思い出の探し物
妖怪が出てきます。苦手な方はご注意下さい。
「どうしよう……。」
大切な物を無くしてしまった。あれは両親の唯一の形見なのに…。
私、百合崎 琴葉は今、叔父の元で暮らしている。両親を火事で亡くした私を、叔父が引き取ってくれたのだ。
火事で何もかも燃えてしまったけれど、母が握りしめていたペンダントだけは燃えずに残った。私と両親の写真がはめ込まれたペンダント。
(あれだけが、形見なのに……。)
それを無くしてしまった。どこで落としたのかも見当がつかない。
そこにたどり着いたのは、なかなか見つからなくてついに泣きそうになっていた時だった。
(ひ、百鬼堂……?万屋、ってことはなんでも屋、みたいな……?)
少し禍々しいような店名に、思わず立ち止まる。
日本家屋みたいで、一見すると老舗の和菓子屋のようにも見える。
「何か用かな?」
そんな時だった。背後から聞こえた男の声に、私は勢いよく振り返る。
「何か困り事かい?」
私に微笑みかける男は、世界から浮いているように見えた。
和服で煙管をふかす姿は、ビルが立ち並ぶここじゃあまり見かけない。何より、真っ白な髪と真っ赤な瞳が浮世離れしている。まるで人間じゃないみたい……。
「ここは万屋だ。困り事なら力になれる筈だよ。」
「あ、えっと……、落とし物を探してて……。」
その一言で、万屋の男はじっと私を見た。
「ふうん…、とりあえず中に入るといい。話は中で聞こうじゃないか。」
男はそう言ってさっさと中に入ってしまった。私はその後を慌てて追いかけた。
「し、失礼します…。……え?」
3歩ほど中へ入った所で、私は信じられない光景を目にした。
「あれ?お客様にゃあ?」
そう言った受付の女性の頭には猫の耳。鋭い目に長い爪、更には尻尾。よくあるカチューシャなどに付いている偽物ではない。本当に頭から生えている。
「あっ、女の子やん!可愛ええなあ。」
へらへらと笑う青年の首は異様に長い。うねうねと長くなったり短くなったりしながら、こちらを窺っている。
「人間じゃありませんの。珍しいですわね。」
着物の袖で口を覆う女性は特におかしい姿ではないけれど、纏う冷ややかな雰囲気は明らかに人間じゃない。
「探し物をしているらしい。」
振り返った男の姿に、私はハッと息を呑む。何故なら、その男の頭には───
「角……?」
骨で出来たような、角が生えていたからだ。
「ようこそ、あやかし万屋 百鬼堂へ。」
男が、いや鬼が、私を見てにやりと笑った。
他に書いていた筈なのに…書いてしまいました。
妖、妖怪、異形……良い響きですねえ。
特に鬼が大好きなので、妖怪を出すなら鬼がメインだと考えておりました。書けて良かったです。ホクホクです。
続きはいつになるかわかりません。でもネタは考えてますので、近いうちに載せたいです。
お読み頂きありがとうございます。