猫族の獣人と団長の戦いだよー
クリントの森が見える位置までライトニンググリフォンを使えば一時間もかからずに到着できた。移動を短縮できたのでそのまま近くに降りる。
「さて、準備をしないとね」
まずやることはサンダーバード達を召喚し、彼らにレアレスカの獣人達を見つけだしてもらうことだ。なので図鑑からサンダーバード達を選んで召喚する。
「頼むね」
五匹のサンダーバードを召喚して、それら全てをヤタと共にクリントの森へといってもらう。ヤタ達は大きな翼を広げて空へと飛び上がって、クリントの森の上空を移動していく。
「次は狙撃場所を作成しようか」
下から撃つのと上から撃つのでは重力の関係で威力や射程すら全然違う。だけど、このクリントの森の中には高い場所もなく、生い茂った木々が狙撃の邪魔をしているので狙撃には向かない。
だから、自分で狙撃場所を作ることにした。と、いっても筏を建てる方法とかは分からない。なので、図鑑の中にある丸太を重ねてライフル弾で穴を開けてそこに細い木を通して格子状にしていく。
できる限りしっかりとしたのを作成するために、カットは風魔法で均一にする。上の真ん中の部分だけ四角に広くくり貫いて、その穴にロープを通してしっかりと結びつける。
後は同じ大きさの物をもう一つ作って、四方に穴を開けて丸太を立てる。
上に同じ筏っぽいのを乗せてしっかりと固定する。上になる方には真ん中を開けずに四隅の方に穴を開けて丸太を中に通してそしちらも中で穴を開けて丸太を通して外に出ないように固定する。
上に上がって逆の方にも穴を開けてロープを設置。ロープは同じように別に穴を開けた丸太に通してしっかりと固定する。
何本も使って切れても問題ないようにしておく。後は一部に牢屋の代わりに棚を作成しておく。カプセルベッドみたいな感じだ。スペースがないのでここに捕えたのを詰めておく。
作業が完成する頃には放ったサンダーバード達もヤタを先頭に帰ってきた。彼らに餌を与えた後、ゴブリン工兵を召喚して台車の付いた牢屋の作成を依頼しておく。
その後、サンダーバード達に改めてロープの付いた丸太を爪で抱えてもらって飛び上がってもらう。
四匹のサンダーバードによって作成した狙撃場所はゆっくりと空へと登っていく。
素人が作ったにしては丈夫で問題はなさそうだ。サンダーバード達も集団連携の効果で問題なく一定の速度で飛んでくれている。
「じゃあ、案内を頼む」
「かぁっ」
残りのサンダーバードに先導をお願いして、ライトニンググリフォンに護衛を依頼する。これで空で敵に襲われても問題はないと思う。
むしろ、軽く狩ってくれるだろう。それとライトニンググリフォンと外にいるサンダーバードには倒した敵の確保をお願いしてある。ヤタを撫でながらゆっくりと進んでいく。
「って、やばい……命綱を忘れてた」
急いで命綱を準備する。ロープを腰に結んで丸太を結ぶ。他にも即効性の特殊な麻酔弾とライフル銃を用意する。
撃たれた目標は弾丸に仕込まれた注射針を通して麻酔薬を注入され、意識を失うというものだ。相手が獣人だということを考えて、使用するのは象用だ。最後は銃の片方を実弾からゴム弾に変更しておく。これで準備が完成だ。
麻酔銃は注射器を発射する形状、命中させるのがかなり難しく死亡する確率も結構高いので地球では人間相手にはまず使われない。
だが、この世界だったら人間だって限界以上の身体能力を持つことが可能なので死ぬ可能は低いと思われる。ましてや相手は獣人なのだから、人間よりも肉体面では遥かに丈夫だろう。
命中に関しては風の魔法を使えばある程度は誘導できるので問題ない。つまり、薬の量さえ間違えなければ捕獲するのは難しくないと思われる。
「しかし、一人で三七人の獣人をできる限り殺さず、無力化するというのはかなりの高難易度ミッションだね。面白い」
唇を舐めて、髪の毛を後ろで纏めて紐で横に結びつけてポニーテールにする。髪の毛を整えているとサンダーバード達が停止した。
どうやら、狩場に到着したようなので、床に寝そべって射撃体勢を取る。
ライフルの銃身は真ん中に開けた穴から下に向ける。風魔法を発動させて周りの状況を整えながら、眼下に広がるクリントの森をスコープ越しに覗く。
ここからクリントの森までは約四二七メートルも距離があるが、問題なく見える。
鷹の目の御蔭で視力は人間の領域を遥かに超えているので、スコープの力は照準を補正することぐらいだ。
「外縁部に八人か……」
目視できたのは獣人の女性八人だ。その内の二人が、姿を現しながら街道を堂々と歩いている。その二人を監視するかのように六人のフードを被った者達が森の中を並走している。どちらも警戒をしているようだが、上には気を配っていない。
