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メジスラナクアを追跡するための宇宙船は発進しなかった。政府の意向により今回の件の対策を優先することになったのだ。
「納得できないか?」
エルネスティがカレルヴォに訊く。二人は学生時代からの付き合いだ。
「ああ。追跡はすべきだ。説得も攻撃もしないとしてもだ。目的を知るためにも追跡しない理由はない」
メジスラナクアは最後まで通信回線を開かなかったので、いずれにしても説得はできなかった。
「そうだな。目的がわかっているならともかく」
エルネスティの言葉に、カレルヴォは納得できないというような表情をした。
「目的がわかっていれば追跡しない?」
「たとえば……何らかの取引があったとか」
「取引?」
「内容はわからないが、その取引によって結果的に見逃してやった。あるいはメジスラナクアをくれてやったとも考えられなくもない」
エルネスティはそう言ったが本人も半信半疑だ。
「有り得ないことではないな」
同意はしたがカレルヴォも納得はしていない。
「調査はするようだな」
エルネスティが言うのは一連の出来事についての詳細だ。
「ああ。お前のところは運転手と爆発についてか。運転手はどうなった?」
「運転手は治療中だ。出血が多く気絶してしまって、何も聞き出せなかったようだ。爆発については担当外だ」
ハンヌは救助された時には意識がなかった。つまり、その場での聞き取りは不可能だった。爆発は第三ラボなので、第二ラボに所属しているエルネスティは直接の担当ではない。
「運転手が何を話すかだな」
「そうだな」
エルネスティはあまり期待していない。協力者であれば仲間に撃たせたことになる。簡単に口を割るようなことはないだろう。
「会議にはお前だけか?」
カレルヴォがエルネスティに訊く。この後、軍と宇宙センター、国立研究所の関係者で会議が行われる。エルネスティは出席するがカレルヴォは出席しない。会議室の近くで顔を合わせたので、二人だけで会話をしていた。
「第二ラボからはな。第一と第三からも誰かが来るはずだ」
「そうか。お前も災難だな」
「誰も予期していなかったからな。今日じゃなくても実行できたと思うが……」
エルネスティの言葉を聞いてカレルヴォは考え込んだ。
(なぜ今日だったのだろうか?)
今日の移送は事前に決まっていた。準備さえ整えばいつでも実行できたはず。わざわざ移送に合わせる理由がわからない。今日でなければならない理由があったのか。
「どうした?」
エルネスティがカレルヴォに訊く。
「いや、お前の言う通り、なぜ今日だったのか……」
「確かにな……まあ、その辺りもじきにわかるだろう」
「そうだといいがな」
「時間だからそろそろ行くよ」
エルネスティが時計を確認して立ち上がった時、第二ラボの者から連絡が入った。ハンヌが運び込まれた病院に詰めている。
エルネスティの表情が変わった。
「どうした?」
通話が終わるのを待ってカレルヴォが訊く。
「運転手が毒を飲んで死んだ」
「毒を? 持ち物を調べなかったのか?」
「差し歯に仕込んでいたらしい。そこまでは調べなかったようだ。これで何も訊けなくなった」
エルネスティは忌々しく言った。
「はっきりしたのは運転手が協力者だったということだけか」
「そうだな」
あらかじめ毒を用意していたということは、何が起こるかわかっていたということだ。誰かが渡したということはなかった。




