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木。  作者: 木之下 朔
4/7

4コ 人間の子供。

セリフの少ないものになってしまい読みにくいかもしれません。伝えたいことが多すぎて。

太陽が真上より少し傾く……。


 私も少し眠ろう


木々のざわめきや鳥の歌声が森を優しく包み込む。


 太陽は傾き続け、やがて最後の力を振り絞るように輝く。金木犀の花が森中で輝きを放っているみたいに。



 近い所からガサガサと何かが森をかき分ける。

「お腹すいたよぅ……。帰りたいよぅ」

人間の子供がひっくひっくとしゃくり上げながら出てきた。

「…かぁ…ちゃあん…。うぇ…ひっく」

泣きやまない。

『……(誰かないてる)』

私は目を覚まして泣き声のする方へ意識を向ける。人間の子供だ。一人だろうか?母親が見当たらない。

『泣かないで。私がいるよ?』

さわさわと話しかける。

「…ひっく……」

反応はない。

人間の子供には私の声は届かないようだ。


 『……お願い、食べて……』

ワサワサと自分の枝を揺らす。ポトッポトッと赤い実が子供の目の前に一つ、二つ三つと落ちる。

 お腹を満たせば泣きやむかもしれない。

落ちた赤い実に子供が気が付く。

「……シャクリ」

食べてくれた。ひとまずほっとする。

子供の手くらいの赤い実はあっという間に食べられた。それを見た私はもう一度ワサワサする。

また、三つ落とす。

 

 「……一つ持って帰ろう…ぐず」

子供は赤い実をあと二つ食べた後、残った一つを食べずに胸に抱えこんだ。心の優しい子供だ。誰かの為に持ち帰るなんて。

 


 人間の子供は私の足元に膝を抱えて座り込んで、いつの間にか眠りに付き始めてしまった。

深く冷たい夜が来る。このままだと人間の子供は凍えてしまう。

 足のない私は誰かを呼びにも行けず、手もなく包み込む体のない私は温めることも出来ない。

なすすべのない私はせめて葉っぱをサワサワするしかない。


 サワサワ  サワサワ


誰か来て 誰か手を貸して

誰か 誰か


 サワサワ  サワサワ


私の悲しみが音になっているかのように。小刻みに葉が擦れる。


   サワサワ……



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