「ここはセオリーに従って後ろからだな」
なんだか、一人だと独り言が増えると聞くが、確認のためにもいいのでこの際置いておく。六人とも左右に別れて前方、中間、後方と行動しているので狙うのは最後尾にいる二人だ。
「さぁ、狩りの時間だ」
唇を舐めた後、街道を歩く二人の斜め後方を警戒しながら歩いているフードの人影に狙いを定める。
引き金を引こうとした瞬間、そのフードの人影は何かを感じたのか、周りを気にしだした。
「もしかしてこの距離で気づいた……? レアレスカの獣人は化け物か……」
何度か試しても全て照準を合わせると隠れた後に周りを見回したりする。その後、不思議がって元の位置に戻るというのを繰り返している。
「ちっ、化け物だな……仕方ない」
隠蔽・究極で完全に自分の気配などを隠蔽する。それからもう一度ライフルの照準を合わせるが、今度は気付かれていない。
「連れてこなくて正解だったな」
他の子達を連れてきていたらバレていた可能性すらある。本当に一人でよかった。
「しかし、訓練されているせいか……読みやすいな」
フードの人影は常に一定の距離を移動している。それはつまり、狙撃する側からして対象の行動を読みやすく照準を付け易いということだ。
だから、引き金を引いて発射すると、予測通りの場所にフードの人影が移動し、弾が突き刺さると即効性の麻酔薬が注入されて人影は倒れた。
「命中を確認、次のターゲット……」
反対側の後方を狙って撃つ。こちらも問題なく仕留められた。後方から少しずつ順番に狩っていく。
森の木々の間を狙って撃っていくので、中々狙撃するタイミングは見つからない。それでも街道を歩いている者以外は仕留められた。
街道を歩いている六人を片付けてから一人を眠らせ、銃をH&KMSG90に変えて混乱している最後の一人を狙撃する。ゴム弾を発射して最後の一人も無事に昏倒させた。
「回収に行って」
命令を出してサンダーバードとライトニンググリフォンに狙撃して倒した者達の回収を命じる。
俺の命令を聞いたライトニンググリフォンとサンダーバードが森の中で眠っている者達を掴んだり咥えたりして回収してくる。
回収されたフードの奴らを順番に武装解除していく。フードを剥ぎ取ると、そこには予想通り猫耳が存在した。
「これが本物の猫耳……ふふふ。はっ!?」
だ、駄目だ。時間との勝負なんだから急がないと。もふもふは後ですればいいんだ……よし、やろう。
装備とかの外し方は分からないから素早さを優先して適当に破壊していく。
抜け出されても嫌なので下着までひん剥いて両手を後ろにさせてロープで縛る。足は折りたたんだ状態で縛り上げて、手を縛っているロープと纏めてしっかりと縛って拘束する。最後に目隠しと猿轡をして完成だ。
終わったら作っておいた棚に入れて、しっかりと追加のロープで動かないように固定する。
これを繰り返すが、どの人も身体は人間の女性とほとんど変わらない。人との違いは猫耳と尻尾を追加しただけなのでなんともいえない気分になってくる。
それに愛玩用として人気なだけあって、どの子も美女や美少女なのだから尚更だ。
「プロを目指すなら自制しなきゃな……それにこれは必要なことだ……」
言い聞かせながら仕事に集中する。それとここまでするのは獣人が牙や爪も武器になるから、徹底的な拘束する必要があるらしい。
下手に拘束を人間と同じにすると寝首を掻かれることになるということだろうね。
二〇分前後で八人の女性を拘束して閉じ込めた。これは拉致監禁だし、日本じゃ明らかな犯罪行為だ。まあ、戦争相手だから捕虜になるんだろうけどね。今は戦時中だし問題ないだろう。
「次に案内して」
お願いすると、サンダーバード達が移動し始める。これからのためにも、どんどん狩っていこう。それで、帰ったらリフィア達に癒してもらおう。
それから、五人ほど捕獲したが問題が起きた。森が深すぎて木々に邪魔されて射線が通らないので、狙撃という簡単な手段を放棄するしかなくなった。
「さて、射線が通らない……どうするかな?」
麻酔銃は撃つと枝があれば枝に命中して刺さるし、ゴム弾は下手に撃つと何処に飛ぶかもわからない。実弾は貫通できるだろうが、音で気づかれて隠れられるので外れるそうなると取れる手段は限られている。
「やっぱ降りるしかないか」
麻酔銃のライフルとH&KMSG90を図鑑に仕舞ってから止めていた髪の毛を解き、準備運動を行う。
準備運動が終われば、この場所から飛び降りる。すぐにサンダーバードが俺に近づいて足を差し出してくれるのでそれを掴んで落下速度を殺していく。
適当な高度になればサンダーバードの足から手を離して森の中にダイブする。気分は正にアイキャンフライ!
