タマモとの戦い①
航空部隊が出陣する。
城から魔力で形成されたドラゴンの翼で浮き上がったり、ドラゴンに乗って空へと上がる八咫烏の子達。
普通に考えたらこちらの戦力は過剰なので、相手が勝てるはずがない。
しかし、相手も普通じゃなかった。
「天守閣の上に誰か居るよ!」
「映像を出して」
オペレーターの子は教えてくれたので、映像を出すようにお願いする。
すると天守閣の上に巫女服を着た女性が金色の長い髪の毛を風に靡かせながら立っていた。
彼女の身か湧き上がる力の奔流は何処か俺に類似している気がする。
それは同時に彼女が神格を持っている事も理解できた。
『おや、こちらを見てはるようやね』
声が直接耳の中に響いてくる。
「タマモなのっ!」
『よう帰ってきなすったな、カナデちゃん。
せっかく人間共に売り払ってやったというのに』
「っ!?」
『まあ、帰ってきなすったなら仕方ありまへん。
繁殖の道具か、うちの新たな肉体になってもらいましょうか。
役立たずの両親よりは少しはましやろ』
「勝手に人の大事な子に手を出さないで貰おうか。
お前は俺達が倒す」
掌を握り締めるカナデの前に立ってタマモを睨みつける。
同時に懐かしさまで覚えてしまう。
『小童が生意気をいいよるわ。
やれるもんならやってみなはれ。
もっとも、うちの所にたどり着けるかはわかりまへんが』
「何?」
嫌な予感がどんどんしてくる。
この場に留まったら取り返しの付かない事が起きる。
そんな気がする。
「ベアトリーチェ、全員を戻して急速離脱っ!!」
『はっ、遅いわ間抜けが。
オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ――禁符・暗黒領域』
大地から天を突き抜けるような縄付きの巨大な石柱が九つ出現し、城の周りを覆う。
膨大な神力が石柱から発せられると城の周りが暗くなっていくと同時にアラートが鳴り響いた。
「っ!?
重力異常を検知!」
「重力フィールドの維持を最優先しやがれです!」
「むっ、無理です!!
出力を上げても相手の方が上です!」
「10倍、20倍、30倍っ!!
止まらないっ!!」
重力攻撃とか出鱈目な事をしてくれるな!
『誰の前におると思ってるねん。
頭が高いんや小童共』
「なんとしても離脱するの!
この後、とんでもないのが来るの!」
「まだ何かあるんですか!?」
『これで終わる訳ないやろ、お嬢ちゃん。ただの足止めや。本命は――』
タマモが印を切ると石柱の上空に巨大な術式が展開される。
そこから巨大な質量を持った物体が姿を表す。
『――ヤマトの秘術。
禁符・星落とし。
これが我が国に伝わる戦略術や』
注連縄がされた巨大な岩がゆっくりと落ちてくる。
重力の力場に入れば急速に加速してくるのは理解できる。
加速した巨大な岩の威力を考えると城は粉砕されるのが分かる。
「主砲は!」
「無理でやがります!
上には飛ばせねえです!
基本的に下だけでやがりますよ!」
「ガッデムっ!!」
俺が言っちゃダメな言葉だろうけど仕方ない。
ここは全力を出して破壊するしかないか?
でも、そうすると結局沈んじゃうんだよな。
それに破壊仕切れるかもわからない。
「他に方法はない?」
「緊急脱出手段の使用許可を出してくれたら逃げれるかも知れねえでやがります」
「許可するからやってしまえ!」
「了解出やがりますよ!
緊急加速シークエンスを開始しやがれです!」
「重力フィールド、3分で消滅します!」
「緊急加速シークエンス、確認は全てスキップ!
客員、衝撃に備えてください!」
慌てて皆でしがみつく。
同時に城の側面から大量の何かが突き出した。
『ほう、何を見せてくれはるんや?』
「いきやがれです、ロケットブースター!」
突き出た大量の物から噴射される炎によって推進力を得たアルカディアは暗黒領域から急速に離脱していく。
『破れかぶれやな。止まれへんやろ』
「そうなのですか?」
「はっ、止まれるはずなんてねーのですよ!」
「ぐぐぐ、ここは一時撤退なの」
『全軍、追撃をかけなはれ』
このままじゃ不味いと思ったのだけど、暗黒領域を抜けた瞬間。
文字通りの超加速でさっさと離脱できた。
内部にも保護機能があったのか、加速のGには軽く耐えられた。
「重力フィールド消失!」
「えっと、どうなるなの?」
「重力フィールドが無くなれば墜落しやがるです」
「なあ、このままの速度だと……」
「ちょー危険出やがりますよ!
