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続・東方伊吹伝  作者: 大根
一章:家族会議で萃無双
5/6

裏舞台の地霊殿①

需要があるのかないのか分かりませんが、とりあえず投稿してみます


 夢を見ていた。とても恐ろしくて、本当に現実なのかと疑いたくなる夢を。

 それは母さん、伊吹萃香に本気で襲われる夢。

 夢の中の僕は風に流される枯れ葉のように無力で、母さんという暴風にズタズタにされた。や、別に殴られて蹴られてズタボロの使い古した雑巾みたいにやられたわけじゃないけど。まあ、尊厳やら何やらをズタボロにされたと言う点は変わらない。

 抵抗らしい抵抗も出来なかったし。母親に手を上げることを躊躇って、出来たとしても傷一つ付けられなかった自信がある。……まったく嫌な自信だね。


『あ、手がすべったヨー』

『とか言いながら服剥がないで!?』

『グフフ、良いではないか良いではないか! ……そーら、もう一枚! もう一枚!!』

『ギャーーーーーー!?』


 ああ、これはきっと夢なんだ。お気に入りのジャージを引き裂かれた時にそう気付いた。本当の僕はもう自室で寝てて、これは悪夢なんだろうって。

 目の前の現実から夢の中のへと逃げだしたくなるほど、僕は酷い目にあった。

 始めは大魔導師のローブを脱がされた。長年大魔導師に引き継がれてきただけあって、特殊な術式でも組み込まれていたのだろう、母さんが本気で引きちぎろうとしても千切れなかった。だから身体をローブで覆って逃げ回っていたんだけど、それが良かったのか悪かったのか……。組伏せられて、一番強固なローブを最初に奪われた。

 ローブを脱がされた僕は、何とも形容しがたい想いを胸に全身全霊を掛けて尻尾をまいた。後へ向かって全力疾走! 後からはグヘヘとか言いながら追いかけてくる鬼。リアル鬼ごっこってこんな感じなんだろうなぁ……なんて、走りながらふと空を仰いだとき頭に過った。

 ところがどっこい、鬼を相手に逃げ切れる人間なんているはずがないわけで。


『そぉい!』

『プゲラ!?』


 背中に強烈な一撃を喰らわされた。それが母さんと言う名の弾丸だと気付いたのは、馬乗りにされた時だった。


『ハァ、ハァ……母さんは自重を止めるぞーーーー! やまとーーーー!!』

『お願いします何でも言う事聞くし何でもしますから御自重下さいと言うか何で襲われてるの僕は!?』

『ん? 今何でもするって言ったよね?』

『逆効果!? 命乞いは逆効果なの!?』

『がおー、たーべちゃーうぞー(意味深)』

『意味深!?』


 どこかの吸血鬼が言いそうな台詞を吐いて犬歯を見せるマイマザー。息が荒く、目は血走ってまるで何かに狂ったように怪しく光っている。

 あの、母さん? まさかとは思うけどその犬歯で僕を喰いちぎるなんてことはないですよね?

 アブナイ表情を浮かべたその顔が目の前まで来た時……


『酒臭!? 母さん酔っぱらい過ぎ!』


 あまりの酒臭さに顔を顰めてそう叫んでいた。

 いや、だって酒の臭いがすごく臭かった。匂いじゃなくて臭い。どれだけの量の酒を飲めばこんな臭いを発するんだろう。嗅いでいるだけで酔ってしまいそうな強い酒の匂いが、母さんの身体中から放たれている。


『空を見上げて』

『……はい?』

『星の数でも数えてたら直ぐ終わる!』

『え―――――……え!?』


 その後いったい何が起きたのか……。近づいて来るニヤけた顔を最後に僕の意識は途絶えた。

 夢の中で気を失うなんて経験をしたのは、世界広しと云えど僕くらいじゃないだろうか。


 ……分かってるさ、あれが現実だったってことくらい。そうじゃないと、僕の周囲に広がる光景――――と言っても、目隠しをされてるから誰が何人いるかも良く解らないけど――――が説明つかない。


「うんぱぱうんぱぱ」

「うんぱぱうんぱぱ」



 ここがどこか分からないけど、とりあえず現状を把握してみよう。


 ――――目隠しされて吊るされてます、はい。まるで豚の丸焼きでも作るように。誰がと言えば、僕が。


 ほら、足と手を一本の木に括りつけるアレ。あの状態で運ばれてる。ご丁寧に服まで全部取られて。武士の情けか、褌だけはそのままにしてくれているけど。皮むきでもした気分なのか、褌一丁の僕はさながら丸焼きされる豚そのものだ。

 ……何でこんな状況なのに冷静かって? フフフ……こういう時はまず落ち着いて、逃げる算段を立てるのが最善なのさ。思考を止めることは"大和の丸焼き" に直結するからね。


「放せー! いや、放してください! 丸焼きはいやだーーー!!」


 とでも言うと思った!? 現在進行形で運ばれている哀れな豚こと伊吹大和、今日の晩御飯にならないように必死に暴れています!

