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異世界のSP-プロローグ

高校科学部に所属していたマナブはとある理由から異世界に転生する。

転生の時に”異世界の管理人”から科学の知識を活かせる職種として魔法の才能と丈夫な体をもらう。


転生してはじめに訪れたコルグという都市で就職活動を始め、偶然にも貴族の令嬢エリシアの護衛に就く。

護衛の任務は厳しくいくつもの困難に立たされるが、前世界の科学の知識を応用して立ち向かっていく。

うだるような暑い日、倉庫はひんやりとしていて過ごしやすい。

特にここは何を保管している場所なのかは分からないがすごく広い。

クーラーのないこの世界ではまさにオアシスと言ったところだ。

手が縛られ埃まみれの床に放り投げられていなければな…


俺は今、何者だかも分からない奴らに攫われてきた。

この街に入って色々と歩き回っているうちに路地裏に迷い込んだのだ。

どうしたものかと考えていたらいきなり後ろから殴られ、ここへ連れてこられてきた。


ここいらでは人攫いなんて珍しくないんだろう、街中でも奴隷を檻に入れて売りさばいているのを見かけた。

おそらく俺もその類のやつに捕まったのか…

でも、むさい男ではなく可愛い女の子の方がいいんじゃないか?

確かに男は力仕事ができる分、生産性は高いだろうが…


「なぁ、喉が渇いた 水を飲ませてくれ」


俺は目の前の人攫いに話しかけ、腰に下げている水筒の様な物に視線を向ける。


「大人しくしていろ、水なら死なない程度には飲ませてやるさ」


「商品に死なれたら困るからな」


クソッ、少しぐらい飲ませてくれてもいいだろ。

俺は人攫いを睨みつけ、悔し紛れに言い放つ。


「なぁ、知ってるか

 1molの気体は標準状態では約22.4Lの体積になるんだよ」


「はぁ? こいつ何を言っているんだ?」


「いいさ放っておけ、どうせこのまま奴隷として売りはらうんだ」


そう言って人攫いたちが広い倉庫の中、

離れた出口にへと向かうのを見計らう。


俺だってこのまま奴隷として売り払われるわけじゃない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この世界には魔術がある。

