っていた場所を見る。

「!!」

少し前まで自分がいた場所、というより、その回りは滝河が放って飛び散った氷の刃が突き刺さっていた。

「(上空にいる分、俺のほうが有利だ)」

月代はそう思うと、持っていた剣を構える。

翼を羽ばたかせると滝河に向かって下降していく。

「(あいつは翼がある。けど、剣を振り上げた時がチャンスだ…!)」

滝河な両足が青く光ると、力強く踏み込んで跳躍した。

何かに気づいた月代が剣を振り上げたまま下降する速度を落とす。しかし、それより早く、滝河は月代の腰を目掛けて身体を捻らせて蹴った。

「ぐあっっ!!!」

反応が遅れた月代は、そのまま弾き飛ばされてしまう。

翡翠色の剣は宙を舞い、消えていく。

滝河が地面に着地すると短く息を吐く。

滝河は月代を睨みながら、その人のことを想う。


「純哉、戦いは熱くなっもいいが冷静さを無くすな。それが、どんな状況でもだ」


その言葉は、いつも自分の中にあった。

「(分かってる。…でも、俺はあいつの、あんな顔は見たくない!!)」

彼女の顔を見てしまった。

あの時、爆発したように瞬間的に怒りがこみあげた。気づいたら、神崎に蹴りかかっていた。

真相は分からない。

彼女の表情を見ると、彼女の口から話せないことだろう。

けど、ただ一つ。

あんなに辛そうで苦しそうな顔はもう見たくなかった。

その時、月代の翼が動く。

翼を広げて立ち上がると、呪文を唱えずに魔法を発動させる。

「フレアブラスト!」

月代の周りから無数の炎の刃が現れると、滝河の真上に向かっていく。

炎の刃が滝河に降り注ぐ。

鏡牙(きょうが)!!」

滝河がそれをイメージすると、虚空から鏡牙が現れる。

滝河は鏡牙を握ると、地面に突き刺した。

突き刺した場所から冷気が吹き出すと、球状に広がり滝河を覆っていく。

すると、月代の放った炎の刃が冷気に反応して蒸発していってしまう。

冷気が空間に満ちている中、剣を突き刺したまま、滝河は再び踏み込んで月代に接近する。

「!!」

月代は一瞬で感じる殺気に怯む。

間合いに入られると、また蹴られるだろう。格闘術は自分には不利だ。

そう考えると、後ずさって翼を広げた。

「(冷気が霧みたいに濃くなっている。これを吹き飛ばさなきゃ!)」

滝河を覆っていた冷気が広がり、霧のように濃くなっている。

視界が悪いと、一瞬にして間合いに入られる。

月代は翼を羽ばたかせながら魔法を発動させる。

「ブレスウインドッ!」

月代の頭上に無数の風の刃が生まれ、霧を晴らすように宙を舞うと、冷気を拡散していく。

冷気が消えていくと、滝河が自分に向かって跳躍しようとするのが見える。

「?!」

それと同時に、地面に突き刺したままの鏡牙を見つけた。

月代が持つ翡翠色の剣は消えている。再び意識を集中させれば剣は出るだろう。

しかし、月代は地面に突き刺さる滝河の剣を抜くことを考える。

月代は翼を広げて滝河から距離をとると、地面に突き刺さる剣を抜こうとする。

滝河は月代が何をするか気づいて、剣を取りにいくわけでもなく、ただ月代を見て笑った。

「抜けるなら抜いてみればいい」

「(抜けるなら?そんなに重たいのか?)」

滝河は自分の剣を取られ、攻撃を仕掛けると思っていた。

けれど、滝河は動かない。急に動き出したり、呪文を唱える様子もない。

ただ、滝河の言葉が引っ掛かる。

滝河は地面に突き刺しただけだ。地面から抜けないくらい強く突き刺したとは思えないし、見たところ、それほど重たい剣には見えない。

月代はいつでも動けるように翼を広げたまま鏡牙の柄に手を伸ばす。

「?!」

柄を握って引き抜こうとした瞬間、目を疑った。

確かに目の前は鏡牙が突き刺さっている。

しかし、握ろうとすると剣はすり抜けていってしまう。

「だから言っただろう?」

滝河の声が聞こえる。