 ところがどっこい、身体を揺らしても縛られた手首と足首が痛くなるだけだ。


「うんぱぱうんぱぱ」

「うんぱっぱ」

「うぱ、うんぱぱ」

「どこの民族ですか!?」

「オレサマ オマエ マルカジリ」

「既にご飯認定されてる!?」


 うおー! と周囲から歓声が上がったのと同時に、ゆらゆらと運ばれている感じがなくなった。

 もしかしなくても、調理会場に到着しちゃった?

 嫌な予感に耳を澄ませれば、パチパチと火の粉が舞う音が。これは不味いぞと思った時には今まで運ばれていた時の感じた揺れが無くなって、背中に熱が篭り始めた。ああ、なんだか直火焼きされてるような――――ってこれ本当に焼かれてる!?


「うがーーーー!! ふざけるのも大概にしろこの馬鹿野郎ーーーーッ!!」


 ふざけるのも大概にしろと氣力全開。身体中の氣を爆発させて、堅く縛られていた拘束を解いた。

 褌一丁がどうした! 喰われるくらいなら僕は恥を選ぶね!

 そのまま目隠しされていた布を外すと――――――


「よう! 久しぶりだな大和の坊主!」

「大きくなったなぁ。これじゃあ母親の立つ瀬がないわな!」

「ほんと、大きくなったのね。あんなに小さかったのが懐かしいわ」


 ――――見渡す限りに、頭から角の生えた人達が僕を見つめていた。


 何処を見ても、そう、見覚えのある顔ばかり。

 どれだけの月日が経っていても、まったく変わらない笑顔を浮かべている兄貴分。柔らかい視線の中にも厳しさを忘れていない姉貴分たち。

 山を出てから数百年。千年経って忘れもしない、変わっていない家族がそこに居た。




 なんて、感動的な再会を喜ぶべきなんだろうけど、冗談でも焼かれた背中の痛みにどうも冷めてしまっているよこのアホ家族。と言うか、久しぶりに、しかも100年単位で会った弟相手に何してくれてるんですかこんちくしょう。


「よっ、大和。こうやって直に顔を合わせるのは都以来だね。元気だったかい?」

「姐さん」


 星熊勇儀。姐さんと慕う人も以前見た時とまったく変わらないままだった。お祭り好きな性格と立派な一本角は健在で、デフォルトで酔っている所は今も相変わらずみたいだ。僕の予想じゃこの持て成しはこの人の案。つまり元凶です。


「萃香がこの世の終わりのような顔をして気絶しているお前を連れて来てね。ただ普通に再会するだけじゃ面白くないだろ? だからちょっと洒落た演出をさせて貰ったのさ」

「ほら元凶だったよ……」

「何か言ったかい?」

「何も言ってません。と言うか、洒落じゃ済まないですよ……。本気で食べられるかと思ってましたし。あ、こんな格好(褌一丁) ですいません」

「文句なら剥いだ萃香に言うさ」

「さいですか……」


 やっぱり脱がしたのは母さんだったんだなぁ……。

 ……大丈夫だよね? いや、食べてやる的に。酔ってたから、僕を酒のツマミに喰ってやろうなんて考えたんだろうけど、まぁ思いとどまってくれたんだろう。身体の何処にも異常は無いみたいだし、僕は何も憶えていないからね。


「ところで大和」

「はい? 何です《ブォン》 ――――ほわぁ!?」

「お、避けた」

「"お、避けた" じゃないですよ!? なにいきなり殴りかかって来てるんですか!?」

「まあまあ」


 まあまあで殴られてたら堪ったもんじゃないよ!? この拳の衝撃波が抉った地面を見て!? 明らかに"まあまあ" で済まされる威力じゃないですよね!?

 当たればミンチ間違いなし。ハンバーグの具材みたいになるのは嫌なので、身体に氣を纏って次々と繰り出される拳を躱す躱す躱す……はっ! そうか! これは姐さんが僕の成長を見る為にしていることなんだ!

 姐さんは僕がどれだけ強くなれたかを知りたいんだ。……よし、そうと分かれば全部躱してやるぞ!


