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再生 56 光へと導く疾風の弓矢

夢の中で、私は制服を着たままベッドに腰かけていた。

夢だと思ったのは自分の部屋なのに前にも同じことがあったと思ったからだった。

「(前も確か…)」

「ピンポーン」

前も夢で自分を呼ぶ声がした。そう思っていると真横から楽しそうに囁く声が聞こえる。

左耳に吹きかかる息と声に驚いて思いきり振り向くと、いつの間にか、隣には人間の姿をした地の精霊ノームがベッドに腰かけていた。

「……ノーム?」

「あれ?あまり驚かなかったかな?」

「…まさか隣にいるとは思いませんでした」

左耳を押さえながら大野は半身を反らしただけだった。

「大野ちゃんの夢の中だしね」

ノームは以前と同じ、藤堂渉という人間の姿をしていた。

「でもさー、渉って呼んでって前も言ったような気がするんだけどー?」

ノームはやや不満そうな顔で大野を見ている。

「誰かを名前で呼ぶことはしません」

「一部の人はね」

否定はしなかった。

トウマは自分にとって尊敬や憧れに似ている感情を抱いている人だ。ターサがスーマを慕うように、自分もトウマを苗字ではなく名前で呼んで慕っている。カズとフレイはトウマから紹介されて知ったので本名を知らなかった。

