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転生トリップ




 


 俺の名前は川崎連夜。30歳だ。

 彼女もいないし、ニートであり魔法使いだ。

 そんな俺の元に一通のメールが届いた。

 メールの内容はこうだった。


【夢も希望も無いキモオタの魔法使いになったニート達に告げる。

 我は汝らにチャンスを与える。

 親、家族、友を捨て新たな世界へと赴く覚悟があるならば、我が剣と魔法の世界に汝らを召喚しよう。

 ハーレムを作るのもよし、一国一城の主となるもよし、全ては汝らの覚悟次第。

 覚悟がある者は下記のURLにアクセスし、自身がなるアバターを作成せよ。

 なお、このメールは5分で自動消去される。

 それまでにアクセスするべし】


 悩むが、一応アクセスする。

 別にこの世界に未練なんてないし、どうせ悪戯だろう。

 パソコンだって替える予定だ。別に構いやしない。

 だから、URLにアクセスしてみた。すると目の前が真っ暗になって身体から力が抜けていく。



 次に目覚めると、そこは真っ白な空間だった。

 ただ、目の前にはパソコンがある。

 その画面にはカタカタと自動的に文章が打ち込まれていき、アバター作成を開始すると書かれていた。


「まじもんかよ……よっしゃぁあああああああぁぁぁっ!!」


 無茶苦茶嬉しい。

 あんな世界にいるより、強くてニューゲームできる方がいいに決まっている。

 だって、魔法が使えるだろうし狐っ娘やエロフも期待できるんだからっ!


【あちらの世界に行動するアバターの年齢と性別を決めてください】

「18くらいでいいかな」


 18歳と年齢を入れた後、当然の如く性別を男にする。


【次に容姿を作成します】


 ソフトが立ち上がって18歳男性の姿が映し出された。

 造形も自由自在みたいだ。

 これでイケメンとかも作れるのかも知れない。

 頑張ってイケメンの姿を作成する。 


【次にスキルを決定します。

 今から行ってもらう世界はスキル制の世界です。

 モンスターが存在しますが、基本的にはダンジョンに潜んでいます】


 なら、特に問題はなさそうだな。


【ですが、この世界にあるレスニア大陸は三つの大国と五つの小国が争い合う世界です】

「ちょっ!?」

【現在も戦争中の所がございます。

 それをご参考にしてお選びください】


 これは色々と大変そうだな。

 だが、ミリタリーとまで行かないまでも銃も好きだしそれ系統を探すか。

 人殺しなんてやってみないとわからない。


【スキルは5個です。

 無限に存在するスキルからお選びください。

 なお、スキルには種族スキルという物が存在します。

 それは一つしか習得できません。

 なお、既に別の方が習得されている特別なスキルは選択できません。

 言語スキルと鑑定スキルは自動習得ですのでご安心ください】

「無限か……しかし、言語は助かるな」


 とりあえず、ざっと見ても大量にありすぎてわからないので検索を使う。

 無限と言っているんだからなんでもあるのだろう。

 ラーニングとかスティールとかもありそうだな。

 検索してみるとあったが、既に選択できなくなっていた。

 残念だ。

 とりあえず、クリエイト系統を探そう。


「ちっ、こっちも無いか……仕方が無い。

 ピンポイントでやってみるか」


 ウエポンクリエイト・アナザーワールドは選択できた。アナザーはもう一つの、別、ほかのという意味がある。つまりこれでもう一つの世界や別の世界の武器を作りだすことができる。

 なので、そっちを選ぶ。これで残り4個。種族をどうするか悩むが、エルフや獣人とかもありだが……ふと思ったことがあるので、戦神と打ち込んでみる。

 すると戦神スキルが存在した。

 だが、これも既に使用済みだった。

 では、もっと細かく神の名前はどうかと調べるとこちらも残念ながら選択不可、使用済みだった。

 いいの見つけたと思ったんだけど、マイナーなのを選んだのにどれも使われている。


 そういえばメジャーなのは打ってなかったな。とりあえず太陽神である天照大御神(あまてらすおおみかみ)と入力してみる。


「入った」


 使用可能という項目だったので押してみる。

 すると、突然視界が移り変わって目の前に着物を着た美しい金髪の女性が現れた。


「さて、面接を始めようか」

「え?

 面接?」

「ええ、そうよ。

 面接に受かれば、今ならなんと私が引き継いだアマテラスの力に加えて、取り込んだままにしておいたアテナの力も貰えるわよ」

「わ、わかった」

「では、初めに名前から。

 私はアステル。

 アマテラスの力を持つ前任者。

 大戦に負けて現在後継者が現れるまで怠惰を貪ってる」

「いいのかそれでっ!」

「だって、いいも何も、何もできないのだもの。

 私が守護した臣民も奪われたし、せいぜい嫌がらせで取り込まれる前にアテナの魂を確保して盛大に自爆してやったわ」


 自爆って派手な事しているな、おい。


「ちなみに大陸に穴が空いたけどね」

「流石アマテラス……」

「で、貴方は?」

「川崎連夜……レンヤ・カワサキかな。

 なんかメールが届いてアクセスしたらこっちに来た」

「私の時も同じね。

 自殺しようとした時に来たからアクセスしたのだけど……という事は新しいシステムの実験もあるのね」

「システム?」

「貴方がこれから行く世界は神様達の実験場なのよ。

 同時に分霊同士によるゲーム。

 私の場合、アマテラスの分霊ね」


 神様の力を得る事で神様の分霊になるという事か。


「本体はいるんだよな?」

「会ったことはないけどね。

 基本的にアマテラスの大元は休眠しているから気にしなくていいわよ。

 アマテラスが何もせずに休眠したら天の岩戸みたいな事になるから」

「ああ、なるほど。

 太陽が隠れるんだな。

 だから、分霊を作成して行動させるんだ」

「そうよ。

 まあ、たまに起きて分霊がどんな行動をしたかとか、面白半分に見るらしいけどね。

 でも、数千、数万年に一度起きたらいい方だから……言ってしまえば本のシリーズを一気に見るような感じね」


 つまり本当に気にしなくていいと。

 それとアステルの感じから死んだら引き継ぎの者が現れるまでまたなくてはいけないのが面倒な事くらいか。


「それで、引き継ぎだけど……数百年暇になる事があるから気をつけないといけないわよ」

「数百年もか」

「ええ。

 神様の力なんて普通は無いと思うし、メジャーな神様だから、まず無いだろうと思う人が多いみたいで……523年も暇しているわ」

「その間にチャンスは?」

「6回ね。

 気づいたのは2、3人くらいよ。

 1回でだいたい10人から多くて50人くらい選ばれるのだけどね」


 60人から300人で2、3人しかいなかったのか。

 まあ、知らずに他のスキルを選んでしまったんだろうな。


「それで、カワサキは私の話を聞いて得る気になった?」

「それはもちろん! 是非ともくださいな」

「ふふ、いいわよ。

 じゃあ、あげる。

 ただし、アバター製作には口を出させて貰うわよ」

「わかった」

「よ~し、アテナ!」


 アステルが呼ぶと虚空から銀髪のクール系美少女が現れた。


「何?

 ゲームの手伝いなんてしない」

「違う違う。

 後継者が来たから貴方の力も渡そうと思ってね」

「そう、やっと悠久の退屈から解放されるのね」

「そうそう」


 アテナと呼ばれた少女は少し嬉しそうにしている。


「でも、彼は男だけど……」

「大丈夫。

 女の子のような男の娘にすればいいのよ」

「おい」

「拒否は認めないから。

 そっちの方が力を発揮しやすいし」

「そうね。

 最初からある程度神の力を使えた方がいいし、男の姿で適応できなければ消滅するけれど、それでいいの?」

「いえ、異論はアリマセン」


 せっかくの強くてニューゲームなのに消滅とかまじで嫌だ。


「じゃあ、3人で決めましょうか。

 っと、その前に」


 アステルが手を叩くと、目の前にちゃぶ台と座布団。

 そしてお茶とお菓子が現れた。


「食べながら作成しましょう。

 まずはアバターを見せて」

「ああ」


 アバターを渡すと、何とも言えない顔になっていた。


「うん、よし……こっちは2人でやっておくからスキルを決めましょう。

 アテナ、よろしく」

「ええ」

「よ、よろしく……」


 アテナさんがアバターを無茶苦茶に改造……いや、改変していく。

 俺はそれを涙ぐみながらアステルとスキルの話をする。


「言語スキルと鑑定スキルは自動だから後五つね」

「ああ。

 でも、その内の1つはウエポンクリエイト・アナザーワールドにしようと思っている」

「制作系?

 アナザーって事はもう1つの、別の、って事よね」

「つまり、俺が向かう世界以外の兵器を作る。

 銃とか宇宙戦艦とか!」

「SF系!?

 いや、でも面白いわね……」

「って、あっちの文化も詳しいんだな」

「暇だから覗く事はできるのよね。

 太陽神だから、太陽があればね」

「便利だな……」

「まあ、ここの空間じゃないとできないのだけど」


 規制でもかかっているのか。

 でも、それは仕方ないか。


「でも、どうせなら道具系も作れるようにした方がいいわね」

「道具か……あれば便利そうだよな」

「いや、便利ってレベルじゃないから!

 よく考えなさい!

 お・い・し・い・ご・は・んが食べられるのよ!」

「っ!?

 そうか、料理もアイテムか!!」

「ええ、そうよ!

 向こうに行って何を苦労したかって、食事よ食事!

 服とかは作れるか微妙だけど、食事が作れるだけでもかなり便利よ」

「よし、じゃあアイテムクリエイト・アナザーワールドを選択。

 いや、でも隠蔽系も欲しいな」

「それも必要ね。このままいったら、神様だということがまるわかりだしね。

 食べ物は我慢すればいいのだし」

「大丈夫。

 アイテムクリエイトならウエポンクリエイトと同列系統だから強化すれば手に入る。

 最初、我慢すればいい」


 アテナがスキルを強化していけばアイテムクリエイト版も手に入ると教えてくれた。

 それなら、やっぱり隠蔽系でいいだろう。

 探して見つけた隠蔽系で一番強力な隠蔽・究極を選択する。

 これはなんでも隠せるらしい。

 見破られるのは至難の技で、偽造などにとっても有効らしい。

 色々と便利なスキルのようで悪い事にも使えそうだ。


「アマテラスを選択して貰ってアテナは私はからのサービスだから選択したのは3つね。

 残り2個」


 あとはどうするかだな。


「アマテラスとアテナの具体的な力は?」

「それはね……」


 聞いた話によると神様としての基本能力がこれ。


 神族


 ・個人:全能力値上昇×レベル

 ・個人:魅力上昇×レベル

 ・個人:全耐性強化及びスキルのコピー、奪取不可

 ・集団:獲得経験値上昇×レベル

 ・集団:スキルポイントレベル分追加会得

 ・集団:成長限界解除

 ・眷属作成:加護を与えた者を眷属に進化させる

 ・加護:加護を与える


 太陽の女神 天照大神アマテラス


 ・万能の神:自身のありとあらゆる行動に莫大なプラス補正を与え、眷属と使い魔にも大幅なプラス補正を与える

 ・太陽神:太陽の主権を持ち、その力の一部を自在に振るえ、火と光、闇に対して圧倒的な補正を得る

 ・地母神:多産、肥沃、豊穣を与え、生産行動に対して自身と眷属などに大幅な補正を与える

 ・戦女神:戦闘に関するあらゆる事に対して自身と眷属、使い魔に対して大幅な補正を与える

 ・八咫烏召喚:使い魔として八咫烏を召喚する


 守護の女神 アテナ


 ・守護の女神:防衛に関する事に大幅な補正を配下にある者全てに与える

 ・知恵の女神:思考、魔力、認識、計画立案に関するあらゆる事に大幅な補正を与える

 ・芸術の女神:作成物に関するあらゆる事に大幅な補正を与える

 ・工芸の女神:緻密な作業に対して莫大な補正を与える

 ・戦略の女神:戦略級魔法の行使が容易く可能となり、相手の戦略を詠んだりできる

 ・地母神:多産、肥沃、豊穣を与え、生産行動に対して自身と眷属などに大幅な補正を与える

 ・戦女神:戦闘に関するあらゆる事に対して自身と眷属、使い魔に対して大幅な補正を与える


 このようなふざけたチート能力だった。

 さすがは最高神とオリュンポス十二神と言えるだけの能力だ。


「なあ、この太陽の主権って……」

「ああ、それ?