月代は驚いたまま、滝河を見た。

「!!」

月代は再び目を疑った。

滝河がしてやったりと言わんばかりの顔だったからではない。

さっきまで自分が掴もうとしていた鏡牙を、滝河が持っていたからだった。

月代はもう一度、鏡牙が突き刺さっていた場所を見る。

「………えっ?」

その場所には何もなかった。

さっきまでそこにあったはずだ。

「(あいつの剣は二本あるのか?それとも、転移したのか?)」

理由は分からないが、鏡牙は今、滝河が握っている。

「!!」

それが何を意味しているか気づいた月代は、翼を広げて上空に移動する。

下を向くと、滝河は月代の真下にいた。

鏡牙を構えているということは、後少し判断が遅れていたら斬られただろう。

呪文を唱えずに魔法を使うと、力の消費が大きい。けれど、呪文を唱える間も与えないほど、滝河の動きは速かった。

「(力と経験の差か?けど、外は真っ暗で満月が出ている。…多分、結城先生の力だ。今までより力が溢れている感じがする)」

以前、月代は結城に自分がラグマの能力を持っていて、時間を操ることができると聞いたことがあった。

それに、満月の日は力が満ちていくような気分になるらしい。

それは月代も同じだと思った。

今まで戦った時、満月が出ていると力を使ってもいつもより疲れないし、魔法の効果が大きく感じると思っていた。

月代にとって結城の存在は大きい。

「そうだ…」

一昨年の冬、情報処理室で初めて覚醒した結城の目を見て、心が奪われたようだった。

結城が覚醒すると瞳は黄金色に変わる。

その瞳に見られると目が離せなくなる。

物語に関わり、自分がマリスという少年の力を持っていると気づいた時、結城がラグマのように思えることが多くなった。

ミスンの能力者と遭遇した時、恐怖を感じた。

物語と同じことが起きたら自分はもしかしたら消えてしまうのではないか。

もう、結城の目に自分が映らなくなってしまうのではないか。

そう感じたのだった。


物語の通りになってほしくない。


何のために戦うのか。


あの人を失いたくない。

もう一度、あの人がくれた自分の証が欲しい。


「俺は…、あの人のために戦うんだ!!」

月代の目つきが変わる。

「エアロボム!」

月代が両腕を上げると、手のひらから巨大な風の球が現れる。

風の球を地面に投げつけるように腕を下ろすと、風の球は加速しながら地面にぶつかって爆発する。

腕を顔の前に出して強い風を遮ろうとしたが、滝河は鏡牙を構えた。

「!!」

強い風が吹く中、月代は再び翡翠色の剣を生み出して滝河に斬りかかる。

滝河は月代の剣を受け止め、力で押し返そうとする。

しかし、月代も押し返されないように翼を羽ばたかせながら押していく。

剣と剣がぶつかり合う。

月代は思いきり力をこめると、ほんの僅かに剣と剣が離れる。

月代はそれを見逃さなかった。

「エアーランス!!」

月代は両手で握っていた剣を右手に持ち替えると左手を前に突き出した。

月代の周りに幾つもの風の槍が現れる。

「!!」

滝河は驚くが、すでに月代と距離を縮めようと近づいていて避けることができなかった。

幾つもの風の槍が滝河に直撃する。

腕や足、顔が切り裂かれ、そこから血が流れる。

痛みに耐えながら、それでも月代に斬りかかる。

月代も再び両手で剣を握る。

「(前にも似たようなことが…)」

剣と剣が交わり合う中、月代はぼんやりと思い出す。

滝河に似た人物が地面に倒れ、自分はそれを見下している。

「(誰だ…?)」

夢の中のできごとのように抽象的なことなのに、それが自分が体感したような感覚だった。


黒い翼の堕天使。


自分を映す黄金色の瞳。


はっきりと思い出そうと考えていたが、その思考は遮断された。

「しまった…!」

思わず声が出てしまう。

