思い出の探し物2
続きです。よろしくお願いします。
「えっ、なっ……!?」
目の前にいるひと…、いや、ひとじゃない…!一体何者なの…?
「はぁ…、彼女が混乱してますわ。ちゃんと説明して連れてきたんですの?」
「はは、忘れてた。」
一番人型に近い女性がため息混じりに鬼に聞く。いや、鬼と勝手に言ってるけれど、鬼じゃないのかもしれない。
「いきなり連れてきてすまない。君から妖の臭いがしたものでね。俺はこの百鬼堂の主、鬼神 白夜だ。ご覧の通り、鬼だ。」
鬼だ、と言い切られてしまって、私はぽかんと口を開く。なんだか信じられない。
「私は雪女の氷室 凍李ですわ。ここの副店長を務めていますの。」
この女性は雪女らしい。そう言えば、真っ白な肌と真っ白な着物がいかにも雪女といった感じだ。
「あ、私はね、猫又の白尾 鈴!リンちゃんって呼んでにゃあ!」
そう言ってリンちゃんは2つに別れた尻尾を振る。人懐っこい可愛い子だ。
「オレはなぁ、ろくろ首の六条 伸二や。この店の金はオレが管理してんねんで!」
六条さんがカチャリと眼鏡を上げる。いかにもお金大好きな商人。
「なっ、どういう……っ!?妖怪ッ…!?」
私はもう何がなんだかわからない。妖怪なんて本当にいたのか。今まで私は見たことがないのに。
「はは、妥当な反応だ。普通、すぐには受け入れられないさ。見えないんだし。」
「えっ、で、でも、私見えてますよ?鬼神さんが外にいた時だって!皆さんだって!」
そうだ、外で声をかけられた時も姿を見ていた。あの時は人の姿だったけど。
「妖は人に化けるものですわ。そうなれば人間にも見えるようになりますの。まあ、あなたの場合は最初から見えていたようですけれど。」
氷室さんはそう言うけれど、今までで1度も妖を見たことは無い。だから、最初から見えていたなんてことは無いのだけど……。
「ああ、彼女は最初から見えていた訳では無いよ。」
「……どういう事ですの?は、白夜様まさか…!ちょっとこっちへいらっしゃい!!」
初めは怪訝そうな顔をしていた氷室さんが、何かに思い当たった途端サアッと顔色を変えて、鬼神さんを別室に連れ出す。
取り残された私は、六条さんとリンちゃんに勧められるがまま、座敷にあがってお茶を頂いた。はあ、落ち着く。
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「お待たせしましたわ。」
10分後、ぷりぷり怒る氷室さんとしょんぼりした鬼神さんが戻ってきた。一体何があったんだろう……。怖い。
「気にしないで下さいね。」
にこり。有無を言わさぬ氷室さんの笑顔がどうしても恐怖に感じる。
「さて、そろそろ本題に入りましょうか。貴女は百鬼堂の前で立ち止まっていたそうですが、何か困り事があるのでしょう?」
そう言えばそうだった。あまりの怒涛の展開に忘れかけていたけど、私がここにたどり着いたのはペンダントを探していたからだった。
「あの、ペンダントを落としてしまったんです。両親の形見で……。多分高校までの通学路に落とした筈なんですけど、全然見つかんなくて……。」
鬼神さんはふむ、と唸ってぷかりと煙管をふかす。そして、もしや…と呟いて口を開いた。
「君は高校への道のりに桜川を通るかい?」
桜川…確かに高校までの通学路にある。それに、私はよく土手に座ってぼうっとすることがあった。
私がこくりと頷くと鬼神さんは「やはりか。」と呟いた。
「……あの川には厄介な妖がいるんだ。君がよく通るのというのなら、君についていた妖の臭いは恐らくそいつのものだろう。」
「え……、でも、私あそこを通った時に妖を見たことなんてありませんよ?」
生まれてからずっとあの桜川を通ってきたが、1度も妖を見たことなんてない。
そう言えば、さっき鬼神さんが「彼女は元から見えていた訳では無いよ」と、そう言ったけど、それもどういう事なんだろう……。
「まあ、その事については一旦置いておこう。問題はその妖がキラキラした物に目がないことでね。」
「じ、じゃあ、私が落としたペンダントをその妖が拾った、って事ですか?」
その妖ってどんな奴なのだろう。怖い妖なのだろうか。
「その可能性は充分にある。まあ安心するといい。我々は前にも奴と関わったことがあるし、奴は凍李に頭があがらない。」
ほっと安心してから、私はあることに気が付いた。まるで当然のように言っているけれど、違うのだろうか。
「それって……、取り返すの、手伝ってくれるってことですか?」
鬼神さんは応えない。笑みを浮かべてぷかぷかと煙管をふかすだけだ。
「お願いします……っ、ペンダント、取り返して下さい……!」
ここで諦めてしまったらもう二度と取り返せないかもしれない。でも、私だけじゃ無理だ。相手がもしも私に襲いかかってきたら、太刀打ち出来ない。
私は縋るように鬼神さんを見る。
「ご依頼、承りました。」
ぷかり。煙管をふかした鬼神さんが私に笑いかけた。
どうでしたでしょうか?
次の話もいつになるかわかりません。でも続くよ!