衝突でドラゴンクラスじゃねえと死にやがるんじゃないですか」
「ふう。
空を飛べる者、全員に通達。
これよりアルカディアの速度を落として不時着させる」
「「「了解!」」」
全員で外に出て必死に速度を殺す。
気分はコ○ニー落としを止める主人公達だ。
実際にドラゴン達にも協力してもらってどうにか速度を落として無事に着陸出来た。
「各部をチェックしやがれです!」
「装甲の損耗率124%。
内部空間に甚大なダメージを受けているよ」
「貫かれてるな」
「主にロケットブースターのせいだけど」
「重力機関は損耗率68%。
修理をしないと飛べないよ」
「エーテルシステムの報告。
漏れがあるけど都市機能に絞れば生活するだけなら問題なし。
食料生産プラントもなんとか稼働できるよ」
「武装関係は駄目だった!
全部お釈迦だよ」
次々とあげられる報告から考えるに移動が出来ず武器の使用が出来ない状況だといえる。
修理も多大な資源と時間が必要な為、戦いには間に合わないと。
「現在地を誰か知らないか?」
「にゃあ。
知ってる。
ここは白夜。
故郷」
ティオが急に現れて報告してくれる。
「主要都市など、全部制圧されてる。
そこから部隊が向かってきてる」
「追撃部隊か?」
「違う。
街の守備隊や近隣の駐屯兵。
全部獅子族」
「功名を焦って攻めてくる奴等なの」
「そうか。
じゃあ、ティオの部隊で滅ぼして来い。
領地を奪還してここを拠点にする」
「にゃあ。
任務了解。
行く――」
行こうとするティオを抱えて止める。
「ティオは行くなよ。
身重なんだから部隊の人達に任せなさい」
「にゃあ……無念。
よろしく」
「「「「お任せ下さい!」」」」
「ついでに何人かドラゴンやドラグーンの子達も連れていけ」
「にゃあ、必要ない。
私達だけでする。
ううん、させて」
「わかった」
ティオのお願いに猫族だけで奪還を行う事にした。
命令が伝わったら瞬時に猫族達がアルカディアから出て行く。
どちらにしろ、行われるのは一方的な虐殺になるのだから。
とある獅子族の兵士
「急げ急げ!
猫族や妖狐共の姫や女を犯し放題だぞ!」
「女共の肉、美味そうだぜ」
欲望の赴くまま楽しむ為に俺達は墜落した連中の場所を目指し、森を浸走る。
上からの許可は早い者勝ちで出ている。
こうしている間にも沢山の連中が向かってきているのだから急ぐしかない。
森を抜けたら入江に墜落している巨大な街が見えた。
アレが獲物だ。
「野郎ども行くぞ!」
「「「おうっ!」」」
「そうですね。
行ってもらいましょうか。
地獄へ」
「穢らわしい身でありながら我らの領地に侵入して好き放題をしている連中は皆殺しにゃ」
目の前に猫族の美しい女が二人現れた。
胸もでかく、押し倒して身体を楽しんでから食らってやろう。
だが、嫌な予感がする。
本能が逃げろと言っている。
「へっ、獲物が自ら来やがったぜ!」
「早い者勝ちだ!」
「あっ、てめえ!!」
獣化もせずに突撃して行く野郎どもに俺も急いで向かう。
だが、それは間違いだった。
「どちらが多く狩るか、勝負しましょうかネフェル」
「いいにゃ。
リフリーこそ、簡単に殺しちゃ駄目にゃ」
「ええ、たっぷりと苦しませないといけませんもの」
「へっ、狩られる側が何を言ってやがる!」
「どっちが狩られる側かたっぷりと教えてやるぜ」
「そうですか。
では、ご教授願いましょうか。
ね、ネフェル」
「楽しみにゃあ」
リフリーと呼ばれた女性が剣を引き抜く。
するとそれは刃の鞭になった。
「さあ、踊ってくださいな。
死への舞踏を」
ネフェルと呼ばれた猫族の女性は龍の顔の篭手を装備し、そこから伸びる爪で戦うようだ。
「遊んでやるにゃ」
どちらも俺達の敵ではないだろうが、さっきから嫌な予感がする。
一応、念の為に足を止める。
他の奴らの残りものになるが構わないだろう。
「行くにゃ」
ネフェルと呼ばれた女が消えるように姿を消した。
次の瞬間には前に出ていた連中の中に現れていた。
「どこ行きやがった!」
「くそっ、隠れるのが上手い猫ちゃんだな!」
なんで誰も気付かないんだ……やばいっ!