魔術は式により成り立ち、指定の物質を操る事ができる。

無から有を生み出す事もでき、まさに万能と言える存在だ。

発動には魔法陣を書き魔力を込めるか、それを詠唱して発動するタイプがある。

魔術は式の組み合わせにより成り立ち、物質を操る事ができるものだとされている。


実際には原理を理解していればその通りに魔力を操作しただけでそれが実行できる。

だが、この世界に科学と言う概念はない。

つまりは原理を知らないから魔法陣や詠唱をして理解できていない面を補っている。


だけど俺は違う、科学と言うものを少なからず理解しているつもりだ。


俺は元々”この世界の人間ではない”のだから。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


おそらく奴らが下げている水筒の中身は飲み物で、主成分は水だろう。


だとするならば・・・


俺は奴らが持っている水筒の中の液体が一瞬で高温になる様に魔力を操作する。

次の瞬間、バンッ! っと凄まじい音がして出口付近に水蒸気の靄ができる。

人攫いの水筒の中身を一気に沸騰させて爆発させたのだ。


先ほどまで液体だった物質が気体に変われば一気に体積が増える。

それが金属製の丈夫な入れ物に入っているのだとすれば、内部の圧力はどんどん上がっていき

やがて容器が耐えきれなくなり破裂する。

そう、それはもう爆弾となんら変わりがない。


俺は立ち上がり倒れている人攫いところへと向かう。

爆発の衝撃で気を失っているだけで、死んではいないようだ。

もっとも高温の水蒸気で火傷しているかもしれないが、知ったことではない。


「まぁ、あれぐらいの量ならさすがにこんなもんか」


俺は倒れている人攫いの懐を縛られた手で漁る。

運良く目当てのナイフを見つけ出し、なんとか縄を切る。


その後は金と使えそうな物、それから自分の荷物を回収しその場を後にした。


人の声のする賑やかな方を探し路地裏を進んでいく。

おそらくその方向へ行けば大通りへと出るだろう。

人通りの多い場所ではさすがに人攫いも来ないだろうしな。


しばらく路地を進んでいると次第に人の賑わう声が大きくなってきた。

そして路地を抜けるとそこは沢山の人でごった返していた。


通り沿いには数多くの店が立ち並び初めて見る食べ物、

何に使うのか分からない道具、色々な言葉で書かれた本などが所狭しと並べてある。

建物は石造りで、飾り毛のないシンプルな作りの物が殆ど。


「へぇー 結構活気があるなぁ」


見るもの全てが新鮮で今までに全く見たことのない物だらけで

時間を忘れ夢中になっていた。

気がつくと日も沈み始め、家々に明かりが灯りだした。


「ああ、またやっちまったか・・・」


つい夢中になると時間を忘れてそのことだけに集中してしまう。

生前では朝に本を読みだして気がついたらお昼に。

お昼ご飯を作る前にちょっとだけと思って再度読書に戻って、

気がついたら夕方になって1日が終わっていた事もあった。

高い集中力で短期間に詰め込めるのはいいが、

それが死因に繋がった事を考えると今後直していかなければならない。


集中が切れたせいかさっきまで感じていなかった

疲れがどっと来る。

足は重く、歩きすぎたのかふくらはぎが痛い。

体も全体的に重い気がする。


(そろそろ宿を探さないとな)


そう思いしばらく通りを歩いていると木製の看板が出ているのを見つけた。

『宿屋・パンドーシオ 道なりに少し入ったところ』

俺はその看板に従ってその方向に進む。

少し進み大通りの喧騒があまり聞こえなくなってきた所でたどり着いた。


基本石造りの建物だが所々木材を使っていて温かみのある建物で

窓からは優しい光が漏れていていい雰囲気がする。

宿屋に入るとまず最初にカウンターがあり、そこに受付の女の子が座っていた。


「いらっしゃいませ、パンドーシオへようこそ」


「とりあえず一泊したいんですが、お値段はおいくらですか?」


「一泊ですと銅貨2枚です」


俺は袋状の財布を漁る。


おそらく鉄と思われるコインが多く入っている中に十円玉のようなものがぽつぽつとある。

それを2枚掴み取ると、受付の女の子に渡した。


「はい、確かに受け取りました、こちらがお部屋の鍵になります」

「お食事は食堂にて都度お支払いとなっております」


「はい、わかりました」


そう言って俺は鍵札に書かれてある番号の部屋へと向かった。

部屋は4畳半ほど、入ってすぐ左にベットがあり

正面に窓が付いている質素な作りになっていた。


「はぁ~疲れた」


そう言って俺はベットに横になる。

なんだか実感が沸かない。

唐突に異世界へ来て、初めて魔法を使って…


そもそもここに来た理由からしてあまり受け止められていない。

俺は一回死んでいる。


ここに来る前は高校の科学部に所属し、日夜研究に勤しんでいた。

俺が入部した時には3年の先輩が数人居るだけで、2年の先輩は居なく

同じ学年の奴らは誰も入らなかった。


それでも科学部は楽しかった。

夏になり先輩たちが引退しても、俺は一人で実験を続けた。

疑問に思った事を調べたり、何度も試行したり

そうしてようやく謎が解けた時、心地よい達成感がある。


実験中にも新たな発見があったりと、俺はいつしか一人で放課後の理科室に篭り

日々実験を重ねていた。


事故が起こったのはそんなある日、

俺は薬品の合成を間違え発生したガスで死んだ。

自分でもあんな事になるなんて思ってもみなかった。


ついつい目の前の事に没頭するあまり、確認が疎かになっていた。


苦しみ薄れゆく意識の中、助けを求めようにも

部員は俺一人で誰もいなく、それは叶わなかった。


どれぐらい経ったか、気がつくと見知らぬ所に居た。

そこに”世界の管理人”を名乗る人物が現れ、俺に状況を説明してくれた。


不慮の事故で死んだこと。

本来はもっと生きるはずだったこと。


そして、一つの道を俺に提示してくれた。

今とは別の世界に行って、そこで新たな人生を送ってみないかと。


俺は頷き、神はこれから行く世界の説明をしてくれた。

科学の知識がある俺に異世界の魔術事情を教えてくれ、

そして前世の知識が生かせる魔法の才能、それから転生する体を普通の人より丈夫にしてくれた。


そんなこんなで俺は異世界に転生した。

草原で目が覚め、隣には必要最低限の装備が入った鞄が置いてあった。


そして手始めに幾つかの魔術を使ってみて感覚を掴んだのち、

草原のその先に見える街へと向かってみたのだ。


それからはひどい目にもあったが、こうしてゆっくりとベットに横になれている。

こちらでの生活は始まったばかり、明日から頑張っていかないとな…


(今日は疲れた、もう寝るとしよう)


そうして俺は眠りについた。
















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