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 宇宙センターの管制局には設備部からの報告が上がっていた。

「長官が補給などありえないだろう」

 報告を聞いて管制局長のヨアキム・ハクンディが言う。

「そう思いますが、そうなると長官のIDが悪用されたことになります」

 局長補佐も同感だった。

「長官がIDを紛失したのかもな」

「そのようなことは言わない方が」

 局長補佐はヨアキムを諌めた。局長補佐はヨアキムが長官をあまり良く思っていないことを知っている。

 宇宙センターは宇宙開発を中心とした施設だが、軍が共有しているために軍の関係者も多い。ヨアキムは長く宇宙開発に携わってきたが、長官は軍から派遣されている。宇宙開発に関する知識は、圧倒的に長官より上だと自負している。

「メジスラナクアとの回線は繋がらないのか?」

 ヨアキムが職員に訊く。

「まったく応答がありません。誰が動かしているのかも不明です」

「こちらから制御はできないのか?」

「回線が繋がらないため不可能です」

 職員の言葉に、ヨアキムは忌々しくモニターに映るメジスラナクアを見た。

(何をするつもりだ?)

 ヨアキムにも目的はわからなかった。戦艦であれば想像はつく。しかし、メジスラナクアは惑星探査船だ。奪ったとしても宇宙を航行するくらいしかできない。恒星間宇宙船なので長距離の移動が可能だが、そこまでして向かう行き先がわからない。

 アルマセレルの宇宙船の開発は進んでいたが、宇宙空間の開拓はあまり進んでいない。戦艦を多数建造しているのも、これから宇宙開発を進めていく上での危険に備えてのことだ。

「局長」

 モニターを監視していた職員が呼ぶ。

「なんだ?」

「うちの輸送機です」

 それはヒルダが乗った輸送機だった。

「うちの? 誰が動かしている?」

「わかりませんがメジスラナクアに近づいているようです」

 メジスラナクアと輸送機はほぼ同じ方向に飛行しているが、双方の距離は徐々に近づいていた。

「誰がどこから飛行したか確認しろ」

「わかりました」

 指示された職員はコンソールを操作する。

(何が起きているんだ?)

 ヨアキムは思考を巡らせた。システムのコンピューターウイルス。メジスラナクアの乗っ取り。この二つは関係があるのか。輸送機の件については、現時点で予定されたものか判断できない。ウイルスとメジスラナクアは関係があるのではないか。メジスラナクアを乗っ取るためにウイルスを仕掛けたのではないか。

「局長。輸送機は国立研究所の第一ラボから飛行したようです」

「第一ラボ?」

「はい。しかし、飛行予定は出ていません」

 メジスラナクアとの関連が高まったとヨアキムは感じた。

「誰が飛ばしている?」

「それが……長官のようです」

「長官?」

「はい、メジスラナクアに続いて、また長官のIDです」

 メジスラナクアに長官が関わっていないことは確認している。本人が否定しているだけだが、疑う余地はないとヨアキムは考えている。つまり、ここでも長官のIDが悪用されたことになる。ウイルスが無関係としても、厄介な相手に違いないとヨアキムは改めて実感した。

(なぜ長官なのだろうか?)

 ヨアキムは疑問を感じた。メジスラナクアの燃料補給も輸送機の移動も、もっと低い役職の承認で可能だ。ウイルスを仕掛けるために高レベルなユーザを利用したのか。それであればすべてが繋がっていることになる。

 ヨアキムが考えを巡らせている間に、メジスラナクアは輸送機の収容を完了し、さらに上空へと上昇を始めた。

「長官」

 ヨアキムは管制局に入ってきた宇宙センター長官のオリヴェル・イソニエミを迎えた。

「どうやら、軍のシステムもやられたようだ」

 オリヴェルはヨアキムに伝えた。

「軍も?」

「そうだ。同一犯かもしれん」

 同一犯であれば、宇宙センターはメジスラナクアの飛行を妨害されないため、軍は攻撃を避けるためだろうかとヨアキムは考えた。やはり、何か引っかかる。そこまでして、なぜ惑星探査船なのだろうか。

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