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 食事を終えると文香は食器を食洗器に手際よく並べスイッチを押す。食洗器を動かしている間に部屋に戻った文香は化粧や着替え行う。その隣にはちょこんと咲が座っており、文香に化粧品を借りてうっすらと自身にもメイクを行う。あんな小さい体なのに化粧するのかと咲を見ていると、文香はその視線に気が付き、ぎろりと睨み付けた。

「女の子はいろいろ大変なの。なんならあなたにもしてあげようか?」と林檎にこっちに来て座るよう指示を出す。

「ダーリンならきっと似合うわ。ほら、この買ったばっかりのチークとかどう?」

「ダーリンのメイクした姿、見たい」

 両手に化粧道具を握り「どれがいい?」と聞く文香と、化粧を行う手を止め林檎の化粧姿に興味を持った咲も林檎を凝視し、手招きをする。姉妹のように息を合わせて化粧を施そうとする二人を見た林檎は、急いでその場から離れようと回れ右を――できなかった。咲が林檎の体に金縛りをかけ、その場に根を張るかのように縛り付けた。文香はそれを咎めることなく、むしろよくやったわ。と咲を褒めている。そしてじりじりと林檎に近づいた二人は。咲の手には文香の上部が階段状にスライド出来る少し大きいが、軽くて丈夫そうな化粧道具が握られている。

 文香はぁはぁと熱い吐息を漏らし、興奮した様子で林檎のニキビ一つない肌に下地を塗っている。女顔な林檎に一回メイクをしてみたかったと、吐息を漏らしメイクを続ける文香に怯えながら、人生初のお化粧を体験した林檎だった。

 ――数十分後、林檎の金縛りが解かれた。アイラインやマスカラなどで目を強調させ、唇には文香と同様の完熟したリンゴのように真っ赤なルージュを施されている。その出来栄えに満足そうに首を振り、文香は凄く似合うと林檎に手鏡を手渡した。咲も「よく似合う。素敵」と林檎の腕にくっついている。林檎も良く出来ていると思う。目覚めてしまいそうだ。と軽く冗談を呟いた。そして持っていた手鏡を文香に返したのだが、受け取った文香の表情は先ほどの満足そうな様子ではなく、少々悔しそうに、難しい表情を浮かべていることに気が付いた。

 林檎と正対する文香は、「なんか悔しい……私より肌瑞々しいてどういうこと」と愚痴をこぼしているのだ。「文香の方が百倍可愛いだろ。化粧した姿は何つーか、色っぽい」と文香を褒める林檎に文香は「ありがと」とはにかんだ。咲も「私は私! どう? うん!」と感想を求めるが、林檎は「似合ってるけど、背伸びしたい中学生みたい」と悪態をつき笑っている。

 ショックと呟く咲に「冗談だ。かわいいよ」と頭を少し撫でる林檎はメイクを落とそうと洗面所に向かう。しかし二人に捕まり「林檎が一番かわいいよ」とメイクを落とすことを阻止されそれてしまった。

 不本意ながら化粧を終えた林檎らはテレビで放送していた家からバスに揺られながら目的の百貨店を目指した。道中、女二人は物産展に多大な期待を寄せた様子で、何があるか、何を買おうか姉妹のように仲良く、周りの迷惑にならない程度の声量でおしゃべりをしている。

 文香はモスグリーンのコーデュロイスカートを穿き、タートルネックのセーターに真黒のライダースを羽織る。林檎は文香が「今日は寒いから」と渡されたマフラーを巻き、文香が用意した丈の長い厚手のコートを羽織った。文香はそれを見て林檎の喉仏が隠れたことを確認し、「似合うよ」と褒めた。咲はいつも通りの黒い着物に林檎が愛用していたダウンジャケットを上に着て、林檎のマフラーを巻いている。

 バスに揺られ二十分。歩いて数分、百貨店についた三人はなぜか物産展が行われている八階ではなく真逆の――デパ地下にいた。

「お饅頭、美味しそう。唐揚げ、ケーキ……あ、お団子」

 フラフラととてとてとデパ地下の店を巡る咲。咲が匂いに釣られ一人ふらふらと美味しい惣菜の宝庫、デパ地下に誘われたのだ。手のかかる子供を追いかけるように文香たちは咲の後を追う。

