表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

第一章 ここはどこ?貴方は誰?

(う・・・ぅん・・・)

夢から現に戻るような感覚の中、私はうっすらと意識を取り戻した。

(あれ・・・私、どうしたんだっけ・・・)

ぼんやりした頭で考える。

身体より先に意識が浮かび上がったせいか、何だか頭がふわふわする。

えぇと。

電車の中で占い師に目を塞がれて、そこからの記憶が一切ない。

(・・・私が私でいられない世界って・・・何だろう)

意識を手放す前、占い師は確かに耳元でそう囁いた。

(あれ・・・そもそも、ここ、どこ?)

どうやら堅い床で横になっているらしく、下になっている箇所がほんのり痛い。

・・・・・・堅い、床?

(ま、まさか電車の床!?)

一瞬で覚醒した私は、目を開いてガバリと起き上がった。


「・・・え、えぇ!?」

真っ先に目に飛び込んできたのは、だだっ広い空間。

真っ白なタイルの床に、私の影が黒く色を付ける。

状況が掴めず、きょろきょろと辺りを見回しても、家具や装飾品らしきものは何一つ見当たらなかった。

ただ壁にいくつかの燭台が取り付けられ、蝋燭の炎が頼りなく揺らめいていた。

奥の方に大きな扉がある。出入り口だろうか。

(まるでホールみたい・・・それにしては殺風景だわ)

ふと天井を見上げると、そこで不思議なものを目にした。

窓などどこにもないのに、天井から一筋の光が零れ落ちている。

「・・・この光、どこから・・・?」

光は真っ直ぐに床に届いている。

埃さえ漂っていないこの空間に、その光は妙に現実離れして見えた。

思わず立ち上がり、その光に近付く。

蝋燭のように揺らめくわけでもなく、途中で遮られるでもなく、ただ静かにそこにある。

何気なく光に手をかざす。

「あれ?」

しかし、その光は遮られる事なく、私の手と透過して床を照らす。

変なの。どういうトリックになってるのかな・・・

ぼんやりそう思ったその時、バンッと扉が開かれた。

振り返った私の目に飛び込んできたのは、いかつい甲冑を着け、槍のようなものを持った二人組だった。

そのうちの一人とバッチリ目が合った。

「き、貴様!ここで何をしている!」

いきなり怒鳴られて、思わずびくりと身を竦ませる。

「どうやってここに入った!?」

つかつかと詰め寄られて、無意識に後ずさる。

「わ、私・・・」

どうしよう、どう考えても明らかにまずい事態になってる。

「怪しい奴め、名を名乗れ!」

「は、長谷川愛莉ですっ」

「ハセガワアイリ?姓は?」

「せ、姓が長谷川で、名が愛莉です」

「変わった名前だな・・・」

「この辺りの人間ではありませんね」

甲冑を着けた二人組は交互に喋り、不審そうに私を上から下まで見る。

「それになんだ、この奇妙な服装は」

私としては、あなた方の方がよっぽど奇妙ですけどね!

って言ってやりたかったが、きっと言えばただじゃ済まない気がして黙り込む。

何やら低い声で話し込む二人を少し離れて見ていると、不意に上司らしいおじさんがこちらを見た。

「・・・貴様、真名はなんと言う?」

「・・・マナ?」

マナって何だろう。誰かの名前?

「ふざけるな!さっさと真名を名乗れと言っている!」

凄まれても、私にはさっぱり意味が分からない。

「マナって・・・何?」

その言葉は、どうやらおじさんの逆鱗に触れたようだ。

「貴様、真名を名乗らぬとか、さては隣国のスパイか!?」

そう言って私に突き付けられたものはー手に持っていた槍。

「・・・・・・!!」

生まれて初めて見るその鋭利な切っ先に、命の危険を感じて足が竦んだ。

私・・・殺される?

その時。


「何をしている」


扉の先から、凛とした声が聞こえた。

その途端、二人組はぎくりとして振り返る。

「は、ハイドシーク様!!」

私は声のした方に目をやり・・・そのまま硬直した。

ゆっくりこちらに向かってきた、ハイドシークと呼ばれた男。

さらりとした蜂蜜のような色をした髪に、息を呑む程鮮やかな深紅の瞳。

端正な顔立ちの顔が、鎧に包まれた均整の取れた身体に乗っている。

な・・・何なんですかこの漫画みたいな美形さんは!

「何の騒ぎ?」

ちらりと私を見て、おじさんの方に向き直る。

もう一人の若い人は完全に硬直している。心なしか顔色が青い。

「はっ・・・み、見回りに参りましたら、この娘がここに立っていまして・・・真名を問いただしても答えない為、斥候の疑いが・・・」

「真名を答えない?」

そこでもう一度、私の方を向く。

そして、ひた、と私の目を見据えた。

「・・・・・・・・・」

う・・・その瞳で見られると物凄いドキドキするんですが!

心の奥まで見透かされそうな深い色に怖気づいていると、ふ、とハイドシークは息を吐いた。

「分かった。ここは俺が引き継ぐ。お前たちは巡回を続けろ」

「し、しかし・・・!」

何か言いかけたおじさんを、ハイドシークは眼光だけで黙らせる。怖っ!

「もう一度は言わないよ?」

「も、申し訳ありません!失礼いたします!」

これだけ言って、二人はばたばたと出て行った。丁寧に扉まで閉めて。

そして、私と彼だけが残された。

「さて、君の名前を聞かせてくれるかい?」

さっきの空気とは打って変わって、ふわっと微笑んでハイドシークは尋ねてきた。

「わ、私・・・マナが何か分からなくて・・・」

言いよどんだ私を見て、

「あぁ、真名じゃなくて、君の名前。・・・その前に僕から名乗ろうかな」

そう言うと不意に私の手を取った。

それだけで、心臓が軽く跳ね上がる。

「僕の名前はハイドシーク・エル・リアーシュ。聖騎士だよ」

「せ・・・せいきし・・・?」

また分かんない言葉が出てきたぞ・・・

「そう、聖騎士。それで、君の名前は?」

「・・・愛莉です・・・」

また変な名前だと言われるのは嫌なので、名だけを名乗る。

「アイリ、か。良い名前だね」

にっこり笑いながら褒められて、恥ずかしさに少し俯く。

その笑顔は反則です・・・

「さて、アイリ。突然だけど、ちょっと僕に付いて来てくれるかい?」

「え?」

「君の事をもっとよく知りたいな。だから、場所を移そう」

「・・・・・・」

付いて行って、いいんだろうか。知らない人に。

それを言ってしまえば、ここが既にどこなのかさっぱり分からない。

明らかに日本ではないと思うんだけど、でも普通に日本語を話してて、相手も同じく日本語だ。

「ここ・・・どこなんですか・・・?」

辛うじて絞り出した質問も、

「それも場所を移してから、ちゃんと説明してあげるよ」

とだけ言われ、取られた手が軽く握られる。

「ね?だから僕を信じて付いて来て?」

その手の温もりと笑顔に、少しだけ緊張がほぐれる。

どのみちこの人に付いて行かなければ、またあのおじさん達が戻ってくるかもしれないし。

そうして手を繋がれたまま、私はホールのような空間から外へ出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