「ほっ……や、おっと」

「……」

「どうです姐さん? 僕もだいぶ強くなったでしょう?」


 ドヤァ……と表わすのが一番似合っている笑みを浮かべてそう言った。

 妖怪の山で泣いてばかりだった頃に比べると強くなった自覚はあるんだ。あったけど、周りが強い人ばかりで全然強くなった感じはしなかったからか、こうやって実際に姐さんの拳を避けることが出来ていることが少し、いやかなり嬉しい。

 だからか、少し顔がニヤけるのが止められない。いやぁ……僕も強くなったもんだ。初めは突きなんて立派なものじゃなくて、ただ腕を前に出すだけの児戯だったのに。あの頃は修行なんて言ってたけど、今思えば"修行" と名を付けたただの遊びだとしか思えないんだよなぁ……。そんな僕がこうして姐さんの突きを避ける日が来るなんて……感無量通り越して天にも昇りそうだ。

 ウフフ、これは師匠に勝てる日も来るかもしれない。『良くやったわ、それでこそ私の弟子ね』 なんて言って貰えたら僕はもう……フヘヘ。

 あ、駄目だ。そんなこと考えたら顔がどんどんニヤつく。

 駄目だ駄目だ、姐さんだって手加減してくれてるんだから。あ、でもやっぱり嬉しいものは嬉しい。

 ――――うん? 何だアレ。

 連続で繰り出していた突きを止めて、少し腰だめに力を溜めているように見える。

 ああ、成程。これを躱か捌けたら合格なわけだね? さあ来い! 氣と魔力を合わせた無想転成第一はもう展開したから、真正面から受けても大丈夫だ!


「萃香の言ってた通りだね」

「僕、強くなりましたよね!」

「いや、そうじゃないさ。ただ――――」

「ただ? ――――《ボッ》ひょ?」


 ん? いったい何が起きたの? 何やら空気が爆発する音が耳元を通り過ぎたような気が……って、あ、あれ? なんで姐さんの拳は僕の顔の真横を通り過ぎたままなんでしょうか。あと、後からガラガラと何かが崩れる音と阿鼻叫喚が大変耳に聞こえてくるんだけど……。

 

「生意気になったねぇ、大和」

「ひゅい!?」


 姐さんの笑ってない笑みを直視してしまい、何とも情けない声が口から出てしまった。

 今の姐さん、すごい素敵です。100人見たら98人くらい足震えて動けなくなるくらい。因みに僕も動けません!


「豆粒だった頃に比べてちょっとばかし強くなったと思えば、それ以上に生意気になっちまってまぁ……こりゃ再教育が必要だって言う萃香の気持ちが良く解るね」

「や、姐さん? 僕生意気になんか――――」

「いーや、生意気になったね。だいぶ手加減したとはいえ私の突きを躱したり、きつく縛った縄を力任せに引き千切るなんて生意気以外になんて言えばいいんだい?」

「や、だからそれは強くなった証拠で《ボォッ》――――――ふぉぉっ!?」


 完全に勘任せだった。

 師匠相手に鍛え上げられた危機察知能力が、勝手に身体を地面へとへばり付くようにしゃがませる。その頭の上をチリッと通り過ぎる何か。目を上げた際にぶわっとめくれ上がったスカートが見えたとき、漸くそれが躊躇なしに振り切られた足だったと気付いた。


「避けるんじゃないよ」

「避けなきゃ死にますって!?」


 空振りした蹴りを、今度は上げた勢いそのままに踵落とししてくる。狙いはもちろん地面に這いつくばっている僕なわけで……って、悠長に見てる場合じゃない!?


「どっせい!」

「ふぉぉぉっ!?」


 バッタのように四肢をばねにその場から飛び跳ねる。ちょうど入れ違いになるように、さっきまで僕がいた場所に踵落としが落された。


 ――――ドゴォッッ!


「あらま、これも逃げられたか」


 ひ、冷や汗が止まりません……っ!

 なんて言うかもう、地面が砕けて陥没してメメタァ。あんなの当たったら、むしろ掠っただけで死亡確定するんじゃ……。

 いや、流石にやりすぎなんじゃ!? あんなの頭に落ちてきたら天に召される――――って後のみんな!? なに笑ってやがりますか!? 可愛い弟の大ピンチですよ!?


「まあ、強くなったとか言う大和ならもうちょっと力を入れても大丈夫だろう」

「いやいや!? むしろもっと弱めないと僕粉々になっちゃいますよ!?」

「試してみるかい?」

「じょ、冗談じゃ――――」


 引き攣った顔を浮かべているであろう僕を無視して、姐さんが再び身体に力を溜め出した。

 そして一歩、視界が霞むほどの妖力を纏った一歩が前に出た。


「随分と昔に言ったことを憶えているかい?」

「…?」

「必殺技を作っておけと言ったはずなんだがね」


 ――――必殺技……? ッマズイ!? じゃあこれは!

 二歩。更に踏み出した二歩目。既に賽は投げられている。不味いマズイ不味いぞ!? 予想通りなら僕は跡形もなく消し飛ぶ!