ネフェルと呼ばれた女が笑った瞬間、背筋に寒気が走った。
「にゃ」
「いつの間に……」
「飛んで火に入るなんとかだぜ!」
気付いた奴等は一斉に襲いかかるが、その場でそいつらの手足がぼとぼと落ちて血飛沫を撒き散らかした。
「な、ななななにが……」
「脆いようですね」
「にゃ。
加減が難しいにゃ」
「ふふ、そうですか。
では、私も楽しみましょうか」
やべぇ、こいつらはやべぇ!
俺は他の連中を囮にして逃げる為に獣化して森へと入る。
「獣化して襲いかかれ!!」
「くすくす」
振り返れば飛び掛ってくるライオンをひと振りでまとめて動けないように手足を切断してやがる。
急いで逃げないと殺される!
他の連中にも知らせねえと!!
「どっこ、行くのかにゃ~?」
背中に衝撃を感じたと思ったら、ネフェルと呼ばれた女が乗っていやがった。
全く反応出来なかった。
いや、数百メートルは離れていたというのに一瞬で来やがった!!
「くそがぁっ!!」
「おっと」
飛び上がって回転し、どかせると同時に距離を取る。
口に隠し持っていた閃光玉を噛んで吐き出して使う。
目潰しをして急いで逃げる。
「お?
いきなり逃げるなんて賢いにゃ。
でも、うちら猫族から逃げられると思ってるのかにゃ?」
一瞬で目の前に回り込まれたっ!?
やべえ、実力が違い過ぎる!
「っ!?」
そういえば、こいつらは追跡や諜報が得意な種族だった。
こんな戦い方はこいつらの十八番じゃねえか!
「投降する!
助けてくれ!」
「駄目にゃ。
お前らは全員、皆殺しにゃ。
誰一人として生きて返さない」
「そうですよ。
我らの領地を穢した罪は重いのですからね」
血塗れの剣を持った女がこちらにやって来る。
向こうからは呻き声しか聞こえて来ない。
「それに情報を聞き出す意味もありません。
我々がここで知らない事はないですから」
「ぞ、増援が来るぞ!!」
「問題ありません。
既に近場の主要な街道には伏兵を配置しています。
横合いから複数のドラゴブレスによる攻撃を受ければ全滅でしょう」
「生き残っても他の連中が片付けるにゃ。
っと、うちらも狩りに参加するにゃ」
「そうですね。
若い子達にいい所を取られるのは頂けませんね」
俺の頭にネフェルと呼ばれた女の爪が食い込む。
目の前には掌があるだけだが、それが篭手と合わさって龍の口の中のようで何よりも恐ろしい。
「喰らっていいにゃ。
たっぷりと味わえ、ニーズヘッグ」
「や、やめっ――」
体中を食われるような感触がし、激痛が襲いかかってきて意識を失った。
あっはっは、バグキャラに簡単に勝てるはずがないじゃないですか。
禁符・暗黒領域:指定領域に超重力の空間を作成する。重力の掛かる値は術者の力量に比例し、タマモの場合は500倍まで可能。回りの被害が尋常ではない為、注連縄がされた石柱による隔離結界を展開し、その内部で使用。段々と上昇するという特性を持つので初期段階で無理矢理突破して逃れる事は可能。
禁符・星落とし:巨大な要石を召喚し、対象を物理的に粉砕する。最低で直径20メートル。最大で直径200メートルの要石を降らす。太陽の力を封じる効果がある。
今年はありがとうございました。
来年も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます




