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 会議は一旦解散となった。ウルマスは安全保障局に戻り状況を確認した。

 宇宙センター長官オリヴェル・イソニエミについて、IDが悪用されたのではない可能性が高まった。輸送機の移動とメジスラナクアへの燃料補給だけでなく、軍や宇宙センターへのウイルスについても、オリヴェル本人の手による疑いが高まった。確実な証拠はなかったが、安全保障局はオリヴェルの拘束を決定した。

 しかし、拘束の直前にオリヴェルは逃亡した。戦闘機を奪って逃げようとしたが、離陸に失敗して墜落したということだった。

「離陸に失敗?」

 ウルマスは疑問に感じた。自動操縦であれば離陸に失敗する可能性は低い。操縦に慣れているわけでもないのに自分で操縦したということか。

「はい。手動操縦になっていました。制御を奪われることを避けたとみられます」

 自動操縦の場合、外部から侵入すれば制御を奪うことも不可能ではない。

「そうかもしれないが、離陸と着陸は普段操縦していなければ難しい。それ以上に制御を奪われることを恐れたのか? 死ぬかもしれないのに」

「ですが、手動操縦になっていたのは間違いないようです」

 ウルマスは調査資料に目を通した。オリヴェルについての調査資料だ。そこにはオリヴェルの行動と、システムへのアクセス履歴や一部の操作内容が時系列に記されていた。操作内容については、すべてが判明しているわけではないが、どのシステムを操作したかについては、ある程度まで解析することができていた。

 確認できたものに限れば、アクセス履歴に記録された操作端末と、その時点のオリヴェルの所在は一致していた。一部は映像もあるので、少なくともその部分については、本人の操作であることは間違いないだろう。逃げ出したことからも、関連していたことは裏付けられる。

 決定的だったのは、オリヴェルが補助脳利用者ということだった。補助脳によるアクセスは偽装できない。補助脳は脳にチップを埋め込み、コンピューターとリンクして利用する。補助脳は個別に用意されるので、処理内容を他人に知られることはない。しかし、補助脳を経由して他システムにアクセスした場合はその限りではない。そして、補助脳はセキュリティの高い領域に存在しているため、その部分を偽装することが困難になっている。アクセス履歴のすべてではないが、補助脳経由のアクセスはオリヴェル本人によるものと断定できる。

 問題は首謀者と目的だ。オリヴェルとヒルダ、ハンヌの三人であれば、オリヴェルが一番首謀者に相応しい。もちろん、まだ三人とは断定はできない。

「コスケラ」

 安全保障局の局長アクセリ・ペルホがウルマスを呼ぶ。

「政府の意向を伝える」

「政府の?」

 ウルマスは訝しんだ。

「現在までにヒルダ・カールランピ、ハンヌ・アスピヴァーラ、オリヴェル・イソニエミの関与が判明していることは知っての通りだ」

「私もそこまでは把握しています」

 アクセリの言葉にウルマスが同意した。

「政府ではオリヴェル・イソニエミを首謀者と断定している」

「なぜですか?」

 ウルマスには首謀者を断定できる理由がわからなかった。

「理由は明かされていない。それでだ」

 アクセリはそこで言葉を切った。反論は許さないという様子だった。

「対策チームは解散して君には別の任務に当たってもらう」

「解散? それは全容が解明されているということですか?」

 ウルマスには全容が解明されているとは思えなかった。

「いや、すべててではない。ヒルダ・カールランピの協力者については、情報局主導で継続調査を行う。オリヴェル・イソニエミの協力者については政府が調査している」

「それぞれに別の協力者がいるのですか?」

「そうだ。オリヴェル・イソニエミは、目的のためにヒルダ・カールランピを利用したのだ」

 アクセリの言葉を聞き、ウルマスは思考を巡らせた。オリヴェルが首謀者で、その協力者がヒルダではないのか。それとも、そこからさらにヒルダの協力者がいるということなのか。そういう意味であれば、それぞれに協力者がいるというのは納得ができる。

「オリヴェルとヒルダの繋がりは判明しているのですか?」

 ウルマスが訊く。

「知らされていない。君も知る必要はない」

 ウルマスは何も言わなかった。アクセリに質問しても回答が得られないことはわかっている。疑問は多々あるが従うしかない。

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