ピクニックで団長を弄ぶぞー!
先行してモンスター共を集めて処理していた俺達と、別れて行動している本隊は無事に泉の周辺に到着していることがヤタの索敵情報で確認できた。俺達はすぐに向かい比較的簡単に合流できた。
そもそもあちらの街道は森を避けて移動するための迂回路なので、森を突っ切ったので微かな時間だけだ。
「あっ、ご飯の準備してあるー」
「やったーお腹ペコペコだったんだよね!」
「腹減ったよね」
「減った」
俺達が合流すると、既にリフィア達がお昼の準備を初めてくれていた。そのおかげですぐに食事ができる。戦っている間は大丈夫だったけれど、合流して落ち着いたら本当にお腹が空いている。
それでもやることがあるので、先にそちらをやってしまう。この辺のモンスターは狩り尽したとはいえ、当然のようにどこからか出現するか、やってくるはずだ。
そのため、護衛としてサンダーバードを率いるライトニンググリフォンとフォレストレーヴェルト・リーダーを護衛として放っておく。
この子達がこの周辺のモンスターを狩り出してくれているので問題は無いと思う。それにヤタも警戒してくれるだろう。
「お疲れ様でした」
「そっちも無事に着けたようでよかったよ」
「はい。襲撃はありましたけれど、皆さんが守ってくださったのでたいしたことはありませんでした」
「ならいいか」
リフィア達が温かく迎え入れてくれて、中心にある広場で食事の準備をしている場所へと案内してくれる。綺麗な湖とその周りに咲く綺麗な花畑。それは幻想的な雰囲気を醸し出している。
「皆、お疲れ様~」
「お疲れ」
団員や子供達も皆が労ってくれる。彼らの歓迎を受けながら中央にある広場に到着した。振り返って皆に指示をだす。
「これで解散だけど、各自装備のメンテナンスはしっかりとしておくようにね。それと使用した弾薬は後で申請するように……俺かリフィア、リンに伝えればいいから」
「「「は~い」」」
「配布はすぐにできるけれど、纏めてからしてね」
「「「了解~」」」
「じゃあ、各自整備してクリーンを使った後、手洗い嗽をして食事にするよ!」
「「「お~!」」」
元気に声をあげた子供達はすぐにバラバラに散って地面に座りながら装備の点検をしだす。俺もお腹が空いたのを我慢しながらリンと一緒に座り、使った装備のメンテナンスを行っていく。
「兄さん、銃剣はどう?」
「結構使える。ただ、耐久性に問題はある」
「だよね」
こればかりは中心部が左右に別れている構造上の問題で仕方無いんだけどね。中心部は敵に突き刺した後、電気を流して電磁誘導を行ってそこから弾丸を放つためだ。
つまり、この武器は近接戦闘を主軸にした超電磁砲ということだ。流石に遠くの敵には雷撃魔法の出力不足でできないが、近距離専用としては利用できる。
「拳用のも欲しい」
「ガントレットに仕込むのか……有りだね」
パイルバンカーや衝撃砲というのもロマンがあっていいね。パイルバンカーは杭を爆発で杭を打ち込む物で、衝撃砲は内部に衝撃を与えて破壊する物だ。
「わかった、作ってみる」
「お願い」
それから、ひたすら装備のメンテナンスを行っていく。これを怠ると大変なことになるから、手を抜けない。メンテナンスをしていなかったせいで、命を失う場合もあるからだ。命を預ける大切な相棒でもあるし、自分の命を守るためにもメンテナンスは欠かせない。
「ご飯ができましたよ」
「ああ、ありがとう」
「姉さん、ありがと」
リフィアが俺達の分も持ってきてくれた。皆が作ってくれたのは、野菜スープと葉っぱに包まれたおにぎりという簡単な奴だ。だけど、普段と違って湖の水が川に流れるせせらぎなどを聞きながら食べるご飯はまた違って美味しい。
他の子達を見ると、彼女達も思い思いに食べている。院長先生と一緒になって食べている子達も多い。共通しているのは皆が笑顔ということだ。これだけでも、前の絶望しているような暗かった表情を思い出すと嬉しくなる