 使い道なんてあんまりないわよ。

 太陽の一部を地上に召喚して自爆するくらい?」

「地上に太陽を落としたのか!?」

「一部を一瞬だけ、だけどね。

 死にかけでやったからお陰で死んだわ」

「それで死んだのか?」

「通常の状態なら問題ないのだけれど、死にかけで自身を太陽に変えてやったのだから当然ね。

 ああ、クトゥグアみたいに生ける炎だと思ってもいいわよ」

「OK、理解した。

 どんな化け物かって事を……」


 本当にやばい力だ。

 使い方を間違えればとんでもない被害を受ける。

 それに生ける炎という事は炎を吸収したり色々とできるんだろうしな。


「残りだけど、魔法系統は火や炎の系統は自由自在だからいらないわね。

 土魔法とかは上げていくしかないけど、習得は勝手になさい。

 勿体無いから別のレアスキルとかユニークにした方がいいわ」

「それもそうだな」

「何がいいかしら?」

「魔物合成よ。」

「魔物合成?」

「あれば便利そうだが……」

「知恵の女神は真理を認識し、自在に操れる。分解し、考査し、再構築する。

 その過程で魔力を使い、分子レベルで加護や付与を行うと強力な魔物の完成」

「「おお~」」

「そして、これは人間や亜人、魔物にも使える」


 人間や亜人にも使えるならかなり便利そうだな。


「そういえば、アテナが色々と増やしてたもんね~」

「アテナが?」

「この子、ケモナーだから」

「もふもふは至高」


 なんか、色々と変なのが増えてそうだな。

 まあ、どうでもいいけど……魔物合成は確かにありだな。


「じゃあ、オススメに従って魔物合成にして決定と。

 残りはスキルコントロールにしておくか」


 スキルコントロールはスキルをある程度自由に扱う事ができる。

 触れてさえいれば死体からでもスキルを奪い取れるみたいだ。

 譲渡もできるし、制限があるがコピーもできる。

 とりあえず、これを習得する事にした。


「それでアバターはできたのか?」

「できてる」

「見せてみてよ」

「うん、決定して反映するから待って」

「まっ――」


 その言葉と同時にボタンが押されて俺の姿が変わってしまった。


「これは凄いわね」


 アステルが俺の目の前に姿見の鏡を出現させてくれたので、それで確認する。


 唇は鮮やかな紅で濡れ羽色のさらさらな髪の毛が太ももの辺りまであり、前髪も長くて真ん中にあるのが口の下まである。

 そして、童顔で中性的なのに加えて華奢な身体と白い肌に前髪からのぞく瞳は大きくてアステルと同じく綺麗なエメラルドグリーンだ。誰がどう見ても完成された芸術的な美を持つ完璧な美少女という容姿だった。

 身長も160くらいで、男にしては小さな部類に入るだろう。


「おい、こらモテないだろ!」

「そうね、これは女からして嫌になるレベルね。正直言って友達でもいやな感じよね」

「大丈夫、女にはしていない」

「いや、そういう問題じゃ……」

「まあ、あっちでモテたいならモテるんじゃない?」

「本当か?」

「男に」

「死ねっ!!」


 思わず蹴りかかる。

 思ったよりも凄まじい速度で放たれた足は――


「甘い」

「ちっ」


 掴まれてそのまま反対側に投げ飛ばされた。

 このままじゃ地面にぶつかるが、視界はスローモーションで動いている。

 これはどうにかなりそうだ。

 直ぐに身体を前に倒して回転させて体勢を整える。


「ふっふっふ、レベル1のひよっこが、数百年も最高神アマテラスの力を手に入れていた私に叶うとでも思っているのかしら?

 この見習い男の娘が!」

「うがーっ!!

 男の娘言うなっ!」


 ダッシュして接近して拳を連打する。

 信じられないような速度で繰り出す事ができている拳は当たれば確実に大ダメージを与えるはずだ。

 だが、実際は――


「無駄無駄無駄」


 全て掌で受け止められて逸らされる。

 いや、それどころか腕を掴まれて反対に向かされて抱きしめられた。


「ハ・ナ・セ!!」

「だが断る!」

「うぎぎぎぎぎっ!?」


 暴れるがそのまま抱えられて座らさせられた。

 身動きは完全に封じられている。

 いや、胸があたってるのがまた……苦しい。

 嬉しいはずなのに、大きな胸で挟まれて窒息させられるような苦しさを与えられて嫌になる。


「で、終わった?」

「ええ」

「うがーっ!?

 お茶なんて飲んでないでこの乳魔人から助けろ!」

「面倒だから嫌。それに変わりに私が抱かれる事になるから絶対にお断り」

「あっ、さてはお前っ!?」

「身代わりご苦労様」

「敵ばかりかーっ!!」

「何言ってるの? 味方よ」

「そうそう」


 こいつら……人の事を玩具にしてやがる!


「別に少しの間だから大人しくしてなさいな。

 それにそっちの方がお得よ」

「得?」

「ええ。

 今から初期装備の作成や知識の定着を行ってあげる」

「それは確かに助かる……」

「後、モテたいとかいうけど異性なんて奴隷を手に入れればいい。

 手っ取り早く眷属もできて便利」

「そうね。絶対服従だし、裏切る事もないから。

 あちらでは甘い話には裏がある。人は疑って掛かりなさい。

 行く場所は日本じゃないんだからね。

 詐欺にあってお金を取られるだけじゃ済まないから。

 特に今の姿だとね」

「魅了補正もあるから凄く可愛い。

 取って食べられる」

「お前のせいだろー!」

「反省はしていない。

 後悔もしていない」

「反省して――してないのかよ!」

「いい仕事をしたと思っている。

 知恵、芸術、工芸の女神としての力を使った最高傑作」

「無駄に神製かよ!」


 ああ、くそ……どう足掻いても勝てないだろうし、何かくれるみたいだから我慢するか。

 しかし、変えられないかな……

 作成画面を見ても変更ボタンなんて一切なかった。


「むくれてる顔もいいわね~」

「さっさと初期武器を作るぞ」

「そうだね」

「何がいい?」

「銃だな。

 コルト・パイソンで」

「コルト・パイソン?」

「そういう武器があるの。

 そうね、じゃあ実際にスキルを使って作ってみましょうか。

 こうやって手を出して」


 腕を握られながらあげられる。


「スキル名を言葉に出す」

「音声認識?