「最近はもう一人増えた」

同じ能力者として出会った水沢麗に双子の妹が編入してきた。苗字で呼ぶと二人とも返事をすると思った大野は二人を名前で呼ぶことにしたのだった。

「初めは同じ能力者として、相良君が仲良くしてるから、そんな簡単な理由だ。 けど、月日と物語が進んで考え方は変わった」

物語を読んでいたから、最初は同じクラスになったから麗の代わりに凛を見ていようと思う程度だった。

「誰かに言われたから、誰かに頼まれたから。今まではそうだったかもしれないけど、それ以外の考えが生まれた」

麗達や大野の考えを知らずに、凛は大野や麗の周りにいる人達と仲良くなっていった。姉の麗に似て、優しく気さくに接する姿は自分もそうなりたいと思うくらいだった。

「視野が広がるのは良いことだよ。今は水沢凛とただ純粋に仲良くしたいと思ってる」

ノームははぐらかしたりせず、真面目な表情で話している。

「(ノームのこんな表情見たことない)」

ノームの言っていることは間違っておらず、言い返すことができなかった。

「今、相良君はいないよね?大野ちゃんはどうしたい?」

ノームに言われてはっとする。

約二週間前、作戦は失敗に終わり、トウマはスーマの能力と覚醒してからの記憶を失ってしまった。

それと、水沢凛がティムの能力者だったことが重なり、自分も麗達もショックが大きすぎて立ち直ることができなかった。

今まで自分の意思を言ったり主張をほとんどしなかった大野は考える。

「トウマ様の代わりにはなれません。それでも、私は皆さんと一緒に戦いたいです」

「また闇に屈するかもしれないよ?」

大野はトウマが闇の精霊に操られたことを思い出す。闇の精霊はトウマの身体をのっとり、大野の目の前でトウマの身体を傷つけていた。

思い出すと今でも胸が引き裂かれそうな気分になる。

大野は俯きながら考え、苦しそうに眉間に皺を寄せる。

大野が考えてる間、ノームは何も言わずに大野を見ている。

「それでも私は戦います」

「良い目だね」

答えを出す大野を見て、ノームは満足したように笑うと大野と距離を縮める。

「強くなる君が好きだよ」

距離が縮まったことに驚いた大野はノームから離れようとする、しかし、それより早くノームは大野を押し倒してしまう。

「ち、ちょっと!一体、何を……」

驚いた大野は自分の肩を押さえるノームの腕を振りほどこうとした。

「大野ちゃんを見下ろすのも悪くないね」

ノームは大野を見て嬉しそうに笑っている。

「離してくださいっ!」

恐怖というよりただ恥ずかしくて嫌な気分だった。

「嫌だ。もっとその顔が見たい」

ノームは振りほどこうとする大野の手首を掴むと身体を近づける。

「それでも、僕は相良君に嫉妬しちゃうなあ」

にっこり笑っているのに、目は笑っているように見えなかった。

「君が誰かを名前で呼ぶ時は区別をする時だ」

「区別だなんて……」

しているつもりはない。

そう言おうとする前に、ノームの顔が少し近づく。

「君の特別になりたい」

ノームの困った表情を見て、大野は何故か胸がちくりと刺さるような気分になり、驚いて力を緩めてしまう。

「素直になればいいのに」

ノームの顔がゆっくり近づいてくる。

「君は僕のものだけど、僕は精霊だから力を使わなきゃいけない時もある」

恥ずかしくて振りほどきたいのに、翡翠色の瞳から逃げられなかった。

ノームが次に何かを言おうとした時、目覚まし時計の音が鳴り響く。

それに気づくと、大野はゆっくりと目を開けていた。



二月に入り、冷たい風が身に染みるようになってきたある日、麗は自分の席から窓の外を見ていた。

凛が能力者だったという事とトウマが封印された事で頭がいっぱいだったが、半月が経つとようやく少しずつ気持ちを落ち着けさせることができるようになった。

ホームルームが終わり、図書室に寄るか寮に帰ろうか考えていると、麗の周りに二人の女子生徒が近づいてくる。

「水沢さん」

「はい」

彼女達は一年の時に同じクラスだった。

「もうすぐバレンタインだけど、水沢さんは誰かにあげるの?」

「…えっ?」

妹とトウマのことで頭がいっぱいだったが、二月に入るとバレンタインの話も出てくる。クラスメイトに言われて麗はバレンタインの事を思い出す。

「水沢さん、よく梁木君と一緒にいるけど、付き合ってるの?」

「え…、えーーーーっっ!!!」

去年は梁木やトウマ達にあげていた。一年前のことを思い出していたが、クラスメイトの言葉に声を出して驚いてしまう。

教室中に響くような大声ではなかったのが幸いだったが、突然言われた言葉に驚きを隠しきれなかった。

「わ、私が梁木君とっ?!」

物語に関わるようになって梁木と出逢い、同じ境遇を持つ理解者として休み時間や放課後に話したり連絡をしてるけど、好きという意識をしたことはなかった。

しかし、クラスメイトはにやにやしながら麗を見ている。

「梁木君は去年は違うクラスだったし、二人とも部活や委員会で会った話は聞いたことないし」

「水沢さんと梁木君と他のクラスの人と話してるのを見るけど、二人は付き合ってないの?」

そんなつもりはなくても、周りには付き合ってると思われているらしい。麗はようやく気づいた。

麗は梁木にフォローをしてもらおうと後ろを振り向いたが、梁木はちょうど教室から出ていっていくところだった。

「べ、別に付き合ってないよ。そんな気持ちとかまったく無いし」

どうにかしてはぐらかそうとするが、麗の反応を見たクラスメイトは納得していない様子だった。

「本当?」

「去年はチョコチップクッキーたくさん作ってなかった?今度の調理実習で伊藤先生がカップケーキ作るって言ってたし、誰かにあげるの?」

去年も同じクラスだったから、調理実習の授業で何を作ったか覚えているものだし、自分がいくつ作ったのも見られていたのかもしれない。

去年はトウマ、カズ、フレイ、梁木、それと、何故か残った一つを高屋に渡した。高屋のことを考えるとよく分からないというのが一番だった。操られたり、助けてもらったり、学園祭で一緒になって頑張ったり、つい最近はトウマを封印した。生徒会にいるということは自分の敵かもしれない。でも、悪い人だと思えなかった。