「ご飯が終わったらどうしますか?」
「そうだね……」
「釣りにゃ!」
「きた」
「はは、すいません」
ロジーとマルタがこちらにやって来た。マルタの目的は本人も言ったように釣りだろう。目が爛々と輝いて魚マークになっているような気すらするから不思議だ。まあ、錯覚だろう。
「じゃあ、釣りをするか」
「そうですね。食料調達にもなるんですよね?」
「ああ、それはもちろん」
正直言って育ち盛りの子供達が多いので、孤児院の修繕費用や自前で用意できる弾薬代を除いたら、食費が一番出費が嵩むからね。
「では、お願い致します。私は焼く場所を作っておきますね」
「お願い。リフィアのためにもいっぱい釣るからね」
「楽しみにしています」
微笑んでくれるリフィアの可愛さに見惚れてしまった。すぐに頭を振ってからリン達のところに向かう。
「どうせなら、賭けをする」
「いいにゃ! 負けたら今日一日お願いを聞いて貰うにゃ!」
リン達がとんでもないことを言いだしたが、まあレクリエーションと思えば問題無いだろう。それから食事を終えた俺達は四十人程で釣りをすることになった。
先ずはやり方を教えて、餌を確保する。餌はモンスターの血抜きした肉片を団子状態にして作る。そして餌を針に付けて湖に投げ入れるとすぐに魚が食らいついてきた。
浮きが沈んだ瞬間に引き上げて針を魚の口に刺してリードを巻いていく。すると、25センチの魚が釣れた。
その魚は体色は背面が蒼黒色で下部が銀白色だ。体の背面や尾鰭に黒色点がほとんどない。そして、尾鰭に銀色放射条があり、尾柄がやや細いことからサケだと思える。
「レニエにゃ! 子供みたいだけど充分にゃ!」
「すぐに釣れたねー」
「面白そうだな」
「俺もやろ」
皆がやる気になったようで、用意した武器の釣竿を次々と持っていく。
「じゃあ、ルールを説明するね。餌はこのお椀に入れられる量の中で使う。そして、この餌を使って一番大きな魚を釣った人が優勝。
優勝者は参加者に一つだけ誰かに命令ができる。妨害とかはなし。釣ったお魚は晩御飯になる。わかった?」
リンがルールを説明していく。お椀が小さいので三十分から一時間くらいで無くなるだろう。
「「「じー」」」
「ん?」
何かこちらを見ている子が多い気がする。なんだろうか?
だが、嫌な予感がする。
「よし、やるぞー!」
「「「オォ~!」」」
「じゃあ、時間は一時間。はじめ!」
皆が急いで餌を取って釣りを開始する。俺も嫌な予感がするので負けられない。だから、勝ちに行く。
ヤタの視界を使って索敵を行い、大きな魚の居る所に狙いを付ける。餌を付けた釣竿を振るって、真剣に浮き輪に集中する。すぐに食いついてくるので、引き上げる。今度は十一センチ……小さい。
「やった、一〇七センチ~!」
「スゲェ!」
「おめでと~」
とても大きな魚を釣り上げた女の子。殆ど身長と変わっていない。普通なら吊り上げることなんでできないほどの大きさだが、身体強化に加えて支援魔法で底上げしてるようだ。その証拠に彼女が腕に身に着けているのは衛生兵を示す腕章だ。
「負けてられないっ!」
必死に釣りを再開する。だが、結果は無情だった。
「優勝は一〇七センチだよ!」
「やった~」
「おめでと~」
「ふふふ、それじゃあ早速……」
勝った女の子は俺に向かってくる。それがなんだが凄く怖い。何故かわからないが冷や汗がだらだらと流れてくるし、思わず下がってしまう。
「団長~」
「な、なに?」
「リンちゃんや姉さんに聞いたんだけど素顔は綺麗なんだよね?
だから、私達のお願いはそのスキルで隠している姿を見せることだよ!」
「ちょっと待て、今私達って言った?」
「ふっふふ、この戦いは一対三九なのです!」
周りを見るといつの間にか取り囲まれていた。
「きっ、君達は……」
「私達と団長は家族だよ。姉さんと結婚したんだから、団長は兄さんになるの。家族の中で隠し事は駄目だよね……?