 恥ずかしいんだけど」

「最初はサポートがないと無理」

「そうそう。

 ほら、いいなさいよ。

 大きな声で!」

「くっ……うっ、ウエポンクリエイト・アナザーワールドっ!!」

「まあ、叫ばなくても呟く事でもできるんだけど」

「うがぁぁぁぁっ!!」


 また遊ばれた!

 まあ、発動はしたようで魔法陣が出てきて直ぐに消えた。


「なにこれ?」

「今のが不発。

 しっかりと細部までイメージしましょう」

「……」


 先に言えよといいたいが、どうせ言った所でからかわれるだけだ。

 だったらイメージしてさっさと行う。

 イメージするのはマグナム弾を発射できる高級リボルバー。

 マグナム弾を発射する為、その威力は非常に高い。

 これらの情報がイメージするとすらすらと脳内に浮かび上がり、設計図から作業工程まで全てを明確に理解でき、種類を選択できるようになった。

 弾丸は.357マグナム弾で装弾数は6発。

 そして、通常とは違って限定モデルの8インチ版であるバイソンハンターを選んだ。

 そして、理解すると同時に作れるという確信が湧いてくる。


「……ウエポンクリエイト・アナザーワールド、コルト・バイソン……」


 魔法陣が出現して大量の光を発したと思ったら、次の瞬間には手の中にしっかりとした重い塊が出現した。


「成功みたいね」

「本物?

 本物なのか?」

「じゃないの?

 撃ってみたら?」

「よし、そうだな」


 適当にコルト・バイソンを向けて片手で撃ってみる。

 すると発射音が響いて弾丸が発射された。

 衝撃は結構来ると思ったのだけど、無理矢理押さえ込めるレベルだった。

 初期レベルでこれなら容易いかも知れないな。


「あれ?

 反動なんて無視できるレベルのはずなんだけど……」

「無意識で反動があるものと思ってるだけ」

「ああ、なるほど」

「う、うるさいっ」

「それよりもほら、どんどんやるわよ」

「時間は有限。さっさと八咫烏を呼び出す」


 そう言いながら八咫烏の召喚と契約を行う。出てきたのはカラスに足3本だった。ここまでは神話通りだが、特殊能力が変だった。


「使い魔、ファミリアは剣とか杖の装備になるんだけど」

「これはまた……」

「あははは」


 八咫烏が装備化して俺に装着されると、機械の翼になったのだ。

 八咫烏なので、火属性は完全に吸収して反射まで行い火器も多数備えている。

 武装は召喚式でまさにSFの世界の兵器だ。


「まあ、気にしたら負けだよな」

「そうね。

 強いに越した事はないわ。それと名前をつけてあげてね」

「八咫烏、カラス、レイヴン、おじさん……いやいや、あれは違う違う。

 もうヤタでいいか」

「それでいいわね。

 おじさんはスルーだからね。

 じゃあ、次は……」

「服はできた」

「知識を与えるだけね」


 アテナが渡してくれたのはちゃんと男物だった。

 コートもオレンジ色に黒いでアクセントにしたもので肌触りもよく着やすい。


「服は何着か予備を作ってあげる。手袋もいるかな……」

「ありがとう」

「んで、知識だけどぶっちゃけ古いけどいる?」

「古い?」

「数百年前の知識だけど」

「あ~欲しい。何かに使えるだろうし」

「わかったわ」

「じゃあ、こっち向いて」

「ん?

 ッ!?」


 振り向いた瞬間に唇を奪われて、舌まで入れられる。

 驚いていると、だんだん落ち着いてきたが、直ぐに大量の知識が流れ混んできた。

 魔法理論をはじめとして髪の毛の手入れの方法から何から何まで。

 女としての作法や弱点など……要る情報から要らない情報まで盛りだくさんだ。


「ぷはっ!?

 ごちそうさま」

「おい」

「加護を与える方法は3つ。

 1つ目は相手に触れて与える。

 これは一番最弱ね。

 2つ目はさっきみたいに体液交換。

 与える加護の力はかなり強め。

 3つ目はわかると思うけどにゃんにゃんね。

 これが一番強いわ。

 それぞれ、与えられる加護だけど……何歳だと思った奴、焼くわよ」

「お、思ってねーぞ」

「そう。

 とりあえずアマテラスは太陽神だけど万能だから結構なんでも与えられるわね。

 でも、一番は才能の強化かしら。

 この世界、スキルレベルが最大ⅠからⅩまでで、ⅠからⅡなら初級のビギナー、ⅢからⅣなら中級のエキスパート、ⅤからⅥで上級のプロフェッショナル、ⅦからⅧで達人級のマスター、ⅨからⅩで伝説級のレジェンドよ」

「普通の人はどんなに頑張ってもⅣで止まる。

 でも、加護を与えて才能を強化するとどんどん上までいけるし、同じ階級でも上位と下位に別れている」


 才能の強化ってやばいな。


「もちろん、与える神様のランクによって変わるけど……アマテラスは万能の女神だし制限なんてないわよ」

「私の、アテナとしての加護も合わせれば大概のスキルはマスタークラスまで上げられる。

 レジェンドクラスは本人達の努力次第」

「まあ、加護といっても使いこなせるかは本人次第だけどね」

「とりあえず便利なのはわかった」

「まだまだ色々と効果はあるけどね。

 他にも火属性の完全無効化とか」

「戦略級魔法や防衛系統の魔法の強化とか、神の特性にあった力を得られる」

「へぇ、便利だね」

「それと3ので強化するとスキルを劣化して与える事もできるけどスキルコントロールがあるなら別に要らないわね。

 アナザーワールドとかのユニークスキルも劣化して渡せるはずよ」

「それは助かるな」


 生産力が跳ね上がる。弾丸は数がいるからかなり助かるだろう。

 一応、スキルとしてはユニークスキル>エキストラスキル(種族スキル含む)>通常スキルという感じになっているみたいだ。


「説明するのはこれくらいだっけ?」

「後はシステムに任せればいい」

「そうね……ああ、もう一つあったわ。

 奴隷でもなんでもいいから信仰を集めなさい。

 私達にとって信仰は力になるわ。

 それも強い存在が信仰してくれるほど力も上がるからね」

「わかった」

「餞別は他にないかな?」

「これ、あげる」


 アテナが渡して来たのは指輪だった。


「それはコマンドリング。

 登録しておいた物を瞬時に呼び出したり収納できる。武器の携帯や切り替えは便利」

「それはありがたいな」

「むむ……あ、それじゃあ魔弾の加護も与えておきましょう。

 どうせ後で覚えるだろけど」

「もらえるのなら助かる」

「これで今度こそ終わりね」

「うん。

 それじゃあ頑張って」

「楽しんで他の神共を駆逐しなさいよ!

