6コ やっぱりただの木。
ピチ ピチチ ピチチチ
ピチ ピチチ ピチチチチ
鳥がさえずる、いつもと変わらない朝。
なんだか眠たい、いつもよりとっても暖かいの。
だから もう少し もう少しだけ……。
私は気持ちがよくて起きる気になれなかった。
「おーい」
誰かが呼んでる
「起きろって」
まだ 眠いの あとにして……。
「昨日のことで礼をしたい」
昨日……なにかあったかしら?
あっ、人間の子供!
『あの子は大丈夫なの?』
ちゃんと帰れた?
私は人間の声にやっと目を覚ました。
「ああ、大丈夫だ」
人間は言った。
よかった。何故かこの人間といると、体だけでなく心までポカポカして安心する。
「ありがとう」
私はなにも出来なかったのに……。
『私の方こそ、お礼を言うわ。ありがとね』
あの子が凍えずにすんだのはあなたのおかげ。
『ねぇ、なんで私の言葉がわかるの?それに……なんだか暖かい』
ずっと不思議に思ってたことを聞いてみる。
「おれは、”力のある人間“だから。お前ともしゃべることが出来るんだ」
と言った。
『“ちから”があるとなにか違うの?』
それはなに?
人間は答えた。
「人間には“普通の人間”と”力のある人間“がいる。この世界にはもともと“命の源”という
力が流れている。ほとんどの人間は鈍いから力には気がつかない。
だけど、たまに生まれるんだ。力に敏感な人間が」
と人間は続ける。
「俺の力は火、象徴は太陽だ。だからか、俺の周りは
常に温かい」
なんとなくわかった。
「人間だけなんだよ。力に気がつかないのは、
ほとんどの生き物はその力を持ってるし使える」
知らなかった。そうなのね。
私にもあるかしら
『私にも、その”ちから“はあるの?』
私は足が欲しい。羽根が欲しい。
「……弱いけど、あるよ」
だけどと人間が。
「木だから、長い時間をかけないといけないかもしれない」
と私に言う。
『そっか。私はやっぱりただの木なのね』
人間が私と言葉を話せる意味が、なぜ暖かいのかも分かった。
と同時に落ち込んだ。
私は木なのね。
母なる大地に繋がる木
その実は知恵を与え 根は命の源を
木は祝福を 葉は魔除けに
皆 土に還る
「どこかの古い、いい伝え。今は口伝だけだから知ってる者は少ないけどな」
と人間は私にそれだけいい残すと、また会おうと言って
どこかへ行ってしまった。
また、来るのかしら
私はぼんやり雲を眺めた
人間が去ったあとは少し寒かった
ずっと唸りながら書いてました。
で無になってそのまま寝る。




