表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/16

1-13

 軍の統合司令本部に所属するカレルヴォは、家族と一緒に新しくできたショッピングモールで休日を過ごしていた。

 このショッピングモールは、五年前まで存在した民間の研究施設の跡地に建設された。ヒルダがいた研究施設だ。

 本来は国立研究所第二ラボに吸収されて、すぐに解体される予定だったが、ヒルダの件があったために解体が遅れた。

 研究施設の人間は、本来すぐに国立研究所に移る予定だったが、元の研究施設に留まることとなった。その間は常に軍の監視下に置かれた。

 一年ほどで問題なしと判断され、研究施設の人間は開放されることとなった。半数ほどは予定通りに国立研究所に移籍したが、軍による監視に嫌気が差して移籍を拒否したものも多かった。研究施設の解体は決まっていたので、移籍を拒否した者の中には、研究自体をやめる者も少なくなかった。

 一方、宇宙センター長官オリヴェルについて、政府は何も明らかにはしていなかった。軍と宇宙センターでは協力者について調査したが、疑わしい人物さえも浮かばなかった。

 その結果、オリヴェルがヒルダを利用したという結論となった。ただし、二人の繋がりについては明らかにされていない。

 その結論に納得していない者は何人かいる。その筆頭がカレルヴォだ。しかし、軍属のため表立って異を唱えてはいない。ほかの者もほとんどが同じだった。だが、真相が明らかにならなくとも、現時点ではなにも支障はない。ただ納得できないだけだった。それもあり、真剣に調査を続けようと思うものは一人もいなかった。

(疑問は残るが本当に終わったのだろうか?)

 ヒルダの研究施設の跡地にいることもあり、カレルヴォは五年前の出来事を思い出していた。跡地といっても、ショッピングモールになっていて、周辺もかなり様子が変わっている。もっとも、カレルヴォはあの後に数回訪れただけなので、研究施設に対しては何の思いもない。

「そろそろ食事にしませんか?」

 カレルヴォの妻が言った。

 アルマセレルでの毎日の食事は、栄養を摂るだけの簡素なものが中心になっている。いわゆる栄養食品の形で栄養を摂取している。粉末を液体で溶くものや固形物である。家庭で調理することはほとんどない。料理を食べるのはほとんどが外食となる。

 そうなったのは食料の安定供給のためだった。肉や魚、野菜や果物、穀物から栄養食品に加工する。保存が効くようになり食料ロスも防いでいる。

「そうだな。食事にしよう。フードコートは一階だったな」

 カレルヴォは言うと、家族で一階に降りてゆく。上の階にレストランもあるが、子供が小さいのでフードコートを選んだ。

 カレルヴォたちが一階に着くと、奥の方から大勢の人が走ってきた。フードコートは一階の奥まったところにある。

「早く逃げろ!」

 そう叫んでいる者もいた。

「様子を見てくる。お前たちは外に出ていなさい」

 カレルヴォは家族にそう言って奥に向かった。

 奥に行くにつれ逃げてくる人間が少なくなってくる。その先にいる人間が少なくなっているということだろう。

 逃げてくる人々の中には転ぶ者も何人かいた。ぶつかりそうになる者もいる。それらを避けながらになるため、カレルヴォがフードコートに辿り着くのには少し時間がかかった。

 フードコートが視界に入った時、カレルヴォの面前に人が飛んできた。転んだのではない。飛んできたのだ。

(何が起こっているんだ?)

 カレルヴォはフードコートの入り口付近に黒い物体を見つけた。

 黒い物体。いや、黒い生物。四足歩行で肩口から触手が生えている。その二本の触手で人間を投げつけていた。激しい怒りの行動だ。

 実際に見たことはないが、カレルヴォも知識としては持っていた。

 カレルヴォは統合司令本部に連絡する。

「セギオラが出現した。場所は――」

 そこまで言って、カレルヴォはセギオラに前肢で頭を砕かれた。

 これがカレルヴォの最後の言葉となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