 命の危険を本気で感じた僕は、姐さんに背中を向けて全力で逃げ出した。他の皆も何時の間にか僕らの周りから退散してしまっている。やるならやると言ってよ! 理不尽な目に合うことに毒を吐きつつも走ることを止めない。背中からは痛いほどに妖力の高まりが突き刺さって来る。


「凌いでみな。凌げるもんなら」


 姐さんの声が聞こえた時、僕は風になった。



   ◇



「……凌ぎきったみたいだね」


 三歩必殺。

 その名の通り"三歩目には必ず殺す" 必殺の一撃だったが、どうやら予想通り防ぎ切れたみたいだ。威力を絞った上に、爆心地からかなり離れた場所にあっても、暴風に抉られた瓦礫と一緒に吹き飛ぶことが防いだと言えるのなら。


「勇儀さん、流石にアレはやり過ぎなんじゃ……?」

「やり過ぎちゃいないよ。むしろ手加減しすぎたね」


 爆風を上手く利用して逃げるなんて真似が出来る内はまだまだ余裕があるのだろう。しかも褌を庇いながら跳んで行けるのだから、大和がどれだけ腕を上げたのか想像が着く。

 だからこそもっと力を入れるべきだったね。萃香じゃなくて私の息子だったなら、もっと力を入れてやってたくらいだ。


「しっかし、萃香のアレは取り越し苦労じゃないのかい? 全然大人びた感じなんて無かったじゃないか」

「それは俺たちも同じですよ。大和の坊主は山に居た頃とまるで変わってないと思うんですが」


 "生意気になった" とは言ったものの、流石にそれだけで襲いかかったりはしない。理由はしっかりとあって、萃香に頼まれたからこうしたまでだ。

 曰く『大和が変わってしまう』 らしい。

 "らしい" と言うのも、私がこの目で見たわけじゃないからはっきりとは言えないんだが、なんでも八雲紫と行動を共にするようになってから変わってしまったらしいのだ。


 ――――大和が自分のことを"私" って言ったんだよ!


 あれは確か、大和が妖怪の山で天狗たちと会合を開いたと萃香が言って来た時のことだ。

 今の大和は幻想郷の主な地域を八雲紫の代理人として、また後継者として実際に足を運んでいるらしい。後々の為に顔合わせの意味もあってか、大和と八雲の式の二人で各所を回っていたそうな。

 その日は妖怪の山、私たちの古巣を仕切っている天魔にお目通りをしに行き、そのとき初めて仕事中の大和を見たらしい。

 何で天狗との話をお前が知っているのかと聞くと、なんでも秘かに聞き耳を立てていたらしい。息子の仕事風景を見てみたかったんだと。それを聞いた時はあの親馬鹿の頭が本気で心配になった。

 だから何時まで経っても子供離れが出来ないんだと言ってやったが、あの馬鹿はやっぱり聞く耳をもっちゃいなかった。それ所か、大和が八雲になるやら何やらと意味不明なことを酷く喚き立ててきた。


『まるで紫そっくりなんだよ! 天魔相手に対等ぶるのも、喧嘩を売ってきた大天狗を躱すのはいいよ。紫の代わりになって行ってるんだから。でも仕草の全部が紫そっくりだったんだ! このままじゃ大和"らしさ" が無くなるよ! 勇儀、わたしは母親としてどうすればいい!?』


 お前はそこまで八雲の仕草が嫌いなのかと言いたかったが、確かにこれは忌々しき事態だと私たち全員は思った。大和が大和だからこそ皆が慕っているのだから、その"大和らしさ" が無くなるような真似をただ見ているわけにはいかない。まずもって、大和が生意気になるのは私たちにとっても面白味が無い。もっと言えば、からかいがいの無い奴になってくれたら面白くない。


 聞けば、大和は休みもなく幻想郷の為に尽くしているらしい。

 その中で、私が想像つかないような重要な役割を担っているのだろう。大和のことだ、何とか早く力になれるようにと四苦八苦しているはずだ。少しでも追いつくために。

 その一番の早道が八雲紫の真似をすることだったんだろうが、萃香はどうやらそれが気に入らないらしい。大和が八雲のように含んだ薄笑いを浮かべる……ああ、納得だ。思わず顔面を殴っているだろう自分が直ぐに想像できる。


 そうならないようにと、普段から気を張り詰めている大和を労ること。大和を童心に戻して、もう一度自分を見つめ直す機会を与えて欲しいと頼まれたときは、息子愛が重いだけで萃香もしっかりと考えているんだと思ったんだが――――


『じゃあ勇儀、大和のこと頼んだよ。……わたしかい? わたしはねぇ、ちょっと上でやりたいことがあるから、ね? まぁ害虫駆除みたいなもんさ、直ぐに終わる』


 ――――そう思った自分の馬鹿さ加減が恥ずかしい。やっぱり萃香は萃香だった。

 はぁ……まったく、牙どころか角まで息子に取られちゃったんじゃないかと思う。あの親馬鹿は息子の為と言うのなら喜んで差し出すんだろうけどさ。


 とにかく、色々とあってこんな下手な芝居を打ったわけなんだが、


「大和の坊主と酒が飲みたかった」

「まったくだ。萃香のぺちゃぱいがいらんこと言うから……」

「おいおい、ぺちゃ親に聞かれたらぶん殴られるぞ」

「お前もな」


 同感だね。久しぶりの再会なんだ、本来なら宴会の一つや二つ開いてやりたかったんだけどねぇ。


「まぁ……母親にしか解らないこともあるんだろう。大和のことに関して、あいつ以上に詳しいやつはいないからね。実際に私らも解らなかったくらいだ。普段なら見落とすほど些細な変化なんだろ」


