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木。  作者: 木之下 朔
5/7

5コ 眠ろう。

…サワサワ サワサワ


私は祈る気持ちでひたすら枝を揺らした。お願い、誰か…。

 するとどこからか暖かい風が吹いてきた。太陽の光を運んでくれる、とてもいい風だ。でもなんで?もうすぐ夜の深まる頃のはずよ?


私が首をかしげていると風が吹いてきた方から

「おぉーい」

と声が聞こえた。


 『…!?』

なんだか不思議なことが起こっているけど。そんなのなんだっていい、来てくれたのだから。私は力いっぱい枝を揺らした、人間の子供を探している人が早く見つけてくれるように。


『ここよー』

ここにいるわ、早く来て。

ザワザワザワ ザワザワザワ


 だんだんと声が近づいてくる、と同時に暖かい風も強くなる。

なんだか寝ちゃいそうだ。不安な私の心に安心をくれる。



 ガサガサッ

「いた」

来たぁ!

「こんなとこで寝たら風邪ひくぞ」

そうよ。早くお母さんの元に連れて行って!


迎えに来た人間は母親ではないけれど、この子供を迎えに来てくれたことには変わりない。その人間は太陽のように暖かく感じた。


 『ありがとう』

私は人間にお礼を言った。

すると、子供を背中に抱えて今にも帰ろうとしている人間がはっきり私を見て…。


 「礼を言いたいのはこちらの方だ」

と言ってきた。

『伝わった……?』

なんで?どうして。人間には私の言葉は聞こえないんじゃないの?


「……ありがとう。礼はあらためてする」


ではと、なんだか暖かい人間は来た道を子供を背中にしょって帰って言った。


 不思議な感じのする人間だった。…でもよかった。これで人間の子供は、母親の元に帰れるのだから。

私は心の底からほっとした。



 夜が深くなる


昼の生き物たちはとっくに寝静まり

夜の生き物たちが目を覚ます

 

 私も眠ろう

    眠ろう


今夜も星が変わらぬ輝きを

月がただひとつの光を


冷たくて綺麗な夜に 私は深く眠りにつく……。

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