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続・東方伊吹伝  作者: 大根
続・伊吹
1/6

ぷろろーぐ・上

※この小説には独自解釈・独自設定・ご都合主義が多分に含まれております。

「良い天気だねぇ」


 怠惰って素晴らしい。そう思わない?

 ビバ☆怠惰。今日も無縁塚で寝ているはずのこまっちゃんに時代が追いついた。

 最近そう思うようになったんだよね。

 堕落した生活が好きになったし、昼過ぎまで惰眠を貪って一日の半分を過ごしたりするのが好きになった。

 身体を鍛え続けた年数 = 年齢な僕に初めて訪れた安らかな時間。この歳になって漸く暇を楽しむことが出来るようになって、その味を占めてからはもう最高。

 ほんと良いよね、堕落した生活。

 特に幻想郷一可愛い娘が起こしてくれるのをやんわり否定して、"もう、大和さんったら!" なんて言って、結局は一緒に横になって甘やかしてくれる生活はプライスレス。


 まさに毎日がエブリディ。今まで頑張って来た僕への御褒美だ。


 そして今日は魔法の森に篭って森林浴。

 う~ん、辺り一面に満ち溢れる魔素がなんとも気持ちいい。生身の人間なら身体に毒だけど、魔法使いにとってこれほど良い環境はないね。危険な魔法生物たちも危害を加えて来ないし、ゆっくり魔法の研究も出来るオアシス。阿求ちゃんに頼んで幻想郷縁起に観光地として記して貰おうかな。

 まあ……それもまた今度でいいかぁ…。

 今はこの怠惰な時間を感じていよう。この心地よい木漏れ日に頭を揺らして昼寝するのもいいかもしれない。


「――――気持ちいいのは分かるけど人の背中で寝るなよな。幾ら師匠でも失礼だぞ」

「魔理沙はまだ腕立て終わってないだろー? 駄目だぞーちゃんと腕立てしないと。重りとして背中に乗ってやってるんだから感謝するように。僕は惰眠を貪りながら最近の怠惰な人生を謳歌してる」


 フフフ、こんな人生ってすばらしい。


「おい師匠、忙しさの余り痴呆にでもなったのか? 今幻想郷で一番怠惰とは無縁な生活してる癖に。最近はぜんぜん帰ってこないから、家事も自分でしないといけないって霊夢が文句言ってたぜ? 私の魔法修行に付き合ってくれる時間も少ないしよ」

「……僕を現実に連れ戻した罪は重い。あと100回追加」

「酷え!?」


 ――――そうだよ! 今までのは全部僕の妄想だよ! それとは全く正反対の生活してますけど何か!?


 紫さんに二代目の仮免を与えられるようになるまでは管理化に置くって言われてるし、そのせいで紫さんのするべき仕事をほとんど任されてますけど何か? 藍さんと一緒に結界の維持に奔走してますけど何か? 藍さんと一緒に泣きながら食事も睡眠も取れない時間を週に4日は過ごしてますけど何か? 藍さんと一緒に謀反考えてますけど何か?


 そのせいで碌に霊夢の顔見れてないですけど何か?


 ――――癒しが! 唯一心を休めることが出来る癒しは何処へ!?


 終いにゃ暴れるぞこんちくしょう。僕は紫さんより強いんだぞコノヤロウ。僕 > 紫さんなんだぞこんちくしょう。いいか? 暴れるぞ? 行くぞ!



 なんて暴れたのがつい先日のこと。

 簡単に鎮圧されました、はい。紫さんはお強うございました。一度勝ったのは奇跡だったと再認識させられました。


 その後も二代目としての挨拶回りだなんだと忙しくて手も回らないし目が回る。

 今まで見るどころか聞いたことも無い人に会いに行ったり、今の山を仕切ってる天魔様に"お久しぶりです、大和です。これから仕切らせて貰うんでよろしく" なんて挨拶しては精神がすり減るし。

 アレだ、嘗てホームだった妖怪の山は完全アウエーになったね。大天狗に囲まれた時は生きた心地がしなかった。"伊吹" の名前持ちで本当に良かったと思う一瞬だったね。七光、最強。僕、最弱。

 それだけに文や椛、にとりなんかは変わらず相手をしてくれることが嬉しくて泣いちゃいそう。今度しっかりと埋め合わせするからね!


