4コ 人間の子供。
セリフの少ないものになってしまい読みにくいかもしれません。伝えたいことが多すぎて。
太陽が真上より少し傾く……。
私も少し眠ろう
木々のざわめきや鳥の歌声が森を優しく包み込む。
太陽は傾き続け、やがて最後の力を振り絞るように輝く。金木犀の花が森中で輝きを放っているみたいに。
近い所からガサガサと何かが森をかき分ける。
「お腹すいたよぅ……。帰りたいよぅ」
人間の子供がひっくひっくとしゃくり上げながら出てきた。
「…かぁ…ちゃあん…。うぇ…ひっく」
泣きやまない。
『……(誰かないてる)』
私は目を覚まして泣き声のする方へ意識を向ける。人間の子供だ。一人だろうか?母親が見当たらない。
『泣かないで。私がいるよ?』
さわさわと話しかける。
「…ひっく……」
反応はない。
人間の子供には私の声は届かないようだ。
『……お願い、食べて……』
ワサワサと自分の枝を揺らす。ポトッポトッと赤い実が子供の目の前に一つ、二つ三つと落ちる。
お腹を満たせば泣きやむかもしれない。
落ちた赤い実に子供が気が付く。
「……シャクリ」
食べてくれた。ひとまずほっとする。
子供の手くらいの赤い実はあっという間に食べられた。それを見た私はもう一度ワサワサする。
また、三つ落とす。
「……一つ持って帰ろう…ぐず」
子供は赤い実をあと二つ食べた後、残った一つを食べずに胸に抱えこんだ。心の優しい子供だ。誰かの為に持ち帰るなんて。
人間の子供は私の足元に膝を抱えて座り込んで、いつの間にか眠りに付き始めてしまった。
深く冷たい夜が来る。このままだと人間の子供は凍えてしまう。
足のない私は誰かを呼びにも行けず、手もなく包み込む体のない私は温めることも出来ない。
なすすべのない私はせめて葉っぱをサワサワするしかない。
サワサワ サワサワ
誰か来て 誰か手を貸して
誰か 誰か
サワサワ サワサワ
私の悲しみが音になっているかのように。小刻みに葉が擦れる。
サワサワ……