ふふふ、観念して見せるのです!」
「そうだそうだー」
「姿を見せろ~」
抱きつきながら言ってくる子供達の言葉は確かにその通りだ。だから、俺は隠蔽で隠していた素顔を晒す。子供達からの視線ならたぶん大丈夫だろうし。
「うわっ!?」
「おおっ、これはこれは……」
「綺麗」
「……」
「なんだか神様みたい……」
「見惚れちゃう」
「これは美青年?」
「どちらかというと美少女?」
「よし。皆、二回戦を始める。次は兄さんに女装をさせるよ」
「ちょっと待てっ!?」
リンがとんでもないことを言い出したので慌てて止める。
「面白い!」
「やるぞー!」
「ふふふ、団長に一泡吹かせてやるんだー」
俺はこっそりと逃げようとする。実際にある程度距離を取れたのだけれど……
「おっと、どこ行くのかにゃ?」
「マルタ……ッ!? はっ、離せっ! 女装なんて嫌だッ!!」
後ろからマルタに羽交い締めにされてしまった。その顔は無茶苦茶楽しそうに笑っている。
「景品が逃げるのは駄目にゃ」
「くそっ、こうなれば……」
「ああ、命令は聞かないにゃ。ロジーから今この場に限って、命令を拒否しても構わないと許可を貰ってるにゃ」
「ま、まさか……」
「昨日の時点で根回し済みにゃ」
「兄さん、諦める」
「なに、勝てばいいんだよ勝てば」
「団長も言ってたじゃん。勝てばいいんだって」
確かに何回か言った覚えがある。むしろ、そう思うように教育したけどねっ!!
「ろ、ロジー」
「すいません。今回は僕も皆に賛成です。何、無礼講なんですから気にせず遊びましょう」
「隠しごとはやっぱ駄目だよな」
「ラビノまで……」
「ふふ、逃げるなら不戦敗にゃ。どうするにゃ?」
「くそっ、やってやる!」
既に選択肢が無かった。そして、結果は明らかだった。
「九五センチで優勝したぜ!」
「ラビノの勝ち~それじゃあ、勝者の権限をどうぞ!」
「お、おい、待って……流石にそれは無いよね?」
「アンタには姉さんを取られたからな。その恨みもある。というわけで、女装させちまえ!!」
「「「ひゃっほー!!」」」
「逃げるっ!」
「「「逃がすなっ!!」」」
女の子達が瞬時に俺を包囲して、H&KMSG90を構える。男の子達がその横に立って銃剣や銃槍などを構え、コルト・パイソンなどを向けている。しかも、何人かは攻撃魔法まで準備している。
「逃がさないよ、団長」
「契約は履行されるべきです」
「アンタが教えたんだからな」
「包囲殲滅は戦いの基本」
教えた通りに隙のない包囲を行っている。少し動いただけで銃弾が実際に飛んでくる。
「この子達、凄い過激にゃ。どういう教育をしてるのかにゃ」
「え~と見敵必殺? 後は……」
「「「圧倒的火力で圧殺!」」」
「できる限り戦う前に準備を整えておくというのもある」
「躊躇せずに殺すってのも見敵必殺には入ってるし……これくらい?」
「というか、殺す気か?」
「「「はっ、はっ、はっ、この程度で団長が死ぬはずないじゃん」」」
「これぐらいじゃ死なないよな」
「自動障壁が二重にありますし、再生能力もありますから……問題ありませんね」
「兄さん、諦めて」
「ぐっ……」
教えたことを自分に返されると怖いな。戦争が近いから生き残るためにも優先して教えていたんだけど……改めて考えるとこの子達の成長力はかなり高い。
しかし、女装か……似合うのはわかっているが、なんだか嫌だな。
「どうやらここまでみたいにゃ」
「っ!?」
何時の間にか、俺の背後から現れて銃剣を首筋に充てているマルタ。索敵が味方だから働かないとはいえ、これは非道い。
「獣人を甘く見ると痛い目に合うにゃ」
「そのようだね……」
「というわけで、ほい」
首筋に冷たい物が押し当てられる。
「あぐっ!?」
その瞬間、身体が痺れて動けなくなった。力が抜けた身体が崩れるところをマルタが銃剣を捨てて抱きとめてくれた。
「この麻痺薬というのは結構使えるにゃ」
「おまえ……それ……」
「来る時に森から採取したにゃ。よーし、お前達、犯ってしまうにゃ!」
「なんか意味が違っ」
「よーし、むいちゃえ~~~」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そして、俺は女の子達に着せ替え人形にされてしまった。