 そんな状況を打破すべく、これはもう泣き付くしかないと母さんを頼ろうとした時には、家の萃香母さん絶賛行方不明。助けてルーミアちゃんと土下座してみては笑って見送る始末。

 図書館と言うプライベートスペースのある紅魔館に掛け込もうとしたら咲夜ちゃんにナイフ投げられて"働けタダ飯くらい" なんて言われるし、レミリアに泣きついたらどうなるか解らない。

 永遠亭も同じ。一度逃げ込んだら最後、たぶん二度と脱出できないと僕の勘が叫んでいる。

 白玉楼は幽々子さんがとても優しくて"何時までも居てもいいのよ~" なんて言ってくれるけど、小言が煩い妖夢ちゃんがいるからノーセンキュー。あの子、最近ムキになって勝負挑んでくるんだよね。前は勝ったけど、そろそろ負けるだろうから戦いたくないです。年上の威厳は大切だと思うよ、うん。


 博麗神社? あそこが一番の鬼門。紫さんが常時見張ってるだろうし、霊夢は我関せず。

 怒ってるのかと思って構って構って構ってあげたら『大和さん、しつこい』 なんて……お父さん、娘の圧力に負けて死にそう。

 あまりの悲しみから気絶していたのか、気付いた時には藍さんと一緒に結界の維持作業を無意識でやってた。何て言うかもう、藍さん愛してます。結婚して下さい。


 冗談はさておき、そうやって今まで以上に忙しくなった生活の中、僅かな時間を探して魔理沙に付き合ってあげている僕は師匠の鑑だと思うんだけど。


「22、23、24……あーもう! だいたい何で腕立てなんだよ! 魔法に腕立ては関係ないだろ!?」

「じゃあこのまま講義でもしようか? 腕立てをするお前の上で」

「私は腕立てをする理由が知りたいんだぜ!」

「ほら、僕の弟子ってことは武等派魔法使いになること確定だし? それに筋肉ムキムキのマッチョマンって憧れるだろ?」

「ふざけるな!? 私は女だぜ!?」


 えー……。僕は師匠たちに上手く鍛えられたせいか憧れのムキムキになれなかったから、魔理沙には是非とも僕の夢を叶えて貰いたかったんだけどなぁ……。


「30、31……、師匠がそんな馬鹿な理由でこんなことさせるかよ。ちゃんと他に理由があるんだろ?」

「……」

「32、33……どうしたんだ、師匠?」

「いや、信頼されてるんだなーと思って」


 反抗期だった頃は凄かったからね。泣くわ喚くわ引っ掻くわ、僕の言うことやること全否定した挙句に逃げだした時のことを思い出すと、いったい何処で魔理沙は生まれ変わったんだと。魔理沙の皮を被った妖怪と思っても仕方が無いくらい、今の魔理沙は僕に信頼を置いてくれているんだね。


「なに不思議そうな雰囲気出してるんだよ、これくらいの信頼は当然だぜ? 何たって、この魔理沙さんが自分で選んだ師匠だからな」

「半人前以下が選んだ、半人前の師匠だけどね」

「それを言われると悲しくなるぜ……」


 僕も自分で言ってて悲しくなってきた。


「ま、その信頼分には応えようと思ってる。腕立ての理由だけど、実は魔力放出の負荷に耐えられるように体を鍛えるのが目的なんだ」

「魔力放出の負荷?」

「そう。紫さんとの最後の撃ち合いを憶えてるか?」

「忘れようにも忘れられないぜ」


 あの最後の撃ち合い。魔力が底をつくまで撃ち尽くしたあの時に、魔理沙は魔力は余っているもののマスタースパークを放てなかった。だから、まずは身体を鍛えないと駄目だと思ったんだ。


「魔力の放出で身体に負荷が掛るのは解ってるよな?」

「ああ。私の場合は八卦炉にその負荷を任せてるぜ。流石にコントロールはするけど」

「魔法使いは使う魔法に応じて、それに伴う魔力負荷に耐えられるだけのモノを用意しないといけない。それが補助魔法を用いた綿密な魔力コントロールだったり、お前の持つ八卦炉のような触媒だったり、僕みたいな頑丈な身体だったりするわけだ」


