これからのこと
今さっき、丁度私の着付けが終わったところだ。タキシードとドレスは八足がデザインしてくれたものだ。あいつにしては珍しい、しっかりとしたデザインだが、ドレスはどうだろうか、不安だ。
タキシード姿の自分はなんだか昔の自分の姿に似ていて、懐かしさとともに恥ずかしさも感じる。きっと向こうの部屋では、いままで見たことのない、しかし見たことのある彼女が待っているのだろう。着つけてもらっている時に冱露木が長男を連れてやってきて、私を冷やかしていった。相変わらず、忌々しいやつだ。大学の理事長になっても全く変わっていない。雨井め、もっとまともなやつを選べばよいものを・・・。しかし、あいつが居なければ、こんな幸せな時間など来なかったのだろう。どこかで見ているだろうか。あいつのことだ、見ているだろう。招待した客は多くはないが、どの人も濃い方ばかりだ。扉から少し除くと、招待した人は皆来てくれていた。カツ丼屋の女将もいる。披露宴で読む文は覚えただろうか。何分私には両親がいないため、考えるだけでも一苦労だった。一応紙には書いたのだが。まだすべてを覚えられていない。まぁ、私が書いた文だ。きっとなんとかなるだろう。
これからのことはまだ考えていない。漠然と「こうしたい」というものは決まっているが、明確に決めずともきっと私と彼女ならやっていけると信じている。時刻は一〇時四〇分過ぎ、式は一一時からだ。そろそろ時雨君の様子を見行くとしよう。
さて、そろそろこの本とも別れの時がやってきた。この本の中の私は、セミとしての岩崎媛遥だ。今日、この日から、人間としての岩崎媛遥を始めたい。そのためにもこの本は、今日ここで終わり、閉じる必要がある。
最後に、この本の名前を決めよう。
何が良いだろうか、どうせなら洒落た名前が良い。
そうだ、日記ともいえぬこの本を、
別れる自分の姿と重ねて。
この本の名前は




