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補給部隊出発準備②

 


 門にある兵士の詰所に向かうと、すぐに兵士の人に通されて会議室のような部屋に入る。入った部屋には既に何人か集まっていた。その中には例の領主の息子と取り巻きはまだいないようだけど、他の連中は来ているみたいだ。


「こちらの方が八咫烏の団長になります」


 連れて来てくれた兵士の人に紹介される。すると、部屋に集まっていた人達が俺の事を色んな感情を込めた視線で見詰めてくる。


「おいおい、餓鬼じゃないか。貴族の令嬢みたいな容姿をしているが、本当に冒険者なのか?」

「容姿はどうであれ、兵団規模を束ねる人ですよ。戦力はあちら方のほうが多いでしょうし、ギルドが認めているなら問題ないでしょう」


 大剣を背負った男性と杖を持った魔法使いの女性が話している。


「ふむ、小娘が今回のリーダーかの。大丈夫なんかちと不安じゃな?」

「俺達と同じCランクなのだから実力は気にしなくてもいいだろう。問題は指揮できるかだ。それに下手な事は言わない方が良さそうだ」

「そうじゃな。殺気が一瞬じゃが出ておったわ」


 あれ、俺って殺気を出してたかな? それともティオかな。


「では、失礼します」

「ありがとう」


 お礼を言って兵士を見送った後、改めて集まってるメンバーを見る。大盾を背負った大男と戦斧を背負った男の二人が同じCランクのバスタードだろう。女性の魔法使いと大剣の男性がティセリウスだと思う。


「さて、今回ギルドを通して領主から輸送任務の護衛依頼を受けた八咫烏の団長、レン・パラディオンです。ギルドランクはCで、性別は男だからその辺よろしくね」

「なん、だとっ……」

「嘘っ……」

「美少女なのに、美少女なのに……」


 色々と言われるが気にしない。気にしたら女になってしまう可能性があるからだ。気持ちの持ちよう次第でこの身体は勝手に変化してしまうのだから、気をつけないといけない。


「とりあず、来てないない人もいますが、時間がもったいないので始めますね。まず、簡単にこちらの戦力から説明します。今回作戦に参加する戦力は六五人と召喚モンスターになります。

 また私達は装甲を施した馬車を一〇台用意してあります。遠距離攻撃用の装備も備え付けてあるので支援攻撃を行わせていただきますので、支援が必要な場合は知らせてください。

 また、怪我人は回復魔法で治癒が可能なので運んできていただけれれば無料で治療いたします」

「それは本当か?」

「本当です。二〇人は回復魔法がそれなりに使えますから、ご安心ください。もちろん、無料な代わりに治療する順番はこちらで決めさせていただきます。

 使える人以外はいらないので、働き次第にする予定です。あくまでも私の団と護衛対象の治療、防衛に必要だと思われる人を優先します」


 俺にとって護衛対象よりも団員の方が大事なので、治療はそちらを優先するつもりだ。それに今回の護衛任務は正直言って物資さえ届ければいいので、俺の団から放出すれば他の人的被害は気にしなくてもいい。もちろん、こちらは最悪の状況だけどね。


「それはそうね」

「だな。下手したら全滅する可能性だってあるしな」

「最後に護衛任務は始めてなので、こちらが考えた隊列や危険な場所などについての意見を教えてください。こちらは皆さんの生存確率をあげるために必要なことなので、ご協力ください」


 テーブルに地図をおいて全員がこちらに注目してから配置を説明していく。全員の生存率の話しをしたので皆が真剣だ。


「ティセリウスが最前列で、バスタードが後方をお願いしようと思います。理由としてはティセリウスのパーティーには斥候の人がいますし、バランスがいいですから。

 こちらからも斥候は出しますが、多い方がいいですからね」

「他の奴らは真ん中か」

「はっきり言って練度が低いでしょうし、協調性があるとも思えません。彼等は領主の息子とその取り巻きに加え、その護衛ですから働きには期待しない方がいいでしょう」

「それもそうか」

「かといって怪我させても大変……疫病神ね」

「まあ、基本的に無視してこれでいきます。配列は問題ないですか?」

「ティセリウスは問題ない」

「こっちもだ」


 バスタードとティセリウスが賛同してくれたのでこれはよしとして次だな。


「危険な場所は粗方書かれているから問題ないな」

「補給部隊の場合、一番警戒するのは敵の襲撃よ。襲撃を事前に察知できるかによるわね」

「斥候はそっちからも出すんだろ?」

「猫族の奴隷を手に入れていますから、彼女達にお願いする予定です。数は二〇人です」

「多いが……大丈夫なのか?」


 反抗してわざとミスをし、こちらの居場所を知らせることを警戒しているのだろう。だが、それは俺達にとっては杞憂である。


「問題はありません。白虎の主人である俺にも忠誠を誓わせています。それとくれぐれも彼女達に対するフレンドリーファイア、誤射などはご遠慮願います。その場合、反撃する許可はだしていますので、容赦なく狩りに向かうと思います」