 アレスとかプルートとかタケミカヅチとかスサノオとか!」

「わ、わかった」

「じゃあ、お休み」

「お休み」


 光となり、俺の中に消えていく2人。


「お疲れ様。お休み」


 2人が消えた瞬間、元のパソコンの場所に戻っていた。これであの二人はようやく眠れるだろう。


【アバターの作成及びスキルが確定したのを確認しましたので次の説明に入ります。

 モンスターカードシステムについて説明します。

 モンスターカードシステムは倒したモンスターを図鑑に取り込む事でモンスターカードを作り出すシステムです。

 欠損部位があるとできませんので、数を狩る事が必要です】

「モンスターカードの効果は?」

【モンスターカードはモンスターの持つスキルを習得する事と、装備などに融合させて特殊な効果を与える事ができるシステムです。

 図鑑にはアイテムボックス機能があり、素材などアイテムの出し入れも可能です。

 出し入れ方法は生命体でない事を条件に収納できます。

 本の出し入れは念じるだけで可能です。

 それと、モンスターカード自体は極まれにモンスターを倒しても手に入ります。

 それは切れ端だったり、カードその物だったりします。

 こちらも同じ物です】

「モンスターカードって他人にも使えるのか?」


 面白いシステムだから、色々と質問してみる。


【はい、使えます。

 それと、この図鑑は皆様にお渡ししているので不公平はございません】

「魔物合成で作った魔物もいける?」

【もちろんです。

 それと、隠し機能でもありますが、魔物をカード化して保存して召喚する事も可能です】

「隠し機能なのに言っていいのか?」

【構いません。

 これは魔物合成を図鑑が行う事になりますので、必要情報となります】

「そっか、わかった。

 それで、俺が向こうで行う役目はなんだ?」

【それは図鑑システムの評価試験と戦争で疎かになっているダンジョン攻略及び、戦争の終結です。

 方法は問いません。

 私達としては図鑑システムの評価試験さえ叶えば構いませんので】

「わかった。

 じゃあ、基本的に好きにしていいんだな」

【はい。

 ただし、世界は戦国時代へと変わります。

 その事を肝に銘じておいて行動してください】

「了解」

【それでは、ダンジョンのある街へと転送します。

 良き人生である事を願っております】

「ありがとう」









 次に目が覚めると見たことがない木の根本で身体を横たえているようだった。

 身体を起こして周りを見ると少し行った所に街が見える。

 どうやらここは丘だったようで、街との反対側に大きな森が見える。

 しかし、いきなり街の近くとか、これはかなり親切設計だと思う。

 身体も非常に軽く街まで走ってみると、身体能力がかなり高い事がわかった。

 そのまま進んでいると直ぐに街の近くに到着した。



 さて、街の入口にやって来たのだけれど、入場料とかあるみたいだが……正直言ってお金がない。

 そう思うと、脳裏に文章が浮かび上がった。


【初期支度金として、30万ゴールドを図鑑に入れてございます。

 なお、貴方の初期武器はコルト・パイソンですが、装備しますか?】


「装備」


 装備するとデータが表示された。


 名称:コルト・パイソン

 種類:回転式拳銃

 製造国:アメリカ合衆国

 使用弾丸:.357マグナム弾

 攻撃回数:6回

 攻撃力:280+640

 射程:50メートル

 備考:マグナム弾を発射できる高級リボルバー。マグナム弾を発射する為、その威力は非常に高い。リボルバーといえばこれと言っていい人気者。太陽神と守護神の加護が入っている為、強力な追加攻撃が発生する。


 これはかなり助かる。

 武器は曲がり間違っても神器だし、マグナム弾だけでも威力は申し分ないだろうが追加攻撃が美味しい。

 まあ、コマンドリングもあるけれど結構気に入っている銃だし格好良いから腰のホルスターに装備しておく。

 まあ、射撃スキルはないんだけどさ。

 しかし、頑張らないといけないな。

 相手は先輩の神様だし。


 入場するために並んでいる列から離れて色々と確認していたが、気になるのが並んでいる連中の視線だ。

 なんだか欲望に塗れた視線や、嫉妬、妬みなど色々と入り混じった視線を放ってくる。

 凄く鬱陶しい。

 特に欲望に塗れた視線には寒気を感じて、撃ち殺したいくらいだ。

 だって、男の視線がヤラナイカ?といった感じで見てくるのだ。

 それに前に垂れて来る長い髪の毛を手で後ろに払う時などは余計に感じる。

 本当に嫌になるがこんな時に取ってて良かった隠蔽・究極。

 そう、これで隠蔽してしまえば問題無い。

 アテナのせいではあるが、女神の力を身に宿す為には仕方ない。なんせこうしないと死んでしまうんだ。他の男神は取られていたし、二人の女神の力が手に入るとなれば女の子のような姿になるくらいなんてことはない。

 それに隠蔽してしまえばいい。どうせ女は奴隷で手に入れるつもりだから出会いも必要ない。

 ちなみにこの隠蔽・究極は周りの認識をずらしたり痕跡を消したりといった効果もある上に、どの効果も調整可能で便利だ。

 なので、今回の場合は一般的な容姿まで下げる。

 下げると周りが不思議そうな表情で首を傾げているのが見える。

 痕跡も消しておいてから並んでいく。



 そんな事をしていると時間が経ってしまった。

 順番が近くなったので図鑑からお金を取り出して準備しておく。

 とりあえず5万ほど出してみよう。

 出してみると硬貨が5枚出て来た。


「次!

 お前だ!