ガサガサと音を慣らしながら森の中に突入して枝を自動障壁で折りながら、太めの枝に捕まって完全に落下を止める。手に負担はかなりきたけれど問題ないレベルなので放置する。
地面につくとヤタが肩に乗ってくる。近くにいた獣人達は警戒するけれど、サンダーバードが舞い上がっていく姿を見てそちらに警戒を強くする。
彼らには俺の姿が隠蔽によって見えないのだから、今の音もサンダーバードが起こしたと思ってくれるはずだ。
近くにいるのは七人なのでこいつらを確保すれば二〇人目となり、残りは一七人となる。
しかし、これはやばいかも知れない。森の中に突入するまで気付かなかったが、このクリントの森の中は……獣人族の、にゃんこ達が仕掛けた罠でいっぱいだったのだ。
それも、ワイヤーみたいな細い糸とかが使われていて、何も知らずに通れば輪切りにされるという結構えげつない仕掛けだ。
他にも矢や槍が飛んでくる仕掛けなんかも見えるので、本格的にやばい。最初は罠の配置を覚えることにする。
解除するにしても、成功しても失敗しても結局相手に悟られることになるだろうからだ。
配置を覚えながら相手の装備も確認する。相手側の装備は軽装が多く、ブレスプレートやガントレットぐらいしか金属部分がない。
完全に俺みたいに布だけの奴もいるし、実弾は気を付けないといけない。
配置を覚えたら枝の上に登って足を引っ掛けた状態で逆さ吊りになってホルスターからデザートイーグルを引き抜く。
狙うは目標は二人。照準を合わせてからブレスプレートと布の服に向かってトリガーを引く。轟音とマズルフラッシュと共に発射された鉄の弾丸はブレスプレートを砕いてボキボキという音を響かせながら猫族の獣人を紙切れのように吹き飛ばして木に激突させる。
同じく発射されたゴムの弾丸は革製の服に背中から命中……すると思ったらこちらに気づいて反応したのか、振り向きざまに腕を上げて装着していたガントレットを盾にして防いだ。
俺は反動を利用しながら回転して地面に降りる。そのついでにゴム弾の方を先程防がれた猫族の獣人に向けて発砲する。
猫族の獣人は先程のゴム弾を防いだことで腕が自らの胸を強く叩きつけて苦しそうにしていた。そこに追撃を放ったので今度は昏倒してくれた。
風切り音がして俺は直ぐにその場を移動すると、先程まで俺が居た場所に五本のナイフが飛来して木に突き刺さった。
すぐに木の後ろに隠れると、今いる場所にもナイフが突き刺さる音がする。
手だけ出してナイフが飛んで来た方向に発砲して近づけないようにする。それと同時に嫌な感じがして遠くの方、誰も居ない方向に実弾を発砲する。少しして何もない所から悲鳴が聞こえてくる。
そのタイミングで木の後ろから飛び出して走り、張られている糸をジャンプして回避し、木を蹴って方向転換しながら肉体のスペックに物言わせて三メートルくらい飛び上がる。空中で視界に収めた猫族の獣人に向けて発砲する。
「がっ!?」
「あがぁぁぁぁぁっっ!?」
ちゃんとセレクトした弾丸をお見舞いしてあげたので死んではいないが、痛みで戦闘は無理だろう。しっかりと確認しながら身体を捻って体勢を入れ替える。
その瞬間、飛んで来たナイフが頬を擦って横を抜けていく。糸と糸の間に着地する間も後方に向かって銃弾を放つのだけれど、相手も隠れているのでゴム弾は木々に弾かれる。
実弾の方は木を破壊してその背後にいた猫族の獣人を戦闘不能に追い込む。鉄すら簡単に破壊するマグナム弾なのだから木なんかじゃ防げない。
もちろん、鎧を着ている子に向けて撃っているので問題はないと思われる。いや、最初に撃った奴はかなり危ないかも知れないけどね。