「こら、勝手に歩くんじゃないの!」

 文香はふらふらと惣菜の匂いに釣られる咲の襟をつかみ、迷子にならないよう手をつなぎなおした。

「じゃあ林檎も……」

 文香と手をつないだ咲は手持無沙汰な片手で林檎の手をとり、自分を中心に三人仲良く? 手をつないだ。そして団子売り場へ向う。傍から見れば文香が若妻で林檎が若旦那? いや、メイクをしているから三姉妹か? 今すぐグラビアアイドルデビューしても見劣りしないウェーブがかった金色の長髪をなびかせる爆乳美女、文香。目に光が無く覇気がないように見えるのが残念だが二重瞼の瞳は大きく、日本人形のように着物を着こなす黒髪の少女、咲。その中でも一番背が高く、栗色の髪を持ち、メイクをしたことで女顔がさらに引き立ち、「モデルか何か?」とヒソヒソと囁かれる林檎は咲に少し甘い様子を見せては、金髪爆乳美女に「ダーリン!!」と叱られる。

 長身でぺったんこな林檎。女性にしては背が高く、三人の中で一番男受けのする体を持つ文香。一番身長が低く、なおかつ一部から熱狂的なファンが生まれそうなぺったんこな咲。

 異なる髪色を持ってはいるが、それぞれに類似点があることからバランスを持った三人を見て、年配の方は珍しい姉妹だ。と隣にいる婆さんに問いかけて眺めている。周囲の視線を惹きつけると、当然悪い虫も寄ってくる。三人に無謀にも突撃し、デパ地下でナンパをする男たちに「ダーリンとデート中なの。ごめんね」「林檎と、ダーリンとダブルデート。うん」と様々な意味でトラウマを植えつけ撃退する。すると中には林檎に興味を持ち、「林檎ちゃんっていうの? 三人の中で一番可愛いね」と林檎より背の低い大学生ら式男が声をかけてきた。林檎はちゃん付けされたことで、その大学生に怒りをふつふつと沸かせた。

 それに気が付かなずに男が「二人でレストランかカラオケ行かない?」と林檎に声をかけ続けナンパする。しかし見おろし見下しながら「何寝ぼけたこと言ってんだボケ、失せろ」と怒気のこもった、男性ゆえの低い声で罵倒された大学生はその迫力、ナンパ相手がおかまだと思い泣いて逃げ出した。色々ショックだったのだろう。そして文香はそれに対し、腑に落ちないようにほっぺを膨らませた。

「上手くメイク出来て嬉しいやら悲しいやら……それより!」

 咲が林檎と手を繋ぐことを良しとしない文香は咲を叱りつけた。すると咲は「お姉ちゃん怖い」と林檎の腕に怯えたふりをしくっつく。そしてその行動を見た文香は一挙手一動作見ては叱っている。

「はぁ、せっかくデートって言うのに……」

 全然甘えられない。とため息をつき、少しがっかりした様子で咲の手をしっかり握る。

「ま、ゆっくり見て行こうぜ」

 咲を中心に添え、林檎は文香の方を見て文香を元気づける。

「ダーリンはどっちの味方?」

 しかし逆効果だったようで文香はターゲットを咲から林檎に変え、今朝から妙に咲に甘いと林檎を叱る。周囲を気にせず叱る文香にたじたじな林檎は。

「な、なあ、人前だし、な?」

 周りの目を気にして、林檎はそっと小声で文香に耳打ちをするも、

「ダーリンたちが悪いんでしょ!」

 大声でそう叫ぶ文香に、林檎は否定できずに「その通りです」と言う他なかった。

 周りの人は、特に林檎をオカマだと思い込んでいる人たちは林檎たちの関係に興味津々な様子だが、妙にピリピリした様子を見せる三人組には無謀なナンパ男以外声をかけることは無かった林檎たちは適当にデパ地下を巡り終え、これからが本命! 本番! とエレベーターに乗り、八階のイベントフロア、物産展コーナーを目指した。

「さすがに狭いな」

 休日のデパートはエレベーター内も混んでおり、おしくら饅頭状態だ。エスカレーターの使用を提案する林檎だったが、咲がいなくなる可能性があると却下する文香と、「その可能性はある。ここは誘惑が多い」と頷く咲。威張るなと頭をこつんと叩く文香と林檎に舌を出し嬉しそうに笑う咲。