 例えてみるなら大砲と弾の関係。小さい大砲じゃ大きな弾は撃てないし、大きな大砲でも脆ければ強い砲弾は放てない。つまり、魔法使いは自分の魔法に似合うだけのガワを用意しないと駄目だってこと。優れた魔力を持っていても、それを活かしきれるガワを持っていないと意味が無いんだ。


「あの時、お前に魔力はあっても加勢は出来なかった。だから魔力パスを繋げる羽目になった」

「おっ、思い出させないでくれよ! 今でも夢に見るんだからなっ! 悪夢だぜ! 悪夢!!」

「僕だってあれはノーカウントだよ。まあそれは置いておいて、僕が言いたいのは"八卦炉無しじゃ何も出来ません" なんてことにならないよう、魔法に似合った身体作りをしとけってこと」


 お前なんかまだマシなんだぞ? 僕が蓬莱島に居た時なんかなぁ、魔法のことなんて関係無しに師匠たちに……うぉぇ、思い出さないでおこう。


「だからって腕立てなんて原始的なことは嫌だな。もっとこう、魔力コントロールで負荷を減らすことは出来ないのか? 紅魔館の紫とか、どうみても身体を鍛えてるふうには見えなかったから何か方法があるんだろ?」

「パチュリーは別格。そうだなぁ、魔理沙があのレベルまで到達するには……うん、数百年は生きてみるか」

「ちぇ、世の中ってのは上手くいかないな」

「そうそう上手くいかれたら僕の立つ瀬が無いよ。お前はまだまだ若いんだから、焦らず出来ることから始めよう」

「へいへい、じゃあ続きをするかな。弟子想いの師匠を持った私は幸せ者ですよ―――――あん?」

「お……気付いたのか?」


 僕たちのちょうど真後ろから誰かが近づいて来るのが分かった。

 驚いたのは、魔理沙がそれを感じ取れたこと。腕立てに必死になっているのかと思いきや、しっかりと周囲への気もくばれている。感心感心。

 腕立てをしていた魔理沙の上から降り、後へ振り向く。魔理沙もそれに倣い、落ちるからと地面に置いてあった三角帽を払って被り直した。


「誰だ? アリスなら分かるんだが」

「僕も知らない気配だ。いきなり物騒なことにはならないと思うけど、気は抜かないように」


 何時でも魔理沙を庇えるように、身体に魔力を通しておく。今の僕は疲れでちょっと動きが鈍くなってるだろうけど、その分日々のストレスから容赦は出来ないよ? 邪魔するって言うのなら、それ相応の覚悟はして貰う。


「―――あ、人だ……」

「お?」

「女の子……?」


 警戒していたのとは裏腹に、綺麗な黒色の髪の毛をした女の子が林の中から出てきた。

 森の魔素に当てられたのか、足取りは重く非常に衰弱しているようにも見える。

 不味いな……顔色もかなり悪い。相当魔素を取り込んだんだろう、このままじゃ命にも関わるかもしれない。

 それにいったい何処の子なんだろう?

 顔が広いことが自慢の僕でさえ初めてみるのだから、もしかしたら幻想郷の外からやってきたのかもしれない。


「よかっ――――――」

「ちょ、お前大丈夫か……って、気絶しちまった」

「……」

「どうしたんだ師匠、黙りこんで。知り合いなのか?」


 知り合いなもんか。こんな可愛い子が知り合いにいたとしたら、そりゃあもう毎日通いつめてる。

 ――――そして何よりも特筆すべき点。それは、


「聖羅服……?」


 霖之助君に見せて貰った本に書かれていた服と全く同じ聖羅……えっと、せーらー? 服。写真で見た時は水兵の服装だと勘違いしていたけど、女の子が着るとこんなにも威力が上がるのか。げに恐ろしきは外界の技術。成程、妖怪が負けるのも仕方が無いね。