 大和の跳んで行った方角を見つめ、後でとやかく言う連中にそう言ってやった。

 私だって弟分に酌して貰いたかったさ。あのある種の破天荒が体験した土産話を肴に呑む酒はそれは旨いものだろう。

 しかし非常に遺憾だが、それは次回に持ち越しだ。大和絡みとなると萃香の勘は絶対当たると私は信じているから。嫌な信頼だがね。


 その大和が跳んだまま真っ直ぐ行けば、行きつく先は忌み嫌われた妖怪の住む地底の中でも最も嫌われる妖怪の一人、覚妖怪が住む屋敷に辿り着く。生意気だと言われ、あまつさえいきなり殺されかけたんだ、そう易々と帰って来ることもないだろう。そのまま見た目だけは立派な地霊殿に辿り着くはずだ。


「……大将がそうしろと言ったとはいえ、あそこに向かわせて大丈夫か心配になってくるね…」


 心を読むのが仕事みたいなものだからね、あの妖怪は。変に心を弄られないといいけど……まあ、考えても仕方が無いか。さとりも悪い奴じゃないし、なるようになるだろう。

 それにやることはまだ残っている。私もそれに向けて準備やら何やらする必要があるのだから。

 それに、珍しくあの大将が動くと言ったんだ。大和のことは大将に任せておけば大丈夫だろう。

 地上で宴会が始まるまであと三日。さて、私も久しぶりに気張るとするかな。



   ◇



 The man of HUN-DOSHI flies in the sky!?


 空を飛ぶ褌の男、伊吹大和! です。現在進行形で空を舞ってます。

 いやー、冗談抜きで死ぬと思ったのは紅霧異変以来だ。ルーミアちゃんに片腕捥ぎ取られた時とか、紫さんに風穴だらけにされた時とか、何だかんだで僕ってよく命の危機に陥ってるよね。その御蔭で慣れてる自分が少し怖いよ。


「親方! 空から褌が!!」

「い、いや待て……あれは人間だぞ!?」

「地底に人間!? いや、その前に褌一丁で空を舞う人間が居てたまるか!?」

「僕だって好きで褌一丁じゃないんだよ!?」


 失敬な! 文句なら剥ぎ取った母さんに言って下さい! ……なんて言っても虚しいだけなので、幻術で服を着ているように見せる。服を着ているように見えて実際は着てない。いや、これはこれで中々に羞恥心が……とっ、とりあえずどこか落ち着けそうな所で服を手に入れないと!


「おいおい、誰が褌一丁の人間が空を飛んでるなんて言ったんだ。ちゃんと服着てるじゃねえか」

「いや、俺が見た時には着てなかったぞ!」

「うっせえなお前等、服なんてどうでもいいだろ。それよりも人間だぜ? 人間。久しぶりに新鮮な肉が喰えるチャンスじゃねえか」


 自由落下から飛行に切り替えて飛んでいると、眼下の妖怪たちから何とも物騒な話が聞こえてきた。

 ……いや、僕も一応鬼の息子だから理解はあるよ? でもほら、まさか自分がそんな対象として見られる日が来るとは思っていないわけで。


「待てゴルァ!」

「久しぶりの人間! 骨までしゃぶってやる!!」

「首置いてけ! 首!」

「や、やば……っ!」


 僕よりも弱そうな人の方が多いけれど、危機迫る表情で追いかけてくる気迫がとんでもない。

 姐さんにいきなり襲いかかられた傷心と、実は褌だけの羞恥心が多い今は相手なんて出来るわけがない! どこか逃げられる場所に……! 前方に一際立派な屋敷を発見! 周りに比べて離れた場所にあるし、あそこに逃げ込めば追ってこないかもしれない!


「御免下さい! 返事は聞いてません!」


 門を飛び超えるような非常識な真似はせず、門を蹴破って中へ入った。

 するとどうだ。振り返って見てみると、思った通り誰もが門の前で立ち止まっていた。


「げ……」

「よりにもよって地霊殿か…」

「肉が……」

「どうせ地上には出られねえんだ。それに地霊殿の連中も中々……」


 し、しまったーー!? 入ったのはいいけど、中に居る人とかどうやって此処から脱出するかとか考えたてなかった!?

 不味い、不味いぞ大和。あれだけ肉だ肉だと追いかけてきた妖怪が入ることを躊躇うほどの屋敷だ、きっととんでもない化物が住んでいるに違いない……っ!