戦いにおいて思考が止まるのは、隙を見せるということだ。

滝河は月代の意識が散漫になっているに気づいていた。

滝河は力を加えて月代の剣を弾くと、鏡牙を握っていた手を放してしまう。

「剣を放したっ?!」

月代は滝河が剣を放したことに驚いたが、そのまま距離を縮めて斬りかかろうとした。

その時、滝河の手から離れた鏡牙から剣と同じくらいの長さの水晶が現れる。それは、滝河を囲うように分裂すると水晶の壁に変わっていく。

月代の剣は水晶の壁によって弾かれてしまう。

水晶の壁が光ると滝河は言葉を発動させる。

「フリーズランス!!」

水晶の壁から無数の氷の槍が生まれ、それは月代を向かって放たれた。

「(今から詠唱しても間に合わない!)」

無数の氷の槍が近づく中、月代の周りに風が集まり弧を描く。

「ホーリーウインド!」

月代は剣を右手に持ち変えて左手を前に出すと、魔法を発動させる。

それは月代がよく使う魔法だった。

しかし、何も起こらなかった。

月代の周りに集まる風も消えていってしまう。

「(魔法が発動しないっ?!)」

月代は信じられなかった。

呪文を唱えても唱えなくても発動させることができていた。

力が減っている感覚はない。むしろ、力が溢れているくらいだ。

どうしてかは分からない。

考えようとした時、目の前に無数の氷の槍が迫っていた。

避ける間もなく氷の槍は直撃すると、月代は吹き飛ばされてしまう。

「ぐああぁーーーーーっ!!!」

剣は転がり、背中から落ちてしまう。

地面に転がったまま動かない。

「はあ…」

月代が倒れて動かないことを確認すると、大きく息を吐いた。

まだ油断はできない。

麗達を先に行かせたが、できるのなら月代が気を失って倒れてくれればいいと思っていた。

そうすれば、階段を上って麗達に追いつくことができる。

「それにしても、月代も強くなっていたか…」

高等部に在学していた時から月代は知っていたが、覚醒した姿をあまり見たことがなかった。

「物語でマリスはルシファーの力を得た。こいつも、同じになるのか…?」

ルシファーの力を得たマリスは、その強大な力をもってレイナ達を(おびや)かす。

そして、ルシファーの手にかかりレイナは死んでしまう。

レイナの能力を持っているのは麗だ。

物語と同じことが起きてしまうなら、麗も死んでしまう。

自分も含め、皆はそれを恐れていた。

さっきから月代を見ているが、動く様子はない。

「まだ動くかもしれない。けど、早く追いつかなきゃな」

起き上がらないという保証はないが、今は麗達に追いつきたい。

滝河は警戒しながら上に続く階段を見る。

自分と階段、月代と自分の距離を考えた滝河は強く踏み込んで走り出そうとした。


その瞬間、滝河の身体に衝撃が走る。


それが何か、どんなものか、振り返って意識をする前に目の前が真っ暗になっていく。

倒れていく滝河の後ろで、彼の身体からは黒く光る衝撃波が吹き出していた。

滝河は倒れ、倒れた場所から大量の血が流れだす。

それがゆらりと動いたその瞬間、滝河と彼の真上に見たこともない模様の魔法陣が現れる。

魔法陣から柔らかい光が現れると、滝河と彼の身体を包むように囲っていく。

『!!』

それは驚いて頭上を見た。

筒状に包まれた柔らかい光は壁のように厚い。

ふと何かがあることに気づき、彼は足元に気づいた。

彼の両足には足枷がついていて、鎖は壁と繋がってる。

彼は自分と同じように光の壁に囲まれている滝河を見た。

よく見てみると傷口が塞がり、地面に広がる血は止まっている。

彼の身体の傷口も塞がっているが、足枷がついているのは自分だけだった。

「(壁を壊すことなど容易(たやす)いが、この身体がもつかどうか…)」

そう意識を働かせていたが、突然、意識を引き離されるような感覚に襲われる。

「(まだ精神が抗うか…)」

