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調理師ノブヨシ

作者: 七沢みあ

 ノブヨシのさばいてきた魚の数は半端ではない。さばいてきた難事件の数も半端ではない。そしてオリオン座を見ると妙に興奮してしまうのだ。






 とある料亭に二人の刑事がいた。警部補が警部に話しかける。



「警部、その調理師ノブヨシってのは何者なんですか?」



「調理師でありながら今までに数々の難事件を解決してきた伝説の名探偵。しかし、犯人に恨まれたくないがため、捜査は秘密裏に行われているそうで、まだまだ謎が多い」



「へえ(犯人に恨まれたくないがため……?)」



「でもそんな情報、どうやって手に入れたんですか?」



「詳しくは言えないが独自のルート、熟女に出会うためのルートと同じだとだけ言っておこう」



「なんですがその怪しそうなルートは……」



 警部補が表情を曇らせると、警部は少し目をそらして言った。



「まあ、井戸端会議なんだけど」


「井戸端会議を熟女との出会いに使うな!」



 警部補が机を叩くと、置いてあったスペア眼鏡が軽く宙を舞う。言わずもがな、それは警部補のものだった。



「ていうか秘密とか言って全然隠しきれてないじゃないですか!」



「それはまあ主婦たちの情報網が凄いということで許してほしい」



「この眼鏡に免じて許してやりますか」



「そうしてくれ(なんだこいつ…)」



 警部は再び神妙な顔つきで話し始めた。



「彼女らによるとだな。ノブヨシが探偵をしていることを知っているのは、親友のヨシノブ、博士、それからその愛人であるミキだけのようだ」


「絶対博士口滑らせてる!」



 警部補のツッコミに対して警部も少し大きな声をあげた。



「失敬な! 博士はそんなうっかり屋さんじゃないぞ! キャバクラで酒と女に浮かれて言っちゃうような人ではないぞ! 断じて!」


「なぜか博士のイメージ像が!」



 キャバクラで酒と女に囲まれている小太りの博士像が警部補の脳内を駆け巡っていた。




 そんな二人の元へある男がやってきた。



「私がノブヨシだ。私にさばけない魚と事件は無い!」



「おお。あなたがヨシノブさんですか」



 突然のノブヨシの登場に驚きつつ、警部はキラキラと目を輝かせて名前を言い間違えた。



「ノブヨシです」



 即座に訂正するヨシノ……ノブヨシ。警部補も驚きを隠しきれない。そもそも隠す必要もないのだが、それくらい驚いたということだ。



「この人が警部の言ってた……(この人、そこそこ身元割れてんの、知ってんのかな……)」



 初対面で名前を言い間違えた警部は、なんとか取り繕うとノブヨシの手を両手で握った。その手は汗にまみれていてヨシ…ノブヨシだけでなく警部補もドン引きだったが、警部は気にせず続けた。



「あなたのことはスーパーのソマリアの主婦たちに聞いて参りました」


「スーパーのソマリアの主婦たちに⁉︎」


「はい、そうで…」


「本人身バレしてんのに気づいてなかったよ!」


 警部補は警部を遮るように鋭いツッコミを入れた。



「このことを知っているのはヨシノブと博士くらいのはず……え? ミキって誰?」


「ミキのこと知らないのかよ!ほらやっぱり 博士が漏らしてたんだ!」


「尿を?」


「なんで今唐突に、尿漏れの話したと思った⁉︎ それはそれで切ない話だな!」



 警部補は心を落ち着かせて言う。



「あなたが名探偵だということですよ」「巷で結構有名になっちゃってますよ」


「えーっ!」


 口をあんぐりと開けるノ……ヨシノブ。



「まあいい それはそれで」「ブラックジャック的な感じになれるかもしれないから……」


「あんたちょくちょく命狙われることになるけどいいのか!」


「それは君の思い込みだ」



 と。



「こちら『本日のヨシノ…』『ノブヨシのなんでもさばけるもん』でございます」



 うなぎの踊り食いだった。警部は嬉しそうな声を上げる。



「わぁい」



「思い込みなものか…」






 よくある事件現場に警部補とヨシノブは来ていた。余談だが、警部はどうやら腹痛らしく、現場には来ていない。恐らく朝食を食べ過ぎたとかそういうことなのかもしれないが、


「ああああっ! は、腹がっうぐっう! 息も…ああああっ、はうううう!」


 と言っていたため、仮病の線が濃厚だ。



「被害者の山本さんです」「色々調べた結果…どうやら毒殺のようですね」


「閃いた!」



 突如として大声ファルセットを上げたヨシノブ、それで調子付いたようで、一気にいい上げた。



「これは被害者であるこの人自体もまた加害者でこの人の被害者もまた加害者であるというパターンに違いない」



「何を言いだすんだ この人は…」



「博士の尿もれ問題を言い当てた君にも分かるはずだ」


「いや それはたまたま当たっただけなんだけなんですけど」「どうせそれもミキだかタナカだかアルクだのに うっかり言ってるよ!」


「君眼鏡好きだな」



 ヨシノブは再び大声ホイッスルボイスを上げる。



「輪のように連なる殺人事件。この事件を殺人サーキュレーション事件と呼ぼう!」


「ええーっ…」



「ちょっとテンション上がってきちゃった」


「なんでテンション上がっちゃうんだよ!」「しかもなんだそのポーズ」



 両手を上げて狂喜乱舞するその姿はまさに――


「オリオン座⁉︎」


 オリオン座のようだった。




 その後何座が好きだとか、メガネの上座はどこだとか、ヨシノブの「私は星組出身よ」などという発言から、彼が体は男、頭脳は女だと判明したり、それでも宝塚には入れるのかとかいう話をしたりした。



 そんな中、事態は急展開を迎える。



 役職とかよくわからないがとりあえず他の刑事がやってきて言い放った。



「山本に毒を盛ったと思われる犯人が毒死していること分かりました。犯人は山本の妻のようで、どうやら夫婦喧嘩でお互いに毒を盛ったようです」



「ふふふ、どうだ」



 推理が当たった、と言わんばかりにしたり顔を決めるヨシノブ。しかし、警部補はやや不満そうな様子だった。



「一応循環してるけど…」



「一応って何…?」



「なんかこう、犯人と被害者がもっと三四人いるのかなーって思ってたから、なんだか……」「しょーもなっ」


「てめーーーっ!」


「ムカつく!」殴

「まんなんらいふ!」



 警部補ーーーっ! と叫ぶモブ供の声。その中には警視総監とかいたかもしれないが、そもそも警部補は現場に何人いるとかもよくわからないのでそこらへんはどうでもよいのだ。



 ヨシノブは恐らく自分は逮捕されると思っていないのだろう、高らかに笑い声をあげた。



「私を裁けるのは私だけだ! ふほほほほほほほほ! ひょっ!」



 ノブヨシは警察に連れて行かれた。



 器物損壊罪だった。

変な小説書いてごめんなさい。許してください。

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