「うーん…別に異性だけがあげる対象じゃないし、今年は妹や中西先生にあげようかな」

去年のことを考えながら、麗は必死に話題を反らそうと考えていた。

「あ、確かに妹にあげるのはありだよねー」

「中西先生、男子にも女子にも人気だから今年もいっぱいもらいそうだよね」

クラスメイトの二人は納得するように頷いている。話題を反らすためとは言え、学園内に身内がいることはあるし、中西は女性だが女子生徒にも人気があり、実際に去年のバレンタインデーには多くのチョコレートをもらっていた記憶がある。

「あ、部活行かなきゃ」

「水沢さん、また明日ねー」

クラスメイトの二人は部活があることを思い出すと、手を振りながら急いで教室から出ていった。

「バレンタイン、か…」

思いのほか早く納得してくれたクラスメイトに手を振りながら、麗も鞄を持って教室から出ていく。

教室を出て廊下を歩いていると、遠くで複数の女子生徒を見つけ、その中で一人の少女に目がいく。

「あの人…」

それは、トウマが封印された時に礼拝堂にいた少女だった。

麗の視線に気づいたのか、少女は麗に気づいて軽く会釈をして歩いていく。

「橘あやめさんです」

麗が驚いていると、後ろから佐月の声が聞こえる。

「佐月さん」

麗は後ろを振り向くと、そこには佐月がいた。

「一年の時のクラスメイトが彼女のクラスにいたので聞いてみたんです」

「同い年だったんだ」

あの時、制服で高等部の生徒ということは分かっても、学年や名前まで分からなかった。

「今のところ敵とは判断できませんが、彼女がミスンの能力者なら油断できませんね」

佐月は険しい表情で彼女が歩いていた方を見ている。

「うん…」

物語でミスンはマリスを探すためにレイナ達と行動を共にしていたが、敵か味方か分からないままミスンは特別な術を使ってマリスの中に消えてしまう。

「麗様、帰りですか?」

「図書室に行ってから帰ろうと思って」

「あたしは部活があるので、せめて図書室まで一緒に行きます」

トウマが封印されて以来、佐月は部活や用事がある時以外、麗の側に居ようと考えていた。

「うん」

麗は佐月の考えを理解することができたし、誰かと一緒にいたほうが安全だと思い、断ることはしなかった。

二人は階段を下りずに廊下を歩いていく。


数分後、ホームルームが終わり、大野と凛が教室から出てくる。

大野は夢のことを思い出しながら、ぼんやりと凛の背中を見ていた。

「(…彼女は私が能力者だと知ったら)」

トウマの計画が失敗に終わり、凛が能力者だと知ってから、大野は凛を見るようになった。

彼女に何かあれば自分が彼女を守らなきゃいけない。

しかし、それより自分が能力者だと知られた時、彼女は自分から離れていってしまうんじゃないかと不安になっていた。

大野が考えていると、凛が後ろを振り返る。

「大野さん、最近、なんかあった?」

「えっ?!」

凛が急に振り返って驚いた大野は、自分が思っていたより大きな声を出していたことにも驚く。

「なんか、よく目が合うなって思っただけなんだけど」

大野の考えを知らない凛は少しだけ疑問に思う。

「い、いいえっ!」

大野は慌てて首を横に振って答える。

「…そう?」

特に気にしていない様子の凛を見てほっとする。

「大野さんは、そのまま帰る?」

「あ、私は日誌を職員室に置いて、礼拝堂に寄ってから帰ります」

「日直だったもんね」

大野の左手には黒い日誌を持っている。用事がなければ凛を寮まで見送りたいくらい心配だった。

「(これ以上、彼女に何かあったら…)」

大野はそう考えながら階段を降りていく。

「じゃあね」

「はい、また明日」

二階に着くと、挨拶を交わして大野は職員室に向かって歩いていく。


大野と別れた凛は階段を下りて一階に着くと、どこからか歌声が聞こえる。