 早く来い!」

「あ、すいません」


 急いで前に行くと、兵士が質問を開始した。


「ディルペスには何をしに来た」

「ダンジョンに行こうと思って」

「成程、冒険者になりに来たのか。

 だが、ここを通すには身分証明をしてもらわないといけない。

 こちらの水晶に手を置いてくれ」

「はい」


 水晶に手を置くと、魔法陣が光って何か出て来た。

 それには犯罪歴や所属国が書かれていた。

 だが、もちろんどちらも空欄だ。

 名前にはレン・パラディオンとなっていた。


「空白という事は旅人なのか? いや、それよりも苗字持ちとなると貴族の……」

「気にしないでください。

 俺の生まれた村では村の名前が苗字になるので」

「そうか。

 では、これで登録して発行するが問題ないか?」


 ちなみに名前はアテナが勝手につけたのだろう。この身体はアテナの娘みたいなものだし問題ない。

 パラディオンはギリシア神話やローマ神話において、都市の安全を守るとされた像の事だ。

 守護の女神に名付けられたのだから、何か効果があるだろうしこの際放置でいい。

 一応、元の名前から一文字減らしてレンにしてくれているしな。


「問題ないです」

「わかった。

 よし、これで登録完了だ。

 ダンジョンに入るにはギルドカードが必要だからな。

 ギルドカードが有れば所属国の国内であれば自由に出入りできる。

 お金はいらない。

 ただし、他国に行く場合は厳しい検査と誓約の魔法がかけられる。

 国内の軍事情報を流す訳にはいかないからだ」

「分かりました」

「では、仮証明書を発行する。

 ギルドカードを手に入れたらこれを持って三日以内にまたここに来てくれ。

 大概、依頼で外に出るついででも構わない。

 それとギルドは街の中央にあるから入ってすぐの大通りを真っ直ぐに進めばいい。

 北側は貴族街だから近づかないように。

 よし、行っていいぞ」

「分かりました。

 ありがとうございます」


 門を通り、街の中に入ると煉瓦で作られた西洋風の町並みが広がっている。

 ファンタジーファンには堪らない光景だ。かくいう俺もかなり好きだ。

 まあ、一部を見なかったらだけどな。

 その一部はアレだ。

 非常に汚いという汚物が散乱していることだ。


「だが、それよりも……」


 道を歩く人間に混ざって少ないが獣人やエルフといった幻想生物がいるっ。

 ただ、その人のほとんどが首に首輪を付けられて奴隷だという事を示している。

 つまり、この国は奴隷が一般的なようだ。

 しかも、人間上位の国みたいで亜人の奴隷が多く、中には殆ど服として機能していないのを着せられているのもいる。

 まあ、有りか無しかといえば有りだな。

 つまり、美少女を手に入れられやすいって事だし、扱いが酷いなら優しくすれば相対的に態度も軟化するだろう。

 まあ、当分は稼がないと購入もできそうにないんだけどな。

 とりあえず、モフモフしたいのはやまやまだが……やまやまだが、ギルドカードを手に入れてお金を稼ぎに行こう。

 大事な事なので2回だ。


 教えられた通りに大通りを街の中心に向かって進むと、剣と杖と盾の描かれた大きな看板が設置されている石で作られた砦が見えて来た。

 街中なのに砦があるというのは面白い。

 その砦に入る為の入口に向かうと護衛の兵士がいたのだが、護衛達はどちらかというと内側に対して警備しているようだ。

 おそらく、内部にあるダンジョンのせいだろう。


「ここに何をしに来た?」

「ギルドに登録をしに来た」

「嬢ちゃんがか?」

「いや、男じゃないか?」

「俺は男だ。

 それより、入っても問題無いか?