頭が割れるように痛い。

視界が歪んでいくと、虚ろな瞳に光が戻る。

立っていることができずに身体がふらつくと、月代も倒れてしまう。

月代が倒れた場所には一枚の黒い羽根が落ちていた。



「……?」

麗は飛行魔法を使って宙に浮き、階段を進んでいた。

さっきはひたすら真っ直ぐ続く階段だったが、今は螺旋階段が続いている。

階段も壁も同じ色で、本当に上に向かっているのか分からなくなりそうだ。

そう思っていると、誰かが自分を呼んだような気がした。

麗は振り返る。

「…どうしましたか?」

麗の後ろにいる梁木は、前触れもなく振り返ったことに驚く。

「あ、ううん。なんか、呼ばれたような気がしたけど…気のせいだよ、ね」

麗は後ろを見ながら答える。

大野も後ろを振り向いたが誰もいないし、人の気配もない。

「もしかしたら、中西先生か滝河さんでしょうか?」

大野は可能性として二人の名前を挙げる。

中西と鳴尾がいた空間、滝河と月代がいた空間、そしてこの階段が繋がっているなら中西と滝河が追いついてきたのかもしれない。

「声は聞こえないし、気のせいかも」

もしも、中西や滝河なら声をかけるはずだ。

それよりも、ずっと続く螺旋階段の先が見えないことが不安だった。

このまま同じ場所をぐるぐると回っているかもしれない。

誰かの術にかかってしまったのかもしれない。

麗は焦っていた。

凛が操られ、神崎と高屋に連れ去られてしまった。

始めは連れ去った目的が分からなかったが、今年の三月、凛が神崎に呼び出された時のことを思い出す。

立入禁止とされている白百合の間を開けるために凛を呼び出した。

神崎や結城が試しても強大な力によってドアノブにさえ触れることはできなかったが、凛が触れた時には鍵がかかっていて開けることはできなかったものの、ドアノブに触れることができたそうだ。

その話を聞いた時から疑問に思っていた。

「(神崎先生や結城先生が触れなくて、凛は触ることができた。何かの力っていうことは物語に関係してて、結界が張られてるとか?)」

麗が透遥学園に編入した時から、中央階段の上にある白百合の間は立入禁止になっていた。

それまでは開かずの間と言われていたが、ある時、誰かが見に行ったら百合の香りがしたという話を聞いてから白百合の間と呼ばれている。

以前、白百合の間の手前まで行ったが、当時、能力者だった内藤に呼び止められた。また、今年の学園祭の後の時は、白いドレスを着た少女を追いかけた時も階段の手前まで行っただけだった。

凛を操ってまで連れていくということは、また白百合の間が関係しているのかもしれない。

色々と考えていると、やや後ろのほうで梁木の声が聞こえた。

「レイ!」

考え事をしていて周りを見ずに進んでいたが、梁木の声に気づいて振り返ると、梁木と大野は飛行魔法を解除して階段に足をつけていた。

梁木と大野が壁を見ている。

麗も飛行魔法を解除して二人に近づく。

「これ…」

考え事をしていて気づかなかったが、梁木と大野が見ていた先には重厚な扉があった。

「梁木さんが見つけるまで気づきませんでした」

大野は梁木の後ろにいて、周りに何かないか注意深く見ていたが、梁木が声をだすまで気づかなかった。

「何か嫌な気配がします」

梁木は扉を睨んでいる。

それと、微かに何か匂う。

「行ってみる?」

このまま螺旋階段を上がっていても何も見つからないかもしれないし、この扉自体が罠なのかもしれない。

「今は凛さんを見つけるのが先です。行ってみましょう」

麗が扉に触れようとする前に、梁木は二人の前に立った。

息を飲み、扉に触れようとした時、扉はひとりでに開きはじめる。

大きな音をたてて扉が開くと、そこには海が広がっていた。

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