どちらにしろ、残り二人。増援が来ない内にさっさと片付ける。
着地したと同時に走ってデザートイーグルの実弾を放って隠れている木を破壊して、猫族の獣人を引きずり出した所をゴム弾で仕留める。
マガジンを交換しながら最後の一人を探すが、見つからない。そう思った瞬間、嫌な予感がして身体を地面に転がせて離れる。
「ちっ」
先程まで居た場所に高さ一メートルくらいはあろうヒョウが、地球じゃ有り得ない大きな爪の刃を地面に突き刺していた。
俺は直ぐにデザートイーグルを発砲するが、既にヒョウはそこに居ない。
「くっ……」
直感に従って片手だけで飛び上がる。次の瞬間には爪が振るわれて、近くの木とその後ろに有った木が切断された。鎌鼬みたいな見えない斬撃を放つようで、かなり危険だ。
「死ねぇえにゃあぁぁぁぁっ!!」
「断る!」
斬撃を予想して左に避けながら弾丸をばら撒いて行動を制限しつつ、空になったデザートイーグルを手放す。
腰を回して体勢を低くしながら銃剣を斜め上に抜刀すると片刃の銃剣と爪がぶつかり合う。
「ぐっ……」
「はぁっ!!」
体格と力の差で俺は弾き飛ばされて地面をバウンドする。すぐにヒョウが飛び上がって俺を殺そうとしてくる。
だから、もう片方のデザートイーグルを手放して袖に仕込んだ機構を発動させ、短剣銃を素早く取り出してゴム弾を鼻に放ってやる。
「ギャァイィンっ!?」
悲鳴を上げて相手の身体が仰け反る。それによって軌道が代わったので、転がりながら体勢を整える。
「ぐぅぅぅっ!?」
だけど、完全に避けきれなくて短剣銃の方を押さえつけられた。頼みの自動障壁も発動したが、パリンという音と共に一瞬で叩き壊され、腕から激痛が襲ってくる。
このままじゃ確実に殺される……自動障壁が何故こんなにも簡単に破壊されたかは分からないが、そんなことを考える暇もない。
死が襲ってくる直前でも俺の頭は冷静に判断して押さえつけられている腕を放置して次の行動を取る。
苦痛を我慢しながらベレッタを引き抜いて三点バーストで至近距離から顎に叩き込む。
「キャィンッッ!?」
直ぐに動かなくなり、ヒョウが光って姿が人型となった。後に残ったのは気絶した半裸の女性だけ。幸い、ゴム弾の方だったので殺さずには済んだようだ。
「やってくれたね……」
女性を退けて立ち上がる。これで残り一七人。周りの気配を探りながら図鑑を取り出し、余っているゴブリンカードから普通のゴブリンと普通のウルフを召喚する。
「「「ギギー」」」
「「「わふ」」」
召喚した数はゴブリン一五体にウルフ八体だ。彼らに命令するのは簡単だ。
「ウルフ達は倒れている獣人達を集めてきて」
「「「わう!」」」
「ゴブリン達は脱がして縛り上げておいて」
「「「ギギー!」」」
直ぐに行動するゴブリンとウルフを置いて、ゴブリン工兵に作らせて置いた牢屋をこちらの近くの街道に持ってくるように図鑑を通して命令する。この図鑑にある召喚ページから指示が送れるのでかなり便利だ。
サンダーバード達には筏もどきを下ろした後、上空から護衛を命じておく。
これで準備は完了……いや、残りの狩りをする前に死にそうな奴だけ治療しておいた方が良いかな。
それから少しして、治療を終えた俺は隠蔽で姿を消して次の獲物を待つ。
見え易い様に堂々と檻を街道に配置し、ゴブリン達が縛り上げて閉じ込めている姿は正にこれから襲われてひどい目に合わされるといった感じに見える。
まあ、実際に奴隷にされるんだから非道い目に合うのは確定なんだけどね。だけど罠とわかっていて助けにくるのか、非常に楽しみだ。