「黒いワンピース!」
「黒髪とあってて普通に似合ってて面白くない! 次!」
「白いワンピースは合ってるね」
「どうせなら姉さんとお揃いがいいよね」
「そうだね、借りてくる!」
「うっ、うぅ……」
男の子達は遠くで真っ赤になりながらも見ている。女装も確かに精神的に犯されたみたいだ。だが、そんなことよりも身体に違和感が無いことの方が問題だ。
「ねえねえ、団長って女の子?」
「でも、最初は男の子だったよね?」
「着る服によって変わってるのかな?」
「胸が出てきてるし」
「あっちも変わってるね」
「「「不思議~」」」
どうやら、俺は服によって性別が混ざったりぐちゃぐちゃになるようだ。男性の服を着れば男性になるが、俺が女性の服だと認識した時点で身体に変化が起きるみたいだ。
しかも、女神の力を持っているだけあって、女の身体の方が格段に力が湧いてくる。だが、女になることはできる限り遠慮したい。
命がかかった絶体絶命の時とか、潜入の時とかの致し方ない場合はなんとか我慢するけど普通の時なら男女状態が現界だ。こちらでも充分に力を出せることがわかっているし、完全に女性になることはないだろう。
「姉さんから借りてきたよ~」
「では、聖女バージョンの兄さん! いや、姉さん?」
「どっちでもいいや!」
「そうだね!」
「おまえら……」
結局、聖女の法衣を着せられたり、リフィアの予備の服を着せられたりした。そして、今日一日女の子の姿で居ることを強要された。
ここで約束を破ると流石にこれからの部隊運用でまずくなるので仕方なく両方の性別みたいな感じにした。
アレをなくしたら、性欲とかも綺麗になくなったのでこれはこれでありなのかも知れない。ただ、中性的な美しさは健在のようで何人もの子供達が見惚れていた。
というか、何がとは言わないけど一二歳以上の男子がやばかったようだ。
「似合ってますよ、ご主人様」
「いや、それは水面に写ってる姿を見て知ってる」
「そうですか。でも、その姿を晒してくれている方が私は好きです」
リフィアはそういいながら俺に笑ってくる。
「れ~ん、これ作ったの~」
「つけてつけて~」
「ねえさんも~」
小さな子供達が花で作った冠を俺とリフィアに差し出してくる。
「ご主人様……お願いますね……」
「わかってるよ。ありがとう」
「えへへへ~」
子供を抱き上げて頭に乗せてもらう。リフィアとお揃いで嬉しくなる。
「ありがとうございます。上手にできていますね」
「頑張った~」
「れん、にあってる~女神さまみたい~」
「ほんとうだ~ねえさんもきれい~」
頭を撫でてあげると嬉しそうにするので、肩車をして遊んであげる。
「よしよし」
「わ~い、たかい~」
「わたしも~」
「ぼくも~」
「わんちゃんは~?」
「わかったわかった」
ダークウルフを呼んで遊び相手を一緒にしてもらう。リフィアは俺と子供達の戯れを楽しそうに笑ってみている。
「楽しいですね。何時までもこんな時間が続けばいいんですが……」
確かにこんな日があってもいいと思える。子供達と遊びながら穏やかな時間を過ごす。その中に俺とリフィア、リンの子供がいればなおいいだろう。
「そうだね。でも、それは……」
「はい。無理なことはわかっています」
「だったら、それができるよに頑張ろうか。俺もまだまだだし、リフィアとリンが支えてくれればなんだってできる気がする」
「気がするですか?」
「断言はできないかな~まあ、ちょっとずつ頑張っていくよ。これが今の俺の精一杯。
これからこの国は戦争に突入することになるんだから大変だから。それに世界大戦になるだろうしね」
少なくともレアレスカと戦争が始まる。神が言っていた戦国乱世の時代に突入する最初の戦争かも知れない。そんな中で生き残るには戦うしかない。
戦わず蹂躙されて全てを奪われるのは御免だ。この幸せな時間や家族を失いたくない。守る物を持つ者は強いと言われたことが実感できた。
俺にとって、既にリフィアとリンを始め、この孤児院の子供達は全員が俺の家族であり守る対象になっている。この子達のためにも頑張らないといけない。