「おう、そこの庶子」


 背中に掛けられる眠たげな声。それでいて振り返ることを躊躇するほどの存在感。

 その声が聞こえてきた時、門の外に居た妖怪たちが目を丸くして逃げだした。中には震えて動けない人もいる。

 とんでもない気当たり、間違いなく母さんクラスだ。ただ声を掛けられただけなのにこの重圧……謝って済むかどうか分からないけど、これほどの力の持ち主だ。平伏叩頭の姿勢を見せれば興味を失って見逃してくれるかもしれない…


「すいませんでした。直ぐにでも出て行きますので――――」

「お主大和か? 大きくなったのう」

「へ……? お、大母様?」


 土下座する勢いで振り返った先には、山を出る日にも姿を見せてくれなかった大母様がいた。酒を呑み過ぎているのか、眠たそうに何度も欠伸を繰り返している。


「貴方が噂の大和ですか」


 その背の高い大母様の隣にひっそりと、小柄な桃色の髪の毛をした少女が立っていた。

 こちらはしっかりとした様子で、真っ直ぐ三つの目が僕を見つめている。……みっつ?


「初めまして。古明地さとりと言います」

「あ、これはご丁寧にありがとうございます。どのような噂か解りませんが、伊吹大和と申します」

「クス、可笑しな言葉遣いですね。自分でも似合っていないと思っているのなら、止めた方がよろしいですよ?」

「……ごめん、なんとかしようとは思っているんだけどね。よろしく、古明地さん」


 どうも藍さんや紫さんのようにはいかないんだよね。一応練習とかさせられてるんだけど、使いなれていないからしっくりとこない。時間が解決してくれると良いんだけど。

 まあ、それは要練習として。とりあえずは握手の為に右手を差し出す。いろんな人と頑張っていこうと決めたのだから、まずは形から入らないと駄目だと思うんだ。


「握手、ですか……。求められたのは何時以来でしょう」

「…? 嫌だった?」

「いえ、しかし……」


 少し迷ったように大母様を見上げる古明地さん。それに頷く大母様とはまるで親子みたいに見える……って、何で睨まれるの僕。


「では握手を」

「あ、どうも」


 うーん、何か難しい顔してる。三つ目の眼はずっと僕を見てるし、まるで心の中を覗かれているような気もする。

 ……はっはっは、まさか、ねぇ? 僕は心を読まれたら色々と不味いですよ? 僕だって男なんだからあっぁーんなことや、こっぉーんなことだって、ねぇ? 手が柔らかいですね、とか今も思っているわけだし。


「……男性は皆そうなので、今更取り乱すことはないですが」

「だよねぇ、男は皆そ…う……!?」


 ちょっと待て。だいぶ待って。もしかして心読まれた?


「はい」


 ……だとしても、深淵までは読めないはずだ。僕も武術の心得から、心の表面や僅かながら深淵を覗くことは出来るけど、完全に全てを読み切ることは出来ない。古明地さんは武術の心得がないように見えるから、そんな術を使うか、もしくは覚妖怪でしか……。


「察しが良いですね。改めて自己紹介をしましょう。古明地さとり、覚妖怪をやってます」

「な、なんだってーーーーー!?」


 こ、心を無に――――


「――――することは無意味です。私の目を閉じる以外に能力を止めることは出来ませんので。それに、握手とはいえ素肌を合わせたので、私は貴方の全てを知ることとなりました」

「り、りありー……?」

「ならこの場合はThat's right とでも応えておきましょう。ムッツリすけべな伊吹大和さん」


 クスッ、と、とんでもないサディスティックな笑みを浮かべられてしまいました。


「ところで小さい子は――――「ノーセンキュー! それは多くの誤解を含むよ!?」 ――ふふ、冗談ですよ、冗談」


 人をロリコンと言うんじゃないよ!? ただ向けられる好意が嬉しいだけであって、そそそそそんな意味なんてないんだからね!?


「解ってますよ。ええ、解ってます」


 ぼ、僕は終わったかもしれない……はぁ。




   ◇



「粗茶ですが」

「うむ」

「ありがとうございます……」


 傷心。傷心中の大和です。

 何が悲しいかと言うと、さとりさん(そう呼べと言われた) から受ける恥辱の限りに自分が情けのうございます。心を丸裸にされたピュアなハートに塩を練りつけてくるさとりさんは、きっととんでもないドSなんだと認識させられました。