「エレベーターが来た」と咲は二人の手を振り切り、我先にと乗り込んだ。林檎は咲と逸れないために慌てて文香の柔らかい手を握りエレベーターに乗り込んだ。文香は急に手を繋がれ林檎の積極性に驚く。それと同時に林檎から男らしさを感じ、頼もしさを感じて笑みを浮かべ、混雑したエレベーターに乗り込んだ。。

 ――本当に混んでいるな。

 休日だからと言うことだけで、この混雑はあり得ない。なぜならエレベーター内に男性が多い。更にエレベーターの重量センサーが反応したときに乗れなかった男性がくじに落選したように悔しそうにしていたのを耳にしたからだ。美少女が乗り込んだ密室に少しでも一緒にいたいと思った人が多いのか。気持ちはわかる。と思う反面、文香たちを守るべく、文香と咲を奥の片隅に寄せ、自分が衝立となり男性陣から守る林檎。

「狭くないか? ちょっと耐えてな」

 大丈夫。と返事をする二人だが、さすがに息苦しそうである。特に文香は自身の腕を邪魔にならないように腕で隠すように抑えている。咲の方を見ると、咲は自分を見る林檎の視線に気付いたのか、自分にはない胸を窮屈そうに抑え林檎に心配されている文香に嫉妬したのか、突然林檎の腕にエヘヘと照れ笑いを浮かべ抱きついた。

 文香はそれを見てぎょっとするも、「狭いから仕方ない。みんなのため」としたり顔で文香を挑発した。文香は咲に小さく「そっちがその気なら」と呟き、闘争心を燃やしている。 エレベーターが三階に停止し、上昇した後に文香は勝負に出た。正対する自身を守っている林檎の腰に手をまわし、むぎゅっと、自身の一番のアピールポイントであるたわわな双丘を林檎に密着させる。咲にはできない芸当を披露して見せたのだ。

 それを見て嫉妬、憎しみを持ったのは咲だけではない。咲は文香に、自分にはできない芸当で林檎に迫ることを卑怯だと嫉妬する。「えへへ、狭いからいいよね」と恥ずかしそうに、それでも抱き着くのをやめない美女文香に言い寄られる幸せ者の林檎に「代われ!」「羨ましい」と嫉妬の炎を燃やす周囲の男達は嫉妬の炎を燃やしている。幸い林檎はエレベーターの隅にいる二人を見ているため気が付かない。咲と文香は林檎に抱き着いたことで苦しくないか問いかけるも、林檎はぎこちない笑顔で「も、問題ないぞ」と返事をする。

 途中各階停止したのちに、やっと八階にたどり着いた三人。文香は苦しかったねと背伸びをし、咲もあまりの窮屈さから、「熱湯風呂みたいだ、うん……でも林檎が守ってくれるなら」と頬を染める。一方林檎は、なにか悪夢でも見たように浮かない表情を浮かべている。

「どうしたの? ダーリン?」

 文香は林檎の浮かない様子に気付き声をかけた。すると林檎は消え入るような声で、消え入りそうな声で呟いた。文香は聞こえなかったようで、再度聞きなおすも林檎は黙っている。すると横から咲が地獄耳を活かし通訳をした。

「林檎、ダーリンは……お尻を触られた」

 正確には掴まれた。と補足する咲と、それを聞き間を少し置いてから文香は声を上げ驚いた。その声がフロアに響き、周囲からの視線を浴びて恥ずかしそうにする文香だったが、そんなことより「ダーリンそれ本当?」と焦った様子で問いかける。林檎も黙ったまま、ごつい手が……と肯定する。

「お前らは大丈夫だったか?」

 と乾いた笑みを浮かべ問いかける林檎に、二人は声を揃え礼を述べた。

「ダーリン……守ってくれてありがとう。あと気休めかもしれないけど――ドンマイ」

 その言葉を聞き、「林檎は二人の役に立てて嬉しいよ。さ、物産展行こうか」と誘導する。しかしその足取りは酔っ払いのようにどこか危なっかしい。

 このままじゃ楽しい物産展も楽しくない。と言うか楽しめない。と判断した文香は、あろうことか躊躇いなく林檎の尻に手を伸ばした。


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