「そうですか……そうですね。皆を守るためにも頑張りましょう」
「うん。孤児院の皆は俺の大切な家族だし。皆で一緒に幸せに暮らすためにも頑張ろう」
「はい!」
力強く笑顔で答えてくれるリフィア。
「むずかしいおはなし~おわった~?」
「あそぼ~」
「そうだね。ほら、リフィアも」
「はい。皆で遊びましょうか。そうですね……じゃあ私達のお母さんや皆に花冠を作って持っていってあげましょう」
「「「は~い」」」
「ご主人様もお願い致しますね」
「ああ……でも、作ったことがないからわからないな」
「じゃあ、私達が教えてあげる~」
「そうですね。では、お願い致しますね」
「「「は~い」」
花畑に座りながら子供達に囲まれて一緒に花冠を作成する。この花冠に俺は少し細工をする。
「まま、おわかれまでげんきのままでいてくれるかな?」
「ええ、元気でいてくれますよ」
「本当?」
「げんきのないまま、かわいそう」
「うん、げんきになってくれてうれしい」
「いっぱいおいのりしたの!」
「した~」
「した~」
本当に院長先生は愛されている。だから、俺は自己再生と回復効果上昇などのスキルを与えていく。子供達の願いを込めながら皆で作った花冠は凄く綺麗にできた。神聖な気配すら感じる神々しさもある。
「それじゃあ、渡しに行きましょうか」
「そうだな。よ~し、院長先生のところまでわんちゃんに乗っていこうか」
「「「は~い」」」
それから、子供達と一緒に花冠を持っていくと、院長先生は凄く喜んでくれた。ちなみに俺は皆に頭に着けている花冠のことでひやかされたが、外すと子供達が悲しそうな表情をするのでつけっぱなしにすることにした。
大切な子供達の涙は最強だね。まあ、それから院長先生から八咫烏の皆に少し命に付いて説法を受けてしまったが問題無い。
奪った命には感謝を捧げて弔うようにとのことだった。確かにそうだ。いくら弱肉強食の世界でもそれは忘れてはいけない。
なので、何かできないかと思うと、頭の中に鎮魂の儀式が湧いてきた。丁度、リフィアの巫女服も着せられていたことだし櫓を組んで炎を焚く。
そして、頭に浮かんだ舞を舞う。アマテラスは豊穣神として生命の循環を司ることから死の神としての側面を持つので、その力を使わせてもらう。
アマテラスの舞をアテナの芸術を司る神としての力も使って踊っていく。すると周りに死した魂達が集まってくる。それらに邪悪な気配は無くて周りからは神聖な気配に満ちていく。
踊っていると周りからは音が消え、動物達がこちらへとやってきて伏せりながら静かに見ている。腕を上に振るうと篝火の火の粉が空へ吹き上がり、魂は幻想的な光となって浄化されて空へと登っていく。
ただ、無心に幸せを願って舞っていくと、遥か高見から全てを見通すような上からの視点すら見えてくる。それによって、浄化された魂達は大地に新たな命として降り注いでいく。
さらに湖が光り輝き、神聖な光が森の中や周辺から溢れ出てくる。やがて光りは大地に吸い込まれていく。
そして、舞が終わった時、俺の身体は勝手に振り返ってぼーとこちらを見詰めているリフィア達を見る。
『この者達が大切なら守ることです。そのために信仰を集めて力を得るのも早いですが、殺した者達を浄化して新たな命へと導くことでも私達には力になります』
『収穫し、浄化し、大地へと返し、育み、改めて収穫する。死した者達は我らが血肉になるわ。この儀式は巫女……いえ、こちらでは聖女ね。彼女に任せてもよいですが、できる限り自ら行いなさい。それが力を得るのに早い道でもあるから』
アテナとアマテラスだった彼女達の声が脳内に響いてくる。
『それとレン。アフロディーテーにも気を付けなさい。奴も所詮は我らを利用する存在。いずれ雌雄を決する存在です。
ですが、それはまだ先のこと。今は力を蓄えなさい。いずれ私と先代のアマテラスが貴方に試練を課せます。それを全て攻略し、完全なる私やアマテラスとなった時、他の神と戦える力を……いえ、貴方は既に持っていますね。
では、神を超える力を差し上げます。頑張ってください。応援をしています』
脳内に響いた声が消えると同時に俺は意識を失った。次に目覚めた時、俺は知らない天井の場所にいた。




