森の帝王1
初めまして山芋です。
ものすんごい遅筆なので二週間に1話位になるかと思います。
それでも読んでくれる人がいたら幸いです。
1話 記憶
澄みきった晴天だったのを覚えてる
何も無い田舎の畦道を、いく宛も無く歩いていた。
畑特有の匂いが鼻を擽る、
「ハァ〜」
思わず溜息が零れる。
「終わったな、俺」
いつかはこうなると思っていたが…
ほんの少し前には、人としての全てを持っていた。
今はその全てが無い。家、金、食料、衣服だってこの一着しかない。
なんで家から追い出されたかは、わからない。
ただ俺は家に引き篭もっていただけなのに。
元々、才能なんて無かった。運だけで入った、有名な進学校。
そこで俺は、学力が無い事を理由にいじめられていた。
上靴が隠される、机に有らんばかりの罵詈雑言を書かれる、
すれ違いざまに「死ね」「よく学校来れるなw」と言われる等は当たり前、酷い時には家の窓に玉子が投げつけられ俺のクリスタルなハートを縮み上がらせた。 引き篭もるのも当たり前だろう。
最初の頃は、母と父も俺の境遇を理解してくれていたのか、優しかったが、五年、十年と引き篭もっているうちに態度が変わり始めた。
そんなとある日のこと、いつもの様に部屋の前に置かれていた、冷凍され、ガチガチの御飯を齧っていた時、ドカァンと音を立てて扉を蹴破り、父が部屋に突入してきた。出来るだけ自分の聖域である部屋に入れたくなかったので必死に抵抗したが、
十年間引き篭もっていた自分と、安月給とはいえ三十年ずっと働いてきた父では、力の差は歴然だった。瞬く間に外に放り出され、訳が分からずポカンとしていた俺の前に絶縁状を叩き込まれた。
十年間引き篭もっていた俺が、家無し、金無し、何もなしで生きていけるはず無く、もう此処で力尽きようとしていた。
(あぁ、俺は此処で死ぬのか)
全身の力が無くなり、足がもつれ、倒れ伏せる。
そんな時に考えたのは、生きたいという願望ではなく、怨嗟の感情であった。
(チクショウ...何で俺がこんな目に...俺は...ただ引き篭もっていただけなのに)
そこで意識が途絶え、俺は、死んだ。
すごい短い(驚)