 それともここで登録するのか?」


 認識をそのまま下げたから中性的な容姿のままになっている。

 男になるように調整しておくか……いや、中性的でいいや。

 油断してくれるならそれはそれで助かる。


「ああ、悪かった。

 入るのは問題ないし、登録はあそこの窓口でできる」

「わかった。

 ありがとう」

「ああ、頑張れよ」


 教えられた場所は砦の中に入ってすぐにある場所で、その後ろからは鉄格子で奥に行けなくなっている。

 奥に行くための入口にも警備兵が立っていて、ギルドカードを確認している。

 かなり徹底的に行われている印象だ。

 どちらにしろ、窓口は少し並んでいるので俺は隠蔽・究極を使って種族とスキルを隠す。

 どれも危なそうだからな。

 ただ、代わりに肉体強化と射撃をスキルとして入れておいた。

 もちろん、スキルコントロールでスキルの名前を変えて偽造しているだけだ。


「お待たせいたしました。

 ギルドへの登録でよろしいでしょうか?」

「はい」

「では、ギルド員のティモテが担当させて頂きます」


 残念ながら男性だった。

 まあ、構わない。

 俺の目的はハーレムを作って幸せになりつつ面白おかしく生きる事だ。

 難しいだろうが、頑張るしかない。

 この世界なら奴隷にできるし、眷属にもできるからな。


「身分証明書をお願い致します」

「これでいいですか?」


 仮証明書を渡す。


「仮証明書ですね。

 はい、これで問題ありません。

 では、冒険者ギルドに付いて説明します。

 冒険者ギルドは他のギルド、魔法ギルド、商業ギルド、斥候ギルドなどと協力して冒険者の皆様を支援しております。

 具体的にはパーティーメンバーの斡旋や、クエストを一括管理して皆様が報酬のトラブルとう無いようにしております。

 もちろん、それでもトラブルは起こりますがね。

 その場合はギルドが間に立たせていただきますので、くれぐれも暴力に訴えないようにしてください。

 最悪、こちらで補填させていただく場合もございますので、冒険者の皆様は報酬をしっかりと受け取って頂く事が可能です」

「分かりました」


 かなり便利だな。

 それほどにモンスターの素材は欲しいと見える。

 多分戦争に使えるからだろうな。

 攻めないにしても、防衛施設の強化とかはしたいだろうしね。


「それでは、ギルドのランクについて説明します。

 ランクには高い順からSSS、SS、S、AAA、AA、A、B、C、D、E、Fの11ランクがございます。

 ただ、AAA以上になると1ランク内の幅が広く、AAA+、AAA、AAA-のように+や-を付けて区別をする場合がございます。

 クエストはランクの一つ上まで受けられます。

 基本的に同ランクのクエストを20回達成するか、上のランクのクエストを10回達成すると上のランクになります。

 Cランクからはギルドの試験を合格してもらわないと昇格はできませんので申請をお願いします。

 また、クエストは失敗すると成功報酬の4割をギルドに収めてもらう事になりますので注意してください。

 これは依頼主とギルドに1割ずつ支払われ、残り2割をクエストの報酬に上乗せさせて貰い、もう一度クエストボードに載せる為です」


 成程、これは結構テンプレだ。

 しかし、違約金の割合もちゃんと決まってるのは安心できる。

 できるだけ早くランクを上げた方がいいな。

 それが大金を得る為にも必要な事だしな。


「ダンジョンはどうなってる?」

「ダンジョンはギルド員なら自由に出入りできます。

 また、討伐モンスターの場所は指定された場所限定となりますので、ダンジョンでの討伐は認められません。

 希にダンジョン内での護衛といったクエストもあります。

 基本的にダンジョンに挑んでいる冒険者の方はダンジョンで手に入れた素材や財宝を売って生活されております」


 出入り自由なのは助かる。

 ダンジョンならお金が稼げるはずだ。

 ランクを気にしなくていい分、かなり楽だな。

 一々面倒なランクアップするよりいいかもしれない。


「ギルドカードを見せれば自由ですが、紛失なされると入れません。

 再発行なさいますと昇降機が機能せず最初からとなりますのでお気を付けください。

 それとダンジョンは一人で行くのはオススメできません。

 パーティーを組むか、奴隷を購入するかのどちらかをオススメします。

 今の主流は後者ですが、お金の無い人は前者となります」

「わかった。

 でも、1人でもできるんだよな?」

「はい。

 自己責任になりますが、構いません」

「わかった」

「では、登録手数料に1万Gになります。

 口座開設もなさいますか?

 そちらの場合は合計で1万5千Gとなります」

「しておくので、そっちで頼む」


 これで残り28万5千Gだ。


「再発行には10万Gが必要なのでお気を付けください」

「了解。

 あっ、ベテランの人に訓練を頼むとかできるかな?」

「訓練ですね。

 それは可能です。

 どんな方がいいですか?」

「索敵と射撃がある人がいい」

「レンジャータイプの方ですね。

 値段の方は半日で5千Gになります」

「会ってから決めるとかできる?」

「はい、可能です。

 訓練所にいらっしゃるので、そちらで直接話してからでも問題ありませんよ」

「分かりました。

 ありがとうございます」

「はい

 頑張ってください。

 こちらがギルドカードになります。

 それと、訓練所は入って右側の通路を進んで突き当たりを右に行った先です。

 名前などは大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です」


 ギルドカードと仮発行書を受け取って、仕舞う。

 どうやら、ギルドカードは仮発行書を元に作成されたようだ。

 鑑定してみると、魔力波長や指紋認証がされていて、本人以外では職員や兵士しか見れないようになっている。もちろん、本人以外は専用の道具を使わないといけないみたいだ。

 それに犯罪歴も書かれるからし、倒したモンスターの自動登録機能まであった。

 オーバーテクノロジーすぎる。

 流石は神々の暇つぶしと実験の為の箱庭か。


「えっと、訓練所はこっちか……」


 教えられた通りの場所に行くと訓練所に着いた。

 訓練所では初心者からベテランまでいるようで、皆思い思いの訓練をしている。

 その中の人物を鑑定して目的の人を探していく。


 名前:イゼベル

 スキル:剣術Ⅳ、肉体強化Ⅴ


 名前:ヴァーノン

 スキル:肉体強化Ⅴ、斧術Ⅱ、頑強Ⅰ


 名前:アシエル

 スキル:索敵Ⅲ、短剣術Ⅳ、罠探知Ⅳ、肉体強化Ⅴ


 名前:ザビーネ

 スキル:弓術Ⅵ、射撃Ⅵ、鷹の目Ⅴ、肉体強化Ⅰ


 名前:ヤルノ

 スキル:剣術Ⅰ、格闘術Ⅰ、風魔法Ⅰ


 ざっと鑑定するとこんなスキルを持ってる奴がいるのがわかった。

 とりあえず、この中で必要なのはアシエルとザビーネかな。

 魔法とか肉体強化も気になるけど、先ずはこっちだろう。

 スキルコントロールでスキルをコピーする制限は相手の名前を知っていて身体に5秒間触れる事、瞳を5秒見詰める事だ。

 なので、握手でも構わない。

 瞳は一度だけでいいみたいだし、死体にはそんなの必要無い。

 いや、正確にはコピーする場合で、奪う場合はそれほど制限はなく、触れるだけでいい。

 先ずは休憩しているザビーネの元に行く。

 このザビーネという女性は瞳と同じ空色の髪の毛をボサボサにして、日本人と同じ黄色の肌をしている。


「すいません、ちょっといいですか?」

「ん?

 なんか用?」

「はい。

 俺はレンといいます。

 少し教えて欲しい事があるのですが、いいですか?」


 手を差し出して、様子を見る。


「教えて欲しい事?」

「それは仕事って事かな?」

「はい。

 実は弓ではないのですが、こういうのを使ってまして……」


 手を握ってくれないので、とりあえずコルト・パイソンを引き抜く。


「それは見たことないね」

「遠距離武器になるんですが、このような物です」


 遠くにある的に向かって引き金を引く。

 すると、激しい音と共に弾丸が発射される。

 的を外れて別の的に突き刺さり、一部を破壊する。


「面白い武器だね。

 それで、私に何を教えて欲しいのかな?」

「射撃についてです」

「いいだろう。半日5千Gだ。

 これがギルドの契約だからね」

「はい」


 今度は相手から差し出された手を握り、瞳を見ながらスキルコントロールでコピーを開始する。

 最初は鷹の目だ。


「凄く硬いですね」

「弓を持ってるとそうなるさ。

 で、いつからするんだね?」

「そうですね……今からでも大丈夫ですか?」


 流石に手を離されたが、鷹の目は無事に習得できた。

 行き成り視力がかなり上がった。

 これはかなり使えるな。


「じゃあ、先ずはそれを借りていいかな?