「……歌?音楽室は五階なのに」

周りを見るとあることに気づく。

「…誰もいない」

ホームルームが終わったばかりなら、まだ多くの生徒が校内にいるはずなのに、辺りを見回しても誰一人いなかった。

凛の瞳は鮮やかな青色に変わっていた。

「もしかしたら結界が張られたのかな?」

周りに誰もいないことに不安を抱いたが、凛は歌声が聞こえる方へ向かって歩いていく。

廊下を歩き、食堂が見えると右を向いた。

「こっちってプール?歌声…大きくなってる」

校舎を出てプールがある建物に入っていく。

「外…じゃない。第二プールのほうだ」

扉を向こうで歌声が聞こえる。凛は勇気を出しておそるおそる扉を開く。

扉を開くと、そこには海が広がっていた。

「う、海っ?!」

普段は屋外と同じくらいのプールがあるはずなのに、今は床もプールも見当たらなかった。

一歩踏み出すと、水を弾く音がする。

「あれ…」

凛は驚きつつ、海の真ん中に浮かぶ光のようなものを見つける。よく見ると、それは身体は透けていたが上半身は人間、下半身は魚のような女性がいた。

「に、人魚…?」

それは、小さなハープを弾きながら歌っていた。

人魚のようなものが凛に気づくと、目を見開くように笑い、ハープを激しく弾き鳴らし始める。

「何……これ…!」

音楽とも言えない音と歌声を聞いた凛は、顔を歪めて両手で耳を塞ぐ。

「頭が割れそう……」

両手で耳を塞いだまましゃがみこもうとした時、凛は自分の身体が勝手に海の真ん中に向かって歩いていることに気づいた。

「身体が、勝手に動いてる?」

足に力をいれて踏ん張ろうとするが、凛の意思とは関係なく足はどんどん海のほうへ進んでいく。

「弓矢を出したいのに…頭が痛くて手を離せない…」

弓矢を使って攻撃できたら何か起きるかもしれないと思っていても、響き渡る歌声とハープの音に両手を離すことができなかった。

「……どうすれば?」

必死に足を踏ん張りながら、どうすればいいか懸命に考える。

「あたしに魔法が使えたら…。結城先生は頭の中に魔法を使うための言葉や魔法が浮かんくるって言ってたけど…」

結城の言葉を思い出して、凛は目を閉じて念じるように考えた。

その時、凛の頭の中に声が聞こえる。

「名前ヲ呼ンデ!」

その声がどこから聞こえたか、誰の声か分からなかったが、考えるより先に凛の口が開いた。

「シルフ!!」

突然、頭の中に白と水色を合わせたような淡い光が浮かびあがり、凛の頭上に魔法陣が描かれる。

周りに風が巻き起こると、魔法陣から白のような水色の光が現れて人の形に変わっていく。

白に近い水色の瞳と長い髪に透けた身体と尖った耳、そして、風のようなドレスを纏っているそれは凛の顔を見た。

「我ハ風ノ精霊シルフ。光アル風ニ身ヲ包ミ、翼ヲ創リシ輪廻ノ者ナリ…」

「風の、精霊……?」

初めて精霊を見た凛は、その姿に口を開けて驚く。

ハープを弾きながら歌っている人魚のようなものもシルフを見て驚いている。

「貴方モ初メテガ我ダッタ…」

シルフは凛に聞こえないように呟くと嬉しそうな表情を見せる。

「汝、何ヲ望ム?」

どうして精霊が現れたか、話し方や見た目で女性と分かっても彼女が敵か味方か分からなかったが、今、思ったことは一つだった。

「…あの音と歌声を止めて!!」

凛が声をあげるとシルフは頷き、風のように動く。

シルフが腕を振り上げると小さな竜巻が起こり、人魚のようなものの周りを囲むと、そのまま両腕と身体を締めつけて動きを封じてしまう。

人魚のようなものは歌うのを止め、身動きが取れないことに焦り始める。

「ハープの音と歌声が消えた…?」

ハープの音と歌声が消えたことが分かると、凛は両手を離してシルフを見る。

シルフは凛の胸元を指している。