「文字通り裸だった人が何を言っているのですか。聞いたことありませんよ、町中を褌一丁で飛びまわる魔法使いなんて」

「はぅっ!?」


 ふ、不可抗力とはいえその言い方はないですよね!? 僕だって立派なジャージと立派な大魔導のローブをですね……


「裸の王様ならぬ、裸の大魔導師ではないですか」


 ……ぐぅの根も出ません。

 あぁ゛~……痛んだ心にお茶が染みる…。でも美味しいです。上手なんですね、お茶淹れるの。


「それくらいしかすることもないですから」


 いやいや、謙遜することないと思いますよ? 僕も紅茶なら淹れられるけど、お茶はこんなに美味しく出来ないから。


「そう言われると照れますね」


 ……なら照れた仕草くらいして下さいよ。フッ、なんて笑み浮かべてたら全然照れてるように見えないよ? 照れるってのはもっとこう、顔を紅く染めてだね。ちょっと俯き加減に下から見上げてくれたら尚良しです。


「……もしかして開き直ってますか?」


 この幻想郷の紳士伊吹大和に、隠せるものなどあんまりない!


「あんまりどころか全部筒抜けです。あと、心が読めるからと言って声を出さないのは構いませんが、それでも時々は声を出してください」


 一人で喋ってると痛い子に思われるもんね!


「……ここまで開き直る人は久しぶりですね」


 そう言って貰えると嬉しい……こともないけど、心を読まれた人が開き直る以外に出来ることってあるのかな? 何考えたってどうせ読まれるんだったら自分に素直になればいいのに。だってそうじゃないと勿体ないと思わない? 本音を包み隠さず出せる話相手なんてそうそう現れるもんじゃないし。


「鬼は奇人を末っ子に置いているとは聞きましたが、まさかこれ程とは思っていませんでした」

「クク、面白い庶子じゃろ? これが儂らの自慢じゃ」

「心の底からそう思える貴女も相当の奇人だと思うわ」

「失礼な。僕は幻想郷でもかなりの常識人なんだよ?」

「屋敷に入ってからの第一声が無自覚な一言だなんて……」


 僕は貴重な常識人なんだよ? 最大の良心である慧音さんに頼られるくらいなんだから、僕の常識っぷりは相当なものだ。


「良かったのぅ。友人が増えるかもしれんぞ? 奇人じゃがの」

「さとりさん。僕と友達になりましょう」

「いりません。身の危険を感じるので」

「!?」


 い、いや、確かに前科はある。覗きもやったし、服を剥ぐある意味必殺の技も持っている。持っているけど、わざわざ起伏の無い人の服を剥ぐような真似はしないから。だからさとりさんは大丈夫だよ!


「……」

「すいません調子にのりました。だからそんな目で見下さないで下さいお願いします」

「まるで豚を見るような目じゃの……」


 なんかこう、背中がぞくぞく――――ハッ!? ち、違うよ!? 違うからそんな目で見ないで!?


「ご、ごほん!! あー……あ、そう! 大母様はどうして此処にいるんですか? さとりさんの屋敷だと聞いたんですけど」

「お主を待っておったんじゃよ」

「僕を? 何でまた」

「萃香にちと頼まれての」

「また母さんですか……」


 どこまでも絡んで来るんですね家の母親は……。気に掛けてくれるのは嬉しいけど、そろそろ一人にさせてくれてもいいのに。


「時に大和」

「何ですか?」

「――長の死に様はどうじゃった?」

「――」

「……」

「悲惨な死に様じゃったろう。病に侵され、同族が目の前で死んでいく様を見せられた気分はどうじゃ?」


 今までの空気が一転、部屋の中の空気が一気に冷たくなった。

 いったい何を、と言おうとしたけど、大母様を見て聞くことを止めた。

 嗤っていた。大母様はあろうことか、紫さんにとって大事な、ともすれば僕にとっても無関係とは言えない大切な人のことを嗤っていた。

 自分の目が細くなっていくのが分かった。同時に、頭がどんどん冷えていくのも。こんな時に何時も思うのが、僕に静の道を説いてくれた師匠達のことだ。本当に感謝している。そうじゃないと、今にも暴れ出しそうな状態で冷静に考えることなんて出来ないだろうから。


「挑発しようとしたって無駄ですよ、大母様」


 溜息を一つ、大きいものを吐いて落ち着きを取り戻す。まったく、大母様も人が悪い。


「何故そう思う? 鬼はお主の仇。儂はその頭じゃぞ? お主が敵討ちすら考えられぬ腰ぬけとは思わなんだな」

「僕が――」


 そこまで言って、僕は一度言葉を止めた。大母様の言葉に応えるには、ここからは伊吹大和個人じゃ足りない。幻想郷の伊吹大和としても相対しないと、僕の想いは伝わらないだろうから。


「"私" が真実を知らぬのなら、紫様に育てられていたならそれもあったでしょう。しかし、今の私は貴女方に育てられた鬼の一族の一員。本来なら長と同族であった私を見逃し、そればかりか育てて下さった恩を仇で返すなど出来るわけもございません」