 撃ってみないと分からないし」

「はい、どうぞ」


 コルト・パイソンを渡してみる。

 すると、直ぐに的を狙って引き金を引く。

 発射された弾丸は見事命中して的を破壊した。


「うん、成程。

 これはいい武器だ。

 習熟がたいして必要無い上に矢は……」

「あ、矢の変わりはここです」


 手に触れながら操作の仕方を教えて弾丸の入れ方を教える。

 そのついでに射撃をコピーする。念の為に弓術も欲しいかな。


「こんな風になっているのか……面白いな。

 なあ、もう一個持ってないか?」

「ありますけど、持ってきてないですね」

「そうか……売ってくれないかな?

 サブウエポンにかなり使えそうだ」

「高いですよ?」

「そうだろうな……800万だそう。

 矢……弾丸か、それも500発で200万の合計1000万でどうだ?」


 今はお金が無いし構わないか。本当は渡したくはないが、先立つ物がない。

 それにいざとなれば弾丸を供給しなかったり、遠距離から狙撃すればいい。


「分かりました。

 ただ、少し時間がいります。

 明日まで待ってください」

「オッケー。

 それじゃあ、教えるのもただにするね。

 先ずはこう持って……」


 それから、簡単に教えて貰う。

 射撃スキルの御蔭でどうすればいいか直ぐにわかった。

 だけど、わざとゆっくりとして教えてもらいながら弓術を確保する。

 確保したら何度か射撃を試していく。


「うん、完璧だな。

 才能あるよ、君」

「ありがとうございます」

「教える事もなくなったし、明日を楽しみにしてる」

「分かりました」


 俺もお金の為にギルドから外に出て材料を求めて鍛冶屋にいく。

 鍛冶屋の場所はギルドの直ぐ近くで、見たら直ぐにわかった。

 その裏に回ると、廃棄用のくず鉄が無数に置いてある。

 丁度、店員が運んできていたので声をかける。


「すいません」

「なんだよ?」

「これって廃棄するんですか?」

「そうだぞ」

「欲しいんですけど、大丈夫ですか?」

「全部綺麗にしてくれるんなら構わないけどよ、こんなの何に使うんだ?」

「秘密です」

「まあ、いいけど捨てるんじゃないぞ。

 金を取って引き取っていく業者や領主が五月蝿いからな」

「分かりました」


 店員が店に入っていなくなった。

 なので、ウエポンクリエイト・アナザーワールドを使って作成する。

 このくず鉄も全て俺にとっては素材になる。

 そもそも魔力だけでも作成できる物を素材を使う事でコストを下げているだけなので問題無い。

 直ぐに要望のコルト・パイソンと弾丸を作った。

 俺も予備として弾丸を作成しておいた。

 それと弾切れになっても問題無いようにベレッタも作成する。


 名称:ベレッタ93R

 種類:マシンピストル

 製造国:イタリア

 使用弾丸:パラベラム弾

 攻撃回数:20回

 攻撃力:100

 射程:50メートル

 備考:拳銃サイズでありながら高いた攻撃力を持つ銃。セミオートと3点バーストが切り替え可能となっている。


 ベレッタ93Rを作成した理由は簡単だ。

 コルト・パイソンは弾丸が6発と少ないのだ。

 それに比べてベレッタは口径こそ少ないが貫通するので威力もそれなりにあって20発+1発まで装填できるのだ。

 つまり、ベレッタはコルト・パイソンが弾切れになった時や威力があんまり必要としない敵を倒すサブウエポンとして使うのだ。

 連戦や数が多い時など大変便利だろう。

 これでダンジョンでも問題無いと思う。



 準備が終わったのでギルド近くの宿へと入る。


「いらっしゃいませ。お食事ですか?

 ご宿泊ですか?」

「宿泊で。

 大体一週間くらいを一人部屋で」

「畏まりました。

 一日2千Gとなります。

 10日なので2万Gです。

 お湯などはサービスにさせていただきます」

「わかった」


 お金を支払う。

 それにしても一週間が10日か。

 一ヶ月が40日になるのかも知れないな。


「料金に含まれていませんので食事は食堂でもどこでもお好きなところでお食べください」

「わかった」


 部屋の鍵を受け取ったけれど、先ずは食事がしたいので食堂に向かう。

 食堂はバーカウンターまで合った。

 そこには先程鍛錬所にいたアシエルが1人で酒を飲んでいた。

 これはチャンス!

 俺は隣に座ってお酒を適当に注文する。

 1万Gくらいの高い奴だ。


「どうですか?」


 注文したお酒を開けて軽くアシエルに見せる。


「おお、いいのか?」

「はい、どうぞ」


 グラスに注いでやり、自分のも入れる。

 その後、グラスを傾けて互いのグラスに軽く当てて鳴らした後、お酒を飲んでいく。


「ダンジョンはどうなんですか?」

「ああ、情報収集か。

 いいぞ、酒を奢ってくれるならいくらでも教えてやるよ」

「ありがとうございます」


 それからお酒を奢りながら酔っ払ってきたアシエルの瞳を見て、身体を支えスキルをコピーしていく。

 索敵Ⅲ、短剣術Ⅳ、罠探知Ⅳ、肉体強化Ⅴを習得する。

 これでかなり身体能力が向上したし、戦闘が楽になると思う。

 ダンジョンの情報も聞けたし、少なくとも8万Gも支払う価値はあった。

 まあ、御蔭で所持金が16万5千になったけどね。

 明日、1千万Gが手に入るのだから構わない。

 そのお金で防具を整えてダンジョンに潜るし、武器にお金が掛からないのは経済的にもありがたい。













 名前:レン

 種族:神族(1)

 ユニークスキル:太陽神アマテラス(Ⅰ)、守護神アテナ(Ⅰ)、スキルコントロール(Ⅰ)、魔物合成(Ⅰ)、ウエポンクリエイト・アナザーワールド(Ⅰ)、

 エクストラスキル:隠蔽・究極(Ⅰ)

 パッシブスキル:射撃(Ⅵ)、弓術(Ⅵ)、罠探知(Ⅳ)、索敵(Ⅲ)、短剣術(Ⅳ)、肉体強化(Ⅴ)

 アクティブスキル:鷹の目(Ⅴ)

 スキルポイント:0

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