「……そうだっ!」

凛はあることを思い出して意識を集中させた。首から下げているネックレスが光り、弓と矢に姿を変える。

弓を構えて羽根を持つと、すっと矢を引いた。凛の視線の先には人魚のようなものがいる。

右手を離すと矢から風が吹き出して渦が巻き起こる。矢は三本に分裂すると、勢いを増して加速していく。

加速した矢は動けない人魚のようなものに直撃すると、人魚のようなものは胸元を押さえながら苦しみ、悲鳴をあげる。

やがて、人魚のようなものは苦しみながら光に包まれ、そのまま黄金の弓矢の中に消えていってしまう。

やがて、目の前に広がる海が消え始め、そこには見慣れたプールが現れる。

「消えた……?」

弓矢は再びネックレスに形を変えて、凛の首にかけられる。

「汝ニハ精霊ヤ特別ナモノヲ召喚スル力ヲ持ッテソウ」

それまで宙に浮いていたシルフは、凛の目線の高さまで降りてきて話す。

「精霊?召喚?」

「ソウ、自然界二存在スル魂ヤ力ノ源ノヨウナモノ」

物語を読むようになり、自分も登場人物のように魔法を使うのかもしれないとは思っていた。

どうやってそうなったか分からないが、プールだった場所が海に変わったり、身体が動かなくなったのもの、あの人魚のようなものの力なのかもしれない。実際、人魚のようなものが消えたらプールは元に戻り、頭痛も治まっていた。

物語で精霊が出てくるのは知っていた。それが、今、こうして目の前に存在している。

「ねえ、どうして………」

自分に力を貸したのか。

ネックレスが弓矢に変わるのを知っているのか。

初めて見たような気がしないのか。

凛は色々聞こうとしたが、頭上に浮かび上がる魔法陣が消えかかり視界が真っ暗になっていく。

「……………え?」

張りつめていたものが解かれたように、凛は意識を失って倒れてしまう。

「コレガ汝ノ、獣王(ビーストマスター)トシテノ力…。モット強クナッテ…」

シルフの身体がゆっくり消えていく。

「思イハ強クナル」

優しく笑うとふわりと消えていった。


「……わ、………水沢!」

「…ん」

誰かが自分を呼んでいる。

凛がゆっくり目を開けると、そこには滝河がいた。

「気がついたか?」

「…滝河さん?」

凛は滝河の顔を見て、それから今の状態に気づく。凛は滝河に抱えられていた。

「ど、ど、どうして滝河さんがここにっ?!」

凛は滝河がいることに驚いて、慌てて身体を起こす。

滝河は凛が目が覚めたことに安心したが、気づいたら無意識に凛を抱えていたことに気づき、触れている手を離す。

滝河は少し考えた後、視線を反らして答える。

「も、物音が聞こえたんだが…何かあったのか?」

「(滝河さん…、さっきの歌声やハープの音が聞こえてた?でも、結界が張られたか覚えてないし…)」

凛は座ったままさっきの出来事を思い返す。歌声が聞こえて第二プールに来て、覚醒して精霊を喚びだした事は覚えていても、結界が張られたいたか覚えていなかった。

「(覚醒したっていう事は結界が張られたと思うけど、海しか見えてなかったし…)」

「(大きな力を感じてプールに来たなんて言っても、こいつは能力者じゃないし、どう言えばいいか…)」

滝河と凛は互いを能力者ではないと思い、本当のことを言うのを躊躇っていた。

「な、なんでもないです!じゃあ、あ、あたし、失礼しますっ!!」

凛は慌てて立ちあがり、急いで滝河の横を通りすぎて走り去っていく。

滝河は俯いて走る凛の瞳がうっすらと青く光ったのを見てしまう。

「……えっ?」

瞳の色が変わる。

彼女を追いかけて聞くことはできたはずなのに、滝河はそれが信じられなくて呆然とするしかできなかった。

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