「それを腰ぬけと言わず何と言う? 恩を仇で返すわけぬはいかぬと、そう言って逃げておるだけではないか」


「確かに逃げと取られても仕方ないでしょう。しかし、私は長に託されました。紫様の力になり、夢を叶えて欲しいと。その夢は紫様の夢であり、今は私の夢でもあります」


「誰もが幸福であって欲しいと? 一人で無理でも、皆となら出来ると言う世迷言の為に仇討ちを止めるのか」


「世迷言と呼ばれて結構。夢は形にするまで夢、所詮は世迷言なのですから。それに、私は真実を知ったと言いました」


「……続けるがいい」


「はい。私の村が滅ぼされたとき、貴女は長と対峙した。その時、貴女は長が病、老いに冒されていることを承知で闘いを挑んだ。紫様との交換条件に。そして長たちをその手で葬った」


「その通りじゃ。何も間違ってはおらん」


「はい。しかし、過程はどうでしょうか」


「なんじゃと?」


「忘れているのであれば思い出させて差し上げます。鬼神とまで称される貴女様が、遙か昔から追いかけまわしても尚討ちとれなかった長を相手に、貴女様はどのようにして勝利を得たのですか?」

「―――」


 これは母さんも紫さんも知らない。当事者である長と大母様、記憶を繋げることができる僕しか知っていない真実だ。

 当時の藍さんは信じていなかったけど、長は一度も大母様に負けたことは無い。老いたその時であっても負けることはなかった。


「長は交換条件を理解していた。鬼である貴女様は鬼であるが故に引けない。何故なら、そのときの貴女様は既に是と紫様に申し出ていたからです」

「……」

「貴女様は長を葬り、長はそれを受け入れた。その事実は変わりません。故に、私は同族を誇りに思う。それと同時に、誇りの為に誇りを捨てざるを得なかった貴女様を誇りに思う。そのような二人の内どちら側になれなど、真実を知っている私には到底出来ません。だから仇討ちなど考えられないのです。他ならぬ貴女方二人の想いが込められた夢の続きなのだから」


 たぶん間違ってない……はず。間違ってたら首、跳ぶんだろうなぁ物理的に。


「――――クッ、クカカカカッ! よもやそこまで知っておるとは思わなんだ! 本当に退屈させぬ一族じゃのうお主らは!!」

「月の申し子故、物珍しくもありましょう」


 首の皮繋がったよ……。


「しかしお主がそれを知っておるとなれば話は別じゃのぅ。何せ儂の一世一代の恥じゃ。――いっそのこと、この楽園ごと消し去ってしまうのはどうかのう」

「……ならば私はこう応えましょう。――――"鬼ババの相手は疲れて堪らんわ" と」

「クッ…ククク……カカカカカッ! カーッカッカッカッ!!愉快じゃ! 愉快じゃぞ大和!! 儂相手に、しかも我が宿敵の真似をして応えるとは! この鬼神を前に、よくぞ此処まで肝の据わったやつに育った!! どうじゃさとり! 大和の内心は!? 嘘偽りはないか!?」


「全くないわ。よくも此処まで心の内を明かせると思う」


 いや……大母様相手に嘘言ったら僕殺されてるから! 今頃こまっちゃんの舟に乗せられて映姫様の所に連れて行かれてるからね!?


「カカカ! どうじゃ大和? 儂を相手に立ち廻った感想はどうじゃ?」

「死んだ方がマシです。と言うか、途中3分の2は死んでました」


 もう無理。紫さんの真似とかもう出来ない。精神力が0を振り切ってマイナスになった。

 特に長の真似してみた所とかさ……何調子に乗っておるのじゃこの糞餓鬼が!! なんて首が吹き飛ぶかと思ったし。会話の最中にもビシビシ殺気飛ばしてくるし。もう二度と大母様相手にこんなことしたくないよ。


「しかし大和よ、お主も変わったのう」

「紫さんの真似をしようとしてるだけですけどね……。ときどきコピー魔法の残片とか使って練習してます」

「あ奴が二人か……。萃香が心配する理由も解るの……」

「…? 何か言いましたか?」

「何でもない。それより大和よ、儂に教えられてみんか?」

「大母様が修行つけて下さるんですか!? もちろんです!」


 大母様の修行とか……鬼で最強の人に教えられるとか最高じゃないか! 最近伸び悩んでるし、これを機にスランプ脱出とか出来れば言う事ないよ!


「儂も魔法はからっきしじゃから、氣を中心に教えることになるがそれでいいかの? 折角じゃし、さとりもどうじゃ?」

「止めて下さい死んでしまいます」


 これでも僕は相当鍛えてるし、よっぽどの事じゃない限り弱音を吐いたりはしないぞ! 弱音を吐いたら師匠の面子にも関わるからね!


「じゃがその前に、天魔と会合した時の話を聞かせて貰おうかの」

「えー……。大母様相手にあれだけ頑張ったんだから別にいいじゃないですか。これ以上疲れる話したくないですよ」




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