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転校初日

 翌日の学校は二大ニュースで持切りだった。その一つは昨夜、裏山の祠が破壊されたらしいということ。実際に現場を見たのは一部の父兄だけだという。聞いた話によれば大層な壊されっぷりだったらしく、裏山の持ち主は「罰当たりだ!」とご立腹らしい。全て人伝に聞いたことなので確証は無い。

 もう一つはこのクラスに転校生が来るということ。殆どの生徒にとってはこちらの方が重大だ。勿論、俺にとっても古びた祠よりも興味が湧く。

更に男子生徒を盛り上げる要因があった。それはその転校生、なかなかどうして美人らしい。これはクラスの勇士数名が職員室に偵察に赴き、小一時間説教をくらいながらも手に入れた情報だ。だがその転校生、色々と都合があり午後の授業から参加するという。そのため、午前の授業は皆、どこか浮つきながらも比較的静かに過ぎていった。俺にとってもいつも通りに半日を過ごせて嬉しい限りだ。


 昼食を終えて教室に戻るとそこは異様な雰囲気に包まれていた。思わずここは本当に俺のクラスなのかと確認してしまった。間違いない。2−B。俺のクラスのようだ。だが何だ。この静寂は? 明るく、楽しくを地でいく我がクラスとは思えない。教室の扉を開けるとほぼ全員の視線が俺に集まった。一体、何だ? あまつさえ担任すらいるではないか。そして、クラス中の視線を集める俺に見向きもしない人間が担任と並んで立っている。どうやらこいつが例の転校生のようだ。

「神崎。お前今が何時だか分かってるか?」

 担任に声を掛けられ転校生に向けていた視線を時計にむける。

「五限目が始まって15分ってとこです」

 担任は一つため息を吐いてから、「早く席に着け」と促した。俺は教室に入る前に駄目押しで、

「俺の休み時間は15分程度長く取るようにして下さい」

 と生意気を言ってみたが、担任はそれ以上何も言わなかった。

自分の席に向かう途中、それとなく転校生に目を向けた。転校生はやや中空をぼんやりと見つめ、口を真一文字にきつく閉ざしている。確かに可愛らしい顔つきだが、その表情が少しばかり損ねている気がしてならない。緊張しているのかと思ったら違うらしい。すらすらと流れるように自己紹介をしてみせた。

神林竜姫(かんばやしたつき)です。上西高校から来ました。どうぞ宜しくお願いします」

 見た目通りの澄んだ、それでいて凛とした声だった。担任から彼女に関する簡単な説明を幾つかしたのち、五限目のHRを「彼女がクラスと親睦を深められるように」と自習にすることを告げた。

「それじゃあ、神林の席は女子6番だから……男子6番、神崎の隣な。……神崎、変なことを教えるんじゃないぞ」

 変なことってなんだ? 担任の頭の中で俺は一体どんな肩書きがあるんだか。

面倒くさくなったので短く、「はい」と答えて後は机に突っ伏した。短い間だが隣だった木下が「じゃあね」と呟いたのも聞こえないフリをした。新しく隣の席に座った神林は相変わらずの無愛想で「宜しく」と言うと、後はひたすら周りの相手をしていた。そんなこんなで五限目が終わると俺は疲れたので早退することにした。

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