「わかった。白虎までいるなら信じよう」

「そうね。問題ないでしょう」


 おそらく、皆が思っているのは白虎を人質にとって従わせていると思っているのだろう。だけど、こちらの内情を教える理由も、問題もないのでこのまま話しを進める。

 話しを進めてここにいるメンバーの実力などを教えてもらい、夜営の順番などを決めていく。サンドスレイムとプライムは抜いて決める。

 この二つは独自に真ん中の部分だけをやってもらう。夜間の警備はこちらでできるので問題ないけど、一応やってもらう。それに護衛の人もその方が安心だろう。


「では、これでいいですか? 他に決める事は?」

「特にないな。我々はそれでいい」

「ティセリウスも同じです」

「では――」


 解散しようとした時、急に扉が開いた。そこには何処かで見たが――お子様とその後ろに引き連れている騎士の姿が見えた。


「諸君、待たせたなっ! 指揮はこの俺が取るっ!」


 遅れて来たのに偉そうにありえない事を喚き散らかす。本当に害悪にしかなりそうにないね。他の皆も嫌そうにしているし、いざとなれば処理するのも必要かもしれない。でも、まあ今は流しておこう。


「じゃあ、そっちの指揮は任せた。君達の担当は大切な中央だ。隊列の中央の護衛を好きにお願いするよ。あと、そこから出てこないように。危険な前と後ろは俺達で担当しますから」

「そうか。ご苦労だ。褒めてやる!」


 他の人達に解散を伝えてさっさと外に出ようとする。


「待て! お前、綺麗だから俺の妾になれ! 一生不自由なく暮らさせてやるぞ」

「「ぷっ」」

「だが、断る。だいたい俺は男だ」


 バスタードの連中とか、笑いやがった。まあ、無視して出ようと思ったが他の兵士の連中が扉を塞いでいるので出れない。だから、窓から飛び降りることにした。


「では、各自しっかり準備をしておくようにお願いします」


 それだけ言って身体を窓から外に飛び出させる。すると重力に従って落下する。その途中で壁を蹴って空中の方に移動しながら、サンダーバードをモンスターカードから召喚して飛び乗る。

 すぐにティオも飛び乗ってくるので、そのままサンダーバードに自分の馬車の所まで飛んでもらう。到着したら飛び降りて、サンダーバードを送還してモンスターカードに戻す。


「ただいま」

「二人共、お疲れ様でした。どうでしたか?」

「にゃあ、問題ない」

「領主の馬鹿なお子様はなんか覚えてないみたいだったけど、他は問題ないかな」

「? ご主人様は姿を変えていましたから気付かなかったんじゃないですか?」


 リフィアがティオを撫でながら小首を傾げた後に気付いたのか、教えてくれる。確かにそういう事なら納得できる。そもそも俺に求婚してくるくらいだしな。


「そうみたいだね。それよりこっちの準備は?」

「終わっていますよ。後は馬車を移動させて隊列を変えるだけです」

「にゃあ。なら、配置を決める」

「そうしようか。俺達は後ろの馬車でいいから、前には経験者の士官を送るからティオ、選別をお願いね」

「にゃあ、任せる。リフリーとネフェルを送っておくから大丈夫」


 戦闘が好きな子達と猫族の子を書いた木片をティオに渡して後は任せる。ティオはすぐに出て行ったので配置を連絡してくれるだろう。ティオの口からでた二人は優秀な士官だったようなので、編成も大丈夫だろう。


「さて、俺は報告に行ってくる」

「はい、いってらっしゃいませ」


 リフィアに見送られながら、この補給部隊の責任者……役人、いや軍人さんに報告にいく。その軍人さんがいる場所にはアリシアもいた。


「何してんの?」

「ああ、貴方ですか。馬鹿な兄の尻拭いです」

「なるほど……苦労しているんだね」

「全くです。あの馬鹿のせいで何度も昇進の機会を逃しましたから。それと……」


 アリシアが俺の近くに近付いてくる。それもキスできそうなほど近く。だけど、この行為は耳元に口を近づけただけだ。


「クレアや私が聖女という事は内緒でお願いしますよ。知っているのは王か神殿関係者の一部、それも幹部クラスの機密ですから」

「了解。それは逆も言えるけど、いいよね?」

「もちろんです。それと、誰とは言いませんが何かしでかしたら消してくださっていいですから。それでは、お兄様の事をお願いしますね」


 それだけ言って帰っていくアリシア。殺害許可がもらえてしまった。まあ、不幸な流れ弾なんだろうけどね。


「すいません、これをお願いします」

「ああ……アリシア様と知り合いなのか?」

「まあ。そうですね。指名依頼も受けたこともありますし」

「全く羨ましい限りだな。美男美女ってのはまったく……ほらよ。これが受け取った証明印だ」

「確かに受け取りました」


 すぐに隊列を整えるために兵士の人が動いていくように指示を出していくの見送ってから、馬車に戻る。

 それからしばらく馬車で待っていると隊列が整い、ディルペスの街を出発する事となった。

 ベアトリーチェがヤタと共にギリギリ馬車に乗り込んで来た。限界まで子供達に教えていたから仕方ないだろう。

 一応、もしもの時はライトニンググリフォンを召喚して追ってくるようにお願いしたけどね。

 さて、これで全員が揃ったので無事な旅路を期待したいけど、多分無理だろうし楽しもうかな。





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