「せいらだかせーらだか知らないけど、こいつはどうするんだ? 魔素にやられてるみたいだし、早めに処置してやった方がいいと思うが」

「魔理沙君、私に任せなさい。幻想郷の紳士代表が責任を持って処置しておく」

「目がエロいぜ。で、どうするんだ? どこか安心出来る場所に寝かせてやった方がいいだろうけど、師匠が変な場所選ぶんだから私の家までは結構あるぜ」

「ああ、それなら大丈夫。困った時のマーガトロイドの家が近いから」

「……こんな奴の友人だなんて、アリスも可愛そうだぜ」


 こんな奴の弟子が何を言うか。




   ◇




「貴方達、私は便利屋じゃないんだけど」

「あれ? アリス、タオルの位置替えた? ――――ああ魔理沙、その子ベッドで寝かしてやって」

「わかった。アリス、悪いけどベッド借りるぜ」

「勝手に人の家を漁らない!」

「ごめんアリス、でも今は病人を優先させて」

「……もう、分かったわよ。それとタオルはクローゼットの中―――ってそこじゃない!」

「うわっ! アリスの下着派手だな~。私はこんなの恥ずかしくて履けないぜ」


 アリス・マーガトロイド。

 魔法の森に居を構える七色の人形遣いの下に、魔理沙と共に倒れた少女を連れてやってきた。

 彼女に対する処置は終わっている。

 身体に堪った魔素は全て吐き出させ、魔素に慣れるように僕の魔力を彼女の身体に浸透させた。一応の処置は施しておいたからもう大丈夫だろう。一刻もしない内に目を覚ますはずだ。

 それよりも、今は目の前で魔理沙が広げた真っ赤な下着について知らないフリをしないといけない。紳士とはそういうものなのです。


「大和」

「見てないよ」

「……」

「……もう心配ないだろうけど、魔理沙は看てやっててくれ。僕は家主に謝罪しないと駄目なようだから」

「アリス、こってり絞ってやってくれ」

「任せなさい。日々の分までしっかりやっておくわ。変態は座りなさい」

「失礼しますよっと……ハッ!? 変態じゃないのに上手く乗せられた!?」


 ニカッと笑う魔理沙に、アリスは静かな笑みを浮かべて応えた。その感じから見た所、それほど怒っているようには見えない……こともない。

 ああ駄目だ、これは不味い。本気で怒ってる。

 対面するアリスの顔は笑っていても、目が全く笑っていない。

 その目は、まるで何万回迷惑かけるつもりだこの野郎と言うようにこちらを見ていた。


「お茶を淹れましょうか。ストレートだったわよね?」

「お、お願いします」

「じゃあ皆、頼むわね」

『シャンハーイ』


 アリスの命令を受けた人形たちがキッチンでせっせと動き始めた。それぞれが別々の動きをしているにも拘らず、それを操っているはずのアリスはただ座っているだけ。操る為に糸を出しているはずの指さえ、ピクリとも動く気配がない。


『シャンハーイ』

「ありがとう上海」

「あ、ありがとう」

「……」

「……」

「……」

「ごめんなさい」

「謝るなら二代目はいらないわ」

「ごもっともです」


 無言の圧力に居たたまれなくなって謝ってみるも、ツンケンした態度で跳ねのけられた。

 ただ目を瞑って紅茶を呑んでいるアリスを見ると、流石に少しは罪悪感が出てくる。何時もとは言わないけど、会う時はそれなりに迷惑を掛けているから。


「ま、仕方ないわよね。危なかったんでしょ?」

「……気付かれてたか。危なかったよ、本当に。助けられるギリギリのタイミングだったと思う。誰とも会わずに僕らの下へ来るなんて、あの子も相当ついてると思う」

「ついてたら態々外から迷い込むなんてこと無かったでしょうに」

「まあね。もう少し遅れていたら、なんて思うと焦りもするよ。だから一番近かったアリスの家に来させて貰った」

「そう言う理由があるのなら許してあげないでもないわ。それに弟子の手前、よく取り乱さなかったと褒めてもあげる。本当は冷や汗モノの綱渡りだったんでしょうけど」

「ありがとう。でも、僕は誰よりも頼りになる師を知っているからね。その人の真似をしただけだよ」


 紅茶を呑みながら思い浮かべるのは自慢の師の背中。何事にも動じず、決して揺るがない頼りになる様は何時も勇気をくれた。

 魔理沙を正式に弟子へ迎えてからは、あの人のような心強い師で在りたいと強く思うようになった。

 頼り、慕ってくれる弟子が出来た今だからこそ、僕は簡単に弱い所を見せるわけにはいかない。


「それに、あの子の奥にあった力に少し憶えがあったんだ」

「…? それは二代目として積んだ経験からかしら?」

「非常に短い期間ながらもね。それに確信もないよ。でも、もし僕の推測があっているのなら大変なことになる」

「……私はまんまと巻き込まれたって言うわけね。もしもあの外来人が死んだ場合、責任を取らされるかもしれない可愛い弟子のスケープゴートにでもするつもりだったわけね」


 アリスの言い様に少し苦笑いする。

 すると、ふぅ、と深く溜息を吐き、その後でじぃっと見つめてくる。


「過保護なのも良いけど、それは時に成長の妨げになることを知っておきなさい。後で痛い目を見るのは魔理沙なんだから」

「分かってるさ」

「どうだか。巫女にも愛想尽かされそうだって新聞で読んだわよ?」

「うぐ……文文。新聞は嘘が多いから気を付けた方がいいと思うね」

「嘘か真か。判断するのは読者の権利よ」

「権利じゃないよね、権利じゃ」


 色々と都合の悪いことを突かれているからか、旗色が悪い。何かこう、魔法障壁を二重も三重張って防御を重ねたその先からねちねちと弾幕撃たれている感じ。

 紫さんや藍さんに鍛えられた御蔭で少しは話せるようになったつもりではいるけど、手の内を知られている相手にはまだまだ通用しないみたいだ。

 何とかやり返すせるような話はないかな?

 ……ああ、そういえば最近胸の辺りが苦しくなることがあった。そしてそれに関連するように、藁人形と釘を持って境内を歩く不審な人物がいたと言う証言を霊夢から聞かされていることも。


「そう言えば最近、胸の辺りが苦しくなることがあるんだ」

「へえ、それは大変ね。多忙なんでしょ? 身体は労らないと」

「そうだね、近いうちに神社で休みを取るよ。――――ああそうだ、神社で思い出したけど、最近になって不審な人影が出るらしいんだ。しかも、なんとその人物が藁人形に釘を打ちつけているって言うんだから驚きだよね。人形遣いのアリスから見て、藁人形の呪いの見解を聞かせて欲しいな」

「へ、へえ~。今時藁人形の呪いなんてする人がいるのね。随分と古典的だけど」

「どう考えても都会的じゃないし」

「そっ、そうよね~」

「……」

「……」

「何か申し開きがあるなら――――


 『師匠、病人が起きたぜー!』


 ――――まったく、空気の読めない弟子め」


 追及が止まってか、ほっと胸を撫で下ろすアリス。

 やっぱり想像通りだったか……。

 呪われるほど何かした覚えは無い……こともないけど、人を呪わば穴二つ。その辺は覚悟しておいて貰おう。呪い返しの本、小悪魔さんに探しておいて貰うから。


「魔理沙、あの子の調子はどうだ?」

「元気だぜって言うよりも、本人から直接聞いた方が早いわな。――――ほら、何恥ずかしがってんだ。お礼を言うんだろ?」


「お、押さないで下さい魔理沙さん」


 少し照れながら、魔理沙に押されるようにして出てきた少女。

 照れているのか、少しはにかみながらこちらを見てくる様子は、我が道を行く恥知らず者の多い幻想郷の中に居て、とても新鮮な気持ちにさせてくれる。

 背もそれなりに高く、着ているセーラー服は少女のために作られたのではないかと思ってしまうほど似合っている。少し混乱しているのか、まんまるの瞳が揺れ動く様に庇護欲が駆られてしまった。


 ――――うん、間違いなく美少女だ。


 十人いれば十人とも振り向くこと間違いなしの美少女がそこにいた。


「はっ、初めまして。東風谷早苗、高校生です」

「初めまして、僕は伊吹大和。幻想郷の二代目管理者(研修中) 兼、当代の大魔導師です。よろしく、東風谷さん」



 人の出会いは一期一会。

 それが外側の人間なら尚更。そう思ってた。


 だからこの出会いが後々にどう響くかなんて、当時の僕には当然知る由も無かった。

 ……未来なんて普段から見るもんじゃないし。




挿絵(By みてみん)



 挿絵:ナマコご飯13 様



 ブログに行きたくても行けないとのお声があったので、試験的にですが投稿してみました。試験的なので、あらすじにあるように事前通知なしに消すことがあるかもしれませんがご容赦下さい。


 ブログ『東屋』 へは、私のユーザーページからどうぞ。

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